自衛隊ニュース

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防衛省・自衛隊 地方協力本部

五輪メダリスト新添2尉の学校訪問支援

福島

 福島地方協力本部(本部長・栗木茂幸1陸佐)は10月4日、福島県立田村高校において、パリオリンピック柔道男女混合団体競技銀メダリスト、新添左季2等陸尉の「学校訪問」を支援した。県内屈指の強さを誇る同校柔道部の激励を目的として開催された。

 新添2尉は、パリオリンピックでの体験談や今後の目標などを語ったほか、生徒たちとの意見交換や柔道部員との実技披露などを行なった。

 生徒たちは真剣な面持ちで熱心に耳を傾け、積極的に質問していた。実技披露では、間近で見る銀メダリストの繰り出す技に大歓声が起きた。

 生徒からは「銀メダリストの話を直接聞くことができて感動しました」、「技を出す動きが早くてびっくりしました」、「教えていただいた技のポイントについて今後試合で活用できるよう練習に励みます」等の感想があった。最後に田村高校より新添2尉へ花束が贈呈された。

 福島地本は引き続きさまざまな支援を通して各学校との良好な関係を築くことで、自衛隊に対する認知と理解を深める活動を行っていく。

愛知
 愛知地方協力本部豊田地域事務所(所長・安藤幸治2等陸尉)は9月28日、中京大学柔道部の学生に自衛隊体育学校の説明を行い、併せて柔道団体銀メダリストである新添選手が技術指導を行った。
 新添選手は女子柔道部員たちとコミュニケーションを取りながら練習を進め、練習の後半には新添選手の得意技でもある「内股」の仕掛けるタイミングや、対戦相手との距離間など詳しい解説とともに、実技を交えた技術指導を実施した。練習後、新添選手は銀メダルを持って中京大学柔道部の部員達との記念撮影を行った。
 部員からは「技のことだけでなく普段の練習からの心構えなどメンタル面のアドバイスも頂き、本当に充実した練習ができました」等の感想があり、充実した技術指導となった。中京大学からは毎年多くの学生が自衛隊に入隊しており、今年度は柔道部からも志願者が出ている。
 愛知地本は自衛官等募集を取り巻く環境が厳しい中地域や学校、各協力団体との連携を強化して一つ一つのイベントを大切にして自衛隊の魅力の情報発信に努め、募集目標の達成に邁進する。

合同企業説明会<山口>
 山口地方協力本部(本部長・東直史1陸佐)は9月9日、山口市内のコンベンション施設において、自衛隊援護協会広島支部主催による令和6年度山口県任期制隊員等合同企業説明会を担任した。
 山口県内企業への就職を希望する陸海空自衛隊の退職予定隊員60名の隊員が参加。県内に事業所を持つ製造、建設、サービス業等多様な業種の参加53企業の中の、それぞれが再就職先として関心を持つ企業との面談に臨んだ。
 隊員は終始真しな姿勢で企業採用担当者の説明を聞き逃さないよう真剣な眼差しで熱心に耳を傾け、就職に対する不安感とそれ以上の期待感を募らせていた。
 隊員から「気力や体力には自信がある。まだ働き盛りなので再就職先として検討している運転、建設、産業などの業種を中心に面談に臨んだ」、「企業からの説明を聞いて具体的に働くイメージができた」といった意見が聞かれるなど、有意義な説明会となった。
 参加した輸送関連企業からは「自衛隊OBの社員には活躍していただいており信頼している。ぜひ人材確保につなげたい」と前向きな意見が寄せられた。
 会場内には隊員の疑問解消や不安払拭のため山口公共職業安定所等による就職相談コーナーも設けた。参加企業に対して予備自衛官等制度説明を実施し、制度理解の促進や協力関係の構築を図ったほか、隊員を指導監督する中隊長等に対する雇用協力企業主による講演会を併催し、隊員指導の識能向上の一助とした。
 山口地本は「国防に身を投じた隊員の再就職をフォローすることは国の責務であるとともに、自衛隊で付加価値ある人材を育て、社会に還元することは自衛隊の使命の一つだと思う」としている。

読史随感<第161回>
神田淳

自由民主主義が良い⑵

 近年世界的に民主主義の後退が見られる。日本でも国民生活と国の安全に対する不安が増し、国政への不満は多いが、日本は迷わず、民主主義でやっていくしかないと思う。世界を見て、やはり民主主義国が良い国だと思われるのと、歴史的に代議制自由民主主義が最も進んだ国の統治体制だと私は思う。

 民主主義の歴史は古く、議会制度の歴史も古いが、代議制民主主義が興隆したのは近代である。19世紀後半、イギリスのジョン・スチュワート・ミルは、代議制民主主義を最善の政治体制と見なした。イギリスは17世紀の終わりには議会政治を確立し(名誉革命)、18世紀後半には議院内閣制を確立、政党政治を定着させた。イギリスの興隆と相まって、その代議制民主主義が良き国家統治の見本となった。

 19世紀、英、仏、米を始めとする欧米諸国で代議制民主主義が進展した。選挙権が拡大、普通選挙に向けた動きが加速した。19世紀後半には欧米諸国を越えて広がり、20世紀は民主主義の世紀となった。アメリカは二つの世界大戦で民主主義の擁護を掲げて戦い、民主主義が世界的な大義となった。しかし、このことは20世紀における民主主義の順調な発展を必ずしも意味しなかった。ドイツ帝国は第一次大戦後、民主的なワイマール共和国となったが、ワイマール共和国の議会制度は独裁者ヒトラーを生んだ。第二次大戦に勝利した社会主義国ソ連は、戦後欧米民主主義国と対立(冷戦)、20世紀末には崩壊した。冷戦終結後、世界は自由な民主主義に収斂していくと見られたが、そう単純には進んでいない。民主主義の発展の歴史はまことに紆余曲折の歴史であり、今後も紆余曲折しながら進むだろう。

 日本の民主主義の発展も、世界史の一部として見ることができる。19世紀後半、代議制民主主義が欧米諸国を越えて広がったが、その一つが日本。明治新政府は「広く会議を興し、万機公論に決すべし」を国家運営の基本方針とした。石橋湛山は言う、明治の真の遺産とは、日本が帝国の仲間入りしたことではなく、日本が民主主義と言論の自由を重視する国になったことだ、と。日本は19世紀末、憲法を定め、選挙を実施し、帝国議会を開いた。20世紀始め大正デモクラシーとなり、普通選挙も実現した。しかし、昭和になって軍部が国家を支配し、軍国主義化。なお議会は存続したものの、民主主義は窒息した。そして敗戦。GHQの草案になる日本国憲法(1946年成立)は、世界におけるきわめて正統的な民主主義思想を体現する憲法であった。戦後の日本はこの憲法のもと、民主主義の国として生きてきた。

 日本は今後も民主主義を最良と信じてやっていくしかないと思うが、代議制民主主義の具体的なあり方に「正解」は存在しない。今後のため、留意すべき二点を挙げたい。一つは、「民主主義のガバナビリティ」の問題。民主主義は民意を尊重するゆえ、必要な政策だが人々に困難をもたらす政策決定はなかなか受け入れられない、という問題がある。これについての簡単な処方箋は無い。国民の高い見識と良識に依るしかなく、結局民主主義の成否も、国民の民度によるということになる。もう一つは、行政官僚との関係。代議制民主主義は高い専門能力をもつ行政官僚による専制に陥る可能性を秘めている。自民党政権がそうだったと認識する民主党が2009年政権を獲得したとき、「官僚打破」を掲げた。しかし、それで民主党政権がうまくいったとはいえない。民意を受けて選ばれた政治家は、専門能力をもつ官僚を排除するのではなく、完全に使いこなす高い能力と識見を持たなければならない。

(令和6年11月15日)


神田 淳(かんだすなお)
 元高知工科大学客員教授。
 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』(https://utsukushii‐nihon.themedia.jp/)などがある。

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