自衛隊ニュース

HTC訓練に参加
40普連の侵功を阻止
<2普連>
第2普通科連隊(連隊長・小段雄三1陸佐=高田)は、2月4日から10日まで、日出生台演習場(大分県)において実施された実動対抗演習「令和4年度HTC訓練」に参加した。今回、増強普通科連隊による広範囲に渡る防御任務実施のため、1年前より現地偵察を含め協同する部隊との綿密な調整、シミュレーション訓練及び実動訓練を重ね、連隊長要望事項「圧倒的な情報と火力の連携」、「情報の組織化」、「継続的な情報見積の実施」、「安全管理」のもと、敵部隊である第40普通科連隊(小倉)と対峙した。
4日0時の状況開始後、各中隊は協同する第5施設群、第12施設隊の油圧ショベル等と連携し、限られた準備期間のなか防御計画に基づき掩蓋材を使用した堅牢な陣地の構築、指向性散弾等の障害設置、施設部隊による道路閉塞準備を並行して進めた。
6日以降、攻撃を開始した敵部隊に対し特科隊含む砲迫火力、中距離多目的誘導弾、そして近接戦闘部隊を連携させた戦闘により侵攻する敵部隊を逐次減殺した。特に連隊長以下、2科、3科及びFSCC(特科火力調整所)を集約したTacCPを前方地域で運用し、迅速な情報の収集・分析・処理を行うとともに砲迫火力の指向・部隊指揮を容易にした。
戦闘開始以降、2普連は情報と火力を効果的に連携・運用し続け、10日朝、敵部隊が防勢転移したことから当初の防御任務を完遂し6夜7日にわたる訓練が終了した。
第2次基礎となる部隊の訓練検閲
<対馬警備隊>
対馬警備隊(隊長・町中芳則1陸佐)は、1月23日から26日までの間、令和4年度第2次基礎となる部隊の訓練検閲を対馬島内の生地を活用して実施した。
本訓練検閲は、普通科中隊及び、施設作業小隊の訓練検閲を実施して、受閲部隊の教育訓練成果を評価・判定するとともに、じ後の練成の進歩向上を図り、部隊・隊員の精強性の強化に資する事を目的として行われた。
普通科中隊は、対馬島内において海上自衛隊と連携して協同警備を実施するとともに、島内に潜伏するゲリラコマンドウの捜索・撃滅を実施し、その戦闘は、実戦さながらの状況で行った。施設作業小隊は、段列地域に展開し、各種施設の構築及び、普通科中隊の直接支援を実施した。
十年に一度と言われた大寒波による厳しい天候の中、普通科中隊長、施設作業小隊長を核心としてそれぞれの任務を完遂した。
本検閲の対ゲリラコマンドウ作戦において普通科中隊突入班として参加した隊員は、「実践的な訓練だったので、緊張感もあり沢山の教訓事項を得ることができました。また、銃口管理の意識も更に高まりました」と話した。
統裁官は「全隊員が果敢に職務遂行に邁進していた姿は、警備隊長として心強く感じた。対馬の防衛・警備において更なる練度向上を強く要望する」と述べた。
第11期国際平和協力中級課程
3年ぶりに開催
<統幕学校国際平和協力センター>
統合幕僚学校国際平和協力センターは、1月16日から2月8日の間、第11期国際平和協力中級課程を当センター施設(市ヶ谷駐屯地F2棟)で実施した。
本課程は、2佐・3佐の自衛官、相当級の事務官等のほか、他府省庁の職員や諸外国軍人を対象(基準)に「国際平和協力活動等の職務に従事する幕僚として必要な知識及び技能の修得」を目的として年1回実施されており、今回は諸外国からの留学生及びPKO教育の専門家として活躍中の退役外国軍人やNGO活動経験等のある委託教官(ISG(Institute for Security Governance)教官))を迎えての3年ぶりの開催となった。
第1週目の前段の教育では、防衛省の学生に対し国際平和協力活動等に関する理念、原理・原則や関連法規等についての講義を行い、第2週目以降の後段の教育では、内閣府国際平和協力本部事務局からの参加者及び留学生を交えて、経験豊富なISG教官により派遣部隊等の司令部の幕僚として勤務するために必要な教育(UNSOC‥UN Staff Officers Course)が全て英語により実施された。
特に今回の教育では、初めてISGのカリキュラムの講義の一部を当センター教官が担当し、講義、演習等をより効果的に行うとともに、ISGによる能力構築支援を通じて、今後のセンターにおける教育体制の強化に繋げることができた。
今回の課程では、6カ国(オーストラリア、ケニア、マレーシア、カタール、シンガポール及びイギリス)からの留学生を含め、計16名の参加があり、講義やグループ討議、総合演習等を通じて、それぞれ異なった立場での識見や経験などを交えながら、積極的に国際平和協力活動に関する知識を深めた。
国際平和協力センターは今後も引き続き、国際平和協力活動等の要員ニーズに対応した教育訓練及び調査研究を積極的に行っていく。
本記事に関する内容は国際平和協力センターHPにも掲載しています。https://www.mod.go.jp/js/jsc/jpc/education/course2.html
ノーサイド
北原巖男
ウクライナ侵略1年に
2022年2月24日、突如開始されたロシアのウクライナ「特別軍事作戦」(=侵略)は、解決の見通しが全く立たないままに早や1年。連日、悲惨な映像が報道され、益々混迷の度合いを高めています。
「日本はウクライナと共にあります」(外務省HP)。G7広島サミット(5月19日~21日)に向けて、ウクライナとG7諸国等との結束強化や支援の継続・強化等、これまでに無く日本のリーダーシップの真価が問われます。
ひるがえって、我が国周辺でもウクライナのような事態が生起する可能性を否定することはできません。冷徹な国際安全保障環境に鑑み、したたかな外交力の展開と相俟って防衛力の抜本的強化、米国との同盟強化、同志国等との連携強化等は、焦眉の急です。
ウクライナ侵略直前に、プーチン大統領が国営テレビを通じてロシア国民に語った演説でのフレーズが、改めて思い出されます。(2022年3月4日付けNHK プーチン大統領演説全文より筆者抜粋)
〇NATOが軍備をさらに拡大し、ウクライナの領土を軍事的に開発し始めることは、私たちにとって受け入れがたいことだ。
〇「特別軍事作戦」を実施する決定を下した。その目的は、8年間、ウクライナ政府によって虐げられ、ジェノサイドにさらされてきた人々を保護することだ。そしてそのために、私たちはウクライナの非軍事化と非ナチ化を目指していく。
〇私たちの行動は、我々に対して作り上げられた脅威、今起きていることよりも大きな災難に対する、自己防衛である。
僕の手元にある文庫版「戦争プロパガンダ10の法則」(アンヌ・モレリ著 永田千奈訳 草思社刊 2020年1月31日発行)には、こんな記述があります。今回のロシアのウクライナ侵略と第二次大戦当時のドイツのポーランド侵略等をそのまま同列で考えることは出来ませんが・・・。
「つまり、戦争が始まったすべての責任は敵国にあるのだ。さらに、当の敵国側の当時の資料を眺めれば、ドイツ、そして日本の側でも、「連合国側に戦争の責任がある」という論理が用いられていたことがわかるだろう。」
「ヒトラーは、ポーランド侵攻直前にイギリス外務省に以下のように書き送り、ポーランド国内のドイツ系住民に対する不当な扱いを告発している。
"ポーランドにおいてドイツ系住民の多くは迫害を受け、強制連行されたうえ、非常に残虐な手段で殺される者も出ている。この状況は、主権国家として容認しがたいことである。かくして、これまで中立的な立場をとってきた我が国ドイツも、正当な利権を守るため、必要な措置をとらざるをえないことになった" 」
「ヒトラーも国会で演説し、・・・ポーランド侵攻は正当防衛であると弁明している。
"ダンツィヒは、もともとドイツの町である。回廊も、もともとはドイツの領土である。これらの地域は、ドイツ人によって文化的な発展を遂げたのだ。ダンツィヒはドイツから切り離され、回廊も奪われた。別の地域では、ドイツ系住民が迫害を受け、100万人が住居を追われている" 」
このような中、映画「ヒトラーのための虐殺会議」を観ました。2022年、ドイツ人のマッテイ・ゲショネック監督作品。製作には、ドイツの公共放送ZDFが参画しテレビ放送もされた由。
ナチスによる欧州における1,100万人ものユダヤ人絶滅計画を決定した「ヴァンゼ-会議」について、記録係であったアイヒマンが残した議事録を基にした衝撃的な再現ドラマ。BGMは一切無し。僕自身、その場に出席しているような臨場感と緊張感に巻き込まれました。
同会議は、1942年1月20日開催。議題:「ユダヤ人問題の最終的解決」 参加者:国家保安本部長官ハイドリヒ(議長)・ナチス親衛隊・各省事務次官等15名と秘書1名 所要時間:90分。
会議の論点は、ユダヤ人の「特別処理」(=大量虐殺)の是非ではありません。いかに効率的に「特別処理」を実施するか、ユダヤ人に対する「人道的特別処理」ではなく直接「特別処理」に携わる現場隊員の精神的負担を軽減するための「人道的特別処理」の方途は何か等、真におぞましい内容が淡々と進んで行きました。
2月13日に亡くなられた漫画家 松本零士さんがいつもおっしゃっていた言葉が湧き上がって参ります。
「人間は本来、生きるために生まれてくる。死ぬために生まれてくる命はひとつもない」
休日の東京・新宿の上映館は、満席でした。しかも、若い世代の男性、女性の皆さんがいっぱい。瞬間、僕は、この映画に対する若い人たちの関心は薄いだろうと決めつけていたことを恥じ入るばかりでした。
「人間はここまで整然と異常な議論ができ、理知的に恐ろしいことを考える。これも確かに人の真の姿だ。だが、彼らにショックを受ける人道的な愛と正義感を持つ、観客のあなたたちがいる限り、人は報われると信じたい」(映画評論家 真魚八重子さん 本映画のプログラムより)
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事