自衛隊ニュース

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読史随感<第165回>
神田 淳

少子高齢化と仕事の思想

少子高齢化が日本の大きな課題となっている。

 少子高齢化は先進国の世界的な動向であるが、日本の少子高齢化は急速に進んだ。1970年、7%に過ぎなかった高齢化率(65歳以上の人口割合)は、1994年14%を超え、2022年には29%に達した。この数字は主要先進国のトップである(次はイタリア24%、その次はドイツ23%)。合計特殊出生率(女性が生涯に生む子供数)を見ると、1950年3・65人、1970年2・13人、1994年1・42人、2021年1・30人と急速に減少している。1・30人はG7の中でイタリアに次いで少ない(イタリア1・25人、カナダ1・44人、イギリス1・56、ドイツ1・58、アメリカ1・66、フランス1・80)。ちなみに人口が維持できる合計特殊出生率は2・07人である。

 世代間の扶養関係を、高齢者1人に対して現役世代(生産年齢人口)が何人で支えているかということで見ると、高齢者1人を支える現役世代の人数は、1960年で11・2人だったが、1980年には7・4人、2014年では2・4人となった。少子化がそのまま継続した場合、2060年では1・3人となり、いわゆる「肩車社会」(現役1人が高齢者1人を支えなければならない社会)となる。肩車社会では、国民負担の増大が経済成長を上回り、豊かさは低下し、医療、介護等社会保障は給付と負担のバランスが崩れて崩壊するだろう。

 この問題に関し、政府は「少子化社会対策基本法」や「高齢社会対策基本法」等を制定し、少子高齢化対策に取り組んでいるが、この問題を政策的に解決するのは難しい。しかしその中で、高齢化対策として高齢者の就労機会を確保する政策が非常に重要だと私は思う。

 高齢者になってもいつまでも生きがいをもって仕事をすることができる、働くことができる、そのような社会にしていくことが高齢化問題の現実的解決になるのではなかろうか。定年制などは日本人の寿命が短かった時代の制度である。1950年男性58・0歳、女性61・5歳、1970年男性69・3歳、女性74・7歳だった平均寿命は、2023年には男性81・1歳、女性87・1歳に達している。健康寿命も増している。60歳は若すぎる定年である。65歳といわず、70歳まで伸ばすか、無くしてよい。現代の高齢者は元気である。65歳以上を高齢者と定義しているが、少なくとも70歳以上、あるいは現在後期高齢者とよばれる75歳以上を高齢者とすることでよいのではなかろうか。

 昨今、定年を迎えた人たちの大多数が引き続き就業を希望している。また、就業の継続が健康長寿につながることを多くの研究成果が示している。これには異論もあり、働き続けている人よりも退職して働くのをやめた人の方が心臓病のリスクが低いという研究成果もある。健康と就業との関係は、健康だから就業しているという面もあり、就業が健康をもたらすとは単純には言えないようであるが、今までの研究成果は、本人が望むかたちでの就業は健康維持につながることを示している。

 さる外国では定年おめでとうと言うが、日本人は定年を喜ばず、いつまでも働くことをよしとする人が多い。私はそれで(それが)いいと思う。日本には仕事を尊ぶ文化があり、良い仕事の思想がある。すでに江戸時代、鈴木正三は日々の職業生活を大切にすることが仏道に通じるという、すぐれた仕事の思想を説いた。仕事は最上の喜びである、仕事によって人間は成長する、仕事は人生そのものである、といった日本の伝統的な仕事の思想は非常に良い。高齢者になっても仕事をし続けるのを理想としたい。

(令和7年1月15日)

神田 淳(かんだすなお) 元高知工科大学客員教授。著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』(https://utsukushii‐nihon.themedia.jp/)などがある。


防衛省・自衛隊地方協力本部

生徒就労体験に協力<埼玉>

 埼玉地方協力本部さいたま地域事務所(所長・吉田3陸佐)はこのほど、航空自衛隊入間基地において、埼玉県立蓮田松韻高校の就労体験(社会科見学)への協力を行った。

 本協力は学校からの依頼に基づき、一般企業及び公務員の仕事先を見学し仕事をする意義、ルールの大切さを学ぶ授業として、また将来の就職先の一つとして選択してもらいたい、と昨年度より行われている。今回は1年生160名、引率教諭12名の計172名が参加した。

 生徒たちは、見学支援部隊でどのような仕事を普段行っているのか、時間を守る大切さ、決まりごとを守る大切さについて隊員と話し理解を深めた。

 生徒たちからは「自衛隊の仕事が理解でき必要性が分かった」、「人の役に立つ仕事ということがよくわかった」、「仕事内容がわかり自衛隊に入りたくなった」などの声が聞かれた。

 埼玉地本では、自衛隊の理解促進のため、引き続き就労体験への協力に積極的に取り組んでいく。


児童から取材<埼玉>

 愛知地方協力本部豊田地域事務所(所長・安藤幸治2陸尉)はこのほど、豊田市立寿恵野小学校で行われた職業インタビューに参加した。警察、消防及び、民間企業が参加し、各教室に分かれてそれぞれ小学生の質問に答えた。

 自衛隊の職業インタビューに参加したのは豊田所広報官の石倉1曹と現在豊田所で臨時勤務している女性自衛官の堀3曹で、小学生の質問に対して丁寧に答えていた。

 インタビュアーの小学生は男子生徒13名、女子生徒3名の計16名で、女子生徒からは「女性でも男性と同じ仕事をしているのか?」、「将来、結婚や出産などがあっても自衛隊を続けられるのか?」などの質問があり、小学生2名の母親でもある堀3曹は、自らの経験を基に女子生徒の質問に答えていた。

 インタビュー終了後、生徒からは「ネットやテレビでしか自衛官を見たことがなく何となく恐いイメージでしたが、実際に会ってインタビューをしたら優しく丁寧に何でも答えてくれてイメージが変りました」、「女性も活躍できる職業だと聞いて将来自衛官になりたいと思いました」などの感想が聞かれた。

 愛知地本は、自衛官等募集を取り巻く環境が厳しい中、地域や学校、各協力団体との連携を強化して一つ一つのイベントを大切にして自衛隊の魅力の情報発信に努め、募集目標の達成に邁進する所存である。


高松空港でPR<香川>

ブルーパイロットも来場

 香川地本は、ターミナルビル館内ステージ及び屋上広報ブースにおいて、航空幕僚監部からブルーインパルス飛行隊長を務めた遠渡2佐及び第4航空団第11飛行隊から香川県出身の現役パイロットである浅香光司1尉の支援を受け、ブルーインパルスのパイロットトークショー、2名によるサイン会、航空自衛隊戦闘機の操縦桿展示等の広報活動を実施した。また、航空支援集団及び第1輸送航空隊の支援を受け、KC767空中給油輸送機の展示飛行を行った。

 トークショーには全国から応募があり、地元高校生及び中学生の司会の下、パイロットへの道のりや自身の経験談が語られたほか将来パイロットを目指す学生から質問が寄せられるなど会場は大盛況であった。

 飛行展示は飛行場上空を2回飛行。屋上や空港周辺施設では写真や動画に収めようとカメラを向ける多くの来場者の姿が見受けられた。

 広報ブースを訪れた来場者からは「豪華なゲストによるトークショーでおもしろかったです」、「なかなか見る機会のない空自航空機が見られて良かったです」など、興奮に満ちた声が聞こえた。

 香川地本は、今後も地域との連携に寄与するとともに魅力ある広報活動を実施し自衛隊への理解と親近感の醸成を図っていく。


大規模演習見学<山形>

 山形地本鶴岡出張所(所長・谷1空尉)はこのほど、自衛官採用試験合格者及び受験者を引率し「みちのくALERT2024」の研修に参加、訓練風景を見学した。

 「みちのくALERT2024」は、東北方面隊が東北地方の各自治体や関係機関と連携して各種災害に対応する大規模演習。

 参加者は、宮城県石巻市において海上自衛隊エアクッション艇「LCAC」が津波で孤立した住民を救助する想定で行われた訓練を研修した。沖合い遠くから姿を見せ、海岸に上陸するLCACの機動は迫力満点であり、参加者だけでなく引率した広報官まで圧倒されるほどだった。

 参加者からは「LCACの上陸風景や装備等を間近で見て、実災害等における自衛隊の活動を具体的にイメージすることができました」との感想が聞かれた。

 災害時の訓練風景を見学していただくことにより、自衛隊の任務に対する理解を一層深め、さらに入隊意志を強固なものにする絶好の機会となった。

 鶴岡出張所は「各種採用試験の受験者・合格者に対するフォローも広報官の重要な任務。さまざまな機会を活用し、対象者の不安払拭に力を入れて取り組んでいく」としている。







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