自衛隊ニュース

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北千歳駐屯地献血協力

 北千歳駐屯地(司令・牧野雄三陸将補)は、9月15日、北海道赤十字血液センターからの依頼に応え、89名が献血に協力した。

 検温やマスクの着用、アルコールによる手指消毒、またバス内には飛沫感染防止フィルムが設置され新型コロナウイルス感染防止処置のもと献血が行われた=写真。同センターの職員からは、「新型コロナウイルスによる、企業、大学等へ献血協力の依頼が減少し、全血液型とも適正在庫を下回っている中で、多くの隊員の皆様に献血に協力していただきありがとうございます」と謝辞が述べられた。

ブルーインパルスが高島の大空に舞う!

自衛隊フェスタ50・70 in 滋賀高島


 8月7日、航空自衛隊饗庭野分屯基地及び陸上自衛隊今津駐屯地(滋賀県)は、所在する高島市と共催で「自衛隊フェスタ50・70 in滋賀高島」を滋賀県高島市で開催した。

 これは饗庭野分屯基地創立50周年、今津駐屯地創立70周年を記念して両駐屯地等の装備品展示や記念パレードを披露したほか、陸上自衛隊中部方面音楽隊による音楽祭、記念式典では両駐屯地等の歴史を振り返るスライド上映において両司令から歴史紹介が催され、それぞれの周年を迎えるにあたり、地元市民への謝意を表すとともに、自衛隊への理解を深めた。

 特に、本イベントの目玉である航空自衛隊のブルーインパルスによる展示飛行は、多くの来場者を呼んだ。当日は猛暑であったが、「ブルー」の勇姿を目に焼き付けようと朝早くから賑わいを見せるとともに、パイロット等によるトークショーやサイン会も大盛況で、このイベントに約11万人が来場した。

 滋賀県でブルーインパルスが飛行したのは2017年6月以来5年ぶりで、滋賀県高島市のある湖西地域を飛行したのは初めてである。

知恩報恩<12>

航空自衛隊OB 金古真一


 入隊からの約35年間、元号は昭和から平成、そして令和となった時代の中で、防衛省・自衛隊が変貌を遂げ、取り巻く様々な環境の変化を実感しつつ、昨年末に自衛官生活を終えました。退職時に見た防衛省・自衛隊の姿は、入隊当時に思い抱いていたイメージとは全く異なっていたと正直感じています。

 入隊当時、防衛省・自衛隊が多くの国民から関心を持たれ、任務や活動に関する理解を得るにはかなりの時間を要すると思っていました。第一線の任務に従事する部隊や隊員を取り上げ、北の脅威に直面する現状を伝えようとする報道番組は一部あったものの、事故や不祥事といったネガティブな報道が多くを占め、違う意味での関心や注目を引き付けるしかないのが現実でした。私は防空指令所の一員として対領空侵犯措置に明け暮れる日々を過ごしていましたが、日々の活動が国民からの関心や理解を得られている実感を抱くことはありませんでした。防大卒業式において吉田首相が一期生に諭された訓示を知り、先輩諸兄を見習って、任務に邁進することに矜持を見出していたと記憶しています。

 しかし、30年後、全く違う風景を目の当たりにしました。我が国周辺の安全保障環境の実情が多くの国民に認識され、領海・領空保全のための不断の警戒監視活動、頻発する自然災害に際して無比の能力を示した災害派遣活動、さらに活動地域と内容を拡大した国際平和協力活動等と、自衛隊の活動に対する幅広い理解と高い評価を獲得するまでになりました。同時に、ネット等のメディアの多様化とともに、安全保障政策に関して本質的な議論が展開される報道番組、大きな反響を呼ぶ映画やテレビドラマ化、さらにゴールデンタイムにテレビの特集番組が頻繁に放映される状況は今や当たり前であり、隔世の感を禁じ得ません。

 ここに至るまでには、厳しい時代にあっても黙々と任務遂行に邁進された先達の存在なしには語れず、敬服の念に堪えせん。また、偏向的な取材や記事への対応に腐心しながらも、真の姿を伝えようと努力し続けた広報部門に従事した隊員の功績は大きく、さらに、長きに渡りともに情報発信を担って頂いてきた貴誌を始めとする防衛関連出版社や関係団体関係者の皆様にも感謝申し上げたいと存じます。

 今後、防衛省・自衛隊の対外発信が担う役割はさらに重要となるでしょう。既に、静かなる有事と言われる少子化、人口減少に直面しつつある隊員募集では、その効果の大きさが認識されています。さらに、従来領域から新たな領域へと作戦が拡大する中で、情報戦・認知戦としての情報発信の良否が、緒戦あるいはその後の作戦の成否に直結する時代を迎えています。平時からグレーゾーン、有事の全ての段階で、適切な情報発信は安定や抑止に繋がり、抑止が奏功せず紛争に至った場合でも、的確な情報発信が、国際社会はもとより、国内からの理解や賛同を獲得する上で極めて重要であることは、ウクライナ侵攻でも広く認知されたと思います。

 目的の明確化、対象の分析、メッセージの発信、効果の確認というプロセスを伴う戦略的コミュニケーションへの取り組みは、社会状況の変化とともに、様々なステークホルダーに対する的確な情報発信が求められた企業が先行していました。しかし、ここに来て防衛省及び各自衛隊の情報発信が、既成の媒体に加えてHPやSNSを活用し、かつ視覚効果の高い映像や外国語を併用したコンテンツによって、タイムリーでメッセージ性の高い情報を積極的に発信して、自国に有利な環境を創出する意図を感じるものへとなりつつあり、防衛省全体として戦略的コミュニケーションの実践に本格的に乗り出していることが理解できます。

 このような流れは安全保障を主管する省庁として当然と言えますが、企業の一員となって、情報発信に関しては企業サイドからさらに取り入れるべき点があると感じています。CMは企業イメージの形成にとっては極めて重要なツールですが、入社直後、新しいテレビCMに関する社員へのアンケートが実施され、一見した感想は何ら問題なく、少し戸惑いを感じたものの、受け手側の効果を社員全員で追究する姿勢は学ぶべきと感じました。

 また、部内に対する発信には相当な力が注がれており、対外発信した内容が、社内HPやメールを駆使して社員にも同時発信されています。弊社では本社社長を先頭とする全ての経営陣が社員への発信に積極的に取り組んでおり、社員一人一人との間で、企業理念、将来ビジョン、長期及び短期的な目標を共有し、コンプライアンス及び経営ガバナンスといった認識を一致させた上で、チーム一丸となって前進を目指すリーダー達の姿勢が新米の私にも明確に伝わっています。企業向けのSNSも採用されており、経営陣のメディアでの発信内容や工場視察、社員との対話等の活動がスレッドでフォローでき、社員からの書き込みに社長がレスポンスされる等、双方向でのコミュニケーションが可能となっています。

 営利企業で用いられる手法が、軍事組織で全て奏功するとは言えません。しかし、自省の念を込めて言えば、今後、時代に則したリーダー・フォロアーシップのあり方、あるいは分散・自立型の作戦指揮の適用、さらに偽情報に対処するためのリテラシー等を考えると、対外発信とともに、フォロアー、すなわち部内への情報発信の重要を認識し、既成の形に拘らない、積極的取組がリーダーには求められていると思います。


(著者略歴)

 統一86期(防大30)、南西防空管制群司令、空幕装備体系課長、第2航空団司令、防衛大学校防衛学教育学群長、中部航空方面隊副司令官、空幕総務部長、中部航空方面隊司令官、航空総隊副司令官、航空支援集団司令官を歴任

ノーサイド

北原巖男

急募!自衛官候補生


 「休みとかあるんですか」

 「手当なんかどうなってるんですか」

 不安そうな若者の声が聞こえてくる。ここは三軒茶屋のチホン、自衛隊東京地方協力本部世田谷募集案内所。三軒茶屋は通称さんちゃ。言わずと知れた若者の街。チホンの外には若者の楽し気な歓声が溢れています。

 募集案内所の中では所員(広報官)が訪問者に熱心に説明をしています。若者の中には、自衛隊後期高齢者OBの私などは思わず目を丸くしたり声を荒げてしまいそうなとんでもない質問をする者も。しかし、所員の皆さんは静かに優しく導いていく。本当にあたまの下がる思いが致します。彼らは自衛隊25万人の文字通り基盤を支えていると言っても過言ではありません。全国47都道府県・自治体に展開しているチホン募集案内所の皆さんの、地道な営み無くして自衛隊は成り立ち得ません。

 未曽有の少子化の時代。

 防衛省・自衛隊では、一般曹候補生や自衛官候補生の採用上限年齢を27歳未満から33歳未満に引き上げたり、自衛官候補生試験の見直し等を含め、様々な人的基盤の強化を図り、防衛力の持続性・強靭化に努めて来ています。しかし、こうした諸施策の導入によっても、広報官の皆さんの努力に依存し多大な負担を架する募集のやり方では、自衛官の確保が益々困難になって行くのは必定ではないでしょうか。

 私は、隊友会世田谷支部(岩崎修治支部長)の同僚と共に、月に一度さんちゃのチホンを訪問する機会がありますが、所員の皆さんの奮闘する姿の一端に接する度にそんな思いを強くしています。

 総務省は、「住民基本台帳」に基づく本年1月1日現在の日本人の人口を約1億2322万人と発表しています。2009年をピークに13年連続の減少。前年比では、鳥取県の人口約54万人(本年4月1日現在)を大きく上回る約62万人の減。これは1968年に調査を開始して以降最大の減少とのことです。

 また厚生労働省の「人口動態統計」によりますと、本年1月から6月の出生数は約38万5000人。2000年以降で初めて40万人を割り込んでいます。過去最少の出生数を記録した2021年が約81万人でしたので、本年は80万人を下回る可能性が大です。

 更に文科省「学校基本調査(速報)」は、2021年度の大学進学率が過去最高の54・9%を記録し、短大(4%)、専門学校(24・0%)を含めると、83・8%の高校生が進学していると公表しています。このことは、高卒18歳を募集対象として注力することがほとんど不可能であることを物語っています。

 文科省は、高進学率の背景として、コロナ禍で雇用環境の見通しが不透明なため進学を選択した生徒が一定数いること、高等教育の就学支援制度によって学ぶ機会が確保出来た生徒がいたこと、などを挙げています。

 しかし、ここで忘れてならないことがあります。就学支援すなわち奨学金は、その多くが返還義務のある無利子奨学金か有利子奨学金であり、返還義務の無い給付型奨学金は限られ、返済に苦悩している沢山の若者たちの存在が、今や大きな社会問題になっているという事実です。日本では、大学生の約半数が何らかの奨学金を受給していると言われています。日本経済新聞本社コメンテイターの小竹洋之さんによると、「日本学生支援機構の奨学金を受ける学生は全体の3分の1を占める。平均貸与額は、無利子型で232万円、有利子型で337万円。若くして重い借金を背負う」(2022年9月10日付け 日本経済新聞)

 一段と加速する少子化。そして学ぶために受けた重い借金の返済にあえぐ多くの若者達。

 こうした厳しい状況を正面から受け止め、若い優秀な自衛官を確実に確保して行く。これが出来ずして、わが国の防衛力の抜本的強化は成し得ません。

 もはや防衛省・自衛隊だけで出来る施策の導入には限界があり、「政府全体として」これまでにない思い切った制度設計を検討する段階にあるのではないでしょうか。


北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


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