自衛隊ニュース

USOJAPANが顕彰
陸海空の隊員(下士官)3人
神奈川県横須賀市の在日米海軍横須賀基地で11月9日、「USOJAPANサービスサルート」が開催された。本行事はUSO(米国慰問協会)JAPANが開催する顕彰で、国内本土に駐留する在日米陸・海・空軍・海兵隊および陸・海・空自衛隊員の中で顕著な功績を収めた下士官をたたえるもの。
受賞者は次の3人でそれぞれ顕彰を授与された。
▽佐々木貴子1陸曹=第9通信大隊(青森)▽白倉弘貴3海曹=横須賀地方総監部防衛部(横須賀)▽藤田誠人1空曹=第55警戒隊(沖永良部島)
功績は日ごろの隊務はもちろんのこと、自衛隊の広報および地域への社会貢献、さらに在日米軍との親善交流が評価された。
顕彰式ではサミュエル・J・ロビンソン在日米海軍最先任上級曹長より祝辞を頂き、USO JAPANのナタリー・ローランド氏より受賞者一人ひとりに顕彰盾や記念品が手渡された。
米、FTCを表彰
「SHINKA」で3人に勲章贈る
陸自富士学校隷下の部隊訓練評価隊(富士訓練センター=FTC)の前隊長ら3人がこのほど、米海兵隊と行った「SHINKA」演習の功績により米大統領、米海軍長官からの勲章を都内で授与された。
キャンプ富士・諸職種協働訓練センター(司令官=ニール・オーエンズ大佐)主催の記念行事で表彰されたのはFTC専属の対抗部隊、第1機械化大隊(評価支援隊)の前大隊長、小林知真2陸佐(現中方総監部人事部)、現在FTCで日米調整幹部として海兵隊との連絡調整に当たる桂裕隆2陸佐、前隊長の近藤力也元1陸佐(現予備1陸佐)の3人。
米海兵隊員数百人が礼装で並ぶ中、米海兵隊太平洋基地司令官のステファン・リズスキー少将が「真に実戦的なマルチドメイン環境下における対抗演習(SHINKA)を強力なリーダーシップで実現し日米同盟を極めて強固にした」とたたえ、近藤元1佐に米大統領の名で「メリトリアス勲章」を授けた。小林、桂両2佐には米海軍長官の名で「コメンデーション勲章」を贈った。
通常は慣例により自衛隊側からの上申に基づいて贈られる勲章が米側から自発的に贈られたことに関して近藤元1佐は、「これらの勲章は我々個人にではなく、『日米にとって最高の訓練の場』を実現したFTCに贈られたものだ」と語った。
一昨年度初めて行われたSHINKA演習は昨年も7月に実施され、米海兵隊は自衛隊の強さを改めて高く評価、訓練の継続・拡大を求めている。FTCでは運営(対抗演習)にサイバーや電磁波による攻撃の様相なども取り入れる工夫を重ね、「共同・統合・マルチドメイン化」というビジョンに基づき、演習のさらなる進化を目指している。
食品ロス大幅削減に成功
空自取り組みで優秀な成果
9空団(那覇)
航空自衛隊は令和3年度の組織的な取り組みとして、国際社会および国内で問題視され、また2015年に国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals=「持続可能な開発目標」)においても目標設定されている「食品ロスの削減」への施策を実施した。
令和3年7月1日から令和4年3月31日まで実施した結果、削減率・量ともに最も優秀な成果を出したのが那覇基地だった。
那覇基地はこの取り組みを「TOC(Theory Of Constraints=「制約理論」)に基づいて実施した。この理論は「ボトルネック」という制約を見つけ、集中して改善活動を行うことで効率的に全体最適を達成するという考え方で、空自の他の施策でも成功実績があるもの。
那覇基地はまず、隊員個々の意識低調が不喫食を招き残飯を増加させていると仮定し、「不喫食率」をボトルネックとした。そのため部隊ごとに喫食状況を管理し喫食率を掲示したり、基地内一斉放送で呼びかけたり、し好の調査、調理技術の向上、人気献立の立案等集中的に取り組むことで改善に成功した。
次に第2のボトルネックとして「喫食残」、第3に「配食残および運搬食残」、第4に「主食および主菜の残飯量」と、段階的に「ボトルネック」を設定することで残飯の発生要因を明確にし、逐次対策を講じた。その結果、実施期間内を通して効率的に大きな成果を残すことができた。
前年度(令和2年度)比50%の残飯量削減を目標としていたところ、前年度12万1526キロの残飯量を6万2435キロまで削減することに成功。見事目標を達成することができた。また残飯の処分にかかる費用も前年度401万358円から178万5641円となり、222万4717円も削減することができた。
読史随感
神田淳
<第116回>
日本文明を考える
新年を迎え、日本文明について改めて考えてみた。
最初に、日本文明というものが独立文明として存在するというのが、世界の文明史家の主流の見方であると知っておきたい。サミュエル・ハンチントン(1927-2008)は著書『文明の衝突』で、世界の主要文明を、西欧キリスト教文明、ロシア正教文明、イスラム文明、ヒンズー文明、中華文明、日本文明、中南米ラテン・アメリカ文明の7つであるとした。20世紀最大の文明史家と言われたトインビー(1889-1975)は、日本文明を中国(中華)文明の衛星文明と位置づけていたが、後年独立した一つの文明だと訂正した。また、『源氏物語』の英訳者として名高いアーサー・ウェイリー(1889-1966)は、中国古典にも精通する天才だったが、日本文明は中国文明の派生文明ではないと言っていた。
上記の世界の7つの主要文明の中で、西欧キリスト教文明が最大である。この文明は北アメリカと豪州も含む。西欧キリスト教文明は世界に先がけて近代化し、強力な文明となって世界に大きな影響を与えてきた。他文明に属する人々が西欧キリスト教文明に接し、自国文明の近代化を図ったが、それは西欧化ともみなされた。また、西欧キリスト教文明の優越性を信じる人たちは、この文明に人類文明の普遍性を見、近代化=西欧化=文明の普遍化といった主張もあったが、現代ではこうした考えは否定されている。
改めて文明とは何か。文明(civilization)とは、長期間継続する高度に発達した社会組織、文化及び生活のあり方を共有する人間社会のことであり、その社会に住む人々の変らない精神構造……すなわち、どんな考え方をし、どんな感じ方をし、何を大切に思うかといった人々の心のありよう……が文明を形づくる。ゆえに宗教やエートス(社会における道徳的慣習)が文明のコアとなる。
では日本文明はどういう文明だろうか。日本文明は重層文明とよく言われる。太古から存続する神道の基層の上に外来の仏教、儒教が加わって習合し、近年には西欧の近代文明が加わって重層化している。そして文明の中核にある精神は、神道の清明正直(清く、明るく、正しく、直きこと)であり、正直と誠実をよしとし、多神教であり、自然と調和し、和を重んじる心のあり方である。
日本文明の特色として、言語(日本語)が穏やかであり、人々が論争を好まないこと、人を信頼し、性善説に立つことがあげられる。これは日本人が島国に生き、大陸の民族のような異民族との生死をかけた熾烈な闘争をほとんど経験せずにきたことから成熟した特質であろう。日本文明は人類が本来もっている精神が失われずに成長、発展した特色をもつ現代文明だと思う。
『文明の衝突』でハンチントンは2000年の時点で、中国の将来の台頭と覇権化を予見している。そして、そのとき日本はおそらく中国に順応する道を選ぶだろうと述べ、その理由として、例外的時期はあるが、日本は概ね歴史的に自国が最適と考える世界の強国と同盟して安全を護ってきたことを挙げている。私は中国に順応ということではなく、アメリカと共にあって中国に対抗しながら必要な協調を行うという姿勢で臨むべきだと思う。そう思う背景に中国文明よりもアメリカを含む西欧文明に親近感を抱く意識がある。皇帝(国家主席)と共産党が独裁的に人民を統治する中国文明よりも、自由、民主、法の支配といった西欧文明をよしとする。重層文明の日本文明は思った以上西欧文明に近いのかもしれない。
(令和5年1月1日)
神田 淳(かんだすなお)
元高知工科大学客員教授。
著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。