2012年2月15日 の記事
平成23年度防衛医学セミナー開催
震災の実績と今後の展望テーマに
2月1日、防衛省A棟講堂で「平成23年度防衛医学セミナー」が開催された。本年度は、「これからの自衛隊における衛生部隊のあり方(東日本大震災を経験して)」を統一テーマに、特別講演・教育講演・シンポジウムが相次いで行われた。
神風英男政務官、セミナー長の吉村一克航空医学実験隊司令による開会挨拶に続き、作家の曽野綾子氏が登壇。曽野氏は日本財団会長などを歴任して長年に渡りアフリカなどで医薬品やワクチンの寄付活動に携わった経験を講演した。
午後の部は、「東日本大震災における衛生活動の実績と展望」のテーマに沿った教育講演とシンポジストによる発表、討論が行われた。教育講演「東日本大震災におけるトモダチ作戦」では、米空軍横田病院長・L.H.ハービス空軍大佐が登壇。発災直後からタイムラインを区切り在日米軍衛生部門がどのような活動を行ったか、主に、原発事故に伴う放射能対応について報告がなされた。「原子力空母を保有しているため元々基準が非常にタイトであるのに加え、各種数値の安全基準が流動的で兵士の活動が制限された」といい、米兵の中には「国外に避難した家族が日本に帰国しないのではないか」等のメンタルヘルスの問題も浮上した事実が報告された。
森崎善久阪神病院院長、野上弥志郎航空医学実験隊第3部長が座長を務めたシンポジウムでは、「東日本大震災において、初の陸海空統合部隊として災害派遣を行った自衛隊の各衛生部隊の取り組みを検証して今後に資することができれば」(吉村セミナー長)、「災害派遣の現場で自らが直面した経験以外については知らないことも多いのではないか。衛生・医療支援の実績を共有し、今回の経験をどのように生かしたら良いかを考えていきたい」(野上座長)などの趣旨のもと、岩田雅史統幕後方補給官衛生班長、鈴木智史陸幕衛生部企画室長、清住哲郎海自自衛艦隊司令部医務長、山田憲彦空幕首席衛生官、金武潤防衛医科大学教授ら防衛省・自衛隊の衛生部門の幹部5名に加え、災害医療センター臨床研究部長の小井土雄一氏、大崎市民病院副院長の大庭正敏氏の2名が外部から招かれ、計7名が各10分間のシンポジスト発表を行った。
発災当時、JTFで活動した鈴木1陸佐は「東日本大震災における自衛隊衛生の活動」をテーマに発表。清住1海佐は「海自衛生は何ができ、何ができなかったか」、山田1空佐は「空自編+α」と題して、それぞれ、海空の衛生部門の震災における活動実績と今後の課題などを発表した。以下、(順不同)統幕の岩田1陸佐による、全国のDMAT(災害派遣医療チーム)の輸送実績・経緯などをテーマとした「統合輸送とは」、DMATの小井土氏による「東日本でのDMATの活動」、地元宮城県の医師である大庭氏による「県緊急対策本部の医療活動と自衛隊の連携」が発表された。
防衛省・自衛隊内外問わず、震災当時の衛生・医療の実態などを知り得る貴重な機会とあって、各発表の合間には活発な質疑応答が行われ、セミナーの最後を飾った討論も熱気を帯びた。
「自衛隊のリソースを広く理解して貰う事が大切」(山田1空佐)、「衛生部門の連絡員を市ヶ谷に常駐させたい」、(ハービス大佐)、「大災害時は情報収集のための要員が欲しい」(岩田1陸佐)など具体的な提言や要望も多数聞く事が出来た。