自衛隊ニュース

統幕最先任、三宿を訪問
3自最先任系統の連携強化確認
統幕最先任・関秀之准海尉は令和4年度を迎え、新型コロナウイルス感染症のまん延防止措置が解除されたことを受け、感染対策を行いながら積極的に部隊を訪問し、現況を把握している。統幕最先任は、4月7日に三宿地区・駐屯地にある自衛隊中央病院、陸上自衛隊衛生学校、対特殊武器衛生隊、部隊医学実験隊を訪問し、部隊及び装備品の研修、懇談並びに中央病院長表敬を行った。
衛生学校、対特衛、医学実験隊の教育施設・資材や装備品を研修し、衛生分野の重要性を認識する事が出来た。また中央病院の職業能力開発センターには、公務により障害を負ってしまった隊員に対する技術や資格の取得にむけた教育プログラムが設けられており、その存在を知らない隊員への周知が必要であると感じた。
訪問に同行した、航空自衛隊准曹士先任・甲斐准尉、陸上総隊最先任上級曹長・度會准尉及び教育訓練研究本部最先任上級曹長・永禮准尉、開発実験団最先任上級曹長三善准尉とも懇談し、今後の陸海空の最先任系統での連携強化を確認した。
雑誌「TARON」創刊
ロシアのウクライナ侵攻を機に世界情勢が緊張感を増す中、世界的に安全保障に関する議論が白熱している。加えて日本では経済的・軍事的に台頭する隣国・中国の脅威にどのような姿勢で臨むべきか、安全保障の観点からの国民的議論がますます強く求められるようになっている。安全保障は今や政治や行政の占有物ではなく、国民一人ひとりが次世代に向けて責任を持つ「国民の重要事項」なのだ。
安全保障は関連領域が広く、専門性が高いため、国民的議論には一定程度の知識の共有と国民のコンセンサスが前提となる。しかし、現在の日本では安全保障関連の知識を習得する機会や場が限られており、国民的議論の発展を阻む足かせとなっている。
そんな現状に一石を投じるのが、本年2月に創刊された雑誌「TARON」だ。安全保障領域の現状や最新の研究を、わかりやすく編纂して広めることによって国民的議論を醸成し、健全な民主主義の発展に寄与することを目指して企画された、これまでにない画期的な雑誌である。
創刊号では「宇宙空間における戦略的競争」をテーマに、中国における宇宙の軍事利用や日米の安全保障宇宙政策等について、東京大学公共政策大学院鈴木一人教授や第32代航空幕僚長片岡晴彦氏をはじめ、第一線で活躍する専門家による論説および対談を掲載、話題を呼んだ。
次回第2号(2022年6月発行予定)は「海洋を巡る戦略的競争」、第3号は「中国〓日米ミサイル競争」、第4号は「一帯一路vs.自由で開かれたインド太平洋構想」を特集、いずれも各分野を代表する専門家・論客が日本の安全保障が直面する課題や最新の研究結果を紹介する予定だ。本誌が安全保障議論の素地となる基礎知識を身に付けるための必携の書として広く読まれ、我が国における安全保障議論発展へのトリガーとなることを期待したい。(発行:国政情報センター 〒150ー0044東京都渋谷区円山町54道玄坂ビル TEL:03ー3476ー4111、FAX:03ー3476ー4842 HP:www.kokuseijoho.jp)
自衛隊売店等連合会発足
事務局長 添島敏勝
隊員の皆様、元防商連会員の皆様及び全国の陸・海・空自衛隊売店会の皆様におかれましてはお仕事お疲れ様です。
さて、3月31日で防衛協力商業者連合会が解散しました。その受け皿として、同日付けで自衛隊売店等連合会を立ち上げましたのでお知らせ致します。本会の名称は大仰ですが、法人格のない私的な団体です。健軍売店会長の甲斐憲明氏を連合会長に、現在は九州・沖縄の陸・海・空自衛隊売店会で元防商連会員の皆様46名が在籍されています。本会の目的は「会員同士の意志疎通を図り親睦を深めるとともに、会員の力を結集し、自衛隊員にとってのより良い売店作りを目指し、自衛隊の福利厚生に寄与する」ことです。趣旨にご賛同頂ける全国の元防商連会員の方などで、入会を希望される方または、詳細を知りたい方がございましたら、事務局長までご連絡頂きたくご案内申し上げます。
事務局長連絡先は
Eメール‥baitenrengo.sec(アットマーク)cnc.bbiq.jpです。
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北部航空方面隊准曹士先任 准空尉 池邉幸一
先任集合訓練時等に、隊員がパワハラが怖く後輩指導ができなくて悩んでいると、耳にする事がありますが、それは指導するのが面倒で、自分さえ良ければ後輩の指導などしなくてもいいと思っているのではないかと感じることがあります。指導とは、ある目的、方向に向かって教え導くこととあります。この意味から指導者は、指導を躊躇するべきではありません。それから、怒ると叱るの違いを理解しないとだめです。「怒る」が、何の目的もなくただ相手に自分の感情、イライラをぶつけるだけであることに対し、「叱る」は、「相手の成長を促す」「次の改善に繋げる」という教育的な目的であります。
一度は耳にしたことがあると思いますが、連合艦隊司令長官 山本五十六の教育における名言です。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」後輩や部下を持つ指導者ならば、響く言葉だと思います。これを実践していってほしいと思います。
雪月花
大型連休に高知の生家に帰った。つつじ、しゃくやく、ヤマブキなどが新緑の山肌に張り付くように咲き乱れていた。そうだここが自分の生まれた所、自慢の桃源郷なのだ。山の起伏や川の流れも昔のままで変わっていない、懐かしさでメガネが曇る。だが級友や在所の友人たちと話をしていくうちにここでも人口の流出が大きな問題になっている事を知らされた。この地区は高知県と愛媛県の県境にあり両県の子どもが通う小中学校は世界一校名の長い学校として以前にも当欄で紹介したことがあった。この学校が廃校になるかもしれないということだ。筆者が通っていた頃の昭和20年代には小学校で1学年30人、全校で180人を数えていた。日本の経済成長に反比例して生徒の数は急激に減っていった。現在では小学校で8人(教職員6人)中学校で9人(同10人)となっており、2年後には中学校入学はゼロとなる。地元の人たちは地区を出て行った人たちに子どもを通わせるように説得し昨年は3人の小学校入学式が行われた。中学3年生は3人しかいないものの昨年、ソフトテニスで全国大会5位という成績を収め注目された。マンツーマンの教育効果を期待して地区外からの通学がこの学校を維持しているようにも見える。学力テストの位置付けや近隣高校での学力位置からみても存在感があり、不登校の受け入れや山村留学などでなんとか残したい。昔からこの地区ではお寺や神社の行事とともに学校行事が生活の流れになっていたことからも地区を挙げて存続に取り組んでいる。しかし人口減という日本の構造的な問題であり高知県の人口は大正時代に逆戻りしたと言われ確かに厳しいものがある。それでも地区の人たちは学校存続に必死なのだ。世界で一番長い学校名としてギネスブックに申請した校名は「高知県宿毛市愛媛県南宇和郡愛南町篠山小中学校組合立篠山小学校(中学校)」。これをローマ字にすると?
読史随感
神田淳
<第101回>
エネルギーが決定的に重要である
国の安全保障にエネルギーが致命的な役割を果たすことは、過去の歴史より明らかであるが、ウクライナ戦争においてもネルギー問題が露出している。
欧米諸国はロシアに経済制裁を課しているが、ドイツは米英ほどの強い対ロシア制裁を取れないでいる。ドイツがエネルギーを多くロシアに依存しているからである。欧州諸国はパイプラインでロシア産天然ガスを輸入しているが、ドイツのロシア依存率は高く、戦争前、国内天然ガス消費の55%をロシアから輸入していた。これが途絶えると、ドイツの国民生活と経済に壊滅的な影響が出る。
ドイツは再生可能エネルギーの最大限の導入、2022年までに脱原発、2030年までに石炭火力のフェーズアウトというエネルギー政策を進めてきた。太陽光、風力発電といった出力不安定な変動性再エネのバックアップと、原子力・石炭の代替に期待されていたのが、ロシア産の天然ガスである。そのための切り札が、ロシアからドイツに直接ガスを供給するノルドストリーム1(2011年開通)と完成したばかりのノルドストリーム2であった。ノルドストリーム2が稼働すれば、ドイツのロシア天然ガスへの依存度は70%にも達するが、ドイツのショルツ政権はアメリカの圧力等もあって、ノルドストリーム2の承認を停止した。ドイツはウクライナ戦争勃発後エネルギー政策を見直し、天然ガスだけでなく石油のロシア依存度も減らしている。5月8日G7はロシア産石油の禁輸に踏み切ったが、段階的禁輸とはいえドイツにとって大きな痛みを伴う決定である。
人類の歴史は戦争に満ちているが、エネルギーがしばしば戦争の原因となってきた。日本が太平洋戦争に突入したのも、石油に追いつめられての決断だった。日本と敵対するアメリカは、1941年日本向けの石油輸出を全面的に禁止した。石油の90%以上をアメリカからの輸入に頼っていた日本は追いつめられて窮鼠となり、対米戦争を決断した。そして戦争は石油資源を求めて南進する戦争となった。
エネルギーは人の生存の基礎である。エネルギーがなければ人間の生活は成り立たない。エネルギーがなければ市民生活も経済活動も止まってしまい、生存が脅かされる。エネルギーが安定的に、低廉な価格で供給されることは、国民にとって決定的に重要なことである。こうしたエネルギー安全保障は国民の生存に直結するため、国の安全保障に直結する。
私は今の日本のエネルギー政策を、安定・低廉供給という本来の政策方向に軌道修正する必要があると考えている。まず、原発の運転再開をどんどん進めるべきである。2011年の大震災前、日本には原発54基が存在し、電力需要の3割弱を供給していたが、現在10基が稼働し、電力需要の6%を供給しているに過ぎない。日本の原発の安全性は震災後十分向上しているが、原子力規制委員会が慎重に過ぎ、運転再開が進まない。運転できる多くの原発が止まっているために、日本経済の衰退が止まらない。新規原発の建設を含め、すぐれたエネルギーである原子力の活用が、国民生活を豊かにし、安全保障をもたらすエネルギー政策である。
次に、無理な地球温暖化対策の修正である。日本は2030年までにCO2を46%削減するエネルギー基本計画を決めたが、この削減計画には無理がある。この計画は電気料金の高騰をもたらし(すでに相当高騰しているが)、安定供給を損なう可能性が高い。日本経済を弱め、国民生活を貧困化させるだろう。地球温暖化対策といえども、現実的で技術的に可能な、国民生活を守るエネルギー政策でなければならない。
(令和4年5月15日)
神田 淳(かんだすなお)
元高知工科大学客員教授。著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。