自衛隊ニュース

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統合作戦司令部が発足

陸海空自を一元指揮

統合作戦司令部

 「ここ東京では桜が開花を始めました。統合作戦司令部はこの桜の開花と共に出発し、覚悟を新たに司令部隊員が一丸となって任務に精励します」。初代司令官の重責を担う南雲憲一郎空将は、檀上でこう誓った。

 3月24日、陸・海・空自衛隊を一元的に指揮する常設の「統合作戦司令部」が、約240名態勢で市ヶ谷に新編された。防衛省での新編行事は、来賓に防衛大臣以下高級幹部、歴代防衛大臣や国会議員、駐日米臨時大使、在日米軍司令官、豪統合作戦本部長、30カ国以上の在京武官や軍関係者等を迎えて盛大に行われた。また司令部隊員の家族を招待し、防衛省・自衛隊への理解を深めてもらった。
平素から有事までシームレスに事態対応
 隊旗を授与した中谷元・大臣は「あらゆる事態に対して24時間365日、柔軟かつ迅速に対応できる体制を構築してほしい」と訓示し、「(統合作戦司令部発足は)歴史的な意義を持つものだ。その自信と誇りを胸に、自らの使命の重要性に思いを致し、高い規律と緊張感を保ちながら任務に精励されることを切に望む」と激励の言葉を贈った。
 南雲司令官は、「平素から有事に至るまで、シームレスに事態へ的確に対応することになる。我々はこの重要な任務、責務、役割を防衛大臣の指揮の下で的確に果たすべく、より精強で健全な部隊を不断に追求する」と力強く述べた。
「統合運用体制強化の一丁目一番地」
 吉田圭秀統合幕僚長は、「防衛省・自衛隊が進める統合運用体制の抜本的強化における一丁目一番地が、本日の統合作戦司令部の新編だ」と発足の意義を強調。南雲司令官については、新編準備委員長を務めたことに加え、「昭和の義理人情と令和の先進的な知性を併せ持つ、まさに初代統合作戦司令官として陸海空自の中で最適任者だ」と太鼓判を押した。
 常設の統合作戦司令部は、これまでの陸海空自に加えて宇宙・サイバー等の領域を広範囲に指揮するため、平時から領域横断作戦の能力を練成でき、統合運用の実効性を向上できる。また、在日米軍を再編成して新設予定の「統合軍司令部」をカウンターパートに、より緊密な連携が取れることで日米対処能力の強化を図る。会見で南雲司令官は「これまでの共同訓練の成果・教訓を踏まえて、共に力を結集して、日米共同作戦能力の進展を図っていきたい」と述べた。
<統合作戦司令部のシンボルマークを披露>
 統合作戦司令官最先任の佐藤大和准陸尉が除幕し、副司令官の俵千城海将から「司令部が信条とする『一源三流』を表現」と説明。一源三流について南雲司令官は式辞の中で「我々は誠の心を源として、ひとつ、一身の利害を超えて公に尽くすことを誇りとし、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって国民の負託に応える。ひとつ、戦わずして勝つ。戦わば勝つ。このため切磋琢磨し、組織力を鍛え、厳正な規律と精強さを追求する。ひとつ、仁愛を持って人を大切にし、明るい気風と相互信頼の中に健全なる組織を共に育む。この一源三流を心の拠り所として、国防の任務に当たる」と意気込みを語った。

中谷大臣、英大臣と会談

日英間の一層の連携深化で一致

(防衛省提供)

写真:握手を交わす中谷大臣(右)とラミー大臣=防衛省提供


 中谷防衛大臣は防衛省で3月6日、訪日中のラミー英外務・英連邦・開発大臣の表敬を受けた。

 会談では冒頭、中谷大臣が訪問を歓迎する旨を述べ、ラミー大臣からは訪問実現に対する謝意が示された。地域情勢について意見を交わし、アジアおよび欧州の最も緊密な安全保障上のパートナーとして相互に一層連携を深めていくことで一致。欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分であるとの認識も共有した。

 さらに両大臣は、今年計画されている英空母打撃群の日本を含むインド太平洋地域への派遣やグローバル戦闘航空プログラム(GCAP)などについて触れ、日英間の安全保障上の協力が深化していることを歓迎した。

陸自がフォーラムを開催 産官学の連携強化図る

_陸自フォーラム

写真:基調講演を行う森下陸幕長


 2月18・19日、東京の三田共用会議所で「令和6年度陸上自衛隊フォーラム」が行われた。平成26年の初開催から22回目となる今回は「ウクライナにおける戦争が陸戦に及ぼす影響と課題」がテーマ。陸自は、将来戦に向けて「国家総力としての研究開発速度」に危機感を持つ。本フォーラムでは防衛省・自衛隊関係者のほか、他省庁、企業関係者、協力団体、同盟同志国の軍関係者ら約1000人が参加して産官学による連携強化を図った。2日にわたり、基調講演やパネルディスカッション等が行われたほか、防衛関連企業約40社による無人機やAI関連の展示会も設けられた。

 開会にあたり廣惠次郎教育訓練研究本部長は、ウクライナ戦争の教訓から「産官学の知見を結集し、未来に向けた具体的な施策が不可欠だ」と述べた。続く基調講演では、森下泰臣陸上幕僚長が将来の陸自の方向性を説明し「戦場の変化に適合するための試行錯誤や、新技術の実践・投入までの時間を短縮する方策が不可欠だ」と述べ、本フォーラム開催の意義を強調した。


「衛生機能の変革」の中核に

衛生学校で2新規集合教育開始

衛生学校で2新規集合教育開始

合同教育開始式に臨んだ学生たち


 陸自衛生学校(学校長・水口靖規陸将補=三宿)は1月15日、「衛生機能の変革」のための第1期集合教育「ダメージコントロール手術」、同「航空後送間救護」の合同教育開始式を同校で行った。

3文書受けて
 二つの新規集合教育のうち「ダメージコントロール手術」は、戦闘外傷に対するダメージコントロール手術(=DCS、患者の状態を後送に耐えうるレベルまで安定化させる応急的手術)、およびダメージコントロール蘇生(=DCR、DCSを支えるための蘇生処置等)の知識・技術を修得させるとともに、チームとして任務が達成できる要員を育成する。
 教育期間は約7週間。自衛隊中央病院(三宿)などから10人(医官、看護官、准看護師)が入校した。
 「航空後送間救護」は、同救護に必要な知識・技術を修得させ、同救護要員として島嶼間の患者後送に際しクルー単位で航空機に添乗し、救護を実施する要員を育成する。
 教育期間は約8週間。自衛隊中央病院(三宿)などから5人(医官、看護官、准看護師)が入校した。
シームレスな医療・後送態勢を
 開始式には、大友災害医療センター病院長、平山自衛隊中央病院副院長、菊池陸幕衛生部長らの来賓、水口学校長をはじめとする学校職員、入校学生の合わせて約50人が出席。両集合教育の参加学生を代表して力武2陸佐(自衛隊中央病院)、和田3陸佐(同)がそれぞれ入校を申告した。
 2022年12月に策定された安全保障関連3文書の「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」は、第一線から最終後送先までのシームレスな医療・後送態勢の強化などを柱とする「衛生機能の変革」を提示している。
 水口学校長は式辞で衛生学校が「衛生機能の変革」の実効性向上のための取り組みを進めているとし、「本集合教育はこれらの取り組みの中核であるとともに、最新の自衛隊衛生を象徴するものでありその期待は大きい」と述べた。
 さらに、「(両集合教育による態勢強化は)前線で戦う隊員に勇気を与え、その家族に安心感を与え、日本の平和と安定に貢献することになる。諸官にはその先陣を切ってもらいたい」と学生たちを激励した。
 衛生学校教育部教務班長の福留3陸佐は取材に対し「チームビルディングが重要。医師、看護師、准看護師の三つの医療特技を持つ隊員が一致団結しチームワークを持って処置することが求められる」と話した。

戦傷治療集合訓練も公開
有事想定し
 陸自衛生学校は1月13~17日、「令和6年度戦傷治療集合訓練」を同校で実施。15日、訓練の様子を報道公開した。
 集合訓練では、有事を想定した収容所での戦傷治療をシナリオに基づいて行い、参加チームが統裁部の評価を受けた。陸上総隊と各方面隊(北方、東北方、東方、中方、西方)の衛生科部隊から6チーム(1チーム7人)が参加した。
 1チームずつが順に、それぞれ異なる設定状況に対処した。体育館内に開設された収容所を想定した施設に3人の傷病者(人体シミュレーション模型)が相次いで運ばれ、隊員たちは負傷箇所・度合を目視等で確認。声を掛け合いながら、救急車(治療施設)に引き継ぐための応急治療を迅速に行った。
 副課目として、別な場所では8人の負傷者へのトリアージ(傷病の状態に応じて治療の優先度を決める)も行われた。
 訓練の立案・準備にあたった衛生学校企画室の田脇3陸佐は、「評価する運営側も育成することを目的とし訓練を準備した。また、人体シミュレーション模型を用い、これまで実現できなかった外傷に特化したリアリティーある状況を付与した。傷病者3名が到着するタイミングをばらばらにし、突発的な受け入れに対してしっかりと治療と後送の優先順位を決定し対応できるかを確認した」と話した。
 取材を受けた西方チーム班長、香取陸曹長(42即機連=北熊本)は、「時間差で患者が来る状況に対し、どう隊力を分散し運用するかを迷った。参加メンバーを中心に、他の小隊員に普及したい。また、成果を師団に持ち帰り、師団の中でも共有したい」と力強く語った。

令和7年のスタート切る 訓練始め

アンカーを走る楠見師団長

アンカーを走る楠見師団長(第6師団)


師団長も激走<6師団>

 第6師団司令部(師団長・楠見晋一陸将=神町)は、令和7年1月7日に年頭行事及び訓練はじめを実施し、新たな気持ちで令和7年の隊務を開始した。

 年頭行事においては、楠見師団長をはじめ各部課長等が新年の決意を表明し、満願成就の願いを込めて新しい達磨に目入れを行った。
 引き続き、訓練はじめとして各部課室を5グループに分け、グループ対抗による武装走を司令部庁舎周辺において実施した。各チームが一丸となり、隊員1人ひとりが白熱した走りを繰り広げた。応援にも熱が入り、一体感のある訓練はじめとなった。
 令和7年も、いかなる任務も完遂しうる第6師団を創造しつつ、隊務に邁進していく。

十勝周辺空域で航空
安全祈願<5旅団>
 第5旅団(旅団長・岸良知樹陸将補=帯広)は、1月14日、帯広駐屯地十勝飛行場及び十勝周辺空域において、同旅団唯一の航空科部隊である第5飛行隊(隊長・村山2佐)の飛行能力を向上させるとともに、1年間の航空安全を祈願することを目的に令和7年年初飛行訓練を実施した。
 訓練当日は多用途ヘリコプターUH1J、3機をもって、帯広十勝飛行場を離陸し、十勝周辺空域を高度約760メートルで約1時間飛行しつつ、第5旅団長が上空のヘリコプターから「第5旅団は道東第一線部隊として、道東の守りを固めるとともに、いついかなる任務に対しても、これに即応し持続性及び強靭性を発揮して任務を完遂し得るよう精進する事が必要である。新たな1年の幕開けに際し、目標を定め、目標達成に向け日々努力してもらいたい」と年頭の辞を述べるとともに、令和7年の航空安全を祈願し、同飛行訓練を終了した。
 第5旅団は、令和7年を更なる飛躍の年として、日々練磨を重ね、進化を遂げていく。

新年 棒取りの乱<都城>
 都城駐屯地(司令・石岡直樹1陸佐)は1月9日、駐屯地グラウンドにおいて訓練始めを実施した。
 訓練始めは、綱1本(9点)・竹2本(各5点)・木銃101本(各1点)をグラウンド中央に配置し、2個チームが左右それぞれ50メートル離れた開始線より一斉にスタートして綱等を奪取し、総得点(計120点)を競うという都城駐屯地オリジナルの競技を各中隊等によるトーナメント方式で実施した。当日は快晴の空の下、自衛隊家族会及び駐屯地モニターの方々にご参列を頂き、軽快ならっぱ手の「突撃」の吹奏を皮切りに競技を開始した。隊員らは強固な団結力を遺憾なく発揮して一心不乱に競技に取り組み、白熱した対決の末、第43普通科連隊第4中隊が見事優勝を勝ち取った。
 隊員らの気迫に満ちた様子を見た参列者からは、「隊員さんは迫力があり、普段から厳しい訓練を積んでいるのが見て分かります。とっても頼もしいです」等の感嘆の声が上がった。
(12面にも訓練始め特集)





陸自空挺団も訓練始め

大臣率先跳び出す

 陸自第1空挺団(習志野)の降下訓練始めが1月12日、習志野演習場で行われ、中谷大臣が視察し、隊員らを激励した。訓練始めにはアメリカをはじめとする11の同盟国・同志国等も参加した。

 訓練始めでは、部隊展開の様相も披露。先遣部隊による潜入、ヘリ火力による事前制圧、主力による空挺降下、ヘリボン部隊・即応機動部隊による上陸、さらに同盟国・同志国来援と続いた。

 訓練に先立ち、中谷大臣は高さ11メートルの跳び出し塔からの跳び出し体験も行った。


師団戦車射撃競技会開く〈7師団〉

最高難度の射撃を追求

7師団戦車射撃競技会

横行行進射撃


 第7師団(師団長・松永浩二陸将=東千歳)は、12月4日から10日までの間、北海道大演習場島松地区(第1戦車射場)において、令和6年度師団戦車射撃競技会を実施した。

 今年度は、第7師団から26コ小隊、第2師団、第11旅団からオープン参加として6コ小隊の合計32コ小隊(90式戦車23コ小隊、10式戦車9コ小隊)が参加する陸上自衛隊最大規模の実弾射撃競技会が行われ、優勝を目指してしのぎを削った。

 本競技会は、戦車4両による小隊戦闘射撃を課目として10式戦車及び90式戦車を区分することなく同一の要領により実施し、今回は新たに斜めに移動する戦車砲用目標等を増設し、最高難度の射撃を追求した競技会となった。

日本一の戦車部隊を

決める競技会

 松永師団長は、競技会に先立ち統裁官訓示で、「これまでの練成成果を最大限に発揮せよ」「安全管理を徹底せよ」の2点を要望した上で、「師団の競技会と言えども、日本一の戦車部隊を決定する競技会である」と述べた。

 競技の結果、各部隊は練成の成果を存分に発揮し、部隊対抗連隊の部においては第73戦車連隊が、部隊対抗隊の部においては第11戦車隊が、中隊対抗の部においては第73戦車連隊第3戦車中隊、小隊対抗の部においては第72戦車連隊第4戦車中隊第1小隊がそれぞれ優勝を勝ち取った。また、戦車直接支援部隊の部は、部隊対抗の部で優勝した第73戦車連隊を支援した第7後方支援連隊第2整備大隊第3戦車直接支援中隊、及び第11戦車隊を支援した第11後方支援隊第2整備中隊戦車直接支援小隊が表彰された。

 また競技間、多数の近隣自治体関係者、協力団体役員等が研修で見学し、戦車射撃の迫力と優勝に向かってひたむきに競技に臨む隊員の姿を直接確認した。

 第7師団は引き続き、防衛力の抜本的強化のため、先端戦力たる戦車戦闘力を最大限発揮できるよう、更なる高みを目指して日々練成に邁進していく。