自衛隊ニュース

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チーフWAC指名式
働きやすい職場へ

<5旅団>

 第5旅団(旅団長・鳥海誠司陸将補=帯広)は、4月1日、帯広駐屯地において、「第5旅団チーフWAC(以下「CW」)指名式」を実施した。

 旅団は、北部方面隊の女性隊員服務指導(相談等)態勢に係る施策の実施に伴い、指揮系統上の指揮官を補佐する態勢の確立を重視した第5旅団CW制度を実施している。

 指名式では、旅団CWに司令部付隊の丸山曹長、幹部CWに司令部会計課の河野2尉をそれぞれ指名し、第5旅団における全ての女性自衛官に係る制度、勤務環境等、女性活躍推進全般に関する情報を共有して、女性自衛官が、男性自衛官とともに益々活躍できるよう推進を図っていく。

 旅団CWに指定された丸山曹長は、「女性活躍推進には、男女問わず働きやすい環境であることが不可欠。女性隊員が働きやすいと感じられる職場環境づくりのために力になりたい」と話し、女性隊員にとって「夢と希望」のある魅力的な職場の整備に向けた意気込みを見せた。

女性自衛官会同
新体制でパワーアップ

<32普連>

 第32普通科連隊(連隊長・榧野道彦1陸佐=大宮)は3月30日、女性自衛官会同を行った。第32普通科連隊最先任上級曹長の西上准尉は会同を始めるにあたり、「女性活躍推進の加速・拡大に向けて、連隊に所属する女性自衛官の更なる融和団結を図り、みんなで連隊を盛り上げていこう!」と話した。

 会同では、改めて自己紹介を行い、隊員同士の新たな一面を発見するなど貴重な時間を過ごし、新たな試みとして業務の円滑化を図るために最先任上級曹長室に専属の女性自衛官(業務陸曹)を配置し、連隊はさらにパワーアップして新年度を迎えた。

 今後も定期的に会同を実施し、さらに融和団結を深めていく。

雪月花

 神田淳(かんだすなお)さんによる本紙の「読史随感」が5年目に入り連載100回を迎えた。連載を始めて1年経った頃から神田さんの経歴について問い合わせが続いた。タイトルは「読史随感」だが内容は多方面にわたり、人間の生き方とか松下幸之助研究やいわゆる「南京大虐殺」の真相、最新号ではロシアは歴史的に弱者意識があり西欧諸国に対して被害者意識を持つ国であるなど、歯切れもよくレパートリーが広いからファンは多くなっている。先日お会いした時には皆さんに提供したい材料はまだいっぱいありますよと笑っていた。神田さんは1945年大分県生まれ、旧通産省のキャリアで現役の時は主としてエネルギー行政に従事し、JETRO(日本貿易振興機構)に出向中にはオーストリア・ウィーンセンター所長、退官後はガス会社でエンジニアとして実務を続けながら工学部(東京大学)の対極にある歴史を勉強したそうだ。筆者は神田さんが15年前に著された「すばらしい昔の日本人」(文芸社)を読ませていただいたが、取り上げた7人(福沢諭吉、上杉鷹山、中江藤樹、親鸞、空海、聖徳太子)を誠に丁寧に研究し尽くしている。空海が四国の海岸や山林で真言を百万偏唱える苦行を行った時、幾つもの奇跡が起きたこと、遣唐使で渡った唐でのエピソードや禅定(座禅)のままたくさんの弟子たちに囲まれて息を引き取ったこと、また上杉鷹山は平素から質素倹約を旨としていたから天明の飢餓も乗り越え藩財政の立て直しを成功させたなど丁寧に書いている。お陰で自分の歴史知識に覆いかぶさっていた雲が取り除かれる思いで読みふけったことだった。読者の皆様には150回、200回に続く「読史随感」を是非お楽しみください。

第1回偕行社慰霊祭開催

 4月17日、偕行社(森勉理事長)の発祥の地でもある東京都九段にある「靖國神社」において第1回偕行社慰霊祭が厳かに開催された。

 これは、国家防衛のために尊い一命を捧げた陸軍将兵、海軍将兵、学徒および女性挺身隊員などの英霊を慰霊・顕彰し、安らかに神鎮まることを祈念するとともに感謝の念を捧げるために開催されたもの。また、日清戦争終結の日でもあるこの日を陸軍元将校から陸自元幹部に継承される新たな偕行社としての出発として「第1回偕行社慰霊祭」の日に選んだものである。

 式は島田和久防衛事務次官を始めとする来賓、陸軍士官学校・幼年学校、御遺族及び元陸自幹部等約200名が参列し、祭主である森勉理事長・山口建史宮司による挨拶から始まり、トランペットの国家吹奏、祭主による祭文奏上と続いた。

 祭文では「国民一人一人の『国を護る志』の大切さの普及、慰霊・顕彰が国家として斎行されること」を提言した。その後、本殿での玉串拝礼などをトランペット吹奏の中行い、滞りなく閉会した。

 偕行社は、陸軍士官学校・幼年学校等の会員の高齢化に伴い、元陸自幹部への世代交代の真っ只中であり、陸軍将兵などの御霊(みたま)に哀悼の意を表するとともに、国民の防衛意識の啓蒙を図り、陸上自衛隊を支援する組織として、後世に受け継いでいく決意を新たにしたものである

由布市と隊員家族安心協定

<湯布院駐屯地>

 湯布院駐屯地(司令・前田尚男1陸佐)と大分県由布市(相馬尊重市長)は3月30日、大規模災害時の緊急登庁支援策「市と隊員家族安心協定」を締結した。

 この協定は、湯布院駐屯地業務隊と由布市防衛施設対策室が中心となり、駐屯地所在部隊が災害派遣活動を行う際に、派遣隊員が安心して任務を遂行できるよう調整を進めてきたもので、本協定の締結により、由布市内の保育施設における隊員の子ども預かり及び福祉施設における隊員の要介護家族預かり支援を受けられることとなった。なお、子どもの預かりについては、駐屯地が開設する子ども預かり所または由布市の保育施設の選択が可能となる。

 また、駐屯地の子ども預かり所の運営に関しても、由布市から設置及び運営に係る助言・指導受け、並びに自治体の実施する研修会への定期的な参加が可能となった。

 協定書への調印後、相馬市長は、「大規模な自然災害などが発生した際、派遣される隊員の方が被災地で安心して支援活動を円滑に行うことができるよう協力していきたい」と述べた。これに対し前田司令は、「近年未曾有の災害が頻発し、また夫婦ともに自衛隊勤務の家庭も増加する中、隊員家族を支援する制度の充実が課題となっていたが、由布市の協力が得られることで、隊員が任務に集中する態勢をより一層充実させることができる。このような環境を整えて頂いたことに感謝するとともに、地域の皆様のご期待にしっかり応えていきたい」と謝意を示した。

読史随感

神田淳
<第100回>

信念の政治家 マーガレット・サッチャー

 世界に先駆けて産業革命を興し、19世紀、世界に冠絶した国力と経済力を誇ったイギリスは、20世紀に入るとドイツやアメリカから追い上げられ、二つの世界大戦には勝ったものの、1970年代には世界から「英国病」といわれるほど衰退が顕著となった。1979年から11年間首相を務めたサッチャーは、国の長期衰退に歯止めをかけ、イギリス経済を復活させた。

 サッチャーはイギリス経済の衰退の原因が、イギリスの社会主義政策にあると喝破した。「ゆりかごから墓場まで」をうたった手厚い福祉政策、歳出の肥大化、国有化された主要産業、全国炭鉱労働組合などの強すぎる労働組合、行きすぎた累進税率による高い所得税。こうした社会主義政策が国民の勤労意欲を減退させ、国に依存する体質を増長させ、民間の企業活力を削いでいる。サッチャーは政府を肥大化させる高福祉を抑制し、国有企業の民営化を進め、規制緩和を行い、民間企業が自由に活動できる場を増やし、経済の活性化を目指した。それは「小さな政府」を指向する「新自由主義」政策であった。

 サッチャーは社会主義そのものを悪とみなした。共産主義や社会主義による運営の失敗を見て、今なお、「主義は間違っていなかったが、やりかたがまずかった」という者が日本にもいるが、サッチャーはそのような考えを否定し、確信をもって社会主義そのものが誤謬であるとした。サッチャーは言う。社会主義の運営は必ず膨大な官僚機構となる。官僚機構は一握りの人間の命令に従って動き、国民の大多数に選択の自由などの自由権のない、倫理に背いた制度である。自由主義経済の方に倫理的基盤がある。さらにサッチャーは、社会主義を支える情念に嫉妬があることを看破し、人間の劣情の嫉妬を根底にもつような社会主義に倫理的基盤はない、と言いきった。

 サッチャーの倫理面からの社会主義批判は画期的なことだった。その頃イギリス社会はなお社会主義を掲げる労働党に、理想と「知的、倫理的」な優越性があると考える人が多かった。サッチャーはこれを否定し、保守党の自由主義に倫理的優位性があると明言したのである。

 サッチャーが信念をもって主張し、実行した政策理念は決してイギリスで革新的なものではない。それはイギリスの最も良き伝統的倫理であった。宗教的に敬虔であり、勤倹力行、自助努力、正直、律儀をモットーとして生きる、百数十年も前にスマイルズが著わした『セルフヘルプ(自助論)』に登場する多くの人物の体現していた倫理に他ならない。

 サッチャーの改革でもう一つ見逃せないものに、教育改革における「自虐的偏向史観」の是正がある。当時、学校でイギリス帝国主義を非難する歴史教育が行われていた。サッチャーはこれも英国病であると見て、イギリスの歴史における光をきちんと学習することを含め、自虐的偏向教育を改めた結果、イギリスで自国を誇りに思う人が増えた。

 現在、日本経済は平成以降長期にわたって衰退し、世界で「日本病」という言葉も聞かれる。日本は「英国病」を克服したサッチャーになお学ぶものがあると私は思う。特に、自虐史観を改め、自国の歴史に誇りを取り戻したこと、そして改革の理念を外の思想に頼らず、自国の歴史と伝統に立脚したことなどを学ぶことができる。日本もイギリスに負けない改革の叡智を生むすぐれた歴史的伝統をもつと信じる。

(令和4年5月1日)


神田 淳(かんだすなお)

 元高知工科大学客員教授。著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。

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