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基地業務隊長の右腕に

基地業務隊総括班 班長 黒木清敏1空尉

 基地業務隊総括班は、人事、庶務、保全等、業務隊各小隊・班から上がってくる各種業務を全体的にとりまとめる部署だ。他にも郵政業務、官舎の管理等も行っている。その基地業務隊総括班で班長として指揮を執るのが、施設小隊長も兼ねる黒木清敏1尉だ。黒木1尉は今年7月に上番したばかりで、現在班の運営を模索中だ。

 黒木1尉は、4人兄弟で兄2人も自衛官、職域も同じ「施設」だ。かつての曹候補士として入隊して26年、幹部任官後もずっと「施設」、この道のエキスパートだ。


滑走路がない基地


 黒木1尉は「府中の基地業務隊の特徴は、『補給』部隊が業務隊の中にあることです」と話す。どういうことか。「航空団であれば、『基地業務群』と『整備補給群』は別々です。しかし府中には滑走路がありません。つまり航空機整備を担う『整備』は必要なく、『補給』のみが業務隊に組み込まれているのです」。そう言われてあらためて気付く、「先日行った入間基地と違って静かだなぁ」と。同様な編制は航空総隊司令部がある横田基地やレーダーサイト、高射部隊等でも見られるようだ。


業務は先行的に


 黒木1尉が部下に常日頃言っているのは「先行的な業務を心掛けよう」だ。「やればやるほど仕事は出てくる。ならば、いかに残業せずに業務を回していけるか。ひとつ先、さらにその先を考えて先行的に仕事を進めていかなければなりません。小隊長を兼ねる施設小隊全体では残業がほぼ無くなりました」と成果を出した。「今は、総括班長として各小隊長と連携しなければいけません。その中で、仕事を遅らせないように先行的に各種業務を進め、しっかりと基地業務隊長を補佐していきたいです」と抱負を語った。

 終始、優しく落ち着いた口調でインタビューに答えてくれた黒木1尉。最後も「上番したばかりだから」と謙遜しながらも決意を口にした。

「基地業務隊長の右腕になれるように頑張ります」。

うちは町の何でも屋さん

施設小隊 総括班班長 徳永泰彦1空尉

 「うちは町の何でも屋さんですよ」。施設小隊総括班長の徳永1尉がそう説明するように、施設小隊の業務は基地内のあらゆる建物や設備を正常に維持し、必要があれば補修工事をすることだ。また、消防業務も担う。電気がつかない、水やお湯が出ない、部屋が温まらない…毎日多種多様な依頼が舞い込んでくる。「町の何でも屋さん」と少しおどけた言いぶりだったが、決して多くはない人員でこの基地の基盤を守っている、という自負がそこにはある。


「施設は目立って何ぼ」


 いわゆる「縁の下の力持ち」だが、徳永1尉は頑張っている隊員たちが陽の目を見ないことを良しとしない。「施設は目立って何ぼ。とにかく仕事で目立ちなさい、と言っています」と話す。「私が幹部になった時、上司に言われていたことです。挨拶もそう、元気にしていれば『施設は元気があるな』と群司令や隊長の目にも留まる」。やって当たり前と思われがちな業務を、確実にこなし続ける隊員が報われて欲しいと思う親心からだろう。実際に徳永1尉自身がエネルギー溢れるリーダーなのだ。

 「うちはサービス業です。どんな無茶振りでも頼まれたら、一旦受け入れて検討します。断るのは簡単ですから」。府中基地の「何でも屋さん」は今日も元気に営業中だ。

※施設小隊長は、基地業務隊総括班長黒木1尉が兼任

人間関係が一番

業務小隊 小隊長 田中政喜1空尉

 業務小隊は、厚生班と給養班からなる。厚生班は、主に「隊員の福利厚生」、「公務員宿舎の維持管理」、「退職手当及び災害補償」、貯金・貸付・物資等の「共済組合業務の支部業務」を行う。給養班は、基地食堂や基地外においても、必要とする隊員には必ず行きわたるように食事の調理、配食、保管等の「隊員の給食業務の実施」を行う。これら2つの業務を監督指導しているのが小隊長の田中1尉だ。

風通しの良い職場

 田中1尉は入隊以降ずっと「厚生」畑で、航空気象群本部人事部厚生班長も兼務している。「利用者の相談に対応できるように、毎年変更する法律や制度について日々勉強し、書類を揃えています」と職員の働きぶりについて目を細める。そんな田中1尉が日頃から気にかけているのは「基本の徹底・事故防止」、そして「風通しの良い環境づくり」だ。「金銭事故や衛生事故を未然に防止するために、基本事項の徹底に対する意識がとても高い職場です」と話す。そしてこれまで10カ所以上で勤務した経験から「人間関係が一番大切です」と言い切る。「基本的に隊員と頻繁に会話をしますが、雑談から仕事の事までとにかく聞き役に徹しています。業務上の面接では、本音で話してもらえるような人間関係を構築しなければいけません。それが出来ていれば、新しい事にも挑戦し易いですから。課題は山積みですが、隊員以下全員で臆せず挑戦していきたいですね」と経験豊富な小隊長は、温和な表情の中に力強い意志を込めて今後の抱負を語ってくれた。

府中基地がいちばん美味しい!

業務小隊 給養班 班長 藤本多聞2空尉 
班員 東畑恵理奈空士長

 「隊員が、業務遂行に必要な活力を得るために食事を作っています」。給養班長の藤本2尉は「給養班の仕事は?」との問いにそう答える。営内者への配食が主だが、野外糧食(パック飯)や基地外での喫食の調整も行う。「食は業務遂行の源」。給養班員は朝早くから夜遅くまで、交代制で隊員の健康維持のために頑張っている。


笑顔で配食


 東畑士長は大学で学んだ管理栄養士の資格を活かすために入隊した。災害派遣の報道で「自分が学んだ事で人を支えられる」と思い、「一般の会社では得られない経験ができる。人生を豊かにできる」とこの世界に飛び込んだ。そんな東畑士長は、食事の提供について「自分を含めての料理だ」という信念を持っている。「配食時は必ず目を見て笑顔で『お疲れ様です』と言います。それで食事が美味しくなるし、『がんばろう』って思ってもらえると信じています。自分が辛くても続けています」屈託のない笑顔でそう話す。とあるアンケート結果で東畑士長の応対が評判を呼び、群司令自ら基地業務隊長室に足を運んでその事が伝えられたそうだ。


心込めて作ってます


 府中基地の献立表にはひと月に「地産地消メニュー」「調理員考案献立」等の企画ものが数日あり、筆者も中秋の名月だった9月29日に「空上げの日 月見からあげ丼」=写真=に舌鼓を打った。敢えて聞いてみた、「府中基地の名物は?」。少し考えた後に返ってきたのは「全部名物です!」だった。「全てひとつひとつ心を込めて作っているので全部美味しいです」と、自信を持って答える東畑士長。藤本2尉も「これまでの赴任地や、訓練等で訪れた基地の中で一番美味しい」と強調した。

 最後に藤本2尉は「引き続き事故防止に努め、安全で健康に繋がる美味しい料理を提供して、皆さんに満足してもらえれば」と意気込みを語った。隊員たちが心身共に元気になるような食事が府中基地にはある。

生活をお支えできていると実感

業務小隊 厚生班 班長 櫻井瑠佳事務官

 昨年4月に班長として着任した櫻井事務官は、今回が管理者としては初めての配置だという。「初めてだからこそ挑戦したい」と気合十分だ。厚生班には退職、出産、持ち家購入等、人生の節目となるイベントを控えた人が多く相談に来る。櫻井事務官は「ライフプランの大切な局面において一番近くで寄り添い、生活をお支えできている実感があります」とやりがいを語る。業務上プライベートな事情にも触れるため、職務を超えて絆が深まっていくこともあるそうだ。「何とかしてあげたい」、そう思いながら日々業務にあたっている。


自らがモデルケースに 男性の育休取得率向上を


 櫻井事務官も1児の父で、今年2カ月間の育児休業を取得した。「月齢が低いほど、日々の成長の変化が大きい。その時期に子育てとしっかりと向き合い、貴重な経験ができました。職場の方にも感謝しています」と振り返る。奥様にも「育休が取り易い職場で良かった」と言われた。

 省を挙げて取得が推奨されて久しい男性の育休制度。令和7年度までの取得目標30%には程遠いのが現状だ。「私が取得したことで、班員の皆様が各種ワークライフバランス関連制度の利用に対する心理的ハードルが低減することができていれば喜ばしく思います。育休手当金制度など隊員に役立つ情報を基地全体に周知させることも我々の大事な仕事です。ちゃんと知っていることで、取得までの仕事の計画が早めに立てられます」と、実体験を基に今後も福利厚生施策に対する理解促進を図る。「妻が職場復帰すれば、今度は共働き世帯向けの制度もあります。自らモデルケースになって取得し易い環境を作っていきたいです。家庭に不安があると仕事のパフォーマンスは上がりません」。家庭を大事にすることが重要だと強調する櫻井事務官は、良き班長であり良きパパなのだ。

航空気象群基地業務隊 その2

 府中基地を縁の下で支える「航空気象群基地業務隊」。前号の第1回目は約190名の部隊を束ねる業務隊長の江嶋2佐、通信小隊をご紹介しました。

 第2回目は基地業務隊長を補佐する「基地業務隊総括班」、基地内の建物や施設を維持管理する「施設小隊」、福利厚生業務を担う「業務小隊(厚生班・給養班)」をご紹介します。

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