自衛隊ニュース

来館者30万人達成!!
旭川駐屯地 北鎮記念館
8月19日、陸上自衛隊旭川駐屯地(司令・宮崎章陸将補)北鎮記念館は、来館者30万人達成を祝してセレモニーを開催いたしました。栄えある30万人目のお客様は、大阪府から来られた西川様ご家族で、館長(旭川駐屯地業務隊・森山英介1陸尉)から記念品と花束が贈られました=写真。
西川様ご家族は、旭川近郊を巡る4泊5日の旅行中に人気漫画・アニメの聖地巡礼として北鎮記念館を訪れ、この歴史的瞬間に遭遇することとなり、大変、感動されていました。また、休日には、各地で開催される航空祭や駐屯地創立記念行事等をよく家族で訪れているそうです。
平成19年6月に旭川駐屯地隣に新記念館として建てられて以来、北海道の防衛と開拓に携わった屯田兵や旧陸軍第七(しち)師団の歴史や陸上自衛隊第2師団の活動等、開拓と防衛の歴史を物語る貴重な史料を旧北鎮記念館から引き継いで展示しています。最近では北海道を代表する観光スポットとしても人気急上昇中です。
おかげさまで新記念館として30万人を達成することができました。皆様のご来館を勤務員一同お待ちしております。
第4師団第46回定期演奏会
有観客では3年ぶりの開催
音楽で故郷に勇気と元気を
第4師団(師団長・腰塚浩貴陸将=福岡)は、9月11日、福岡市民会館において、第4師団第46回定期演奏会を実施した。
本演奏会は、地域の方々の第4師団に対する更なる理解の促進及び協力機運の醸成を図り、師団の任務遂行に寄与することを目的としており、観客の入った会場としては3年ぶりの実施となった。
演奏会は、西部方面音楽隊から9名の演奏支援を受けた第4音楽隊を基幹とする演奏部隊が、「音楽で故郷に勇気と元気を」をテーマに、2部構成により全12曲(アンコールを含む)を演奏して、多くの観客の皆様に日頃の練成の成果を披露した。
ユーフォニアム奏者として参加した田中知佳子3曹は、「第4音楽隊に所属して4年目ですが、新型コロナウイルスの影響もあり、定期演奏会に出演するのは2度目になります。事前の合奏訓練では、皆で積極的にディスカッションを重ねながら練習に取り組み、納得のいく演奏会になりました。本番はいつも緊張しますが、演奏が進むにつれて少しずつ解れ気持ちよく演奏できました。音楽と映像のコラボではMISIAの『アイノカタチ』を歌わせていただきましたが、観客の皆様の気持ちに寄り添えるような心を込めた歌唱をすることができ、良い経験となりました。これからさらに高みを目指し日々精進したいと思います」と演奏できた喜びを述べた。
第4師団は、これからも国民の安全と安心を守るため、日々訓練に励み、地域の皆様に寄り添える活動を積極的に行ってまいりたい。
令和4年度偕行社総会
陸修会との合同に向けて
10月7日、東京都新宿区市ヶ谷の「ホテルグランドヒル市ヶ谷」で、令和4年度公益財団法人偕行社(森勉理事長)総会が開催された。山越孝雄事務局長による開会の辞、国歌斉唱(飛沫感染防止のため心の中での斉唱)、黙祷と続き、森理事長から挨拶が行われた。
奥村快也専務理事の会務報告では、平成30年度から取り組んできた偕行社の改革について「新社屋購入による貸借料の解消、刊行紙『偕行』の毎月発行から各月発行への変更、事務局人員削減、会員会費の一本化、などによる財務状況改善」、「元幹部自衛官主体の組織となる『偕行社のあるべき方向(理念)』の確立」、その理念に基づいた「定款の変更」、「陸自に対する支援を重視した活動の開始」、そして「陸修会との合同の必要性と時期」等の説明があった。
偕行社は陸軍士官学校・幼年学校等の会員の高齢化に伴い、伝統ある会の存続のため今年4月に設立された「陸上自衛隊の幹部退官者の会(陸修会)」との合同に向けて準備を進めている。偕行社の伝統を継承しより発展的に活動を継続させるため、陸修会との合同は令和6年4月の合同を目指して8月から協議が始まっている。
総会に続いて吉田圭秀陸上幕僚長が「ウクライナの教訓と将来の陸上自衛隊」をテーマに防衛講話を行い、時間が押すほど熱がこもった話に参加者は引き込まれた。質疑応答では核心を突くようなするどい質問がされ、盛況のうちに閉会した。
読史随感
神田淳
<第111回>
あらためて中国を直視する
中国が強大化し、日中関係は50年前国交回復した時から大きく質的にも変った。覇権国家化した中国が日本を脅かしている。習近平は台湾侵攻の準備を着々と進めているように見える。中国の台湾侵攻は、日本の安全と存立に大きくかかわる。そのとき日本はどうするか、真剣に考えておかなければならない。
我々はあらためて中国がどういう国か知らなければならないと思う。
まず、中国は西欧的な近代国家ではなく、中国大陸の歴史に現れてきた王朝の一つと見るのが、中国をよく理解する見方だと思う。歴史的に中国は皇帝の支配する国であった。毛沢東は実質皇帝だった。毛沢東の死後最高権力者となった〓小平はトップの交代の必要性を認めたが、2012年党総書記に就いた習近平は国家主席10年任期の規約を撤廃し、終身最高権力者への道を開いた。トップの皇帝化が進んでいる。
中国文明の中核にある中華思想も、現代中国に根強く生きている。中華思想は、中国が世界の文化・政治の中心であり、最高で世界に優越しているという思想(思い込み)で、周辺民族を「夷狄」として蔑む。中華思想は中国人の国民的信念のようで、「夷狄」などは人間でないと信じているように見える。
中国は新疆ウィグル自治区で周辺民族ウィグル人を弾圧し、強制収容などの人権侵害を行っている。主要西側諸国は、中国のウィグル人民族浄化政策をジェノサイドと認定した。また、チベットも中国に侵略され、チベット文化を抹殺する中国の統治に抵抗するチベット人を中国政府は弾圧し、虐殺した。その犠牲者数は120万人にのぼると言われる。
古来日本に文明は大陸よりもたらされ、日本人は中国に敬意を払ってきた。しかし、日本人は中国文明の全体像を理解したとは言えなかった。世界で日本人ほど中国を誤解している民族はいないと言われる。中国の歴史は、一族郎党皆殺しや城内(=市内)の住民皆殺しといった大虐殺、残虐極まりない刑罰、騙しと策略で人を陥れて殺すといった史実に満ちている。宦官の制度、おぞましい纏足の慣習、さらに驚愕すべき食人の習慣も20世紀まで存続した。
中国の全体像を理解するため、中国史に頻出するこうした非文明的、非人間的な史実を直視し、これも中国文明の本質の一部と見なければならないと思う。そして、こうした文明体質は現代も生きていると考える。
中国人は平然とウソを言う。特に国益がかかったとき、積極的にウソをプロパガンダする。武漢で発生したコロナウィルスは、アメリカが持ち込んだ可能性があるなどと言う。中国は「騙される方が騙すより悪い」と考える社会である。「詐の文化」は中国文明の本質を構成している。
中国の残虐性も直視すべきである。1937年北京郊外の通州で、日本居留民200人以上が中国人保安部隊に惨殺された。この残虐極まりない殺害が日本を激高させ、日中戦争の遠因となった。この通州事件など中国史に頻出する大量虐殺そのものであるが、20世紀になっても虐殺文化は生きていたのであり、おそらく現在も健在であろう。
中国文明には人の生命の尊重がない。中国共産党の支配する現代中国も、中国の伝統上にある人権軽視の社会である。日本はこうした中国と向き合っている。中国が覇権化し、世界と日本に支配的な影響力をもつことを私は好まない。
(令和4年10月15日)
神田 淳(かんだすなお)
元高知工科大学客員教授。著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。
自衛官にとっての「人生100年時代」(14)
「教養」を高めよう!
前に紹介した、元サッカー日本代表選手のセカンドキャリアをドラマ化した「オールドルーキー」が9月11日、終了した。当初から予測はしていたが、主人公は「アスリート最優先」の姿勢を貫き、最後は上司さえも屈服してハッピーエンドに終わるとの筋書きだった。
翻って、退職自衛官のセカンドライフを考えると、再就職先で「国防や自衛官へ理解最優先」とはほぼ期待できず、ドラマのような展開にはならないだろうとの思いが余計に強まった。
本シリーズでは、これまで自衛官の経験や資質以外の「+アルファ」として、資格やスキルの取得や意識改革などを取り上げてきたが、今回は「教養」について取り上げよう。このテーマも毎回の業務管理教育において必ず触れることにしている。
「嗅覚」は「教養」から生まれる
お茶の水大学の藤原正彦名誉教授は、数学者とは思えないような独創的なテーマを取りまとめて時々上梓されているが、その1冊『国家と教養』の中で「教養」について語っておられる。その要旨を紹介しよう。
「人間は耳目に入る情報から、自分にとって価値があり有意義な情報を『嗅覚』によって選択する。その『嗅覚』を培うものは、『教養とそこから生まれる見識』である。では『教養』とは何か。その定義はあまりに多く、人により千差万別である」と。「感知力」とか「洞察力」と置き換えてもいい「嗅覚」は、確かに、自分の「見識」の範囲でしか察知できないことはよく理解できよう。
藤原氏は、この「教養」を身に着ける手段として、ある社長の「人と付き合い、本を読み、旅をせよ」の言葉とか、漫画家の手塚治虫の「漫画の勉強することを止めて、一流の映画を見ろ、一流の音楽を聴け、一流の芝居を見ろ、一流の本を読め、それから自分の世界を作れ」の言葉などを紹介しているが、「漫画ばかり勉強しても一流の漫画家になれない」との指摘は実に興味深い。
さらに「『教養』は実体験によって得られるもので、京都がどのような町かは、京都に行ってみなければ理解できない。モーツァルトの音楽がどのようなものかは、聴く以外に方法がない。しかし、人間が一生の間に実体験することは限られている。『間接体験』(追体験)するしかない。よって、読書、文化、芸術などに親しむことが大切なのだ」と看破する。全く同感である。
「研鑽に定年なし。一生勉強!」
自分の「嗅覚」、その基になる、それぞれの「教養」を一朝一夕に身につけることは出来ない。継続した努力の積み重ねが必要である。一方、悲しいかな、自分の持っている「教養」は(その広さや高さを)いくら隠そうと思っても、通常、瞬時のうちに見破られるのも常だろう。
履歴書などの書類審査を合格しても、30分程度の面接でふるいにかけられるのはこの「教養」である。その場に及んで「もっと勉強しておけばよかった」と悔やんでも遅いのである。
業務管理教育でいつも問うことがある。「民間人と自衛隊以外の話題で話がはずむか」「民間人を惹きつける話題を持っているか」と。ぜひ、自衛官諸氏には胸に問うてもらいたい。そこがスタートであろう。それが分かったら、日々研鑽を積むしかない。「高いつもりで低いのが教養」という「つもりちがい」の一節もある。「研鑽に定年なし。一生勉強!」なのである。
「退職自衛官の再就職を応援する会」詳細と問い合わせ、本シリーズのバックナンバーはこちら。https://www.saishushoku-ouen.com/