自衛隊ニュース

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住宅火災で人命救助
隊員2名が消防から感謝状

 陸上自衛隊補給統制本部(本部長・大塚裕治陸将=十条)の阿部将2陸曹と海自補給本部(本部長・小座間義隆海将=十条)の宮田輝一2海曹はこのほど、東京都北区中十条1丁目で発生した住宅火災において、2名の救出及び避難誘導を行った功績で、王子消防署の山崎消防署長から東京消防庁消防総監感謝状が贈られた。

 阿部2陸曹と宮田2海曹は2月18日朝、通勤途中に燃えている民家を発見するや、宮田2海曹は直ちに119番通報をし、近隣住民に避難を呼びかけ安全な場所へ誘導。また阿部2陸曹は危険を顧みず家族と共に、火災現場の中に残っていた2名を無事救出した。

 表彰を受けた阿部2陸曹は「住民が無事で本当に良かった」宮田2海曹は「日頃の訓練の成果が発揮でき良かった」と述べた。

陸自高等工科学校卒業式
同期との絆を胸に自衛隊生徒が旅立つ

 陸上自衛隊高等工科学校(学校長・岩名誠一陸将補=武山)は、3月19日、防衛副大臣鬼木誠衆議院議員が臨席するなか、陸上幕僚長吉田圭秀陸将立ち会いの下、第65期生(327名)の卒業式を挙行した。

 式は、新型コロナウイルス感染症の影響から保護者の参列を見合わせたため、晴れの日を心待ちにしていた卒業生の家族は、その様子をYou Tubeのライブ配信で見守ることとなった。

 学校長は式辞で、「本校で培った資質や識能を基礎として、更なる飛躍を期待している。文字通り寝食をともにした同期生は、かけがえのない一生の宝である。生涯にわたり、同期生の絆を大切にしてもらいたい」との言葉を餞として贈った。

 また防衛副大臣は、「陸上自衛官として新たな一歩を踏み出すに当たり、その崇高な使命をしっかりと理解しつつ、生徒の誇りを胸に深く刻み、職務に励むことを切に願う」と訓示した。

 その後、在校生代表中川翔馬生徒による送辞、卒業生代表深澤麻央生徒による答辞、校歌斉唱と続いた。

 答辞では、卒業生・在校生ともに涙をうかべ、本校で過ごした3年間が充実したものであったことを印象づけた。

 引き続き、学校グラウンドにおいて、在校生による送別パレード及び本校出身者の操縦による祝賀飛行が披露され、晴れの門出に花を添えた。

 卒業生は、4月1日付で陸士長に任官し、生徒陸曹候補生課程(各陸曹教育隊)に進み、陸上自衛官としての第一歩を踏み出すことになる。なお、一部の生徒は防衛大学校、海上自衛隊・航空自衛隊の航空学生に進む。


ノーサイド

北原巖男

コーヒータイム

 一杯のコーヒー。

 突然ですが、隊員の皆さん・ご家族の皆さんそして本紙読者の皆さんにとって、コーヒーとの係わりはどんな感じでしょうか。

 「味には結構うるさいんだ。香りとコクが大事だ、酸味は嫌いだ」とか「酸味が好き」、「苦いのは苦手」などなど、いろいろとうるさい方でしょうか。

 それとも、サーブされたコーヒーは何でも、それなりに穏やかに美味しく味わっている方でしょうか。

 ひょっとすると、コーヒーよりも紅茶派かも知れませんね。

 「いやいや、やっぱり日本茶でしょ」と断言する皆さんも多いと思います。

 僕の両親は、「あんな黒い飲み物は体に良くないに決まっている。癌になる。子供には飲ませるな、バカになるぞ」と信じて疑わず、生涯「体にいい日本茶」で通していました。

 いずれにしても、コーヒーはあくまでも嗜好品の典型ですので、コーヒーに対する距離感は一人ひとり異なって当然です。

 僕はコーヒーは好きですが、正直、コーヒーの味はよく分かりません。いつも「このコーヒーはこういうコーヒーなんだろう。これはこれでいい」と、結構楽しんで来ました。

 そんな僕でしたが、小さなコーヒー専門店に入った瞬間、あの温かく、甘い、ふっくらとした香りに全身が包まれたときの、何とも形容のしようのない幸せ・感激は忘れません。病みつきになりました。

 頑固なこだわりを持っていそうなマスターが、真剣かつリズミカルにコーヒーを淹れている姿。「コーヒー道」という「道」があるかどうか分かりませんが、そんな言葉が浮かんで来ました。更にマスターの後ろの棚に並ぶさまざまなコーヒーカップ。どのカップで淹れてくれるんだろう。お客さまを見て選ぶのかなぁ、などと勝手に思いを巡らして待つのも楽しいひと時でした。

 こうした全てが溶け合って、目の前にサーブされたコーヒーは、「美味しい!」以外に形容のしようが無く、まさに至福の時。

 と同時に湧き上がってきたのは、自分もマスターになろう、「コーヒー道」を極めよう、との決意でした。

 爾来、僕はコーヒーを飲むことよりも、美味しいコーヒーを淹れようと、毎朝、丁寧に、真剣に、全精力を投入して来ています。年数だけは超ベテランの域です。

 しかし「コーヒー道」の道は厳しく、家庭用焙煎機は何台も使い壊し、いろいろなミルを購入するも結局いつも使うミルは限られ、コーヒーカップはリサイクルショップも活用、その数は留まるところを知らず、家人の憤りを買っています。

 水こそ命だと、何年も名水百選の「お鷹の水」を汲みに通うこともしましたが、自家用車を手放してからは、水道水を使用しています。両者の差異は分からないままでした。

 およそコンスタントに均質な美味しいコーヒーを淹れる域に達したとの実感は全くありません。ふと、あの喫茶店のマスターは実感されているのだろうかと思いたくもなります。

 先日完結したNHKの朝ドラ「カムカムエヴリバディ」。

 大部屋俳優の伴虚無蔵(松重 豊)さんが、主人公のひなた(川栄李奈)に助言した言葉に、僕自身も勇気付けられました。曰く、

 「日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備えよ」

 ドラマの中では、その後ひなたはNHKからラジオ英会話番組の講師をオファーされ、受けるべきかどうか迷っているときに、「条映太秦映画村」で虚無蔵さんと久しぶりに再会します。

 いつもの着流し姿で木刀を肩にした彼は、「今日も撮影ですか」と尋ねたひなたに、「いかにも。されどその前に後進の指導が控えておる」と応答。

 そして、「そなたが鍛錬し培い身につけたのはそなたのもの。一生の宝となるもの」と話し、「されど、その道は分かち合えるほどに輝きが増すものと心得よ」と激励されました。

 常に国民と共にある国民の自衛隊員として、日々、後進の指導や人材育成をはじめ、種々鍛錬を続けている全国の自衛隊員の皆さんの中にも、改めてこれらの発言を感慨深く受け止められた方々がおられるのではないでしょうか。

 僕は七輪と炭を使った生豆の焙煎からにこだわっています。金網のザルの生豆を手のスナップを聞かせて焙煎するのですが、虚無蔵さんの励ましを背中に感じながら、いつの日にか隊員の皆さんや本紙読者の皆さんが、オンリーワンのコーヒーを「美味しいね」と笑顔で味わっていただける機会を夢見て鍛錬を続けて行きます。

 もちろん、東ティモールコーヒーをサーブ致します。

 東ティモールの昨年の品評会でベストテンに入った標高1500mのマウベシ村産のカフェティモール。ここに至るまでには、現地で20年間にわたりひたすら村の生産者の皆さんの真の自立を図り、彼らと共に品質アップに懸命に努めて来られた一人の日本人女性(伊藤淳子さん)の鍛錬、大きな存在があります。(ご参考‥2022年3月20日付け東京新聞・中日新聞社説「東ティモールと日本」)


北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事

自衛官にとっての「人生100年時代」(8)

「+アルファ」が選択肢を広げる

「この道一筋」の限界を知ろう

 前回、「人間としての成長」を目指す上で、「自衛官+アルファ」の「アルファ」が大事ということに触れたが、その細部について取り上げよう。

 先日、「業務管理教育」で再就職中のOBが「自衛官として勤務をしっかりやっておれば資格など必要ない」と講話していると聞いた。また、割と自衛隊に理解のある有識者がメルマガで同様の趣旨のことを書いていた。

 再度強調しておきたいが、自衛官の資質や経験が "売り" になるのは、「退職直後の再就職」、特に、自衛隊と関係の深い企業等に援護組織のお世話で仕事を得る場合(だけ)である。

 最近、民間企業においても「入社以来、この道一筋で育ってきた人は、どんなに頭が良くて優秀でも視点を高めようがない」とされ、人材育成のためには様々なポストを経験させ、苦労をさせることが大事だと強調されている。

 長い間、自衛官として様々な要職を経験し、資質を蓄積したとしても、世間の基準からみれば「この道一筋」であり、時代や社会の急激な変化にも追随できず、視点が狭く応用がきかなくなる場合がある。それが問題なのだ。

民間人が理解する「+アルファ」

 すでに述べたが、企業側の人材確保は「ジョブ・ファースト」、会社にとって必要な人材を求人する傾向が益々強くなっている。

 保有資格や職務経験など会社のニーズに一致する人材が見つかれば、元自衛官の経歴などは書類段階で振るい落とされ、面接のチャンスすらない。元将官や1佐クラスであってもそれが現実である。

 チャンスがあるとすれば、経営者や人事担当が元自衛官としての "未知の人材" に「チャレンジ精神」や「おもしろさ」を感じ、会社のニーズに応えてくれるかも知れないとの "期待感" を持つ場合であろう。

 書類上で自衛隊の実績などをいくら強調しても、民間人はそれらを理解できない。理解して評価するのは、民間人も共有する「資格」や「スキル」そのものに加え、職務経験がなくとも、自衛官として多忙な勤務の中で、視野を広げ、世の中が求める資格やスキルの取得に奔走した、その積極果敢でチャレンジングな "生き様" である。

 繰り返すが、自衛官としての誇りや経験を捨てる必要は全くない。しかし、それをもって「この道一筋」の生き方に執着しないことが大事なのだ。

 定年後も長い人生は続く。その意識と準備がなければ「選択肢」は狭くなる。選択肢を広げ、人生の晩年を面白くするのが「+アルファ」なのである(図参照)。その細部について次号も続けよう。


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