自衛隊ニュース

ゲッキーのイラスト

生かされる日頃の訓練
東日本大震災教訓事項取りまとめ

防衛省

 東日本大震災への対応に関する教訓事項の最終とりまとめが行われた(関連記事4面)。防衛省・自衛隊は平成23年3月11日の発災当初から同年12月26日の原子力災害派遣の終結まで一体となって東日本大震災への対応に取り組んだ。


 震災発生時、情報が少なく全体の状況も見えない中、各地で各部隊が各隊員がすぐさま動いた。震災発生1時間後には、毛布やストーブを積んだ車両が駐屯地・基地内で列をなして命令を待っていた。駐屯地・基地内の売店からはあっと言う間に乾電池・懐中電灯・衣料品等がなくなった。携帯電話は繋がらない、家族との連絡もつかない。部隊の電話は鳴りっぱなし、住民が助けを求めてくる。あれもない、これもない…そんな中での初動は周知の通りだ。

 発災から日を追う毎に様々な事案が発生して来た。まさに手探りで、各システムを現場で構築し円滑に対処して来た。「天災地変その他の災害に際して人命・財産を保護するため」、日夜、危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、国民の負託にこたえた。

 現場で取材をした時に「常日頃積み重ねて来たことを今やっているだけ」と言う自衛官の言葉が余りにも深すぎて、何も言えなかったのを覚えている。日本とは思えない状態、今まで知らなかった臭い。カーナビ通りに走ろうにもカーナビで示す交差点も道路も目印もない、当たり前の事が当たり前でない状況。

 当然最近でも各地で災害派遣は行われている。10月31日、第2管区海上保安本部長から行方不明船舶の捜索に係る災派要請が自衛隊大湊地方総監部にあり、海自第73航空隊大湊航空分遣隊・第2航空群・第25航空隊が派遣され捜索活動等を実施。11月26日には、第9管区海上保安本部長から人命救助に係る災派要請が航空自衛隊第6航空団司令にあり、航空自衛隊小松救難隊が派遣され救助活動を実施した。11月27日、北海道知事より救援物資輸送等の災派要請が陸上自衛隊第7師団長にあり、陸上自衛隊第13施設隊と第71戦車連隊が救援物資輸送や避難所の運営支援等を実施し、不安気な避難民に安心も届けた。

 また急患輸送は11月だけで29件を数える。

 自衛隊は脚光をあびる大きな出動にも目立たない活動にも全力を傾注する。たずさわる隊員の気持ちももちろん同じだ。

 「常日頃の積み重ね」「当たり前のこと」の重要性を平成25年も考え実践するはずだ。

平成24年度自衛隊音楽まつり
和の想い音で伝える

観衆約3万6000人が集い演奏の感動を共に

 11月16、17の両日、日本武道館で平成24年度自衛隊音楽まつりが行われた。約1000人が出演した全6公演に、16日夜の森本敏防衛大臣、統幕長・陸海空各幕僚長、17日午前の長島昭久副大臣、大野元裕政務官をはじめ約3万6000人が来場。また今年は15日のリハーサルへ学生を中心に2250人を招待し好評を博した。


 今年の音楽まつりは、テーマ「和、奏でる夢」に相応しく、例年以上に人の心の繋がりや歴史の繋がりを強く感じさせた。プロローグの『七彩の奥羽国』は東日本大震災を主題に据えた昨年の音楽まつりでも使用された曲。オープニングではロンドン五輪関連曲『炎のランナー』演奏後、4名の自衛官メダリストが万雷の拍手の中登場し挨拶を行った。第1章に単独出演の東部方面音楽隊は東京五輪のファンファーレ、ご当地ソング『銀座カンカン娘』などを披露。戦後日本の風景を軽妙かつ洒脱に表現した。中部方面音楽隊の『ボイジャー』は一遍のオペラの如き壮大さで星々の物語を表した。ゲストの米軍はサンフランシスコ平和条約60周年記念で米太平洋陸軍軍楽隊を大規模に特別編成。在日陸軍を中核にアラスカ・韓国・ハワイから計67名が参加し迫力の演奏。米海兵隊第3海兵機動展開部隊音楽隊の演奏を挟み、方面・米軍音楽隊がロス五輪のファンファーレなどを合奏、年月をかけ築いた日米の絆を雄弁に物語った。

 第2章は言わば"ザ・自衛隊"の章。防大儀じょう隊のファンシードリルを皮切りに空自中央音楽隊、陸自中央音楽隊、海自東京音楽隊が単独ドリル演奏。『空の精鋭』、『陸軍分列行進曲』、『行進曲 軍艦』。陸海空の定番曲などに合せ3自衛隊の活躍をスクリーンに映した。特別儀じょうを担任する第302保安警務中隊とのコラボが行進の重厚さに輪をかけた陸、構成にサンバを取り入れ陽気に踊った海、華やかな演技隊と共に『スタートレック』が印象的な空と、歴史の中で培われた3自衛隊それぞれの個性が存分に発揮された第2章だった。

 沖縄復帰40周年記念の第3章パート1は、章題通り、第15音楽隊と第15旅団エイサー隊がステージいっぱいに駆け回り、楽器と唄と踊りで沖縄の心を東京へ届けた。そしてパート2で沖縄の心へのアンサーとして、陸海空音楽隊が『涙そうそう』を合奏、続けて『ふるさと』。我らが故郷を何者にも脅かさせない。3自衛隊の強い決意が演奏に込められていた。3章の最後に、北は名寄から南は北熊本まで全国の13個チームが集い力強い自衛太鼓を披露。終章第4章の全出演部隊による、ゆずの『虹』の大合唱と共に、大勢の想いが繋がり一つになる素晴らしさが心に響いた。

 音楽まつりは、同じ顔触れで出演者が揃うことは2度とない、一期一会の泡沫(うたかた)の夢。しかし、夢の種となる努力や創意工夫、情熱は連綿と受け継がれていく。回を重ねる毎に積み増す想いの和はこれからも観る者を魅了し続けるだろう。

創立53周年祝う
東部方面隊
「プレ観閲式」の意味合いも

 東部方面隊創立53周年記念行事が10月28日、朝霞訓練場で盛大に開催された。本年度の記念行事は、来年度(平成25年度)に自衛隊記念日観閲式が予定されており、「プレ観閲式」の意味も含めて実施された。

 午前10時すぎ、多数の来賓、一般市民が見守る中、観閲部隊が順次入場、整列した。次いで観閲官の渡部悦和東方総監が臨場、儀<INLINE NAME="画像枠" COPY=OFF>隊による栄誉礼を受けた。

 国旗掲揚に続いて、渡部総監が車両に搭乗、整列した観閲部隊を順次巡閲した。渡部総監は訓辞の中で、日本を取り巻く世界情勢の変化や自然災害への備えについて触れながら隊員に対して「進化し続ける強靱な東部方面隊を実現し、与えられた任務を完遂するよう」、また「自らを厳しく律し、有事に真に活躍できる隊員になるよう」、そして「錬磨無限、訓練に訓練を重ね、日本の最後の砦となるよう」強調した。

 引き続き、観閲パレードが始まり、徒歩部隊(人員約1350名)を先頭に、飛行部隊(約25機)、車両部隊(約150両)が一糸乱れぬ精強さを披露、観衆から大きな拍手を浴びていた。

 また、会場内では装備品展示や音楽演奏なども催され、終日、家族づれで賑わっていた。

相模湾に精強部隊が集結

野田首相を迎え「自衛隊観艦式」
"海の防人" 威風堂々

海上自衛隊創設60周年の晴れ舞台

艦艇48航空機32人員8000参加

3日間で約4万人がパレードや日頃の訓練成果を見届ける

 世界有数の規模で行われる平成24年度自衛隊記念日記念行事「観艦式」(執行者=自衛艦隊司令官・松下泰士海将)が10月14日、野田佳彦内閣総理大臣を迎えて相模湾沖で実施された。第27回観艦式には艦艇48隻(外国艦艇3隻含む。外国艦艇は観艦式初参加)、航空機32機(陸空含む)、人員約8000人が参加。自衛隊最高指揮官・野田首相の観閲によって参加部隊及び全国の部隊を鼓舞し士気をさらに高め、また、自衛隊の誇る装備や高度な訓練の成果を展示し、改めて国内外に自衛隊の存在を知らしめた。

 今次観艦式において、参加艦艇に乗艦した見学者の合計は事前含め3日間で約4万人。国内外多数の報道機関によるニュース発信に加え、前回に引き続きインターネット動画のライブ配信で全世界に映像を届けた。日本の領海を巡る様々な問題が表面化するなかでの自衛隊観艦式。首相の臨席を仰ぐ自衛隊記念日の観閲行事は、陸海空が3年に一度担当する。今年度に海上自衛隊が巡ってきたのは全く偶然のタイミングだが、日本を守る海の防人たる海上自衛隊が担当した観艦式は、図らずも大きな注目を集める結果となった。

 自衛隊の今を示す観艦式。新型汎用護衛艦の1番艦「あきづき」が受閲部隊の旗艦として艦閲式に初参加し注目を集めた。また、ヘリコプター搭載護衛艦「いせ」、今年3月に就役の潜水艦「けんりゅう」、掃海艇「えのしま」が受閲部隊及び訓練展示部隊として同じく観艦式初参加を果たした。

 「新たな時代を迎え様々な新しい任務、難しい任務を与えられている」(野田首相) 自衛隊においては、大規模災害への派遣、PKO、海賊対処、各国との共同訓練や多国間訓練を通じた国際社会への対応・貢献など、創設当初には無かった任務の比重も高まっている。東日本大震災の災害派遣活動に参加した「ひゅうが」などは、報道を通じ見学者にも馴染み深い艦艇の一つ。護衛艦への洋上給油を訓練展示した補給艦「ましゅう」の勇姿もまた、見学者の目には海外派遣で活躍する記憶が重なったはずだ。

 艦艇及び航空部隊の観閲パレードと訓練展示による約2時間のプログラムに凝縮された自衛隊の今。風雲急を告げる東アジアの海に"我らここにあり"を示した。平時にあって有事に備え陰日向なく研鑽を積み重ねる、自衛隊の真摯な歩みはこれからも続く。

島嶼部で初の共同訓練

陸上自衛隊と米第3海兵隊

 陸上自衛隊は8月21日から9月26日まで、米国グアム・アンダーセン空軍基地、同国自治領北マリアナ諸島テニアン島などで米海兵隊と実動訓練を行った。

 「島嶼部での作戦に必要な戦術・戦闘」を米海兵隊から習得することが目的。今年4月の日米安全保障協議委員会(2+2)の合意事項を具現化したもので、陸自が沖縄駐留の第3海兵機動展開部隊(3MEF)と島嶼部で共同訓練を行ったのは初めて。

 陸自は西部方面隊隷下部隊の西部方面普通科連隊(相浦)などから約40名、米海兵隊は3MEF隷下の第31海兵機動展開部隊約2200名を主力に、海軍からは「ボノム・リシャール」など揚陸艦3隻が参加。日米ともにそれぞれの水陸両用作戦の能力と相互運用性の向上を目指した。

 9月19日から始まったグアム島での訓練は、米海兵隊の偵察活動に始まり、日米が共同しボートで上陸地域へ潜入、敵部隊を強襲する作戦などを演練。報道公開され陸幕長・君塚栄治陸将、第3海兵機動展開隊司令官ケネス・グラック中将も視察に訪れた。

7ヵ国海軍と信頼深める

「カカドゥ12」に参加

海上自衛隊

 海上自衛隊は、8月29日から9月14日まで、オーストラリア・ダーウィン周辺海空域において、オーストラリア海軍主催の多国間海上共同訓練(カカドゥ12)に参加した。

 「カカドゥ」はオーストラリア海軍が毎年実施している多国間訓練で、セミナーと実動訓練を隔年で実施している。今年度はオーストラリア、日本、ブルネイ、インドネシア、ニュージーランド、シンガポール、タイから艦艇や航空機が参加し、対空戦、対潜戦、対水上戦、射撃、戦術運動、通信等の実動訓練を実施した。海上自衛隊の派遣部隊は、護衛艦「しまかぜ」及び乗員約180名で構成された護衛艦部隊(指揮官=しまかぜ艦長・矢野幸浩1海佐)と、P—3C2機及び搭乗員約40名から構成された航空部隊(指揮官=第21飛行隊長・竹内俊雅2海佐)。

 各国参加部隊は、8月30日の記念式典を皮切りに艦上昼食会、スポーツ交換行事などの記念行事を消化し、9月2日に艦艇がダーウィンを出港。同13日までの間に、「しまかぜ」は対空射撃や洋上給油、内火艇による立入検査を含む各種訓練等を、P—3Cは対潜戦、通信訓練を含む各種訓練等を実施した。

 海自の派遣部隊は、カカドゥ12の前後に日豪新(ニュージーランド)共同訓練(8月22~29日、「しまかぜ」が参加)、日米豪共同訓練(9月16~23日、P—3Cが参加)を行った。

 今回の部隊派遣は、共同訓練による戦術技量の向上と、近年、安保分野の二国間関係が緊密度を増す日豪をはじめ太平洋上の各国海軍と海自実戦部隊の間での信頼関係の強化に寄与した。

岩崎統幕長が米軍トップと公式会談

共同対処の実効性向上で防衛協力を強化

 岩崎茂統合幕僚長は8月23日、米国ワシントンDCでデンプシー米統合参謀本部議長と懇談し、日本の防衛と地域の平和・安定、経済的繁栄のために「自衛隊と米軍は引き続き強固な絆を維持しつつ、日米間の防衛協力を強化させるため、共同対処の実効性の向上に努めていく」ことに同意した。両者は「日米同盟の深化」や「アジア太平洋地域の安全保障環境」などについて意見を交換。具体的には、今年4月の日米安全保障協議委員会(2+2)の共同発表と、続く首脳会談に基づき▼適時かつ効果的な共同訓練▼共同の警戒監視・偵察活動▼施設の共同使用、の3つを含む動的防衛協力とアジア太平洋地域での連携強化について、お互いの立場から意見を述べた。今回、岩崎統幕長はデンプシー統合参謀本部議長の招待により米国を公式に訪問したもので、8月19日から24日まで滞在した。

森本大臣が横須賀を視察

「ひゅうが」など部隊や施設
厳しい現場の環境「つぶさに見て」激励

 8月16日、横須賀地区で森本敏防衛大臣が部隊などを視察した。森本防衛大臣の海自部隊視察は初。護衛艦「ひゅうが」、潜水艦「おやしお」の視察の一部を報道陣に公開した。大臣は両艦を視察後、「ひゅうが」格納庫内で隊員に対し訓示。「訓練に励み即応体制を確実に維持し、防衛省・自衛隊に課せられる国民の深い期待と負託に応えるよう」要望した。続いて行われた記者会見では、「今後も引き続き(陸海空)部隊を廻り隊員の顔を拝見しながら、非常に厳しい環境の中で任務を遂行している状態をつぶさに見て激励したい」、「海上自衛隊の活躍の場、内容は広がっています。限られた艦艇と人員で困難な任務を遂行している大変士気の高い部隊を直接見ることが出来て勉強になりました」などと述べた。その後、森本防衛大臣は、日本が返還を求めている在日米海軍深谷通信所、上瀬谷通信施設を視察した。


九州北部豪雨被害で災派

行方不明者捜索・給水支援などを実施

 7月11日から14日にかけて梅雨前線が活性化、九州北部が豪雨に見舞われ、土砂崩れや川の氾濫などにより熊本・大分・福岡の3県で死者・行方不明者が出た。

 12日午前6時49分に熊本県知事から第8師団長(北熊本)へ、同7時50分に大分県知事から西部方面特科隊長(湯布院)へ、14日午後12時10分に福岡県知事から第5施設団長(小郡)へ、それぞれ災害派遣要請があり、陸上自衛隊は北熊本・湯布院・高遊原・目達原・小郡・久留米・玖珠・別府の各駐屯地から人員約20名(述べ5280名)、車両約10両(述べ1290両)、航空機延べ35機の規模でこの要請に対応した(数値等は7月21日防衛省発表)。

 各県における主な活動状況は、熊本県では12日から19日まで連日、熊本市・阿蘇市・南阿蘇村・高森町で、河川敷で土のうを積み上げるなどの水防活動、住民避難支援活動、給水車による給水支援活動、行方不明者の捜索活動。そして、これらの地域で航空機などによる情報収集活動を実施した。孤立者の救助活動としては、ヘリにより16名を救助(熊本市)した。

 大分県では12日から19日まで連日、竹田市・日田市・中津市で熊本県の被災地域と同様の活動を実施し、加えて、物資輸送も行った。ヘリによる孤立者の救助活動では6名を救助(竹田市)した。

 福岡県では、14日から21日まで連日、孤立者の救助活動、水防活動、給水活動、ヘリによる物資輸送活動を、朝倉市・柳川市・久留米市・八女市で実施した。

アジア太平洋地域安定に向けて協力

陸自が米陸軍・海兵隊、豪陸軍と共同声明

 陸上自衛隊、米太平洋陸軍、米太平洋海兵隊の3陸軍種トップが戦略的観点から意見交換するシニア・レベル・セミナー(SLS)が7月10日(日本時間)から3日間、米国ハワイで開催された。豪陸軍を加えた共同声明を出し「日米豪の陸軍種は連携してアジア太平洋地域そして世界のために人道支援・災害救援、国際平和協力活動を継続していく」とした。陸上幕僚長・君塚栄治陸将、米太平洋陸軍司令官ワーシンスキー中将、第3海兵機動展開部隊司令官グラック中将(米太平洋海兵隊司令官代理)のほか、本会合22回目で初めて豪陸軍(本部長モリソン中将)がオブザーバーとして参加。来年からは正式に豪も加えての会合となる。

 今回は「アジア太平洋地域の安定に向けた日米豪協力」について討議。アジア太平洋地域の特性といえる発生頻度の高い自然災害への対処など陸軍種に求められる役割と、その重要性を確認した。

共同対処能力の向上図る

空自が「レッド・フラッグ・アラスカ」に参加

 6月8日から23日まで、「レッド・フラッグ・アラスカ」に航空自衛隊が参加した。米空軍の実施する演習に参加し、日米共同訓練を実施。部隊の戦術技量や日米共同対処能力の向上を図るのが目的。「コープサンダー」も含めアラスカでの演習は16回目となる。

 米国アラスカ州アイルソン空軍基地、エレメンドルフーリチャードソン米軍統合基地とその周辺空域で訓練は行われた。航空総隊と航空支援集団から約310名が参加。航空機はF-15J・6機、E-767・1機、C-130H・3機、KC-767・2機が参加して、防空戦闘訓練や戦術空輸訓練及び空中給油訓練を行った。F-15がアラスカに移動する際には、米空軍空中給油機により空中給油を受けた。

原発テロ想定し警察と初の共同訓練

陸自14旅団が「伊方」で

 6月14日、伊方原発(愛媛県伊方町・四国電力 伊方発電所)と周辺地域で、陸自14旅団(旅団長・永井昌広陸将補=善通寺)と愛媛県警による原発テロを想定した未然防止のための共同実動訓練が行われた。自衛隊と警察による原発テロを想定した共同実動訓練は全国初の試み。当日は自衛隊・警察から計約100名、軽装甲車やパトカーなど車両8台が参加した。

 訓練は「小銃などを所持した武装工作員などの不法行動に際し一般の警察力による治安の維持ができない事態」に自衛隊と警察で対処する際の共同連携について演練。「伊方原発の破壊を狙って武装集団が数台の車で原発に向かっている」との想定で、内閣総理大臣による治安出動の発令を受けたとして駐屯地を出発した軽装甲機動車とパトカー、白バイが原発付近のゲートまで移動、共同で検問訓練を行った。また、自衛隊と県警による共同調整所の運営訓練も実施した。

政府が対策強化

 政府は昨年11月に、原子力発電所などに対するテロ未然防止対策の強化のため、各種の取り組み方針を明らかにした。その中で「関係省庁において課題などを協議、共同訓練の実施などで連携を強化し、必要に応じて改善を検討するなど、更なる迅速万全な対応体制の構築を図る」としており、今回の訓練はこの政府方針を具体化したもの。

154日間14カ国訪問
「海の道(シーレーン)」に向け出発

東南アジア→中東を往復4万8千kmの旅
いざゆかん世界の大海原へ

遠洋練習航海

 5月22日、晴海ふ頭HK岸壁及び旅客ターミナルで遠洋練習航海部隊(練習艦隊司令官・淵之上英寿海将補)の出国行事が行われた。開始前に式場を訪れると、そこかしこで、派遣部隊の乗員と、見送りの家族・関係者が、間近に迫る暫しの別れを前に言葉を交わし共に写真に納まる光景が見られた。自らの制帽を被せた乳幼児を抱き微笑みかける乗員。彼の口元が動き我が子へ何事か語りかける姿に、今日という日が持つ意味の大きさを改めて感じ背筋が伸びる思いがした。

 出国行事では、練習艦隊司令官・淵之上英寿海将補以下の派遣部隊を、乗員家族約450人、加藤外務政務官をはじめ衆参国会議員など来賓約150人、渡辺副大臣、金澤事務次官、杉本海幕長ら防衛省・自衛隊関係者が見守る中で、訓辞、花束贈呈などが粛々と行われた。派遣人員は第62期一般幹部候補生課程修了者約190名の実習幹部を含む、幹部、海曹士など約760名。旅立ちに臨み凛々しく居並ぶ部隊へ、来場者から熱い視線が注がれる。壇上から彼らに言葉も愛情溢れる力強い内容が並んだ。

 「諸君が航海する海域は古来、貿易により我が国の発展と繁栄を支えてきた海の道、シーレーンである。帝国海軍が先の大戦において枢要な戦いを繰り広げた海域でもある。先人の偉業と尊い犠牲を偲びつつ、この航海を、海上武人としての素養を高める良い機会として研鑽に励んでもらいたい」(杉本海幕長壮行の辞)。

 今年度は、東南アジア→南アジア→中東・アフリカ東海岸の航路約4万8000kmを154日間で往復する。遠航部隊は日本の繁栄を支える海路で様々な経験を積み多くの外交貢献などを果たして10月22日に帰国予定。約5ヵ月に亘る航海へ、晴海ふ頭を離岸する練習艦「かしま」、練習艦「しまゆき」、護衛艦「まつゆき」を、家族らは激励と惜別の気持ちを込め手旗を振って見送った。レインボーブリッジの方向へ移動していく艦を追いかけて、岸壁沿いを走る人々。艦上で帽振れを行っている乗員の家族と思われ、大声で何事か必死に叫んでいる。恐らく艦上の乗員の耳には届いていないだろうが彼らの目と、そして心にはしっかりと届いたはず。想いは一つ。大きな成果を上げて全員が秋に無事帰国することを皆が祈っている。

最新鋭「NBC偵察車」を公開

化学学校
平成23年度末化学学校中特防へ計2両配備
全国各地の特防隊へ約10年かけ調達、配備
核及び放射能(N)、(B)、(C)に最新器材を搭載し1台で対応

 5月16日、陸自化学学校(川上幸則陸将補=大宮)でNBC偵察車が初披露された。NBC偵察車は、従来の化学防護車が対応する「N(核及び放射線)」「C(気状・液状の有毒化学剤)」、及び、生物偵察車が対応する「B(生物剤=兵器として使用される病原性微生物や毒素)」を1台で偵察可能としたもので、22年度予算で2両を調達。23年度末に化学学校と中央特殊武器防護隊に1両ずつ配備された新戦力。

 当日は、NBC偵察車を含む化学科職種の装備品展示等が行われた。NBC偵察車については、同機に装備されている最新偵察器材の解説に加え、それらを使用してNBC偵察車が、搭乗員が一度も下車することなく、路上散布を想定した化学剤対応における一連の偵察活動(汚染物質の識別・汚染範囲の表示・離脱時の応急除染まで)を僅か数分間で完了する様子等が、展示地域に開設された指揮所の情報、NBC偵察車の情報が無線とネットワークでリアルタイムにリンクしている様子と併せて展示された。NBC偵察車は指揮システムと連接することで、素早く検知等した情報を瞬時に関係部隊へ伝達する機能を持つ。 

 NBC偵察車の調達価格は約7億円。今後、23年度予算で2両、同補正予算で9両を調達する。約10年をかけて、全国の特殊武器防護隊に優先的に配備される予定。

これまでも、これからも
「国民に信頼される海上自衛隊」
変わる事のない課題

 4月26日、海上自衛隊第2術科学校で海上自衛隊創設60周年記念式典が挙行された。昭和27年(1952年)4月26日に横須賀市田浦の旧海軍水雷学校後に海上警備隊が創設されて以降60年にわたり、我が国周辺の警戒監視活動や災害派遣活動などを行ってきた。

 岩崎茂統合幕僚長や吉田雄人横須賀市長ら多数の出席者とともに、国家斉唱から式典は始まった。殉職者への黙祷のあと、執行者である杉本正彦海上幕僚長が「国民に信頼される海上自衛隊であり続けるとともに、グローバルな安全保障に寄与しうるリーディング・フォースを目指す」などと式辞を述べた。

一致団結で困難を乗り切る
「しらせ」が無事に帰還

 4月9日、海自砕氷艦「しらせ」(艦長・中藤琢雄1海佐)が晴海埠頭に帰って来た。

 第53次南極地域観測協力のため昭和基地手前約20kmまで近づいたが、厚い海氷とその上に積もる雪に阻まれ接岸を断念した。初代に比べ砕氷能力は格段に改良された氷砕設備を備えている「2代目しらせ」でも海氷を砕けない異常事態だった。観測に必要な人員、物資などは雪上車や艦載機CH—101で輸送して任務を果たした。

 帰路、右舵を損傷してしまったため、2万km近い距離を左舵だけで戻ってきた。昨年11月11日に出港して5ヵ月。数々の困難を乗り越えて帰ってきた「しらせ」と隊員たちを多くの家族、関係者などが出迎えた。

 艦上で行われた帰還セレモニーで、杉本正彦海幕長は「一致団結で困難を乗り切ったのは見事だった」と労った。

本科60期502名
防衛大学校入校式

 4月5日、防衛大学校(神奈川県横須賀市)の本科第60期502名(女子44名)、理工学研究科前期課程第51期69名(同8)、理工学研究科後期課程第12期9名、総合安全保障研究科前期課程第16期11名(同1)、総合安全保障研究科後期課程第4期5名(同2)の入校式が同校記念講堂で行われた。式典では、国分良成学校長が本科・各研究科の学生を任命し、各学生が力強く宣誓、申告した。

 4月1日に着任した国分新校長は式辞の中で、「『すでに将来の日本の防衛と安全を支える士官候補なのだ』という自覚」を持つこと、「良き人間、良き社会人」並びに「真の国際人」になることを要望。下条政務官が訓示を、岩田統合幕僚副長が祝辞を述べた。式典終了後は観閲式、午餐会が盛大に執り行われた。

「好印象」9割超で過去最高に

自衛隊・防衛問題世論調査

大震災対応は98%が「評価」

 内閣府が3月10日に公表した『自衛隊・防衛問題に関する世論調査』で、自衛隊に良い印象を持っているとする人が9割を超え、1969年の調査開始以来、最高となった。東日本大震災への対応についても「評価する」が97・7%に達しており、献身的な震災対応への評価が自衛隊のイメージ向上へとつながった。この調査は1月5日から22日、全国の成人男女3000人を対象に個別面接方式で行われ、有効回収率は63・1%(1893人)。防衛問題に関する国民の意識把握のため、昭和44年から3年ごとに行われている。


 調査項目は、大きく分けて (1)自衛隊・防衛問題に対する関心 (2)自衛隊に対する印象 (3)防衛体制についての考え方 (4)自衛隊の役割と活動に対する意識 (5)防衛についての意識 (6)日本の防衛のあり方に関する意識―の6項目。


【良い印象が9割超に】

 自衛隊に対する印象では、「良い」が37・5%で、「どちらかといえば良い」54・2%と合わせると91・7%に上り、過去最高を記録した。また、「悪い」「どちらかといえば悪い」とする人も合わせて5・3%と調査開始以来一番低い数字となった。前回2009年の調査との比較でも、良い印象が10・8%上昇、悪い印象は8・8%下がるなど、自衛隊への好感度がかつてないほど高まっている。


【震災対応の評価97・7%】

 東日本大震災時の災害派遣活動に対しては、「大いに評価」79・8%と「ある程度評価」17・9%を合わせ、97・7%が評価していると回答。一方、「あまり評価しない」が1・3%、「評価しない人」とする人は全くいなかった。

 また、「自衛隊と防衛問題に対する関心」の項目で、関心があるとする人の理由に「大規模災害など各種事態への対応などで国民生活に密接な係わりを持つから」と挙げた人が前回の28・6%から34%に上昇した。

 未曾有の被害をもたらした震災で懸命な活動を続けた隊員の姿は、国民から高い評価を受けている。同時に、きめ細かく被災者に寄り添った支援は自衛隊をより身近に感じる機会となったようだ。


【海外での活動】

 自衛隊は国際平和協力活動に積極的に取り組んでいる。現在はゴラン高原、ハイチ、南スーダン、東ティモールでPKOへの参加、地震や津波などで被災した国を支援する国際緊急援助活動などで国際社会に貢献。こうした海外での活動に対して「評価する」が87・4%、「評価しない」は7・7%と高い評価が示された。


【日米関係について】

 昨年の大震災は日米関係にも大きく影響した。米軍は人道支援・災害救援活動「トモダチ作戦」を展開したが、この支援活動に対して「成果をあげた」とする人が79・2%に上るなど高く評価された。また、日米安全保障条約についての意識調査で、日米安保が日本の平和と安全に役立っているかという質問に、「役立っている」(「どちらかといえば役立っている」を含む)と答えた人が前回調査から約5%増の81・2%。一方で「役立っていない」(「どちらかといえば役立ってない」を含む)とする人は前回の16・2%から10・8%へと下がった。

コープノース・グアム2012
空自初の日米豪共同訓練

 2月11日から2月24日まで、米国グアム島アンダーセン空軍基地及びファラロン・デ・メディニラ空対地射場、その周辺空域で「コープノース・グアム」が行われた。

 航空自衛隊からは、航空総隊、西部航空方面隊、第8航空団(築城)、第83航空隊(那覇)、警戒航空隊(三沢)からの約330人が、F-2A・8機、F-15J・6機、E-2C・3機を伴って参加した。部隊の展開・撤収にはC-130HとKC-767が支援。

 米空軍からは、F-16・22機、C-130・3機、F-15・18機、KC135空中空輸/輸送機・4機、E3早期警戒管制機・2機、B52爆撃機・2機などが参加。今回初めて参加するオーストラリア空軍からは、F18・6機、E-737早期警戒管制機・1機、C-130J・1機が参加した。

 防空戦闘訓練、戦闘機戦闘訓練、電子戦闘訓練、空対地射爆撃訓練、空中給油訓練を目的とした今回の「コープノース・グアム」。航空自衛隊が実施する「日米豪共同訓練」は初めて。

施設隊1次主力120名が出国
南スーダン

先遣隊と合流し、基盤づくりを本格化

家族らが盛大に見送り

「日本のため任務必遂」

 南スーダンで国連平和維持活動(PKO)を展開する第1次派遣施設隊の主力要員が2月19日、羽田空港から出国した。出発ロビーでは、渡辺周防衛副大臣をはじめ、派遣隊員の家族や所属部隊の隊員らが列を作り、その中を派遣隊員が激励の声を掛けられながら颯爽と出発ゲートへと向かった。また、田中防衛大臣は同21日、現地で活動する隊員をTV電話で激励した。


日本の素晴らしい力で国造りに貢献

 1次隊は中央即応連隊を基幹に約210名で編成、今回は第1波として約120名が派遣された。チャーター機で羽田空港を出発した隊員は、ウガンダのエンテベ空港で航空自衛隊C—130輸送機2機に乗り換え、翌20日に首都ジュバに到着。すでに現地入りしている隊員約60名と合流した後、活動拠点となる宿営地の整備など現地でのインフラ整備に向けた基盤づくりに当たる。

 3月24日には第2派約30名が出国する予定で、これで1次隊約210名がそろうこととなる。

 南スーダン派遣施設隊の隊長を務める坂間輝男2陸佐は出国前のインタビューで、「日本の素晴らしい力を、南スーダンの国造りの一端に貢献できる形でアピールしたい」と抱負を述べるとともに、「祖国日本のため、将来の子供のために任務必遂、全力を尽くして本任務を達成したい」と力強く決意を示した。


出国前に家族と懇談

 出国に先立ち、都内ホテルで家族との懇談の時間が設けられ、派遣隊員たちは思い思いに過ごした。現地で補給陸曹として活動する荒健二陸曹長は妻の志保さんと娘3人の5人家族で、今年の正月に家族そろって健康祈願のお守りを買い、無事の帰国を祈ったという。荒陸曹長は「(南スーダンに)行っている間、怪我とかしないように」と家族に声をかけ、「自分も怪我などせず無事に帰って、また皆と一緒に暮らしたい」と話した。


 南スーダンは昨年7月に独立したアフリカ大陸54番目の国。20年以上におよぶ内戦で、貧困や治安問題など多くの課題を抱えている。特に道路や空港の整備といったインフラが整っておらず、日本政府は国連からの要請を受けて、道路の維持・補修や瓦礫撤去などを行う施設部隊の派遣を決めた。


田中大臣がTV電話で激励

 田中大臣は2月21日、南スーダンで活動する現地支援調整所長・生田目徹1陸佐及び現地に到着した坂間2陸佐とテレビ電話で会談した。活動状況などの報告を受けた田中大臣は、「我が国の代表として誇りを持って立派に任務を遂行してほしい」と激励の言葉をかけた。

 坂間2佐は現地の状況について、「現在はナイル川の水を濾過した水でシャワーしているが、じ後、野外入浴セットが稼動となる予定。食事も携帯用の戦闘用糧食を主に食べているが、準備が整い次第、自炊も可能となる」と徐々に整いつつある生活環境について話した。生田目1佐も、「衛星携帯電話やEメールなどで家族との連絡を取り合っている」と述べ、最後に「日本に残った家族にも胸を張って活動できたと報告できるように現地で精一杯任務を遂行したい」と意気込みを示した。

平成23年度防衛医学セミナー開催
震災の実績と今後の展望テーマに

 2月1日、防衛省A棟講堂で「平成23年度防衛医学セミナー」が開催された。本年度は、「これからの自衛隊における衛生部隊のあり方(東日本大震災を経験して)」を統一テーマに、特別講演・教育講演・シンポジウムが相次いで行われた。

 神風英男政務官、セミナー長の吉村一克航空医学実験隊司令による開会挨拶に続き、作家の曽野綾子氏が登壇。曽野氏は日本財団会長などを歴任して長年に渡りアフリカなどで医薬品やワクチンの寄付活動に携わった経験を講演した。

 午後の部は、「東日本大震災における衛生活動の実績と展望」のテーマに沿った教育講演とシンポジストによる発表、討論が行われた。教育講演「東日本大震災におけるトモダチ作戦」では、米空軍横田病院長・L.H.ハービス空軍大佐が登壇。発災直後からタイムラインを区切り在日米軍衛生部門がどのような活動を行ったか、主に、原発事故に伴う放射能対応について報告がなされた。「原子力空母を保有しているため元々基準が非常にタイトであるのに加え、各種数値の安全基準が流動的で兵士の活動が制限された」といい、米兵の中には「国外に避難した家族が日本に帰国しないのではないか」等のメンタルヘルスの問題も浮上した事実が報告された。

 森崎善久阪神病院院長、野上弥志郎航空医学実験隊第3部長が座長を務めたシンポジウムでは、「東日本大震災において、初の陸海空統合部隊として災害派遣を行った自衛隊の各衛生部隊の取り組みを検証して今後に資することができれば」(吉村セミナー長)、「災害派遣の現場で自らが直面した経験以外については知らないことも多いのではないか。衛生・医療支援の実績を共有し、今回の経験をどのように生かしたら良いかを考えていきたい」(野上座長)などの趣旨のもと、岩田雅史統幕後方補給官衛生班長、鈴木智史陸幕衛生部企画室長、清住哲郎海自自衛艦隊司令部医務長、山田憲彦空幕首席衛生官、金武潤防衛医科大学教授ら防衛省・自衛隊の衛生部門の幹部5名に加え、災害医療センター臨床研究部長の小井土雄一氏、大崎市民病院副院長の大庭正敏氏の2名が外部から招かれ、計7名が各10分間のシンポジスト発表を行った。

 発災当時、JTFで活動した鈴木1陸佐は「東日本大震災における自衛隊衛生の活動」をテーマに発表。清住1海佐は「海自衛生は何ができ、何ができなかったか」、山田1空佐は「空自編+α」と題して、それぞれ、海空の衛生部門の震災における活動実績と今後の課題などを発表した。以下、(順不同)統幕の岩田1陸佐による、全国のDMAT(災害派遣医療チーム)の輸送実績・経緯などをテーマとした「統合輸送とは」、DMATの小井土氏による「東日本でのDMATの活動」、地元宮城県の医師である大庭氏による「県緊急対策本部の医療活動と自衛隊の連携」が発表された。

 防衛省・自衛隊内外問わず、震災当時の衛生・医療の実態などを知り得る貴重な機会とあって、各発表の合間には活発な質疑応答が行われ、セミナーの最後を飾った討論も熱気を帯びた。

「自衛隊のリソースを広く理解して貰う事が大切」(山田1空佐)、「衛生部門の連絡員を市ヶ谷に常駐させたい」、(ハービス大佐)、「大災害時は情報収集のための要員が欲しい」(岩田1陸佐)など具体的な提言や要望も多数聞く事が出来た。

陸自10式戦車「入魂式」

富士学校

川嶋機甲科部長 早期戦力化と安全運用誓う

 1月5日23時45分、御殿場市小山町の陸上自衛隊富士学校(学校長・山本洋陸将)に10式戦車量産型初号車が到着した。


待望の初号車配備

 10日には、「早期戦力化と安全」を祈願するとともに、陸上防衛力の骨幹としての任務完遂を祈念して機甲の魂を注入する「入魂式」が行われ、山本学校長と機甲科部長・川島昌之陸将補が砲塔についているマークにペイントし10式戦車に魂を注入した。それに先立ち川島機甲科部長は「本日待望の10式戦車初号車が富士学校機甲科部に配備された。これは諸先輩方の努力による伝統継承の賜であり、各防衛産業関係者の物造りにかける情熱と技術の結晶であることを 忘れてはならない。これからは我々運用者の役割であり、一日も早く戦力化しなければならない。また、戦車マンとしてやるべきことをしっかりと行うとともに安全本能を覚醒させ、事故の絶無を誓いたい」などと式辞を述べた。


軽量化で機動性向上

 入魂式が行われた機甲科部第2装軌車実習場には、初号車を中心に90式と74式戦車各1両、10式戦車試作車2両が脇を固めるように配置されていた。今まで、富士駐屯地記念日や富士総合火力演習などで軽快に動く10式戦車試作車を見て90式戦車を見慣れた目には「小さくて軽そう」と映っていたが、並べて見ると10式戦車の存在感に圧倒される。初めてC4I2システムを搭載し、モジュール型装甲の純国産戦闘車両であり、小さく見えるという車両の軽量化は戦略的機動性の向上ということである。

 敢えて10日にヒトマルの入魂式を行うというこだわりに、陸上自衛隊の10式戦車に対する思い入れが感じられた。


新春飾る「降下訓練始め」

第1空挺団
最精鋭400隊員が降着戦闘等を展示

 「コース良し、コース良し、コース良しっ!用意、用意、用意っ!降下、降下、降下ぁ!!」。スピーカーを通し習武台(習志野演習場)全体に響き渡る号令一下、落下傘を背負った降下員が順次、輸送機から降下してくる。青空に幾つもの傘の花が開き、続々と陸自最精鋭部隊が習武台に舞い降りる。"精鋭無比"を胸に、日頃、想像を絶する過酷な訓練で練り上げた隊員たちの気迫が、広大な習武台に満ち溢れていた。


 1月8日、第1空挺団(団長・山之上哲郎陸将補)による「降下訓練始め」が千葉県・習志野演習場で行われた。同訓練は、年の始めに、空自航空支援集団、陸自第1ヘリ団、東部方面航空隊、富士教導団、中央即応連隊、航空学校霞ケ浦校の支援を受け空挺降下及びヘリコプターを使用した訓練展示を一般公開するもので、人員約400名、空自の輸送機4機、陸自のヘリ14機、戦車・装甲車などの車両41両が参加した。

 はじめに山之上団長以下、最先任上級曹長、空挺教育隊長など指揮官と最年少隊員による降下が行われ、続いて、上空からの落下傘降下視察を終えた一川防衛大臣、折木統幕長、君塚陸幕長をはじめ、防衛省・自衛隊の高級幹部、来賓、一般市民ら約1万人が見守る中、降着戦闘展示が始まった。

 主力部隊による空挺降下に先んじて、習武台の右手から敵が進入という設定で、左手から進入したヘリに搭乗した狙撃隊員、バイク部隊、レンジャー隊員がヘリボン及びリペリングにより潜入・偵察活動を実施。張り詰めた表情の彼らの心境が手に取るように伝わる。広大な演習場に、主力部隊到着前に先駆ける少人数の部隊。見守る我々が心細さを感じた刹那、重機関銃手が搭乗したUH-1ヒューイ(ドアガンハンター)が援護射撃、左手から進入の敵装甲車へAH-64Dアパッチ、AH-1Sコブラ(アタッカー)が射撃。「撃破!」のアナウンスが頼もしく、心躍る。

 安全が確保された後、主力部隊による空挺降下。装備品の最終点検など降下準備中の隊員たちの輸送機内の音声が流れ、否が応にも緊迫感が高まる中、号令を合図に次々と落下傘降下が行われる。引き続き、81ミリ迫撃砲を梱包した軽物料の投下。対戦車ヘリ部隊で敵戦車の前進を阻みつつ、降下後、即、集結地点に集合した小銃部隊、迫撃砲部隊と、偽装された装甲戦闘車、軽装甲機動車など車両を含めた地上部隊が前進する。火砲などの射撃音が耳をつんざき、場内アナウンスはいつの間にかかき消され、近くを通過したヘリや車両の巻き起こす風塵に思わず顔を背けた。やがて、敵勢力を撃破し、習武台の占領を果たして演習場に元通りの静寂が戻った。

 「自衛隊唯一の空挺部隊として、高い士気と技量を誇る隊員諸官の勇姿を目の当たりにし、防衛大臣として大変誇りに感じている」という一川大臣の訓示は、この日の訓練展示を目にした約1万人の観覧者が皆、等しく覚えた感慨だったに違いない。

本年もよろしくお願い申し上げます

新年のメッセージ
自衛隊一丸で任務達成に邁進
統合幕僚長 折木良一陸将

 読者の皆様、国内外の各地で勤務している隊員諸官に謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 昨今の我が国を取り巻く安全保障環境は、中国による軍事力の急速な近代化と活動の活発化、北朝鮮の核・弾道ミサイル問題に加え、国際テロ組織をはじめとする非国家主体による活動等、複雑で不確実なものとなっております。

 このような中、昨年3月11日に発生した東日本大震災において、自衛隊は、その能力を結集し、任務を遂行してまいりました。また、米軍による「トモダチ作戦」は、日米同盟の強い絆を確認し、今後の更なる深化に繋がるものとなりました。更に、関係省庁・自治体等との連携強化の必要性についても再認識いたしました。今回の活動で得た多くの教訓の反映は、今後の災害対応は勿論ですが、我々本来の任務である有事・不測事態発生時の対応を見据えたものでなくてはならず、安全保障環境の変化と国民からの期待の中で、「我が国防衛」の任務を基本とし、時代とともに拡大・多様化した自衛隊の役割を確実に果たすための実効性の向上に繋げてまいりたいと思います。

 一方、海外においても、ゴラン高原、ハイチ、東ティモールのPKO、そして海賊対処行動のため、現在も約1000人の隊員を派遣し、また、南スーダン国造り支援のため、昨年より司令部要員の派遣を開始、現在は、施設部隊の派遣準備を推進しており、しっかりと貢献してまいりたいと考えております。

 本年も隊員諸官とともに、陸海空自衛隊が心を一つにして、「今日に即応し、明日に備える」自衛隊として、日々の警戒監視、各種災害派遣、国外における活動等に万全の態勢を維持し、与えられた任務の達成に邁進してまいりたいと思います。