自衛隊ニュース

音楽隊に敬礼っ!!<第5回>
前陸上自衛隊中央音楽隊長 樋口 孝博
アスリート達と音楽隊
朝霞駐屯地に所在する「自衛隊体育学校」は、見学者のマストアイテムになっています。特別な知識・技術・経験に加え、人並み外れた体力を誇るアスリートの集まりですから、見学するだけでも刺激がもらえます。日本がひとつとなった1964年の東京オリンピックでは、重量挙げの三宅やマラソンの円谷といった多くの体校選手が活躍するなかで、音楽隊も同じ時を過ごしました。当時の演奏記録には「重量挙げ三宅3尉、テレビ結婚式」というものまであるのが驚きです。
音楽隊の重要なレパートリーである、《オリンピック・ファンファーレ》でも有名な1984年のロサンゼルス五輪では、射撃の蒲池選手が日本人の金メダル第1号になりました。ある日、ジャージ姿で外を歩く白髪頭の人を見て、「体校にも年を取った人がいるんですね?」と上司に尋ねると、「何を言ってるんだ!あの方は金メダルの蒲池さんじゃないか!」と言われました。当時の私には、音楽隊の前をメダリストが歩いている方が非日常的であった気がします。しかし同じ駐屯地で過ごす彼らのオリンピック壮行演奏では、目の前の赤いブレザーに胸を躍らされ、その選手らが活躍すると同僚がメダルをとったような気分も味わわせてもらいました。
「東京2020」の柔道、濵田尚里選手らの活躍は記憶に新しいところですが、大会後にはオリンピアンたちが返礼のため中央音楽隊を訪れてくれました。メダルを胸にしたアスリートたちを見ていると、国民に勇気と感動を与える彼らと音楽隊の役割が、まったく同じものに感じてくるのです(選手たちも楽器を片手に上機嫌でした)。また中央音楽隊の定期演奏会では、ステージにメダリストを招きトークで観衆を魅了したこともあります。「演奏会は聴くもの」という概念を超え、身近にいる芸能人「オリンピアン」との共演が、より親しみやすいコンサート作りの一端にもなりました。そういった選手の方々と話しをしていると、国内外の転戦を重ねている彼らの話題は豊富で、人を惹きつける能力にも秀でているように感じます。また、限りない努力を重ねてスポットライトを浴びるという面においても、音楽の極みを求める我々と共通しているため、とても他人には思えないところがあるのです。
ウィンタースポーツが盛んな北海道でも、バイアスロンやクロスカントリーなどの選手を育成しています。札幌の真駒内駐屯地における「駐屯地朝礼」では、国民体育大会やアジア大会で活躍した選手たちがメダルを胸に誇らしく紹介されていました。音楽隊はそのステージ下でBGMを演奏するのですが、間近にウィンタースポーツのアスリートたちを見る経験はこのときが初めてでした。オリンピックの中継では、スケートやジャンプ競技ばかりが注目を集めますが、これほど多くの自衛官アスリートたちがいることは誇らしくも感じました。
雪国では全ての隊員が「スキー検定」を受験します。ある日、音楽隊員たちがコースをぎこちなく滑っていると、後ろから選手の一団が猛スピードで滑り降りてきました。プロと初心者が同じコースというのには無理があると思いますが、どうすることもできずに転倒し、指を骨折してしまいました。おかげで腕に三角巾をしながら指揮をするというお粗末な結果になりましたが、「その姿でもステージに立つのが自衛隊音楽隊なのだ!」と自戒しながら厳しい冬を乗り越えたのです。
いつの時代も傑出したスポーツ選手は、人々に感動と勇気、希望を与えてくれます。そしてこのような影響を与えるというのは傑出した音楽家も同じだと思います。スポーツ、そして音楽。日本を極め世界への架け橋となるアスリートたちと音楽隊は、今後も技術を磨き続けながら人々を魅了していくことでしょう。
HOME’s English Class
(防衛ホーム英語教室)
ヒット ミー アップ オン エックス ネキスト ウィーク
Hit me up on X next week!
来週、Xで連絡ください
Hi! How are you doing? 皆様、いかがお過ごしでしょうか。関東地方は、立春が過ぎても寒い日が続いています。全国的に大雪が降り、大変な日々が続いているのをニュースで知り、異常気象を実感しています。大学は、今が入試シーズンです。毎週数日は、入試の支援で職員が駆り出されています。大学の入学試験日が、穏やかな日に恵まれますよう祈念しています。春から大学生になる夢をかなえて、さらに高い目標に向かって前進していただきたいです。
今回の表現は、“Hit me up on X next week!”「来週、Xで連絡ください」です。“hit me up on A”は、「Aという手段(X、インスタグラム、ラインなど)で、私に連絡をください」という意味です。日常の友達同士の会話でよく使う表現ですが、英語にするとなるとなかなか思いつかない表現です。覚えておくと非常に便利です。手段のまえに、“on”をつけるのがポイントです。言われた相手に対して、「連絡するよ」というときには、“I’ll shoot you a DM”「DM(SNSのダイレクトメッセージ)を送るよ」といえば良いでしょう。これもスキッとした表現です。
今回のブログは、「アメリカ人の断りの表現が微妙すぎる!?」です。本気だと勘違いしてしまう断りの表現の上級者編です。興味のある方は、https://worldlife.jp/archives/16827へ飛んでください。インフルエンザ、風邪も大流行しています。筆者も感染し、つらい日々を過ごしました。今年の風邪は感染すると症状が長引くのでご注意ください。ご自愛され、ストレスが少ない、健康で陽気な日々をお過ごしください。See ya!
<スワタケル>
「頑張っています」
新しい職場
活躍するOBシリーズ
イシバシホールディングス株式会社 橋本 啓信
「準備は早めがカギ」
令和5年5月、航空自衛隊第3輸送航空隊基地業務群本部を最後に定年退職し、「イシバシホールディングス株式会社」に入社しました。
まず初めに、退職を考えている方々は、定年後のキャリアに不安を感じていると思います。私も当時そうでした。そこで「将来の準備は早めがカギ」と思い、定年の約5年前からリサーチを開始しました。
早めのリサーチは、選択肢を広げスムーズな転職活動を促し不安を軽減します。自分に適した業種を見極め、必要なスキルや資格を準備することで将来への不安も減らせます。
リサーチ方法として、基地援護室やネット、OB・先輩への相談を活用しました。基地援護室では、求人情報や面談、企業説明会を利用し、ネットでは転職サイト等で適職を調べ、OBからは業務内容や必要スキルの具体的なアドバイスを得て再就職活動に役立てました。基地援護室のご支援もあり、幅広く人と関わり合える希望していた業種への再就職が叶いました。
再就職先は、選挙カーレンタルサービスとフリーレンタカー業務を行うリーディングカンパニーです。選挙活動に特化した車両手配や顧客対応には、自衛隊で培った調整力や迅速な対応力が活かされています。また、一般レンタカー業務では、安全管理や誠実な対応でお客様から高い評価を頂いています。少数精鋭の社員はプロ意識が高く、笑いの絶えないアットホームな雰囲気の中、充実した日々を送っています。
最後に退職予定隊員の皆様へ、「鍛え抜かれた力は未来への礎となる。今の努力が明日の自分を支える」自衛隊で培った迅速な判断力や柔軟な対応力は民間でも大きな強みになります。現役時代の経験を資産として早めに将来を見据え、計画的に準備を進めて下さい。
再就職は、多くの方々の支えで成り立つものです。感謝の気持ちを忘れず、健康に気を付け明るい未来を築いて下さい。
橋本氏は、令和5年5月に航空自衛隊第3輸送航空隊(美保基地)を最後に1空曹(特別昇任)で定年退官。55歳