自衛隊ニュース
防衛産業参入促進展〈東京〉
40社が自社の技術・製品をアピール
企業から説明を受ける若宮大臣補佐官
防衛装備庁は、12月2日と12月3日に「防衛産業参入促進展2024 in TOKYO」をホテルグランドヒル市ヶ谷(東京都新宿区)で開催した。本展示会は防衛産業への新規参入を通じて事業の拡大を目指す中小企業等と、防衛関連企業や防衛省・自衛隊とのマッチングを創出する展示会で、平成28年度から開催されており、今回で23回目。10月には名古屋でも開催された。これまで述べ385社・団体が出展し、過去には国産ドローンを開発する企業や3Dプリンター技術を有する企業が、防衛省やプライム企業とマッチングした実績がある。
装備庁はこのような事業をはじめ、防衛産業への新規参入機会を創出する取組みを行っている。開会の挨拶で若宮健嗣防衛大臣補佐官は、「自衛隊の任務遂行にあたっては装備品の確保の点から、生産基盤を国内に維持し強化する必要はさらに増しています。防衛生産・技術基盤の維持・強化には、サプライチェーンの強靭化や民生先端技術の取り込みは極めて重要です」と説明。「官民連携を推進して力強く持続可能な防衛産業の構築をするために、各種の取り組みを進めてまいりたい」と挨拶した。
若宮大臣補佐官は会場を約40分間周り、出展企業担当者からの説明に熱心に耳を傾けていた。
会場では、災害等を想定した「24時間連続稼働」「一人で操作可能」できる国産ドローンや、成層圏でも飛行できる高高度ガス気球を用いた宇宙関連の技術開発、米軍で広く採用されているRTOS(リアルタイムOS)等、40の企業が将来防衛装備品への活用が期待される技術や製品を展示し、多くの来場者で賑わった。ある企業の担当者は「自社の技術や製品を防衛装備品でどう活かしていけるのか、私どもも手探り状態です。防衛関連企業様や他の参加企業様とも直接話ができるこのような機会は大変ありがたい」と話していた。
令和6年度防衛基盤整備協会賞贈呈式
防衛基盤の強化・発展に寄与した4件を称える
鎌田理事長から表彰状を受け取る受賞者
11月25日、公益財団法人防衛基盤整備協会(理事長・鎌田昭良)は東京都新宿区のホテルグランドヒル市ヶ谷で「令和6年度防衛基盤整備協会賞贈呈式(後援‥防衛装備庁)」を行った。贈呈式には、増田和夫防衛事務次官、防衛装備庁長官代理の堀江和宏防衛技監をはじめ防衛省や防衛装備庁、各工業会理事等多数の来賓が参列した。
本賞は、民間で自主的に行われた防衛分野の研究開発活動により、防衛基盤の強化・発展に寄与した技術・研究者のグループまたは個人の功績を称えるもので今回が46回目。今年度は8件の応募があり、厳正な審査の結果4件を協会賞に選定。協会設立時から実施している本賞の贈呈件数は累計で237件となった。
今年度の受賞業績、受賞企業は以下のとおり(敬称略)
◆掃海訓練用機雷(K‐25Y)の開発/株式会社石川製作所
◆デジタル信号処理技術を適用したタカン航法試験機材(タカンシミュレータ12S400)の開発/島田理化工業株式会社
◆静粛型動力装置搭載魚雷の開発/三菱重工業株式会社
◆23式信管の開発/株式会社YDKテクノロジーズ
堀江防衛技監は、「今回受賞された皆様方のご功績は、いずれも我が国の防衛力を支える貴重な取り組みです」と称えるとともに、「今後とも防衛生産技術基盤の強化のため、より踏み込んだ施策を皆様と共に一丸となって取り組んでいきたい」と防衛装備庁長官の祝辞を代読した。
鎌田理事長は「防衛省や防衛関連企業を取り巻く情勢の変化を踏まえて、防衛省・自衛隊にとって役に立つ新たな事業にも積極的に取り組む所存です」と式辞を述べた。
受賞した島田理化工業の田中智明代表取締役取締役社長は「防衛産業の一員として、我が国の抜本的防衛力強化と防衛基盤の拡大や、防衛基盤の発展に力を発揮していきたい」と受賞の喜びを述べた。
音楽隊に敬礼っ!!〈第1回〉
前陸上自衛隊中央音楽隊長
樋口 孝博
陸自中央音楽隊長時代の樋口氏
「音楽隊」といえば、自衛隊のなかでも数多く国民に接する部隊だと思います。小さなコンサートでは市民と触れ合う距離で、災害派遣では人の心に潤いを与える存在です。武道館の音楽まつりや日本ダービーでは数万人に対して演奏しますし、オリンピックやワールドカップなどの国際競技にもなれば、世界中からの注目を集めます。そのため陸・海・空の音楽隊員は演奏技術の向上を怠ることなく、「音楽のチカラをもって国防に寄与する」という気概を常に心がけているのです。しかしどれだけ活動しても、一部の人にとっては未だ〝ベールに包まれている存在〟なのかもしれません。
退職後、ある出版社から「隊長の貴重な経験をエッセイにしてみませんか?」との打診がありました。しかしいくら人前に出ることが多くても、話しをしたり文章を書く機会は少ないものです。ましてやエッセイ集など真剣に読んだことすらありません。そこで〝エッセイ〟という言葉を調べると、「あるある、へぇ~、そうなんだ!」という文脈にするのが一般的なのだそうです。そう考えると「1964年の東京オリンピック、実は…」「東京ドームのオープニングではこんな苦労が…」などのエッセンスが溢れるように湧いてきました。
その後編集者の厳しい指導は1年以上も続き、このたび『音楽隊に敬礼っ!!』という本を上梓することができました。しかし100編以上執筆したなかで、取り上げられたのはその半数しかありません。そのことを防衛ホームさんにお話ししたところ、「それなら本紙面で紹介させていただきます!」とのありがたいお返事が。
通算1000号を超えた本旨面を汚さないよう、読者の皆様に「あるある、へぇ~、そうなんだ!」をお届けしたいと思います。それでは、音楽隊に敬意をこめて『音楽隊に敬礼っ!!』メドレー、次号から開幕です!お楽しみに!!
樋口 孝博 略歴
(ひぐちたかひろ)
元陸上自衛隊中央音楽隊長。武蔵野音楽大学(トランペット専攻)を卒業後、中学校教諭を経て陸上自衛隊に入隊。第1混成団音楽隊(沖縄)、第12音楽隊(群馬)、北部方面音楽隊(札幌)、中部方面音楽隊(伊丹)の各隊長を歴任する。平成6年度、東京藝術大学科目等履修生。
在任中、迎賓館や皇居などで多数の国賓・公賓に対する式典演奏を担任する。1998年には長野オリンピック、2002年にはワールドカップサッカー及び陸上自衛隊音楽隊初の海外演奏となる《韓国国際軍楽祭》に従事し、国際交流の一翼も担った。また。コロムビア、東芝、ブレーン等から多くのCDもリリースされている。
岩城宏之、佐渡裕、小林研一郎らの各師に指揮を学び、オーケストラアンサンブル金沢、アメリカ合衆国海兵隊軍楽隊など、積極的な指揮活動も行った。
2023年3月退官後は、埼玉県の中学及び高校で教鞭をとっている。
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音楽隊に「敬礼っ!!」元隊長が語る自衛隊音楽隊の真骨頂(前陸上自衛隊中央音楽隊長・樋口孝博<著>音楽之友社<刊>本体1800円+税)