自衛隊ニュース

ゲッキーのイラスト

ゲッキーの
突撃!隣のクラブ

陸戦模型製作部①

「陸戦無双」を掲げ
陸自を代表する模型同好会へ

 こんにちは!防衛ホーム公式キャラクターの「ゲッキー」です。

 突然ですが、皆さん、余暇は何をしていますか?クラブ活動に参加するのも楽しいよね。あ、僕も入部できるのかな?よし、ちょっと見学に…ということで、今回は「陸戦模型製作部」さんにお邪魔します。隊員さんは模型好きが多いイメージがあるなー。2月に、朝霞駐屯地の陸上自衛隊広報センター「りっくんランド」で第1回陸戦模型製作部合同展示会(陸模展)が開催されていたから、潜入してみたよ!

 展示会は2月22日と23日。23日はちょうど体験搭乗イベントがあって、展示会場にもたくさんの人が訪れていたよ。2日間で約1000名が来場したんだって!所狭しと並んだ力作は約100作品。部員以外にも一般の人も出展していたよ。陸自の装備品はもちろん、海自の艦船や空自の戦闘機、かの有名なロボットアニメの作品までずらり。あまりにも精巧なので、顔をギリギリまで近づけて作品を堪能してしまったよ。

 こんなすごい展示会を主催した陸戦模型製作部の部長さんに話を聞いてみたよ。システム通信・サイバー学校の第1教育部に所属する西山2等陸佐に突撃!

ワークライフバランスの推進や陸自のPRに寄与

ゲッキー(以降 ゲ):模型製作部を始めたのはどうしてですか?

西山部長(以降 西):模型を趣味として始めて5年が経ったときに、仲間を集めて展示会をすると楽しいだろうなと思ったのがきっかけです。まずは一人で立ち上げて、昨年4月から部員集めを始めました。現在は全国で職種や階級も様々な自衛官が28名所属しています。令和7年度は50名を目標にしています。

ゲ:入口に「陸戦無双」と書かれたのぼりがありました。

西:部のスローガンです。陸戦のプロ集団として、陸戦系模型(AFVや陸戦系ガンプラなど)の製作ではどこにも負けないという意気込みを表しています。

ゲ:確かに作品からは熱い想いがひしひしと伝わってきました。

西:ありがとうございます。ただ、我々は模型を作るだけではなく、模型を趣味とする全国の自衛官相互の親睦を図り、この活動を通じてワークライフバランスを推進させ、また、陸上自衛隊の広報活動に参画・寄与することを目的としています。

ゲ:全国に部員がいると大変ですね

西:月に1回の定例会とSNSで連絡事項を伝えています。部員間でも「今、こんな模型作っています」「今度、こんなイベントに参加します」等、日々SNSを通じて連絡を取り合っています。また年に2回、部員が一堂に会して、模型製作会&懇親会を行う予定です。昨年12月の製作会・懇親会は盛り上がりましたよ。

ゲ:日々それぞれで製作に励みつつ、SNS等の情報交換や製作会・懇親会で交流を図っているんですね。今後の予定は?

西:5月16日から18日に開催される「静岡ホビーショー」の合同作品展に陸上自衛隊を代表する模型同好会として出展します。これは毎年参加していく予定です。また4月20日に開催される「ろうがんず杯」(部から4名、1次審査通過し本戦参加)と「GBWC」にも挑戦します!

※「ろうがんず杯」…俳優・石坂浩二氏が結成したプラモデルクラブのコンテスト。「GBWC」…ガンダムプラモデル(ガンプラ)の世界大会

ゲ‥陸自のPRにもなりますね!

(第2回に続きます)

読史随感
神田淳
<第170回>

マスメディアの偏向報道について

 近年、新聞、テレビ等マスメディアは偏向しているという指摘がネットでよく見られるようになった。マスメディアの偏向は古くて新しい問題であるが、新聞、テレビは偏向しており、軽々に信頼すべきものでないという国民の認識が、近年強まっているのではないだろうか。

 昨年来、斎藤元彦兵庫県知事のパワハラに対する県職員の告発に始まる一連の兵庫県政の混乱が、日本のニュースとなっている。議会で不信任された斎藤知事は議会解散でなく、再選挙を選択したが、予想に反して県民は斎藤氏を再度選んだ。新聞、テレビ等マスメディアの報道は、斎藤知事批判と、辞任すべきだとのコメントに満ちていたが、ネットでは違った意見が流れている。新聞、テレビ等は真実を伝えていないのではないか、という県民の意識変化が選挙結果に表れたと思われる。

 振り返れば、歴史は偏向報道に満ち、大きな偏向報道が社会を動かしてきた。1960年代、日本のマスメディアは北朝鮮を「地上の楽園」と報道した。メディアの北朝鮮称賛報道は、在日朝鮮人の北朝鮮への帰国を促進し、日本人妻を含む総数約10万人が北朝鮮に帰国した。脱北者の証言などから、北朝鮮が「地上の楽園」と真逆の世界であることが知られて、現在に至っている。

 歴史的な偏向報道の極めつきは、朝日新聞による一連の従軍慰安婦報道だろう。これは1982年朝日が、私は済州島の女性を強制連行して従軍慰安婦にした、という吉田清治のレポートを掲載したことに始まる。これが全くの作り話であることが判明した後も朝日は訂正せず、やっと2014年になって虚偽を認め、記事を取り消したが、その間、誤った慰安婦報道が世界に広がり、日本の名誉を大きく損なった。

 近年目立った偏向報道は、2010年代後半の森友学園問題と、同時期の加計学園問題の報道に見られた。共に複雑な経緯のある社会問題であるが、当時の安倍晋三首相が関係者に「特別の便宜」を図ったのではないかとの疑惑に焦点をあてた報道がなされた。加計学園問題では、国会で前川文科省前事務次官が、総理官邸の介入で行政が歪められたと証言。加戸愛媛県前知事はこれを否定し、むしろ、(文科省で)歪められた行政が安倍内閣によって正されたと証言したが、新聞報道は前川証言のみに注目する偏向報道となっていた。

 虚偽報道にまで至るような偏向報道はなぜ起きるのか。角度をつけた記事が社内で評価されること、社内のチェックが弱いことなどが指摘されるが、私はマスメディアが絶対権力的な機関になっていることが根本にあると思う。絶対権力は絶対に腐敗する、との格言どおり第四権力といわれるマスメディアも腐敗する。マスメディアは上から目線で独善的正義感をもって社会を啓発しようとする。こうした驕りをもつ記者が、不都合な事実は報道しないという報道の自由を駆使して偏向記事を書く。世間はそれをチェックできない。

 偏向報道は古くて新しい問題である。偏向の認識は人間の事実認識能力の根幹にかかわり、偏向報道を無くすことはおそらくできない。しかし、マスメディアの社会影響力は強大であり、健全な民主主義社会は健全な報道が不可欠である。我々は偏向報道の存在をよく知り、複数の情報源に当たるなどして報道を批判的に捉える力を養う必要がある。その意味で、ネット情報はマスメディア以上にフェイクが発生しやすく問題も多いが、マスメディアの情報独占を是正する力をもつメディアとして、その普及を基本的に肯定したい。

(令和7年4月15日)


神田 淳(かんだすなお)

 元高知工科大学客員教授。

 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』(https://utsukushii‐nihon.themedia.jp/)などがある。

音楽隊に敬礼っ‼<第9回>
前陸上自衛隊中央音楽隊長 樋口 孝博

世界の架け橋、博覧会

写真:太陽の塔


 いよいよ4月13日から大阪・関西万博が開催されますね。しかし、今から百年以上も前の1910年にイギリスで開催された「日英同盟記念親善博覧会」で、当時の陸軍軍楽隊が大活躍したのをご存じでしょうか?

 博覧会での聴衆は、「東洋の一小国がどの様な演奏をするのか?」といった好奇心程度のものだったそうですが、その演奏技術といいマナーといい誠に立派で、新聞各紙も競って賞賛し《グランド・プライス》まで獲得しました。

 それから約半世紀を経て日本で初めて開催されたのが、大阪での万国博覧会「エクスポ’70 」です。

 1970年の「日本万国博覧会」は、活気ある高度成長期を象徴したイベントとして日本中を沸かせました。各国のパビリオンや月の石、動く歩道などが特に話題を集め、21世紀の社会を創造してくれたのです。また、テーマソングの《世界の国からこんにちは》はその後も歌い継がれていますし、博覧会のシンボル「太陽の塔」は今でも当時の面影を残しています。開催期間中には、カラヤン/ベルリン・フィルやバーンスタイン/ニューヨーク・フィルなどとともに、イタリアの「カラビニエリ吹奏楽団」やイギリスの「スコッツ・ガーズ軍楽隊」、チェコの「近衛軍楽隊」らも来日し、国内の音楽界に大きな刺激を与えてくれました。そして自衛隊音楽隊も長期に及ぶ博覧会のなか、中央音楽隊、中部方面音楽隊、第3音楽隊らがファンファーレや各種イベントにおける演奏で華を添えました。特に皇太子殿下御夫妻をお迎えしてのナショナルデー「日本の日」には、陸・海・空セントラル・バンドが合同ドリルを披露し、観衆からも絶賛を博したそうです。しかし博覧会参加のために来日した国賓・公賓に対する羽田空港での特別儀じょうは、例年の数倍となる33回に及んだため、航空機の都合によっては早朝や夜間まで音楽隊が待機することもあったようです。

 1985年の「国際科学技術博覧会」とも称される「つくば万博」は、筑波研究学園都市(現在の「つくばエキスポセンター」)で開催されました。入場者は大阪万博や沖縄海洋博を超え、博覧会史上最高となったそうです。そこでは、開会式後の特設ステージにおいて陸・海・空セントラル・バンドの合同演奏会が行われました。また近年では「愛知万博/愛・地球博」とも呼ばれる「2005年日本国際博覧会」が開催されました。ここでの中央音楽隊は、EXPOドームにおける開会式ファンファーレのみを担当しました。

 音楽隊は博覧会という国際舞台に華やかな印象を与えるため、凛々しいコスチューム姿での演奏など多くの魅力を放って参加します。しかし過去の参加をまとめてみると、年々コンパクトになっているのがわかります。

・1910年、日英親善博覧会…毎日の野外コンサート、帰国後天皇陛下に拝謁

・1970年、大阪万博…ファンファーレ、合同ドリル、中方管内音楽隊の演奏

・1975年、沖縄海洋博…参加なし

・1985年、つくば万博…合同演奏、東方管内音楽隊の演奏

・2005年、愛知万博…ファンファーレ

 この現象はオリンピックも同じです。1964年の東京大会で栄華を極めた音楽隊の出演は大会ごとに減少し、「東京2020」に至っては参加要請すらありませんでした。イベントでの音楽や演出は多様化され、アナログの生演奏よりもデジタル化された演奏へと時代は変化していったのでしょう。

 最新テクノロジーやミュージシャンの歌声もイベントを盛り上げてはくれますが、国の音楽隊が参加するということがその価値観を上げるものだと思います。他に類を見ない航空自衛隊の「ブルーインパルス」と同様、音楽隊もステータスシンボルのひとつです。これから始まる大阪・関西万博では、音楽隊が華やかな演奏を数多く世界に届けてくれることを期待します。


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