自衛隊ニュース

ゲッキーのイラスト

航空医療搬送訓練装置領収・
大型救急車運用開始式典
<入間病院>

地上搬送と航空後送の能力向上

写真=航空医療搬送訓練装置前で


 自衛隊入間病院(病院長・加藤圭空将補)は、3月27日に航空医療搬送訓練装置領収及び大型救急車運用開始式典を病院地区において挙行した。

 本式典は、令和4年12月に閣議決定された三文書において航空後送間救護能力の強化が明記され、訓練環境の構築及び傷病者搬送を目的としてそれぞれ入間病院に導入されたことに伴い行ったもの。

 式典には、航空幕僚監部首席衛生官を始めとした来賓を迎え、病院長訓示、テープカット、装備品視察等を行った。

 病院長は「入間病院が中核となり、病院隊員はこれらの装備品に習熟し、教育訓練において指導的役割を果たすことを期待する」と力強く訓示し、全隊員が傷病者の地上搬送と航空後送の能力向上を図り、各種事態における医療対処能力の向上に努めることを誓った。

駐屯地オリジナル
デザインマンホール完成<座間>

写真=日本の武士とアメリカの騎馬隊が描かれている


 座間駐屯地(司令・橋口尚徳1陸佐)では、駐屯地オリジナルのデザインマンホールが完成し、駐屯地内に設置をした。

 マンホールのデザインは、座間駐屯地と在日米陸軍が共同使用をする陸上自衛隊の中でも特徴ある駐屯地であることから、日本の武士とアメリカの騎馬隊が描かれ日米の友好関係を象徴するデザインとなっている。

 このデザインマンホールは、駐屯地の新たなシンボルとしてデザインは同じだが、色が入ったカラフルなバージョンと色が入っていない通常のバージョンの2つが駐屯地内に設置された。また、両バージョンともに駐屯地の国旗掲揚塔の日米国旗を望む場所に設置されており、日米同盟最前線ならではの駐屯地風景となっている。

 座間駐屯地へ来訪される際は是非ご覧いただきたい。


営繕班職員が技官の魅力説明<朝霞>

写真=理解が深まった座談会


 朝霞駐屯地業務隊は、2月6日、朝霞駐屯地で開催された人事院主催の国家公務員OPENゼミを支援した。

 本ゼミは、技術系職員の業務を知ることで、職場で勤務するイメージを具体的に抱いてもらい、技術系職員の志望者拡大につなげることを目的に各府省で実施されているもので、営繕班長の宮澤技官と工事企画係の尾藤技官がゼミに参加した学生と保護者に対し、防衛省で勤務する技術系職員の魅力について説明した。

 宮澤班長は防衛省・自衛隊の組織や陸上自衛隊における防衛技官らの役割をはじめ、技官らが従事する様々な職務や勤務条件、人事管理制度などを具体的に説明し、技官の採用試験の流れなどについても紹介した。

 また、説明後の座談会では、尾藤技官がこれまで経験した職務の内容や部隊・隊員から感謝されやりがいを感じたことなどについて話をし、参加者からの質問に対しても丁寧に回答すると、参加者はより安心感が得られ理解を深めた様子で笑顔に包まれ、和気あいあいとした雰囲気の中でOPENゼミは終了した。

 宮澤班長と尾藤技官は「参加者と保護者の方に安心感を与えるとともに、防衛技官について理解を深めてもらうことができてうれしいです。是非、防衛技官に採用され我々と一緒に働ける日が来ることを楽しみにしています」と語った。

 朝霞駐屯地業務隊は「今後もこのような施策等には積極的に協力して、防衛省・自衛隊の魅力を発信し、防衛技官への受験意欲を向上させて技術系職員の確保につなげていきたい」としている。

海自4術校の史料室がリニューアル

写真=学校長が資料室を視察


 海自第4術科学校(学校長・松浦正裕海将補=舞鶴)は令和7年で創立50周年を迎えるにあたり、史料室をリニューアルした。

 史料室は、明治7年(1874年)に会計学舎、明治40年に海軍兵学校、機関学校とともに士官学校として設立された海軍経理学校の資料を中心として約150年に及ぶ伝統の継承を目的とし、平成27年10月に整備されたものである。

 史料室には海軍経理学校当時の教材や学生の日々の生活記録など、200点以上の資料が展示・保管されている。

 今回の改装のコンセプトは「タイムトンネル」であり、ルーツとなる史料を歩きながら見学する演出がなされている。また、主要なパネルには英語での説明を加え、国外からの訪問者にも対応できるようにした。

 史料室は舞鶴海軍記念館とともに休日に一般公開しており、10時から15時30分の間で見学が可能である。


ノーサイド
北原巖男

其の争いや君子なり

 東京の中心に近い湯島に、築地屛に囲まれ壮大な屋根をもつ堂々たる建物があります。いわゆる湯島の聖堂です。江戸時代は幕府の学問所であったことは良く知られているところです。

 この聖堂で毎日曜日、論語の素読の指導が行われていました。(今も実施されているかも知れませんが。)講師は漢学の泰斗の宇野精一先生(1910年~2008年)でした。誰でも参加できる市井の様々な人たちが学習する稀有な教場でした。もう相当昔のことになりますが、僕も宇野先生に親しく教えを乞うことが出来、素晴らしい体験に恵まれました。先生は大学者でありながらいつも温顔で、僕のような不肖の弟子も優しく導いてくれました。背筋を伸ばされ、凛とされた先生ですが、その人間味溢れるお人柄に魅せられた僕は、温かい語り口を通して伝えられる先生のお話しは一言も聴き逃すまい、そんな緊張感・ワクワク感を以て臨んでいました。古代中国の孔子もかくやと思われてなりませんでした。

 ある時は我が身と重なり赤面し、これを機に正さなければとの思いを抱いてみたり、またある時は他山の石として、これは忘れてはならないことだなぁと自分に言い聞かせたり等々・・・。新たな出会いがいっぱいでした。孔子には高名な弟子たちもいるけれども、そうではない僕のような人達も沢山いたのではないか、そんな思いをしながら親しみを感じていました。

 あるとき、宇野精一先生が、学生時代に弓道の愛好家であったことを知りました。それは、僕が防衛省・自衛隊を退官するまで任にあった「全自衛隊弓道連合会」会長の職を、西連寺 治会長から受け継いだ直後ではなかったかと思います。早速、理事長の本橋民夫教士7段と一緒に宇野先生のご自宅に押し掛けました。爾来、宇野先生は、僕たちをいつも温かく受け入れてくださり、弓道や漢学・日本語・社会・平和など様々な体験や思いを込められたお話を聴くことに恵まれました。

 そうした中で、「全自衛隊弓道連合会」のメンバーに贈ってくださった当時米寿(八十八歳)を迎えられた宇野精一先生の言葉は、今も脈々と引き継がれています。

 「其争也君子」(其の争いや君子なり)

 昨年2024年12月8日、明治神宮全日本弓道連盟第二弓道場で行われた「全自衛隊弓道連合会」主催の「第49回全自衛隊弓道大会」の実施要領冒頭にも、「其争也君子」は、これまで同様、次の現代語訳(一例)と共に掲載されています。ここで、「君子」は「真の人格者」と解釈しています。

 「真の人格者は、決して人と争うことはしない。唯一の例外は競射である。しかし、その場合でも始めから終わりまで礼に欠けることはなく、その態度は常にゆったりとしており、驕り高ぶることがない。その争いはどこまでも君子である。」

 その閉会式にて本橋民夫審判長は、大会を終え、再び全国の駐屯地・基地・機関等にて国民の負託に応えるべくそれぞれの任務に取り組む隊員を始め隊友等を前に、この言葉を贈って、慰労・激励しました。

 ところで、本年1月の「月刊 武道」(発行 公益財団法人日本武道館)に、高村正彦日本武道館長(元防衛大臣)とゴディバジャパン代表取締役社長のジェローム・シュシャン氏の新春特別対談「弓道から学び得たことを経営に活かす」が掲載されています。シュシャン氏は、29歳から弓道を始め、既に30年も続けておられ、現在、国際弓道連盟理事、錬士五段。師匠は故・浦上博子範士十段。

 対談の中で、氏は、「オフィスに「正射必中」の掛け軸を掛けています。何か迷ったときに、掛け軸を見て心を落ち着かせます。」と述べています。そして、「的に中(あ)てたいという気持ちが前に出過ぎると射がどうしても乱れます。正しい射に集中すると、自然と的に中(あた)るという教えなのです。正射だけで頑張ればよい、感動した教えでした。結果だけを追い求めても成績は上がらない。ビジネスも同じです。」「プロセスを大事にして最終的に人格の向上を目指す「道」という考え方は、ヨーロッパにはなかったように思います。」「弓道には理想の射があります。しかし同時に私たちには完璧な射を打つことはできないことも分かっています。このパラドックスが稽古を続けていける源泉でもあるのです。」「以前、浦上先生に言われましたが、審査は自分の調子、コンディションが悪くても行きなさいと、完璧な状態を待っていると現状維持に留まると言われました。」

 そして、前掲の宇野精一先生から頂いた「其争也君子」に通ずる「礼記射義」の中にある言葉に言及されています。曰く、「発して中らざる時は、則(すなわ)ち己に勝つ者を怨(うら)みず。反ってこれを己に求むるのみ。弓が中らない時、その原因を自分に求めなさい、という意味です。・・・「うちの商品が売れないのは、この不景気のせいだ」などと外部のせいにしている暇はありません。」(以上、いずれも、前掲「月刊武道」から筆者抜粋)

 本年12月7日に実施される「全自衛隊弓道大会」は、1974年(昭和49年)の第1回から数えて、第50回の記念大会。多くの全国の弓友の皆さんには、日ごろからの稽古に励んで頂きたいと思います。そして、弓道に関心を抱かれている皆さんには、この機会に是非、「全自衛隊弓道連合会」の門をたたかれ、真冬の明治神宮の杜で、ご自身の弦音を響かせてみませんか。

 各地の弓道部は、皆さんを大歓迎でお迎えすることと思います。(筆者は「全自衛隊弓道連合会」顧問)


北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


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