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突撃!隣のクラブ

陸戦模型製作部②

大盛況!第1回陸模展

 4月15日号に続く第2回目です。


陸模展を初開催
「10年は続けていきたい」
ゲッキー:初開催は準備が大変だったのではないですか。
西山部長:開催を決意した時は部員がほとんどいなかったので、作品が集まるのか心配でしたが、人を集めて何かを成し遂げる事が好きなので、準備自体は楽しかったです。期間はだいたい3カ月から4カ月程度だったでしょうか。
ゲ:陸自広報センターでの開催、インパクト大です。
西:陸自を代表する模型同好会として「りっくんランド」で開催すれば、参加者にも喜んでもらえるし、広報活動にも寄与できると思いました。
ゲ:当日は大盛況でした!
西:初めての開催で若干うまくいかないこともありましたが、来場者も多く参加者にも喜んでもらえたので、引き続き10年間は続けようと思います。
ゲ:同好会の活動が職務にも役に立っていますか。
西:部員の活き活きと活動している姿を見て、自衛官のワークライフバランスの推進に役立っているのかなと思います。また、一部の広報活動に寄与できていると感じています。逆に、私としては職務経験で得た企画力や実行力が、同好会活動を牽引することに役立っています。
ゲ:最後に読者へメッセージをお願いします。
西:全国の模型を趣味とする自衛官の皆さま、模型に少しでも興味のある自衛官の皆さま、「陸戦模型製作部」に入部してみませんか。初心者大歓迎ですよ!
ゲ:陸模部の益々のご発展を祈念しています。ありがとうございました。
ルーキー賞の高橋さん
「作品には愛と憎しみを込めています」
 2月23日には出展作品の中から54作品でコンペを開催。一般参加の部で5件、陸戦模型製作部で2件が表彰されたよ。陸模部の受賞者は、優秀賞がモデラ‐ネーム・波刀射亜さん、ルーキー賞が高橋さん。
 ルーキー賞の高橋さんの作品は、本格的に模型製作を始めて1年程度とは到底思えないクオリティーでびっくり。作品には相当な思い入れがあるようで…。
ゲッキー:この重迫けん引車、妙にリアルですね
高橋:10年くらい前に、重迫撃砲競技会で優勝したときに分隊長として乗っていた車両なんです。助手席側ドアの泥は、私が焦って転んでぶつかったときの跡なんですよ。
ゲ:そこが一般のモデラーさんと違うところですね、
実体験を元に製作している。
高:当時を思い出しながら作りました。「愛と憎しみ」を込めて…(笑)
ゲ:模型製作を始めて良かったことはありますか。
高:仕事で以前よりも細かい部分に目が行くようになり、異常等に気づきやすくなりました。装備品だけではなく、人に対しても注意深く見るようになりました。観察力が向上したことが模型製作を始めて良かったことですね。
ゲ:趣味が仕事にも活かされていて素晴らしいですね。ありがとうございました!<おわり>

読史随感<第171回>
神田 淳

詐欺、窃盗その他の犯罪について

 近年、詐欺が増加している。警察庁Webサイトによると、2023年の特殊詐欺の件数は1万9038件(対前年+8・4%)、被害額453億円(対前年+82億円)で、前年に比べて件数、被害額共に増加している。特殊詐欺とは、オレオレ詐欺、預貯金詐欺(口座やカード情報を騙し取る)、架空料金請求詐欺、還付金詐欺など、不特定多数から現金等を騙しとる詐欺の総称。警察庁によると、詐欺で最初に用いられるツールは電話が約8割、インターネット(メールメッセージやポップアップ表示)が約2割となっている。これは生活実感と一致する。数年前から私は電話とインターネットに不安を覚えるようになった。

 詐欺は増加しているが、その他の犯罪はどうだろうか。犯罪白書(2023年)によると、窃盗は、戦後最多(237万7488件)を記録した平成14年をピークにして以後減少に転じ、令和3年まで毎年戦後最少を更新し続けていたが、令和4年は40万7911件で、前年比2万6142件の増加となった。殺人は、平成16年より減少傾向にあり、令和4年は令和3年に引き続き戦後最少を更新し、853件(前年比21件減)であった。強盗も、平成16年から減少傾向にあったが、令和4年は戦後最少を更新した令和3年からわずかに増加し、1148件(前年比10件増)となった。

 至近年の窃盗、強盗の増加が気になるが、世界的にみると日本は非常に犯罪の少ない国である。同犯罪白書で人口10万人当たりの毎年の強盗発生件数を見ると、英国119・9件(2017)、フランス44・3件(2019)、ドイツ43・4件(2019)、アメリカ80・2件(2019)に対して、日本1・1件(2020)と非常に少ない。また殺人発生率(人口10万人当たり殺人件数)は、2020年、英国1・0人、フランス1・1人、ドイツ0・9人、アメリカ6・4人に対して、日本0・3人である。このように先進国の中でも日本は殺人が少ないが、途上国を含む世界はもっと多い。国連薬物犯罪事務所の統計から、他殺率(人口10万人当たりの他殺数)として、2021年ジャマイカ約52人、メキシコ約28人、コロンビア約22人、ロシア約7人、インド約3人、カナダ約2人といったデータが見られる。

 日本は世界的に犯罪の非常に少ない国と言ってよい。犯罪の少なさは日本の歴史において顕著である。江戸は非常に犯罪の少ない都市で、殺人事件は年に一度あるかないかだった。伝馬町の牢屋敷に囚人が全くいないこともあった。特に盗みの少なさは際立った特色で、戦国時代に来日したフランシスコ・ザビエルは、「キリスト教徒にしろ異教徒にしろ、日本人ほど盗みを嫌う人たちに会った覚えがありません」との書簡を残している。また、江戸時代に来日したスウェーデンの医師ツンベルクは、「この国ほど盗みのない国はほとんどないだろう。強奪は全くない。窃盗もごく稀に耳にするだけ。江戸への旅の間も全く安心して、自分の荷物に注意を払う必要がない」と、治安の良さに感心している。さらに時代を遡ると、5世紀中国の史書『後漢書』に「倭国(日本)には泥棒がおらず争いが少ない」との記録がある。

 日本は盗みを始めとして、なぜ犯罪が少ないか。江戸時代、盗みや放火の刑が非常に重かったことが言われる。それもあるだろう。日本人は長い歴史の中で、盗みを始めとする犯罪の少ない社会を築いてきた。それは、日本社会の伝統的体質になっていると言ってよいのではないだろうか。近年日本で詐欺など犯罪の増加が懸念される。犯罪の少ない社会が日本社会なのだとの自覚と誇りをもって、今後も犯罪のない社会を目ざして、犯罪を防止する努力を傾注していきたい。

(令和7年5月1日)

 

神田 淳(かんだすなお)

 元高知工科大学客員教授。

 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』(https://utsukushii‐nihon.themedia.jp/)などがある。

音楽隊に敬礼っ‼<第10回>
前陸上自衛隊中央音楽隊長 樋口 孝博

チリで中南米の演奏に触れる

写真=軍楽祭のフィナーレ


地球の裏側で

 陸上の音楽隊では、以前から欧米諸国やアジアの軍楽隊との交流は行われていましたが、中南米の軍楽隊とは全く接点がありませんでした。そこで今後の音楽面の交流に資するため、私が2017年に「チリ軍楽祭」のオブザーバーとして首都サンティアゴに派遣されました。地球の裏側の国ですから、時差は12時間で時計の針は日本と全く同じ! 飛行機の所要時間も長く、エコノミー症候群というものも初めて体験しました。通訳将校が話すには、チリソースの料理が名物というわけではなく、国の形がチリペッパー(赤唐辛子)に似ていることからチリと言うのだそうです。

 メキシコや南米のほとんどの国々は、300年に及ぶスペインの支配を受けていたため、参加国の言語はスペイン語です。そのため、日本人から見ると食事をともにしているチリ、メキシコ、コロンビア、アルゼンチンの軍楽隊長が、笑顔で言葉を交える姿はとても不思議な光景に感じられました。

 大統領を迎えた建国式典は、遥か彼方に4000メートル級の山々を背にした絶景のもとで行われました。パレードは各軍種50名規模の太鼓隊、ラッパ隊、軍楽隊の順で高らかに足を上げ勇壮に行進します。チリはプロイセンの影響を大きく受けており、制服も昔のドイツによく似ています。演奏する曲も、《ラデッキー行進曲》などのドイツマーチが多いのには驚かされました。なかでも目を見張ったのが「騎馬軍楽隊」です。ヨーロッパでは、馬に乗って楽器を演奏する軍楽隊の姿が見られますが、ここチリでも先頭で太鼓(ティンパニー)を叩く馬上の奏者がなんとも勇ましく感じられます。足で上手に馬を操りながら演奏を繰り広げるその姿は、日本で見られない圧巻の雰囲気を漂わせていました。

 隣接する国立公園に足を向けると、祝日のため数万人の家族連れが賑わっていました。特に広い馬場では「騎馬ドリル」が人気を博しており、ステージでは「カラビニロス(憲兵隊)軍楽隊」が軽快な音楽を奏でています。しかし、よく聴いてみるとスッペ作曲の《軽騎兵序曲》では、馬の足並みに合わせてテンポが設定されているようです。馬が普通に歩いているとテンポを遅くし、速く走りだすと速いテンポで演奏するのです。その姿を見て、「これが本来の《軽騎兵》なのか!」と感心しきりでした。パーク内では他の軍楽隊もさまざまな編成で演奏をしています。楽しそうな聴衆の表情を見ていると、そこに音楽隊が有るべき姿の一端を見た気がしました。

 通訳将校の案内で美術館も見学したのですが、肖像画を見て「この人は国に、こういう貢献をした」とか、「この旗はあの戦争で使われていた」と熱く語り、絵画は歴史の教科書であるということも認識させられました。しかしそれ以上に、先人たちを大切にするその姿に胸打たれるのでした。

 5年に1度開催される「チリ軍楽祭」は、出演者の総勢が400名に及ぶもので、企画・演出力はさすがに南国です。どの国も陽気なラテン系の歌やダンスが華やかさを増していました。なかでもスペインからの独立戦争のシーンは、〝建国記念日〟という忘れてはならない教育的な視点での演出だったのかもしれません。

 終了後のフェアウェル・パーティーでも、メキシコやアルゼンチンの隊員たちが延々とギターで歌い踊る姿を目にしました。せめてこのとき、私も日本の代表として《ソーラン節》や《炭坑節》でも披露しておけば、文化交流の輪に入れたかと思うと少々悔しい気がします。

 この派遣は出演することがなく見学だけであったため、何か物足りなさを感じました。やはり音楽隊として参加することが本懐で、それが日本のPRと国際交流、自身の技術向上に繋がるものであると思います。

 アンデスの山々に包まれた彼らの陽気な姿に接していると、地球の裏側の日本が遠く小さく感じられます。成田空港到着後の高速道路から見える、夕暮れの遠い富士山を見たときに、自分はなんて小さな存在であるかと感じさせられました。


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