自衛隊ニュース

ゲッキーのイラスト

空自は機動展開訓練

福井県おおい町で

 航空自衛隊第4高射群第12高射隊(滋賀・饗庭野分屯基地)と第6基地防空隊(石川・小松基地)は11月28日、福井県おおい町の長井浜海水浴場で地対空誘導弾「PAC3」と基地防空用SAM部隊による機動展開訓練を行った。

 ペトリオットのミサイル実射に関する一連の行動に係る訓練を実施し、任務遂行能力の向上を図るとともに戦闘能力を確認した。昭和38年の開始以来、今年度で59回目。

 5月の大阪市舞洲スポーツアイランド、7月の海自呉地区、9月の陸自札幌駐屯地への機動展開訓練に続き、今年度4回目の訓練。また、日本海側、福井県での実施及び基地防空部隊の参加は初めて。

 空自はいかなる事態にも万全を期すよう、平素から国内の様々な場所での訓練を通じ、各種ミサイル防衛に係る高い練度を保持し、即応態勢を維持していく。

3年ぶり自衛隊音楽まつり

 3年ぶりとなる「自衛隊音楽まつり」が11月18、19の両日、東京・日本武道館で開催された。合わせて6回の公演に約1万3千人が来場、3カ国の外国軍楽隊を含む音楽隊の華やかで力強く心打つ音楽の祭典を堪能した。


音楽隊が奏でる

「WITH」テーマに

 水のように時に優しく、時に強く、包み込むような演奏と歌。「WITH…回せ、響き。動かせ、新世界~新しき世代、その力と共に~」。今年のテーマを体現するかのように出演者の表現に来場者らも一緒になって拍手や手拍子で応えた。

 「皆様と再びお会いできましたことに喜びをかみしめています。この瞬間に感謝の気持ちを込めて、私たちの音楽を精一杯お届けしてまいります」ーー。海自東京音楽隊のボーカル、三宅由佳莉2海曹のあいさつに続いて幕が開いた。

 第1章。陸自東部方面音楽隊と東部方面らっぱ隊が村田茂3陸佐の指揮の下、大ヒットアニメ「鬼滅の刃」の主題歌「紅蓮華(ぐれんげ)」などで魅了。空自航空中央音楽隊は、原田悠生2空尉が指揮しユーフォニアムのカルテット(4人演奏)などで魅せた。

 第2章。陸自中央音楽隊は蓑毛勝熊3陸佐の指揮で行進曲「我が山河」などを披露。「陸軍分列行進曲」では、要人への特別儀仗も行う第302保安警務中隊隊員が演奏に合わせて整斉と行進した。

 海自東京音楽隊は、今回初めて男性隊員6人で編成した艦旗隊を先頭に入場。ピアニスト、太田紗和子1海曹が「パリは燃えているか」を弾き、会場を静かに包んだ。ボーカルの橋本晃作2海曹は、「必ずここへ帰って来る」という歌詞のある「宇宙戦艦ヤマト」を高らかに歌い上げた。


魂の自衛太鼓も

 佳境へと向かう終盤の第3章は「自衛太鼓」で幕を開けた。北海道から九州・熊本まで全国の各駐屯地から集った10個チーム総勢約100人がアリーナを埋め、「廻天之力」をテーマに、雷鳥のような響きを激しく打ち鳴らした。演奏後、指導に当たった北海自衛太鼓の石中大樹陸曹長が紹介された。

 全出演部隊が登場した最終章のフィナーレ。指揮を執った陸自中央音楽隊隊長の樋口孝博1陸佐が指揮台を降り、ステージ後方へと歩み、振り返って一礼した。天井から吊られたミラーボールが回り、小宇宙にいるかのような無数の白い光の点を放った。

 (12面に外国軍楽隊等の記事と写真を掲載)

国際観艦式 絆深む

13カ国39隻等集結し相模湾 洋々行き交う


 防衛省・自衛隊が主催する海自創設70周年を記念した国際観艦式が11月6日、米豪印など12カ国と海自の計39隻の艦艇等が集結して相模湾で行われた。式は50周年時の2002年に行って以来、20年ぶり2度目の実施。海自潜水艦等の訓練も展示され来賓、各国軍人らが見入った。


陸空機も

 蒼海の力強くうねる波の上で、海自と各国海軍等との絆が深まった。

 観閲官の岸田首相が乗る護衛艦「いずも」をはじめとする4隻の観閲部隊が単縦陣で航行。行き交うように受閲艦艇部隊、祝賀航行部隊が単縦陣で航行、航空部隊が観閲部隊と並行するように上空を飛んだ。

 受閲艦艇部隊は、旗艦の護衛艦「あさひ」を先頭に第1~第5群と航行。ステルス性を高めた平面の船体が特徴の護衛艦「くまの」、練習艦「しまかぜ」、補給艦「おうみ」、輸送艦「くにさき」、最新鋭潜水艦「たいげい」など12隻がその雄姿を見せた。

 外国艦艇等で編成される祝賀航行部隊の第6~第9群計19隻が続いた。各艦は乗員らが右舷に整列、登舷礼を行い、敬意を表した。第9群では海上保安庁から唯一参加した巡視船「いず」が存在感を示した。

 受閲飛行部隊は指揮官機のP1哨戒機をはじめ、第1~第9群まで陸自の輸送機V22「オスプレイ」や空自のF35A戦闘機を含む合わせて21機が単機、見事な隊形を保った2~3機の編隊で上空を飛んだ。

 祝賀第10~12群では米海兵隊のF35B戦闘機など、米仏2カ国の6機が力強く飛び去った。

 展示訓練では3隻の潜水艦が潜航・浮上、P1がミサイルを防ぐためのフレア射出、US2救難飛行艇が洋上離着水をそれぞれ行い、練度の高さを見せた。空自ブルーインパルス(第4航空団第11飛行隊=松島)6機は、機動飛行で上空に「サクラ」などを描き、式に花を添えた。


「一層の鍛錬を」首相訓示

 「いずも」艦内で観閲等の終了後、浜田防衛大臣、小野田政務官、酒井海幕長、鈴木事務次官ら最高幹部らが整列する中、岸田首相が訓示を行った。

 首相は、「数多くの国々から艦艇および航空機のご参加をいただき、心より歓迎いたします。『自由で開かれたインド太平洋』の実現のため、皆さまの国々をはじめ、諸外国との協力関係を一層深めてまいります」と謝意を示し、さらに「対立を求めず、対話による安定した国際秩序の構築を追求することが基本。しかし、それと同時に、ルールを守らず、他国の平和と安全を武力の行使や武力による威嚇によって踏みにじる者が現れる事態に備えなければなりません」と述べた。

 また、「本年度末までに新たな国家安全保障戦略などを策定し、我が国自身の防衛力を5年以内に抜本的に強化します。国民を守るために何が必要か、あらゆる選択肢を排除せず、現実的な検討を加速しています。そのなかでも、周りを海に囲まれた我が国にとって、海上防衛力は戦略環境を大きく左右するものです。艦艇の増勢、ミサイル対処能力の強化、隊員の処遇改善を含め、その強化は待ったなしです」と語った。

 最後に「今回の国際観艦式を主催している海上自衛隊の皆さんに一言申し上げます。皆さんの努力の積み重ねが、この国の、そして地域および世界の平和と安定につながっています。厳しさを増す安全保障環境の中にあって、国民の命や暮らし、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くとの決意の下、より一層鍛錬に励んでください」と伝えた。


北部方面隊創隊70周年記念行事

100年先への備えを万全に

 10月16日汗ばむ陽気の北海道、札幌市に所在する真駒内駐屯地で「北部方面隊(総監・沖邑佳彦陸将)創隊70周年記念行事」が多数の国会議員や道知事代理、各市長、歴代北方総監、自衛隊協力諸団体らを招き盛大に開催された。前方には、札幌・旭川・函館・帯広の4個地本から約50名の招待者が間近で観覧。「音も装備品も大きくて…」と感激していた。

 記念式典には音楽隊(北部方面音楽隊、各師・旅団音楽隊)、北部方面情報隊、第3施設団、第1高射特科団、第1特科団、第18普通科連隊、第73戦車連隊、第11普通科連隊、第10即応機動連隊、北部方面システム通信群、北部方面対舟艇対戦車隊、第1電子隊、第11偵察隊、北部方面後方支援隊、北部方面衛生隊、第11特殊武器防護隊、北部方面会計隊、北部方面警務隊の約600名が参加。40年ぶりの観閲行進は22部隊約600名、車両109両、航空機13機という大掛かりなもので、北海道らしい雄大な観閲行進に、来場者はスマホを持った腕を上げっぱなしだった。

 沖邑総監は「我が国を取り巻く安全保障環境は極めて早いスピードで変化している」「強い責任と使命感を持って平和と安全に寄与できるのは地域の方々のご理解とご協力の賜物だ」「100年先への備えを万全にしなくてはならない」などと式辞で述べ最後に「今、受付にいる隊員、意見交換会の準備をしている隊員、即応態勢をとっている隊員、他、みんなの力でこの式典は成り立っている、みんなで成功させよう!」と述べた。

 その後に行われた意見交換会は、会場を二つに分け、双方を映像で繋ぐという斬新なアイデア。各所に沖邑総監の優しさと気遣い、そして北の大地を守るという気概を感じることのできた記念行事だった。


空自はF2参加し独空軍と共同訓練

 9月28日、ドイツ空軍の戦闘機が初来日、航空自衛隊の戦闘機F2と共同訓練を実施した。今回の来日はインド太平洋地域への大規模展開訓練「ラピッド・パシフィック2022」の一環。来日前にはドイツ空軍機が自国からシンガポールまでを24時間以内に到着させることに成功した。

 ドイツは2020年に「インド太平洋ガイドライン」を策定。昨年8月のフリゲート艦「バイエルン」のアジア派遣(11月に日本に寄港)、同9月にオーストラリア軍主催で行われた多国籍空軍演習「ピッチ・ブラック」への参加など、インド太平洋地域でのプレゼンスを高めている。

日本上空で出迎え

 9月28日、F2戦闘機に搭乗した井筒俊司航空幕僚長は、「ユーロファイター2000」戦闘機の操縦桿を自ら握るドイツ空軍総監インゴ・ゲルハルツ空軍中将を日本上空で出迎えた。両者が顔を合わせるのは昨年11月の「ドバイエアショー」での二者会談をきっかけに今回が4度目。その後、空自第7航空団(百里)のF2戦闘機とドイツ空軍「ユーロファイター2000」による編隊航法訓練を視察、成果について井筒空幕長は「日独空軍種間の相互理解の促進および防衛協力の深化、航空自衛隊の戦術技量を向上させることができた」と述べた。同日夕刻、ユーロファイター3機、空中輸送機A330MRTTなどのドイツ空軍機が百里基地に次々と着陸し盛大な歓迎を受けた。

FOIPの維持・強化に向けて関係を強化

 翌日、両者は防衛省で会談と共同記者会見を行った。井筒空幕長は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持するとの決意のもと、ドイツ空軍と共に『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』の維持・強化、そしてグローバルな課題への対処のために協働し、地域の平和と安定に積極的に貢献していきたい」と述べた。ゲルハルツ総監は「ドイツと日本は共通の価値を有するパートナーであり、貿易の自由や民主主義のために共に取り組んで行くパートナーであることが証明された。ドイツ空軍と航空自衛隊が緊密に連携していくことは自然な流れだ」と述べた。

故安倍元首相
隊員ら見送る

 参議院議員選挙中の7月8日に銃撃され亡くなった故安倍晋三元首相の国葬が9月27日、東京・九段の日本武道館で行われた。国葬に先立ち、都内の自宅を出発した元首相の遺骨を載せた柩車が防衛省に寄り、井野副大臣をはじめ各幕・内局等に勤務する約800人の隊員、職員がと列で迎え、約8年8カ月にわたって自衛隊最高指揮官を務めた元首相を見送った。

 国葬には浜田大臣、木村、小野田両政務官、鈴木事務次官、山崎統、吉田陸、酒井海、井筒空各幕僚長らが出席。岸田首相が追悼の辞を読み上げた。元首相の遺骨が到着した際は陸自第1特科隊が弔砲19発を発射。同302保安警務中隊隊員でつくる特別儀仗隊が敬礼で迎えた。陸自中央音楽隊、海自東京音楽隊、空自航空中央音楽隊は国歌を演奏した。この日約1390人の隊員が任に当たり、元首相に弔意を示した。

オリエント・シールド22

米陸軍と共同で島しょ防衛の実動訓練を実施

 陸上自衛隊は8月14日から9月9日まで、国内最大級となる米陸軍との実動訓練「オリエントシールド22」を実施し、島しょ防衛作戦における陸自領域横断作戦(CDO)と米陸軍マルチ・ドメイン・オペレーション(MDO)を踏まえた日米連携の実効性向上を図った。

 陸上自衛隊からは西部方面総監の竹本竜司陸将を担任官として、西方総監部、第4師団、西方特科隊、第2高射特科団、西方システム通信群等が参加。米陸軍からは在日米陸軍司令官のジョエルB・ヴァウル少将を担任官として、在日米陸軍司令部、第1マルチ・ドメインタスクフォース、第1-24歩兵大隊、第17砲兵旅団、第38防空砲兵団等が参加した。

 8月28日は、大矢野原演習場(熊本県)において共同戦闘訓練として陸自の対戦車ミサイル「01式軽対戦車誘導弾」と米陸軍の対戦車ミサイル「ジャベリン」による国内初の実弾射撃訓練を実施した。31日には奄美大島において陸自の12式地対艦誘導弾(12SSM)、米陸軍高機動ロケット砲システム)(HIMARS)および日米電子戦部隊が連携した初の共同対艦戦闘訓練に係る実動訓練を実施した。日米両指揮官は共同会見で、「日米間の連携を一層強化し我が国の安全と地域の平和と安定に寄与する」と成果を語った。

 9月1日には吉田圭秀陸上幕僚長が霧島演習場と健軍駐屯地を訪れ、市街地訓練における日米の連携要領等について視察した。

副大臣、政務官も新たに

 大臣、副大臣、政務官の略歴は次の通り。

 浜田靖一(はまだ・やすかず)防衛大臣 衆議院議員(千葉県第12区)、第6代防衛相、自民党国会対策委員長、同幹事長代理、同国際局長など歴任。66歳。

 井野俊郎(いの・としろう)防衛副大臣 衆議院議員(群馬県第2区)、元伊勢崎市議会議員、自民党青年局部長など歴任。42歳。

 木村次郎(きむら・じろう)防衛大臣政務官 衆議院議員(青森県第3区)、自民党女性局次長、同国防部会副部会長など歴任。54歳。

 小野田紀美(おのだ・きみ)防衛大臣政務官 参議院議員(岡山県)、元東京都北区議会議員、法務大臣政務官など歴任。39歳。

第32期高級課程卒業式合同で
統幕校など

 7月29日、目黒地区に所在する統合幕僚学校(学校長・田尻祐介陸将)、陸自教育訓練研究本部(本部長・廣惠次郎陸将)、海自幹部学校(学校長・真殿知彦海将)、空自幹部学校(学校長・影浦誠樹空将)は合同で第32期自衛隊高級課程卒業式を行った。式には中曽根政務官、鈴木統幕副長、吉田陸幕長、酒井海幕長、井筒空幕長が陪席した。

 今期の卒業生は自衛官42名(陸自17名、海自12名、空自13名)とタイ、インド、パキスタンからの留学生各1名。昨年8月末に「合同統合教育」に入校、10月にそれぞれの「自衛隊幹部高級課程」に進み、3月からは「統合高級課程」で統合運用に関する広範な知識、技能を総合的に習得した。その中で3年ぶりに国外研修を実施。仏、豪、ベトナムを訪問し、現地の現状や政策等を肌身で感じ国際感覚を養った。また、グループ研究で「令和4年度自衛隊統合防災演習(04JXR)」に参加、統幕の検証活動を支援した。

 田尻統幕学校長は式辞で「本年末までに、国家安全保障戦略等いわゆる戦略3文書の見直しが政府一丸となって進められている。強い意志と情熱を持って各部隊等における任務遂行の原動力となるとともに、昨今の急激な情勢変化に適合するため、新領域への対応を含む統合運用体制のさらなる強化のけん引者となってもらいたい」と要望した。

仏国際軍楽祭へ 航空中央音楽隊
自衛隊音楽隊として初めての参加

 7月1日から3日までフランス共和国アルベールヴィルで実施された「第43回国際軍楽祭」に、航空自衛隊航空中央音楽隊(隊長・前田忠信2空佐=立川)が、自衛隊音楽隊として初参加し、市中パレードおよびオリンピックホールでの公演を実施した。


久しぶりの海外派遣演奏


 オリンピックホールでの公演では、『Le Nouveau Japon(ル・ヌーヴォー・ジャポン)(新しい日本)』をテーマに、約20分間のドリル演奏を実施し、演奏終了後には、スタンディングオベーションで歓迎された。

 自衛隊の海外における軍楽祭への音楽隊の派遣等は、派遣国及び他の参加国との関係の構築及び深化を図るとともに、諸外国における自衛隊の理解を深め、親近感の醸成に寄与することを目的に、平成28年度から防衛省として実施している。令和2年度及び3年度は、コロナウイルス感染症の影響でイベント自体が中止等となるなど参加しておらず、令和元年以来の参加となった。

 航空中央音楽隊としては、平成11年度のアメリカ及びカナダ、平成18年度の韓国、平成30年度のドイツ及びオランダに次いで6回目の海外派遣演奏となった。

 同軍楽祭は、1992年冬期五輪開催地であるアルベールヴィルにおいて毎年開催され、今回で43回目となる歴史ある音楽祭。イタリア、フランス及び日本が参加した。


参加国との関係強化に寄与


 航空中央音楽隊からは、副隊長の朽方聡3空佐以下、58名が参加した。航空中央音楽隊隊長の前田2佐は「航空中央音楽隊の演奏技術及び規律、士気の高さから精強性を示すとともに、他の軍楽隊との競演により能力向上に資することができました。海外派遣演奏のご支援を頂いた方々に謝意を表したいと思います」とコメントした。また副隊長(派遣指揮官)の朽方3佐は「歴史ある軍楽祭のひとつである『アルベールヴィル国際軍楽祭』に航空自衛隊航空中央音楽隊が自衛隊として初参加したことを大変光栄に思います。今回の参加により、軍楽祭参加国との新たな関係の構築及び従来の関係強化に寄与できたと確信しています」と述べた。

令和4年度 第1回師団訓練検閲

<第1師団>
あらゆる困難を克服して任務完遂!

 第1師団(師団長・兒玉恭幸陸将=練馬)は5月31日から6月8日までの間、北富士、東富士演習場等において、第1普通科連隊等を対抗部隊として、第32普通科連隊、第1特科隊、第1高射特科大隊及び第1通信大隊に対して訓練検閲を実施した。


自ら考え 創造的破壊に挑戦


 本訓練検閲は「徒歩行進に引き続く陣地攻撃」を検閲課目として実施し、さらに32普連および1特に対しては「対ゲリラ・コマンドウ」についても課目として付与しその練度を確認した。訓練検閲実施にあたり統裁官(師団長)は「勝利への執念」、「創造的破壊」、「非戦闘損耗の局限」、「自ら学べ」の4点を要望した。

 5月31日から6月1日の間、32普連及び1特は、治安出動次いで防衛出動下令下において住民混在下での武装工作員等への対処を実施した。両部隊は住民の安全確保を最優先事項として行動し、警察・自治体等との各種調整、作戦地域でのスクリーニング等を実施、最終的に潜伏等する武装工作員等を捜索・撃滅して任務を達成した。

 6月2日から3日の朝にかけて32普連は約40キロ、1特、1高大及び1通大は約30キロの徒歩行進を実施し、引き続いて東富士演習場に展開する敵先遣戦闘団(1普連基幹)に対して攻撃を開始した。

 攻撃開始に先立ち、1特及び1高大は北富士演習場に陣地占領、また1通大は大隊主力を同じく北富士演習場、一部を師団主力が集結する松本駐屯地に展開させるとともに高ボッチ山、甘利山及び富士スバルラインの要地に中継所を開設して、先遣32普連と師団主力との間の指揮連絡を確保するためのシステム通信組織を作戦間維持運営した。

 3日、32普連は1中隊を平塚道沿いに、4中隊を戦車道沿いにそれぞれ前進させ、敵警戒部隊を駆逐するとともに、同日15時頃、3中隊及び5中隊を並列して攻撃させ、狐塚から大野一帯を確保し、明朝以降の敵主陣地に対する攻撃の態勢を確立した。この際、1特は32普連の攻撃発揮の条件を作為するため敵第一線陣地及び敵砲迫部隊を重視して制圧するとともに、積極的な対砲迫戦の実施により、敵砲迫の火力発揮を妨害し無力化させた。また1高大は、近SAM1コ分隊を32普連に、短SAM2コ小隊及び近SAM1コ分隊を1特にそれぞれ同行させて対空掩護を実施した。

 その他、1通大は師団長より「作戦の終始を通じて戦略的コミュニケーション(以下SC)に資する映像を作成し、師団の作戦環境を有利にせよ」との指針を受け、必要な映像資料の撮影を行い、作戦間4本のSC映像を編集して師団司令部に提出した。

 4日、32普連は1特の攻撃準備射撃の下、連隊攻撃目標に向け攻撃を開始、5日夕方には目標地域の確保に成功した。

 6日、32普連隊長が師団長にじ後の防御構想について報告した時点をもって、本訓練検閲の状況を終了した。


優秀隊員表彰


『表 彰』(第4級賞詞)

【第32普通科連隊】

第1中隊   千葉1曹

第2中隊   梶原3曹

  同    田口3曹

第3中隊   村田士長

第4中隊   荒井3曹

【第1特科隊】

隊本部    石川2尉

本部管理中隊 臼木1曹

第2中隊   渡邊3曹

【第1高射特科大隊】

指揮情報中隊 増田3曹

【第1通信大隊】

本部管理中隊 森田2曹

『褒 賞』

【第32普通科連隊】

本部管理中隊 阿部1曹

  同    杉山2曹

第5中隊   神3曹

【第1特科隊】

第1中隊   渡邊3曹

第3中隊   佐野3曹

第4中隊   宮下2曹

情報中隊   小笠原3曹

【第1高射特科大隊】

大隊本部   佐々木2尉

本部管理中隊 杉山1曹

高射中隊   佐久間3曹

【第1通信大隊】

大隊本部   小野寺2尉

第1中隊   生方1曹

第2中隊   齋藤2曹

岸大臣、シャングリラ会合に出席

各国防衛担当閣僚と精力的に会談

 岸信夫防衛大臣は6月10日から12日にかけてシンガポールを訪れ、英国国際戦略研究所が主催する「IISSアジア安全保障会議(シャングリラ会合)」に出席した。アジア太平洋地域の防衛担当閣僚や専門家が一堂に介し安全保障上の課題を議論する国際会議で、新型コロナの影響で3年ぶりの開催となった。岸大臣は参加各国の担当閣僚と精力的に会談を行い、スピーチでは「ルールに基づく国際秩序を守る諸国の連携は強固である」と強調した。


 岸大臣は、6月11日にアメリカ・オーストラリア、アメリカ・韓国とそれぞれ3カ国間会談を、カナダ、シンガポールとそれぞれ2カ国間会談を行った。翌12日は中国、オーストラリア、ニュージーランド、フィジーとそれぞれ2カ国間会談を行い、防衛協力の強化、交流の推進を各国担当閣僚と確認した。


日米豪防衛相会談

 今回で10回目となる日米豪防衛相会談では共同声明を発出。ロシアによるウクライナ侵略、東シナ海・南シナ海・台湾といった地域情勢および北朝鮮問題等について認識を一致させるとともに、東南アジア諸国連合(ASEAN)の重要性も再確認した。その上で3カ国間演習の増加、相互運用性の向上、先進技術及び戦略能力に関する協力の拡大、欧州や同志国と包摂的パートナーシップを構築し同盟国とインド太平洋への関与を深化させること等を確認した。

 翌12日にはリチャード・マールズ豪州国防大臣(兼副首相)と2国間会談を実施した。さらに15日には帰国途中のマールズ大臣が訪日し、異例とも言える短い間隔で日豪防衛相会談を行った。

 マールズ大臣は「複雑な国際環境下で、日本はオーストラリアにとって抜本的に重要な存在」と述べ、インド太平洋地域における「特別な戦略的パートナー」としての関係の重要性を強調した。


日中防衛相会談

 12日は魏鳳和中国国防部長と日中防衛相会談を行った。岸大臣はウクライナ情勢について、安保理常任理事国の中国が責任ある役割を果たすことを求めた。加えて先月から日本周辺で継続している中露による戦略爆撃機の長時間共同飛行について改めて重大な懸念を伝達した。また、尖閣諸島を含む東シナ情勢、台湾情勢および南シナ海問題についても言及し、自制や中国側が国際社会の懸念に真摯に耳を傾けるように求めた。岸大臣は「日中関係は懸念があるからこそ率直な意思疎通を図ることが必要だ」という旨を伝え、双方で対話や交流を推進していくことで一致した。


大臣がスピーチ

 岸大臣は11日の第2セッション「多極化する地域における地政学的競争への対処」においてスピーチを実施。「ロシアによるウクライナ侵略が示すインド太平洋地域への含意と、インド太平洋地域における地政学的競争に対処するための日本の取組」について説明を行った。スピーチではウクライナ侵略への教訓を踏まえ、インド太平洋地域においても「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)ビジョン実現の取組みが「ルールに基づく国際秩序の維持・強化に大きく貢献するものです」と主張。そして「ルールに基づく国際秩序を守る諸国は、それぞれの防衛力を強化するとともに、各国が強固に連帯していくことを戦略的に発信していくべきです。そうすることで、ルールを無視する主体に対し、ルールに基づく国際秩序を力によって変えることは不可能であると、強く認識させていかなければなりません。ルールに基づく国際秩序を守る諸国の連帯は強固であるということを、見誤るべきではない。このことを、強調しておきたいと思います」とメッセージを発した。

7師団、3年ぶり創隊・創立行事

国内最大級 361両が行進

 陸自第7師団(師団長・中村裕亮陸将=東千歳)は5月22日、3年ぶりとなる第7師団創隊67周年・東千歳駐屯地創立68周年記念行事を執り行った。


 天候に恵まれた当日、第7師団長と駐屯地司令による感謝状贈呈式、祝賀式、観閲行進および訓練展示等を行った。

 東千歳駐屯地第2滑走路において実施した国内最大級の観閲行進では、装軌車208両、装輪車153両の計361両が参加し、一糸乱れぬ統制された行進を披露した。

 また、観閲行進後に行った訓練展示では、第7師団隷下の各部隊が保有する戦車・装甲車等の衝撃力と隊員の気迫あふれる行動により、敵を圧倒する戦闘場面を次々と繰り広げ、来場者を魅了した。


敵圧倒する訓練展示も


 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、例年行っていた戦車体験試乗やレンジャー体験、野外入浴セットによる足湯体験等は残念ながら実施できなかったが、本記念行事で実施した観閲行進、訓練展示は、部隊・隊員にとって来年以降の記念行事開催につながる大きな糧となった。

 第7師団および東千歳駐屯地は、国民そして地域の皆様に対して活力と安心、安全をもたらすため、常に心を燃やし、目的意識と向上心をもって任務にまい進していく。

新年度迎え、地本始動!
決意新たに 出陣式・広報活動実施

新年度最初の広報イベント

盛岡市のMOSSビル前で

<岩手>

 岩手地方協力本部(本部長・佐藤慎二1陸佐)は、4月2日・3日の両日、盛岡市中心部に所在するMOSSビル(商業施設)前において、令和4年度最初の広報イベントを実施した。

 本イベントにおいては、本部と事務所が一丸となり、装備品展示(小型トラック、偵察バイク)、VR体験、制服試着ならびに缶バッジの作成配布のほか、計画中のイベント情報の紹介を行った。

 両日共、絶好の春日和に恵まれ、多くの人が街へ繰り出していた。自衛隊ブースに訪れた女子高校生は、「初めて自衛官とお話しましたが、親しみやすく、そして女性自衛官が輝いていて、興味が湧きました。いろいろなイベントがあることを知り、参加してみたくなりました」と目を輝かせていた。また、映画鑑賞の帰りに訪れた大学生は、「制服試着がとても楽しかったです。予備自衛官補制度を初めて知り、今後、受験を検討してみたいです」と真剣な表情で話していた。

 岩手地本は、引き続き、自衛隊への親近感の醸成に努めるとともに、次世代を担う若者に対する自衛隊の認知度の向上に繋がる広報活動を継続していく。



新学期に合わせて

仙台駅周辺で市街地広報

<宮城>

 宮城地方協力本部(本部長・諏訪国重1陸佐)は4月11日から13日の間、JR仙台駅周辺で「市街地広報」を実施した。

 これは、新学期を迎えた学生を対象に自衛官への進路をアピールする目的で例年行っていたが、昨年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で見送られていた。今年は、感染対策を万全に行い、また、配布の対象も学生のみならず幅広い年齢層に拡大して実施し、諏訪本部長も宮城地本オリジナルキャラクターである「もりと君」「みどりちゃん」と共に自衛官募集チラシが入ったティッシュを配布した。

 帰宅時間帯にかかる短時間の広報活動であったが、多くの皆さんにチラシ入りのティッシュを受取ってもらうことができ、中には、配布されたチラシを見て採用試験について隊員に質問に来る様子も見受けられるなど、反応も良く、3日間で準備したすべてのティッシュを配り終えることができた。

 宮城地本では引き続き、より多くの皆さんに自衛隊をアピールするとともに、自衛官採用試験の情報を広く発信できるよう様々な機会を通じて積極的に広報活動をしていく。



任務必成に向けて「出陣式」

隊員一丸職務にまい進

<東京>

 東京地方協力本部(本部長・山下博二陸将補)は4月21日、年度の開始にあたり、すべての任務必成の気構えを醸成することを目的として、「出陣式」を実施した。

 初めの「達磨の目入れ」では、令和3年度、東京地本を見守ってくれた大きな達磨に、1年間の感謝を込めて本部長が目入れを行った。続いて今年度の新たな達磨には、各課室長、各地区隊長、副本部長、来賓、本部長が一筆ずつ目入れを実施し左目を完成させ、目入れ後には、来賓を代表して東京地本募集相談員連絡協議会会長の高橋章夫氏から祝辞が贈られるとともに、各課室の代表者が新年度に向けての所信表明を行った。

 本部長訓示では、「新年度の達磨には、我が東京地本全員で目指す方向性として『目標任務完遂』、東京地本の目標達成のあるべき姿勢として『変化への適応、誇りと絆』を祈願した。今年度も様々な変化に適合しながら各種業務を遂行していく所存である。ともに誇りと絆をもってまい進していこう」と述べた。

 締めを飾る「鬨の声」では、本部長より指名された東京地本付の藤井2佐の「変化に適応し、誇りと絆をもって、目標任務を完遂するぞ!」との掛け声に、全隊員が勇ましく声を響かせ出陣式を終了した。

 東京地本は、今後も全隊員が一丸となって職務にまい進していくとしている。

海自創設70周年
新たな船出決意

 海上自衛隊創設70周年記念式典が4月26日、海自発祥の地、神奈川県横須賀市で行われた。前身の海上警備隊が1952年の同日、旧海軍水雷学校跡(現第2術科学校)に創設された。式典には鬼木防衛副大臣、海自主要指揮官、米軍関係者、自治体首長ら約320人が出席した。

 東京音楽隊(隊長・樋口好雄2海佐)の演奏で同隊の三宅由佳莉2海曹、橋本晃作2海曹が国歌を高らかと歌い上げ、また、創設以来の477柱の殉職者の御霊に対し黙とうが捧げられた。

 酒井海幕長は式辞で「(国際間の)安全保障環境は激しく揺れ動き、国内の社会情勢も大きく変化、科学技術も劇的に進化している。海上自衛隊も変化の動向を踏まえ、大胆に、加速的に変革し発展していく必要がある」と新たな船出の決意を語った。(式辞等詳細は13面)

44普連は福島で給水

 3月16日午後11時36分ごろ発生した福島県沖を震源とする最大震度6強の地震で44普通科連隊(連隊長・湯舟道彦1陸佐=福島)は東北方面後方支援隊、第6後方支援連隊、東北方面特科連隊、第6高射特科大隊、第6特殊武器防護隊の一部の配属を受け、断水の被害を受けた相馬市、南相馬市、新地町、楢葉町、飯館村、国見町に展開し、給水支援を行った。

 3月17日から24日までの8日間、水タンク車などを用いて延べ約6660人の住民に対し計約800トンを給水した。

 宮城県石巻市出身の熱田大真1陸士は小学2年生の時に東日本大震災で被災。今回、災害派遣部隊の一員として相馬市内で活動に従事し、「初めての災害派遣で不安だったが、住民の方々からの温かい言葉に力を頂いた。今後も訓練に励み、陸曹を目指し、さまざまな現場で活躍したい」と任務達成の充実感と、今後への意欲を語った。

内閣総理大臣表彰 6部隊に

「自衛隊への役割の重さ大きく」

「令和3年度自衛隊記念日に際する内閣総理大臣特別賞状表彰式」が3月30日、東京都千代田区の首相官邸で行われ、陸海空6部隊に岸田首相から賞状などが贈られた。

岸田首相が激励

 自衛隊記念日行事の一環として、陸海空各自衛隊・機関で地道に活動し顕著な功績を挙げているものの必ずしも広く知られていない部隊を表彰している。

 今年度は陸自部隊訓練評価隊(北富士)、陸自地理情報隊(東立川)、海自試験艦「あすか」(横須賀)、海自潜水艦「やえしお」(同)、空自飛行点検隊(入間)、空自作戦システム運用隊指揮所運用隊(横田)が表彰された。

 表彰式には各部隊代表6人が出席、岸防衛相が立会。岸田首相が代表一人一人に賞状などを贈った。訓示で首相は「ロシアによるウクライナ侵略、北朝鮮による新型ICBMの発射もあり、私たちの国は歴史を画するような大きな変化の前にある。自衛隊への期待、役割の重さは大きくなり、皆様方の取り組みもますます重要になる。引き続き、誇りと緊張感を持って任務に当たっていただきたい」と激励した。

受賞6部隊

の活動概要

 表彰部隊(代表)・活動は次の通り。

 ▽陸自部隊訓練評価隊(隊長・近藤力也1陸佐)=外国軍を模した対抗部隊による実戦的な訓練の提供▽陸自地理情報隊(隊長・井上嘉史1陸佐)=車載全周カメラ・ドローンを用いた3D地図等を作成

 ▽海自試験艦あすか(艦長・榎谷真一2海佐)=ミサイル、ソーナー等の艦艇装備品の海上試験を実施▽海自潜水艦やえしお(艦長・井関敬幸2海佐、前艦長・佐藤耕輔2海佐)=長期潜航行動をはじめ各種任務に従事

 ▽空自飛行点検隊(司令・新崎秀樹1空佐)=飛行点検機を運用し、各地の自衛隊の無線施設を点検▽空自作戦システム運用隊指揮所運用隊(隊長・佐伯剛2空佐)=24時間態勢で航空機・ミサイル情報を関係部署に伝達

入間病院 新たな拠点に

 3月17日、航空自衛隊入間基地に隣接した自衛隊入間病院(病院長・加藤圭空将補)が新編され、岩本防衛大臣政務官はじめ入間市長、狭山市長などの来賓を招いて「入間病院新編記念式典」が行われた。岩本政務官は「一人一人の持てる力を遺憾なく発揮してほしい。隊員の健康と密接に関わっているこの部隊の創建に力を注いでほしい」などと語った。

 航空医学診療科も各種あり、パイロットのための検査機関も充実。病床は60床だが、120床まで増やすことができる。敷地面積は約28万平方メートルで各種事態に適応できる広さを確保。平素は市民に解放されるグランドは災害時には災害対処拠点にもなる。

 三沢病院、岐阜病院、那覇病院の機能を集約し高機能化したこの新しい入間病院だが、ソファや棚などの備品は、縮小された各病院から送られてきた物もかなり使用されている。

 当面は、隊員や家族の診療と救急車による2次救急患者の受け入れを行うが、行く行くは、地域診療も行う予定。

6施大、機動支援橋を初架設
宮城県原子力防災訓練で

 第6施設大隊(大隊長・日野貞義2陸佐=神町)は2月8日から11日までの間、宮城県原子力総合防災訓練(同10日~12日)の場を活用し、本部管理中隊渡河器材小隊訓練検閲を実施した。

 訓練は政府と宮城県が自然災害と原子力災害の複合災害を想定し東北電力女川原発(宮城県女川町、同石巻市)で初めて行った防災訓練。大隊としても07式機動支援橋の生地での架設は初挑戦となる非常に重要な訓練検閲となった。

 訓練参加に先立って神町駐屯地で行われた訓練開始式で、統裁官の日野2佐は受閲部隊に「使命の自覚」を、渡河器材小隊長の名和3尉は隊員に「任務完遂」をそれぞれ要望した。

 検閲は「災害派遣における渡河器材小隊の行動」を主要検閲項目に、住民避難等における避難用橋として07式機動支援橋を架設することを検した。架設作業は、生地における地形・気象の制約を受けたものの、既存道路の沈下防止及びアスファルト等の保護を目的とした鉄板、木製合板の活用、車高の低い民間車両の通過が容易な傾斜にするための応用部材(81VLTB取付ボーク)を活用した付帯設備の構築等、生地において発生した制約事項をさまざまな創意工夫により克服し、大隊が示した時期までに架設を完了させた。

 務台環境副大臣、宮城県知事、石巻市長、女川町長等の視察も受け、公用車両で橋梁通過をしていただき、避難用橋としての安全性を確認していただいた。

 務台環境副大臣から「原発は(有事の際の)避難が必要。機動性のある設備は重要だ」、宮城県知事からは「橋が落ちることも十分考えられる。訓練することでいざという時の備えができ、住民を避難させることができる」とのご発言があり、渡河器材小隊隊員の大きな自信となった。


22即機連も参加

 第22即応機動連隊(連隊長・石井伸幸1陸佐=多賀城)は2月11日、宮城県原子力防災訓練に参加。県庁に連絡要員を派遣、また本部管理中隊と第1普通科中隊は石巻市清崎運動公園などで原子力災害発生時における宮城県、各関係部外機関との連携要領を演練し、原子力災害対処能力及び自治体との連携・調整能力の向上を図った。

 宮城県災害対策本部の設置・運営訓練、女川オフサイトセンター現地対策本部運営訓練、各災害現場の状況に応じた住民避難等の訓練により、自治体等と調整する具体的内容を把握することができた。

 参加した隊員は将来発生するかもしれない災害を見据え、与えられた状況を真しに捉えながら、「一人でも多くの国民を救助する」という強い信念を持って積極的に訓練に取り組んだ。

カンボジア陸軍司令官を公式招待
「アジアの中における兄弟と呼べるものに」

 2月14日から17日の間、吉田圭秀陸上幕僚長はカンボジア陸軍司令官のフン・マネット陸軍中将を公式招待した。1992年に自衛隊が初めてPKO派遣を行った国がカンボジア(国連カンボジア暫定機構:UNTAC)だ。あれから30年、節目の年に陸軍種間のトップが顔を合わせ、両国間の防衛協力・交流を推進していくことを確認した。

 吉田陸幕長は「陸上自衛隊とカンボジア陸軍との防衛協力について具体的な道筋を付け、我々の関係がアジアの中における兄弟と呼べるものにしたい」と述べた。2013年からの能力構築支援、同年の日カンボジア防衛協力・交流の覚書署名、2020年の陸幕長として初の公式訪問等を踏まえて、フン・マネット司令官は「コロナ禍で2年間停滞していた両国の関係性についての話し合いを、皆で前に進めて行けると信じている」と期待感を示した。

 フン・マネット司令官は同日に岸信夫防衛大臣、林芳正外務大臣、16日には岸田文雄首相とも会談した。

氷点下22度の厳しい寒さの中、冬季訓練検閲

<第14施設群>

 第14施設群(群長・上林勝敏1陸佐=上富良野)は、1月18日から21日までの間、上富良野演習場において第395施設中隊訓練検閲を実施した。本訓練検閲は「防御支援に任ずる施設中隊の行動」を課目として行われた。統裁官の上林群長は「第395施設中隊施設力の最大限発揮、被害の極限による任務の完遂」「作戦の全局面を通じた各種管理の徹底」の2点を要望した。

 19日朝、20キロを超える装備を携行し、雪深く起伏が激しい約8キロに及ぶ経路をスキーにより前進、1名も脱落することなく全員が完歩、集結地に進入して同地域を占領した。

 20日、大寒初日の気温は氷点下22度を記録、厳しい寒さの中、中隊長(柳田将1陸尉)を核心として一丸となり任務に邁進。敵の侵攻を阻止するため対戦車地雷による道路閉塞、鉄条網を使用した対空挺ヘリボン障害を所命の時期までに構成する等、あらゆる状況においても施設支援を継続し、全ての任務を完遂した。旺盛な責任感をもって職務を遂行し、優秀隊員に選ばれた土屋陸士長(静岡県出身)は「初めて冬季訓練検閲に参加しました。防寒対策をしっかりしたつもりだったが、想像以上の寒さだった。この経験を今後に活かしていく」と語っていた。

 第14施設群は今後も、いかなる任務にも即応し得る、さらに精強な第14施設群を育成すべく、群長要望事項である「日々前進」「団結・連携」を実践していく。

トンガ噴火で国際緊急援助活動
統合任務部隊編成、飲料水等届ける

 日本時間1月15日13時10分頃、日本から約8000キロの南太平洋ポリネシアに属するトンガで海底火山の大規模な噴火が起きた。噴火が起きたのは首都ヌクアロファの北約65キロに位置する海底火山フンガトンガ・フンガハアパイ。トンガ政府によると21日時点で、噴火による降灰と津波により、国民の約84%に被害が及んでいるという。日本にも高さ最大約1・2メートルの津波が到達、16日未明に「津波警報」「津波注意報」が発表された。


 1月20日、外務大臣との協議を受けて岸信夫防衛大臣は、トンガにおける国際緊急援助活動について以下のとおり命令を発出。

 「現地における情報収集・連絡調整のため、オーストラリアにおいて現地調整所を設置」、「トンガ王国国際緊急援助空輸隊等を編成し、航空自衛隊C-130H輸送機2機による輸送活動を実施」、「トンガ王国国際緊急援助活動統合任務部隊を編成し、海上自衛隊輸送艦『おおすみ』1隻(陸上自衛隊CH-47ヘリコプター2機を搭載)による輸送活動を実施」。

 命令が発出された20日の夜、飲料水約3トンを載せたC-130Hが2機、相次いで航空自衛隊小牧基地を離陸。

 21日に活動拠点となるオーストラリア東部のアンブリー空軍基地を経由し、翌22日に1機がトンガのファアモツ国際空港に着陸し飲料水を届けた。

 また22日には、緊急援助物資を可能な限り迅速に現地に供与するため、新たにC-2輸送機2機の派遣を決定した。

 24日は、飲料水や火山灰除去のための用具等支援物資を積み込んだ輸送艦「おおすみ」が海上自衛隊呉基地を出港。「おおすみ」には陸上自衛隊第1ヘリコプター団(木更津)のCH-472機と、海上自衛隊エアクッション揚陸艇(LCAC)2艇を搭載。現地での緊急支援物資の輸送等に使用される。

令和4年始動
岸防衛大臣、年頭の辞

あらゆる選択肢を


 明けましておめでとうございます。

 防衛大臣の岸信夫です。令和4年の年頭に当たり、国内外で任務に当たっている全ての隊員諸君に新年のお慶びを申し上げます。

 昨年は、諸君一人一人のおかげで、我が国と世界の平和と安定が保たれたと心から感じています。私は、日本中、そして世界各地で懸命に職責を果たす隊員諸君のことを片時も忘れることはありません。防衛大臣として改めて、心からの敬意と感謝を表します。

 今日は、少しお時間をいただいて、全国の隊員諸君に、今の私の想いをいくつか伝えたいと思います。

 我が国の安全保障環境が厳しさを増すばかりですが、これは年が改まっても改善するものではありません。昨年における周辺国軍隊の活動の活発化を見ると、この傾向は続くであろうし、さらに、これまでに見ない形での活動も予期しなければなりません。

 特に中国とロシアの艦隊による我が国を周回する示威活動や、我が国からわずか110キロしか離れていない台湾周辺での中国軍機の活動、中国の空母を含む艦隊による太平洋への進出と艦載機による訓練は、もはや我が国周辺そして太平洋が、我が国や太平洋諸国にとって決して安穏としていられる海域ではないことを如実に示しています。

 これらは一例にすぎませんが、こうした状況を前にして、我々は今年何をすればよいのか。

 この意味で、本年、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱および中期防衛力整備計画を新たにすることになったのは誠に時宜にかなったものと考えます。岸田総理からは、これらの改定に取り組むことと、いわゆる「敵基地攻撃能力」の保有も含めた、あらゆる選択肢を検討し、必要な防衛力の強化に取り組むよう指示を頂いています。

 これを受け、すでに省内に「防衛力強化加速会議」を立ち上げているところ、防衛省として、創造力と冷徹な目でもって、明日の我が国と地域を守る大きなデザインを描いてほしいと思います。


現実的、創造的に


 そして部隊や様々な部署にあっては、これまでのやり方がもはや通用しなくなっているという現実を直視し、第一線においては、いかに我が方の優位を獲得するか、そして後方を含むあらゆる部隊や組織においては、確実な対処のためにどのような準備が必要か、常に考えていただきたい。各隊員におかれては、自身の仕事がこれでよいのか、一人一人が改めて問うことからはじめる年明けとしてください。

 そして、情勢の実態から目をそむけることなく、現実的に、そして創造的に考え、出来ることは積極的に、しなければならないことは漏れなく確実に、自身の職務に当たっていただきたいと思います。

 さて、新年早々厳しい話を申し上げましたが、一方、昨年は、様々な自衛隊の活動に意欲的な取り組みが見られた有意義な年でもあったと思います。

 陸上自衛隊においては、28年ぶりに全国規模で大規模な部隊展開要領を演練した陸上自衛隊演習、海上自衛隊においては、南シナ海を含め、広くインド太平洋地域に展開するIPD、航空自衛隊においては、「コープノース」および「レッド・フラッグ・アラスカ」などが挙げられると思います。

 そして、国民からの期待も大きく、まさに自衛隊が国民の安全安心の「最後の砦」となることを示した大規模接種センターの設置運営は、防衛省・自衛隊がこれまでに経験したことのない活動でした。

 訓練・演習、警戒監視、災害派遣と、全国の津々浦々で、そして任務によっては海外で、自衛隊の各部隊が活動していますが、先に述べたように、安全保障環境が厳しさを増す中、その内容にこれまでにない考えを取り入れる必要があるかもしれません。また、臨機応変に対応しなければならないかもしれません。そうしたことは企画・計画の段階で起きるかもしれませんし、現場で活動中に起きるかもしれません。

 そうした時、やはり防衛省・自衛隊に求められるのは、国民の安全・安心を第一に考えればどうすれば良いかということだと信じます。私も、防衛大臣として常にそうした意識をもって仕事にあたりたいと思いますし、一人一人にも、ぜひ考えていただくことを望みます。

 ここまで様々申し上げてきましたが、今後も、常に私自身が諸君の先頭に立ち、あらゆる課題に立ち向かっていく気持ちに変わりはありません。

 令和4年も防衛省・自衛隊一丸となって、日本の平和と安定を守り抜いていきましょう。

不測の事態に備えピットファイヤー訓練

<中警団消防小隊>
心を燃やせ !

 12月9日、航空事故や燃料流出等による火災を想定した消火訓練「ピットファイヤー訓練」が、航空自衛隊入間基地にて実施された。訓練を行ったのは、中部航空警戒管制団基地業務群施設隊消防小隊の23名。彼ら彼女らは入間基地で発生する不測の事態に備えて日々心身を鍛えているが、四半期に一度は専用のプールに火を放ち実際の航空機火災を想定した「ピットファイヤー訓練」を行っている。

 訓練は3回、暗がりで隊員同士の顔もはっきり見えない5時45分、ほのかに空が明るみを帯びてきた6時15分、曇り空から朝日がちょっぴり顔をのぞかせた6時50分に、それぞれのシナリオにもとづいて開始された。油の臭いが立ち込める直径15メートル程のプールに、着火剤のガソリンで点火。瞬く間にプールは火の海に。燃え盛る炎は高さ10メートルに上った。

 消火に向かったのは、大型破壊機救難消防車のA-MB-3とA-MB-2、消防指揮車、大型給水車(1万5600リットル)の4台。先陣を切ったのは約1万リットルの水を積載するA-MB-3。最長約90m、上下2つの強力なタレット(放水銃)で炎の威力を抑え込んでいく(実際の火災では、消火薬剤とともに放水される)。

 勢いを弱めた炎に、すかさず銀色の防火服を着た消防隊員たちがホースを抱えて放水。水は真っ直ぐではなく前方に弧を描き、炎を押し出すようにかける。そうしなければ、消防隊員自身が炎に取り囲まれて命の危険に晒されてしまうからだ。腰を落としいわゆる「カニ歩き」の姿勢で前進する。背中の空気ボンベを含むと20kgを超える防火服をまといながらのこの動作は、かなりの体力を必要とするため、若いうちから常に鍛えているようだ。眼前に迫る炎への恐怖心に打克ちながらできた道は、パイロットや乗員を航空機から運び出す動線となることから「レスキューライン」と呼ばれ、それを確保する消防隊員を「ラインマン」という。

 各回とも10分ほどで無事に鎮火されたが、消防小隊隊員は万が一の火災事故に備え24時間365日、胸の中にいつも「使命感」という炎を灯し日々の訓練に励んでいる。