自衛隊ニュース

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芦屋基地航空祭華やかに

 芦屋基地(司令・北川英二空将補)は、10月15日に「令和5年度芦屋基地航空祭」を開催した。

 ラッパ隊によるファンファーレが会場に鳴り響き、歓声が上がる中、U125AとT4によるオープニングフライトで幕を開けた。前半は、時折小雨の降る天候ではあったが、後半はすっきりと青空が広がり、絶好の航空祭日和となった。

 エプロン地区においては、救難展示飛行や、かわいらしいT7の飛行、それからレッドドルフィン8機による優雅な編隊飛行のあと、F15やF2戦闘機の轟音に包まれた。最後にブルーインパルスの華麗なる曲技飛行が空を飾り、上を向く全ての人々の表情に喜色が浮かんだ。

 その他、装備品等の展示や航空学生によるファンシードリル展示、公式SNSへの多数の好意的なコメントに至るまで、大変な盛り上がりを見せ、様々な制限等をなくした今年度は、これぞまさに「航空祭」と呼ぶにふさわしい祭典となった。

 展示飛行や装備品等の地上展示、T4のコックピットや施設車両等の運転席への着座等、様々な非日常の体験ができる芦屋基地航空祭。来年度以降もぜひ、直接ご来場いただき、芦屋基地及び航空自衛隊の魅力を肌で感じていただきたい。

読史随感

神田淳
<第138回>

江戸時代の文化的成熟

 「明治維新は江戸の否定か、それとも江戸の達成か」、という日本史の論点がある。近年の歴史学は、明治維新を江戸の否定ではなく、江戸の達成とみる見方が主流になっている。この見方は私が学校で日本史を学んだ昭和30年代頃の見方と真逆である。その頃、江戸時代は古い封建時代であり、身分制度の固定した自由のない貧しい時代であって、明治維新によって江戸が否定され、日本は近代社会になったという見方が主流であった。

 歴史学は総じて江戸時代を肯定的に見直す方向に進んだ。江戸時代は近代の始め、250年という世界史上希有な長期にわたる平和な社会を実現していた。これを比較文学者芳賀徹は「パックス・トクガワナ(徳川の平和)」と呼び、江戸時代の文明的、文化的豊穣さを説いている。江戸時代、北から南まで列島全体が均質化、平衡してナショナリズムと同胞意識が育っていた。社会は成熟し、一押しすれば近代社会となる状況だった。徳川幕府は倒されたが、榎本武揚を始めとする優秀な幕臣が維新政府で活躍した。後に総理大臣となった大隈重信は、「明治の近代化はほとんど幕臣小栗上野介の構想の模倣にすぎない」との言葉を残している。江戸と明治は連続している。

 江戸時代、民衆は豊かに暮らしていたという観察記録がある一方、貧困な時代だったとする見解も根強い。実際はどうだったのだろうか。アンガス・マディソン『世界経済概観』によると、各国(各地域)の一人当たりGDPは、1700年(江戸前期)で日本570ドル、中国600ドル、韓国600ドル、インド550ドル、西ヨーロッパ997ドル、1820年(江戸後期)で日本669ドル、中国600ドル、韓国600ドル、インド533ドル、西ヨーロッパ1,202ドル、1950年(戦後間もない昭和期)で日本1,921ドル、中国448ドル、韓国600ドル、インド619ドル、西ヨーロッパ4,578ドルとなっている。日本はずっと西ヨーロッパより貧しいが、近代になっても中国、韓国、インドが貧しいままなのに対して、日本は江戸時代から少しずつ豊かになっていることがわかる。

 近年の江戸時代の見直しと評価は、近代文明に対する現代人の疑念と無関係でない。それは平和と持続可能性の観点からの疑念である。近現代文明は明らかに平和と持続可能性の達成に失敗している。一方江戸文明はこれを実現していた。平和で持続可能な文明をつくりあげた江戸時代の日本人の智慧は、現代学ぶべきものがあるかもしれない。

 江戸文明はどのような文明だったのか。江戸時代は平和で、世界との交流がほとんど閉ざされていたため、日本人の特質、能力が純粋に発達し、成熟した。経済的にそれほど豊かではないが、文化的に豊穣な文明社会だったのではないだろうか。絵画に俵屋宗達、葛飾北斎や浮世絵など、世界レベルのものを生み出した。また、俳句という独特の文学を生み出した。芭蕉は現在、日本の代表的な詩人との世界的評価が得られている。

 日本文化の世界的評価は、明治以降より圧倒的に江戸時代の方が高い。江戸時代の文化は高度に成熟し、洗練された精神がみられるゆえである。「風流」を表わす英語はないと漱石がどこかで言っていた。「いき(粋)」や「すい(粋)」なども江戸時代に発達した非常に洗練された精神である。

 江戸時代、倫理や道徳にかかわる精神も、繊細な恥と美の倫理など、現代なお日本に生きているすぐれたものがあったのではなかろうか。

(令和5年12月1日)


神田 淳(かんだすなお)

元高知工科大学客員教授。

著書に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


WPNS SELWG 2023(4)

ミニSELWG


 9月21日および22日、海上自衛隊航空集団(以下「空団」)および教育航空集団(以下「教空団」の令和5年度前期先任伍長会報が開催された。海曹士の服務指導法や先任伍長制度に関する事項について情報交換や検討を行って先任伍長間の関係強化及び指揮官の補佐のため役立てることを目的とする会報である。今回も空団及び空団隷下の先任伍長65名が集まり、熱心に発表や議論が行われた。

 今回の会報では、空団および教空団の先任伍長の発案で、今年12月に日本で開催される「西太平洋海軍シンポジウム上級下士官会同」(以下「WPNS SELWG 2023」)を模擬した討議が計画された。「ミニSELWG」と名付けられたこの討議では、空団と教空団先任伍長が計画し、「WPNS SELWG 2023」と同じテーマを使ってグループで討議が行われた。「WPNS SELWG 2023」と同じ要領であったため、現在「WPNS SELWG 2023」を準備している海上幕僚監部総務課の海自先任伍長制度創設20周年事業準備室にとっても、注意点や改善点を把握する重要な機会となった。

 会報で司会を担った教空団先任伍長の福井曹長は、「討議に参加した先任伍長は、自分自身の考えを短時間でまとめて適切に伝えることに苦労していた。グループの進行役は、様々な意見をまとめることや時間管理をすることが必要である。こうした気付きを会同に反映してもらいたい」と振り返った。また、「WPNS SELWG 2023」で司会を務める予定の海自先任伍長もオブザーバーで参加しており、「討議というのは日本語でも難しい。議論をどのように進行させるか、自分が担う司会という役目の重要性を改めて認識した。12月までに主要な役割に就く先任伍長としっかり準備したい」と意気込みを述べた。

 「WPNS SELWG2023」の準備は残り2カ月弱、細部の計画と準備作業を進める20周年事業準備室長の末永曹長は、「12月の会同のため、率先してこのような場を設定してくれた空団と教空団に感謝している。海自内の先任伍長の経験による幅広い知識と事業に対する意欲を垣間見ることが出来た。今日得られた教訓は、会同に確実に反映する」と強い意思を示した。

 既に、準備室には複数の外国海軍から参加の連絡が来ている。海曹士で計画・実施する「WPNS SELWG 2023」の成功のため、末永室長をはじめとする準備室は、今回のミニSELWGで得られた教訓と熱意を追い風にして、会同の開催に向けた詰めの作業に全力で臨む。

「艦めしーふーど」取組みに感謝状

 10月31日、海上自衛隊は北海道漁業協同組合連合会(代表理事会長・阿部国雄)と北海道ほたて漁業振興協会(会長・高桑康文)から、海自独自の取組みである「艦めしーふーど」による国内水産業支援への貢献に対する感謝状が贈呈された。海幕応接室で行われた贈呈式には、北海道漁業協同組合連合会からは菊池元宏代表理事副会長と田中誠一郎東京事務所長が、海自からは稲田丈二海幕総務部長、吉田久哉海幕総務課長らが参加した。

 「艦めしーふーど」は福島第一原発の処理水放出を受けた中国による水産物輸入停止に対する施策として、9月5日に発表され、既に認知されている「艦めし」をアレンジしたロゴも話題を呼んだ。国産の水産物をはじめとした国産食材を使用したレシピを、随時更新しており好評を得ている。

 北海道漁業協同組合連合会等は「その取り組みは海を生業とする北海道漁業者にとり大変心強く勇気づけられております」としている。

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