自衛隊ニュース

ゲッキーのイラスト

本格的な活動を開始
統合任務部隊

フィリピンで「SANGKAY作戦」

 台風30号で甚大な被害を受けたフィリピンに対し、11月12日に防衛大臣から「国際緊急援助活動の実施に関する自衛隊行動命令」が発令され、医療活動等を実施。同15日に行動命令の一部変更があり国緊隊の態勢を拡充。17日にはフィリピン現地運用調整所の設置と比国際緊急援助統合任務部隊の編成を終え、現在も約1200名の隊員が現地で医療・防疫活動、救援物資等の輸送等を行っている。


 11月13日、KC—767が空自小牧基地から医療チーム要員と医療用器材等の輸送開始。17日、自衛隊医療チームによる活動開始。C—130輸送機で空自小牧基地から救援物資等を空輸開始。18日、陸自車両や活動物資を搭載した護衛艦いせ・輸送艦おおすみが海自呉基地を出港。20日、タクロバンからマニラへC—130輸送機で被災者輸送を開始。21日、今回の活動が「SANGKAY(サンカイ)作戦」と決定。現地のワライ語で友達という意味。24日、本格的な活動を開始。国緊隊の海上拠点をレイテ湾及び周辺海域の護衛艦いせ・輸送艦おおすみ・補給艦とわだの位置とする。26日、タクロバン市近郊の浜辺にLCACで上陸、衛生状態が悪化している避難施設等で防疫活動を開始。27日、米軍の派遣部隊指揮官ヒュー・ディー・ウェザーオール海軍准将が護衛艦「いせ」にオスプレイで来訪し、フィリピン国際緊急援助統合任務部隊指揮官 佐藤 壽紀海将補、医療・航空援助隊長 浅見 勇学1等陸佐等と今後の援助活動における日米連携について会談。30日に比レイテ島・サマール島に移住する133人の日本人全員の無事が確認された。

 12月7日には、小野寺五典防衛大臣が現地で活躍する隊員を激励に行く予定。診療患者数は12月4日現在で延べ2186名を数える。


フィリピン現地運用調整所

基本任務:フィリピン共和国関係機関、関係国等との調整等

定員:約10名

指揮系統:防衛大臣の指揮を受ける

フィリピン国際緊急援助統合任務部隊

基本勤務:医療・防疫活動、救援物資等の輸送等

定員:約1170名

指揮系統:自衛艦隊司令官の指揮を受ける

指揮官:第4護衛隊群司令 佐藤 壽紀海将補

 ・医療・航空援助隊長:第6後方支援連隊長 浅見 勇学1等陸佐

構成部隊と主要装備

○統合任務部隊司令部

○医療・航空援助隊=UH-1×3機・CH-47×3機

○海上派遣部隊=護衛艦いせ・輸送艦おおすみ・補給艦とわだ

○空輸隊=KC-767×2機・C-130H×7機・U-4×1機

平和をもたらす「力」表現

25年度自衛隊音楽まつり
2日間で計約3万5000人を魅了

 11月15、16の両日、日本武道館で平成25年度自衛隊音楽まつりが行われた。約1000人が出演した全6公演に、16日夜の安倍晋三内閣総理大臣、小野寺五典防衛大臣、若宮健嗣・木原稔両政務官、統幕長・陸海空各幕僚長、17日午前の武田良太副大臣をはじめ約3万5000人が来場した。


 今年のテーマは「力 POWER FOR PEACE」。全4章、約2時間の公演の中で、自衛隊の持つ平和のための力を音楽で表現した。「陸海空の力と現代戦で必要な統合、協同の力を音楽の力で表現したい。自衛隊は日本の領土・領海・領空を、そして平和を守る確かな存在であるという、安心を感じて頂きたい」(小野寺大臣)

 第1章「大地」は陸上自衛隊を中心にした演奏。方面隊からは2年ぶりに東北方面音楽隊、3年ぶりに西部方面音楽隊が出演した。東北方は、復興支援を意図して製作されている大河ドラマ『八重の桜』の使用曲を、西方は沖縄をテーマに『島唄』をドリル演奏した。

 自衛隊・日本国の盟友であるゲストバンド、在日米陸軍軍楽隊のテーマは「トモダチ」。マイケル・ジャクソンの『ユー アー ナット アローン』では「君は独りきりじゃない」としっとりと歌い上げ、一転してEXILEの『ライジングサン』では、弾ける笑顔で日本語を熱唱した。

 陸上自衛隊中央音楽隊(隊長・武田晃1陸佐)は重厚さで聴衆を唸らせる。第302保安警務中隊との競演は力強さをいや増した。テレビ番組「料理の鉄人」のメインテーマとしても有名な『ショウ ミー ユア ファイアートラック』を、軍楽隊の真骨頂とも言える直線的な行進を強調した構成でドリル演奏した。

 第1章の最後は陸自と在日米陸軍の合奏で『勇者達の夢』。『消灯らっぱ』をモチーフにした同曲は厳しい訓練と、それを癒す眠りが題材。表に見え辛い自衛隊の常の努めを表現した。

 第2章「大海」は海上自衛隊を中心に海をテーマとした演奏。先陣を切り登場した防大儀仗隊のファンシードリルは、軽快な笛の音とドラムに乗って若い肢体が躍動する姿が清清しさに溢れていた。(3面へ続く)


自衛隊の統制美
圧倒的迫力で魅了

25年度観閲式

人員約4000名 車両約240機 航空機約50機

「力による現状変更は許さない」安倍首相を観閲官に

 10月27日、陸上自衛隊朝霞駐屯地の朝霞訓練場で「平成25年度自衛隊記念日観閲式」が行われた。安倍晋三内閣総理大臣を観閲官に、主催者・小野寺五典防衛大臣、実施責任者・岩田清文陸幕長、執行者・磯部晃一東部方面総監、観閲部隊指揮官・反怖謙一師団長、観閲飛行部隊指揮官・田中重伸第1ヘリコプター団長で執り行われた。観閲部隊参加人員は約4000名、戦車や装甲車等車両約240両、戦闘機・輸送機・ヘリ等航空機約50機によるパレードの統制美は圧倒的な迫力で、観る者を感嘆させた。


 観閲官である安倍晋三総理大臣が臨場し、観閲式は始まった。『「誰か、いませんか。」「一人でも多く救出したい」との思いが込められた、この自衛隊員の声は、多くの国民の耳に残っています。伊豆大島では、この瞬間にも、自衛隊員が捜索を行っており、いかに頼もしいことか』『力による現状変更は許さない、との我が国の確固たる国家意思を示す。そのために、警戒監視や情報収集をはじめとした様々な活動を行っていかなければならない』などと訓示した。

 観閲行進の先頭は徒歩部隊。陸・海・空合同音楽隊による演奏の中、観閲部隊本部に続いて行進したのは、学生隊。防大・医大・高等工科学校生徒隊と続く。その後、陸上自衛隊普通科部隊・空挺部隊の後に海上自衛隊部隊・航空自衛隊部隊・高等看護学院学生隊・陸海空の女性自衛官部隊が観閲台の前を通過して行った。陸自部隊の行進には「陸軍分列行進曲」、「大空」、海自部隊の時は「軍艦行進曲」、空自部隊は「空の精鋭」で行進。高等看護学院は来年度から医大に併合されるため、最後の観閲式参加となった。

(7面に続く)

伊豆大島災統合任務部隊を組織
輸送力を最大限活用

組織力を活かした一元的な運用

 10月16日、大型で強い台風26号のため伊豆大島の中心部(東京都大島町元町)の広い範囲で土砂災害が発生した。同日10時20分、東京都知事から第1師団長に行方不明者の捜索活動のため災害派遣要請があった。天候回復を待ち11時28分、陸上自衛隊東部方面航空隊のUH—1が情報収集のために立川駐屯地を離陸。11時58分、先月命名されたFAST Force(初動対処部隊)が練馬駐屯地をUH—60で離陸し、12時40分現地到着後速やかに行方不明者捜索活動を開始した。13時50分海上自衛隊第21航空群のUH—60Jが患者輸送のため館山基地を離陸。15時到着後3名の患者を収容。15時12分航空自衛隊第3輸送隊のC—1が大島町長の輸送のため美保基地を離陸。10時40分「離島災害であることを踏まえ、各自衛隊はもとより、関係省庁と協力して救助活動等に全力をあげること」と小野寺五典防衛大臣は訓示した。

 三原山の中腹から沢沿い東西約1.2kmに渡り大量の土石流が元町港河口まで押し寄せた今回の伊豆大島土砂災害。人口密集地帯の複数の集落を丸ごと呑み込む大規模なもので、死者30人、行方不明者14人に上った(23日現在)。山積した家屋の瓦礫や大量の流木等に阻まれての広範囲の活動。懸命の人命救助・捜索・救援などを継続し、警察、消防などと共に、発災直後は約30人いた行方不明者を発見していった。

 20日21時49分には、小野寺五典防衛大臣が「平成25年(2013年)台風第26号に対する災害派遣の実施に関する自衛隊行動命令(自行災命第15号)を発令。東部方面総監を指揮官に伊豆大島災統合任務部隊が組織された。指揮下には、陸上自衛隊の部隊等は東部方面総監を指揮官とする「伊豆大島陸災部隊」、海上自衛隊の部隊等は横須賀地方総監を指揮官とする「伊豆大島海災部隊」、航空自衛隊の部隊等は航空支援集団司令官を指揮官とする「伊豆大島空災部隊」を組み入れた。

 離島であり交通が困難な伊豆大島であるため、陸自・海自・空自の航空部隊、海自輸送艦「おおすみ」、空自C—1輸送機、空自C—130輸送機は、昼夜の別なく大島空港と内地の各駐屯地・基地との間を往復し続けた。大島・元町港の使用が出来ないため、「おおすみ」に搭載された車両、ドーザや油圧ショベルなどの施設機材、物資などは海自のエアクッション揚陸艇LCACで陸揚げされた(LCAC増強のため輸送艦「くにさき」も派遣された)。各航空部隊は自衛隊の人員・車両・機材・物資の輸送だけでなく、消防車両や警察車両などの輸送にも携わった。24日現在、土砂災害防止の土のう積み、災害発生時に迅速に対応できるよう部隊を島内の南北に分散配置するなど、台風27号による二次災害に備えている。

【派遣部隊】▽陸自 1普連、1後支隊(練馬)、32普連(大宮)、34普連(板妻)、1飛行隊(立川)、12ヘリ隊(相馬原)、1施設団(古河)、東部方面通信群、東方後支隊、1施設大隊、東方総監部付隊(朝霞)、1高射特科大隊、1戦車大隊(駒門)、12施設中隊(新町)、44普連隊(福島)、1ヘリ団(木更津)、30普連(新発田)、東北方増強派遣部隊(44普連、11施設群、6施設大隊、6後支隊)▽海自 第21航空群(館山)、第1輸送隊(呉)▽空自 2輸空(入間)、入ヘリ隊、3輸空(美保)、1輸空(小牧)

22日現在派遣規模・延べ人員約4050名、車両約633両、航空機68機、艦艇17隻


7年後の活躍に期待

航空自衛隊
国体開会式にブルーインパルス

 9月28日、東京都調布市の味の素スタジアム。第68回国民体育大会「スポーツ祭東京2013」の総合開会式に航空自衛隊のブルーインパルスがスモークを焚いて登場。1964年の東京オリンピックを思い出させる風景に観客は大歓声。7年後の東京オリンピックでのブルーインパルスの活躍に益々期待が掛かる。

滑走路被害復旧訓練

航空自衛隊

2時間41分で終了

基準時間を大きく上回る

空自北部航空施設隊を中心に213人が参加

陸自矢臼別演習場で

「北空の被害復旧能力が高く精強な部隊であることを確認した」

 航空自衛隊の基地滑走路が爆撃による被害を受けた際、その被害を素早くそして的確に復旧する訓練を、実際の爆弾を使用して実施する「実爆を伴う滑走路被害復旧訓練」が9月9日、北海道の陸上自衛隊矢臼別演習場で行われた。訓練には空自北部航空施設隊を中心とする213人が参加、訓練統裁官は北空司令官の森本哲生空将が務めた。

 訓練は3空団のF2戦闘機2機が演習場内の飛行場(模擬滑走路)に上空から進入、模擬対地攻撃を実施。それに合わせて事前に地上に設置した爆弾が爆破された。

 爆破後に資料収集隊が安全を確認して爆破現場に進出、直径4m深さ2mの爆破弾痕2か所の被害を確認して直ちに滑走路復旧を開始した。まず、弾痕場所までの滑走路上に残る小弾痕の復旧し、その後2カ所の弾痕を復旧。その後被害復旧マットを設置して滑走路としての機能を回復させた。被害復旧は基準時間を大きく上回る2時間41分で終了し、日頃の厳しい訓練の成果を十分に発揮することができた。

 訓練の様子を陸自や防衛局、報道関係者ら約140人が研修、爆破被害や復旧訓練の様子を見学したり、復旧用資材・器材の展示説明を受けた。

 訓練終了後、統裁官の森本司令官は「北空の被害復旧能力が高く、精強な部隊であることを確認した。本訓練で得た知識、経験をそれぞれの部隊で練成訓練に活用し、更なる被害復旧能力向上の資とせよ」とコメントした。


東京五輪決定祝う
陸自中央音楽隊定期演奏会で

東京オリンピックマーチを演奏
「日本」テーマにした作品

小野寺大臣来場

自衛官メダリスト出演

 2020夏季オリンピック・パラリンピックの開催都市を決定する国際オリンピック委員会(ICO)総会が9月7日(日本時間8日早朝)にアルゼンチンのブエノスアイレスで開催され、東京が選出された。同8日午後2時から墨田区のすみだトリフォニーホールで行われた第140回陸上自衛隊中央音楽隊定期演奏会では、アンコールの時間に東京五輪招致決定を祝い、ファンファーレ隊を皮切りに1964年東京五輪開会式で使用された「東京オリンピックマーチ」を演奏した。また、ステージに「祝 東京オリンピック2020」の横断幕を掲示、ゲストとして体育学校・ロンドン五輪レスリング金メダリスト米満達弘2陸尉、ボクシング銅メダリスト清水聡2陸尉が出演した。演奏会には小野寺五典防衛大臣、山下裕貴陸上幕僚副長、磯部晃一東部方面総監、福本出海上自衛隊幹部学校長ら省高官をはじめ1600名以上が来場。演奏会のテーマを「日本」とし、「日・米・英の作曲家が、日本的な音階や旋律と西洋音楽の書法をミックスさせ、それぞれの作風で日本を描いた作品」(武田晃中央音楽隊隊長)の数々が演奏された。

陸自最大実弾射撃演習

平成25年度総合火力演習

敵部隊の離島侵攻想定

 8月25日、静岡県御殿場市の東富士演習場で「平成25年度富士総合火力演習」の一般公開が行われた。富士学校(学校長・武内誠一陸将)、富士教導団(団長・市野保己陸将補)を中核に、人員約2,300名、戦車・装甲車約80両、各種火砲約50両、航空機約30機、その他車両約600両が参加。小野寺五典防衛大臣、西正典防衛事務次官、岩崎茂統合幕僚長をはじめ防衛省・自衛隊の高級幹部、全国各地の自衛官、国内外の来賓、招待者、一般公募の見学者など計2万8207人が来場した。これに先立って行われた学校予行等を含めた計4日間(夜間含む)で約11万3000人が演習を見学。「統合運用と言われるようになって6年。いよいよ計画だけでなく訓練の場でも、有事を想定して統合作戦でやっている。全体は統合の枠組みの中で、陸上自衛隊が火力を発揮する場合を展示した」(君塚陸上幕僚長、8月26日 離任に伴う臨時記者会見より抜粋)

 午前10時、全国から訪れた見学者の前で前段演習が始まった。装備品の性能と練度を最大限に発揮した射撃と射距離に応じた各種火器等の火力効果を現す事が目的の前段65分。今年の目玉の一つとして、中距離多目的誘導弾射撃の展示があった。観客席前から射撃はできないため、観客席から左方向の台から遠赤外線画像による誘導方式で3発の連続射撃を行った。また、10式戦車のスラローム射撃と後進射撃、10式戦車小隊ならではのネットワークによる射撃が充実、観客の目を釘付けにしていた。10式戦車の動きを見ながらスクリーンとナレーションでネットワークシステムによる情報共有の意味が良く解るようになっていた。「身軽に動いているように見えるのに、やっていることは非常に大きいんだね」と初めて10式戦車を見たという見学者。

 後段は敵艦隊等の洋上や沿岸部での撃破、空地一体の火力戦闘、空中機動を含む部隊の即応展開を充実させた40分。後段冒頭、島嶼防衛に関するビデオ映像が放映された。観客は陸自の水陸両用作戦の理解もしたことだろう。侵攻してきた敵部隊を撃破するため、偵察活動から始まり攻撃、突撃、戦車拡張と展開していく。例年より充実していたのはUH—60とCH—47から先遣小隊が降下するのをAH—64Dが掩護射撃する場面で「凄いよ凄いよ」と観客も大興奮。

 演習が終わって装備品展示が行われた。88式地対艦誘導弾システムの後継となる12式地対艦誘導弾システムが初めて展示され、フラッシュの嵐を浴びていた。雨が降ると演習場内やバス停などへ戻る路面が悪くなる。2万人以上の人が一度に動くとなると統制にも気を使う。各部隊から支援に来ている隊員のきめ細やかな誘導と気配り、優しさも演習の力強さと共に観客の心に残ったことだろう。

列島各地大雨被害で災派

山口 島根 山形 石川

捜索、避難支援、給水支援など実施

 7月18日から7月末にかけ、列島各地で断続的に局地的な大雨が発生した。これに伴う災害派遣要請が被災地の各県知事からあり、陸上自衛隊と航空自衛隊から部隊が派遣された。

 21日18時に山形県知事から第6師団長(神町)へ、28日10時41分に島根県知事から第13偵察隊長(出雲)へ、同日11時10分に山口県知事から第17普通科連隊長(山口)へ、29日17時27分に石川県知事から空自第6航空団司令(小松)にそれぞれ災害派遣要請があった。

 これに基づき、山形県内では神町、八戸、青森、仙台、多賀城、福島の各駐屯地から人員延べ約310名、車両延べ約200両。島根県内では出雲、防府の各駐屯地から人員延べ約170名、車両延べ約80両、航空機延べ1機。山口県内では山口、防府の各駐屯地から人員延べ約220名、車両延べ約60両、航空機3機。石川県内では空自小松基地、陸自金沢駐屯地から人員述べ約210名、車両延べ約40両の規模で要請に対応した。

 各県における主な活動状況は、山形県では21日から29日までの間に天童市で給水支援。島根県では28日から31日までの間に津和野町名賀で行方不明者捜索・避難支援。山口県では28日から29日までの間に山口市・萩市・阿武町で行方不明者捜索・避難支援。石川県では29日から30日までの間に小松市扇町で土のうを積み上げる等の水防活動をそれぞれ実施した。

 各県では、災害派遣部隊等に対し各地方協力本部が支援・協力を行った。島根地本では島根県庁、津和野町役場に連絡員を派遣。津和野町役場では「部隊到着までに現地の状況及びニーズを適切に把握し、部隊の災害派遣活動の円滑な実施に尽力した」(島根地本)。

 山口県では28日に17普連が山口市阿東嘉年下の倒壊家屋から行方不明者を発見・救出、29日には第13飛行隊(防府)のUH-1が山口市阿東嘉年下の青少年自然の家から204名を救助、同日には17普連が萩市上小川東分の特別養護老人ホーム入居者51名を建物から消防ヘリへの搬送を完了。島根県では29日に13偵察隊が津和野町白井で5名を救助、30日に第304施設隊(出雲)が県道13号馬草峠~名賀トンネル南側付近の道路啓開を完了し、トンネルが開通した。

オールスター第3戦でいわきの空を飾る

F—15J(7空団)F—2A(3空団)

東日本大震災復興支援の趣旨に賛同

 7月22日に行われたプロ野球「マツダオールスター2013 第3戦」で航空自衛隊のF—15J(7空団)とF—2A(3空団)各2機が福島県にあるいわきグリーンスタジアムの1000フィート上空を飾った(写真)。訪れていた18,365人の来場者の頭もセンター方向からバックネット方向へと流れた。グリーンスタジアムでの開催は東日本大震災の復興支援を目的として行われたものでその開催目的に賛同した航空自衛隊が開会式において展示飛行を行ったものである。

5年後10年後を見据えて

「現場は素晴らしいと誇りと自信を持っている」(片岡空幕長)

空自連合准曹会評議委員会開催

 第21回航空自衛隊連合准曹会の評議委員会が7月4日から、東京新宿区のグランドヒル市ヶ谷で2日間に渡って開かれた。委員会には全国の空自73基地のうち64基地から評議員(支部会長等)が参加し、各種提案等を討議した。

 連合准曹会の村田圭史副会長(開発集団司令部医務官付・准空尉)の開会宣言に始まり、同会の最高顧問でもある片岡晴彦・空幕長が登壇、「精強性の原点は現場にある。東日本大震災時、各部隊は災害派遣で本当に献身的に頑張ってくれた」と述べられた。

 そして「我々は現場に誇りと自信を持っている。この現場の素晴らしさを若い人達に伝えていくことが大切」と"隊員同士による懇親会"や"官舎でのコミュニケーション"などの小集団活動を通じた意思疎通、絆の醸成の重要性を訓話の中で強調。その上で片岡空幕長は「若い人のライフスタイルが大きく変わってきているが、皆さんの組織力で若い隊員を徹底して指導、教育する努力を今後とも是非お願いしたい」と自らの若い時代を振り返りながら笑いも交えて連合准曹会への強く、熱い期待を示した。

 その後、参加者は片岡空幕長との記念撮影を終えて、実質的な評議委員会を開始。連合准曹会の北林樹会長(空幕人計課・准空尉)が「ただの任意団体ではなく、空自という組織に貢献する組織として人を育て、人を助ける組織となりたい。そのためにも皆さんの協力が必要」と挨拶した。議案討議においては、各基地の実情を踏まえた真剣な意見交換が続いた。

 各評議員の若い隊員そして空自に対する熱意はその後の懇親会でも尽きることはなく、太い絆と信頼関係を再確認した。

空飛ぶ防衛秘密
AWACSを公開

警戒航空隊

航空自衛隊

 航空自衛隊は6月18日、静岡県浜松基地の警戒航空隊(司令・津田昌隆1空佐)で早期警戒管制機(AWACS)を報道陣に公開した。

 警戒航空隊は、隊司令の下、隷下部隊は三沢基地と浜松基地に所在。E—2Cを運用する飛行警戒監視隊及び整備を担当する第1整備群が三沢基地に、また、E—767を運用する飛行警戒管制隊及び整備を担当する第2整備群が浜松基地に配置されている。

 E—767は機体の後方に直径約9mのレーダーアンテナがあるため風の影響を考慮し垂直尾翼は民航機より長く高さ約16m。レーダーアンテナの強力な電波を機内に入れないために窓はない。4点式のシートベルトが身体にフィットするせいか、天候に恵まれたせいか、乗り心地はとても飛行中とは思えない程快適だった。地上レーダーは水平線の下は解らないが、E—767やE—2Cならば遠方からでも領空侵犯機等を早期に発見する事ができる。津田司令は「常に緊張感を持って、南西地域を始めとするわが国周辺における警戒監視任務を行って参りました。隊員の士気も高く、引き続き、粛々と任務に邁進していく所存です」と語った。


福島市上空を展示飛行
東北六魂祭で

ブルーインパルス

 福島市で開かれた「東北六魂祭」でブルーインパルスが6月1日展示飛行を行った。東北六魂祭とは、東北6県の夏祭りが東日本大震災の復興を祈って参加するイベントで、今年で3回目。ブルーインパルスの所属する第4航空団第11飛行隊(松島基地)は東北6県の宮城県にある。ブルーインパルスは今年3月に松島基地に帰還し、帰還イベントが行われたが、悪天候のため展示飛行は行われなかった。そのため今回が帰還後初の東北で展示飛行。展示飛行に先立って「いい演技で東北六魂祭の開幕を盛り上げたい。元気と笑顔を届けるので空を見上げて欲しい」と飛行隊長・田中公司2空佐は瀬戸孝則福島市長に語っている。

盛大な見送り受け旅立つ

遠洋練習航海部隊が世界一周へ出港
162日間の成長楽しみに

 5月22日、晴海ふ頭HK岸壁で平成25年度遠洋練習航海部隊(練習艦隊司令官・北川文之海将補)出国行事が行われた。乗員家族約350名、小野寺防衛大臣、江渡聡徳防衛副大臣、河野克俊海上幕僚長ら防衛省・自衛隊関係者、衆参国会議員や外務省関係者ら来賓多数が見守る中で、訓示、花束贈呈などが行われた。今年度の派遣部隊は北川司令官以下、第63期一般幹部候補生課程修了者約180名の実習幹部を含む幹部、海曹士など合計約730名(関連記事2面)。

 青空の下、式典前にそこかしこで目にした見送り家族らとの交歓の笑顔。式典で多数の来賓に見守られる中、「昨日、諸君の出港を安倍総理大臣に報告し、訓練の成果への期待と航海の無事を祈るお言葉を頂いた」、「我が国を外から見つめ直し、国家とは、国益とは何であるか、国防のあるべき姿について深く考える機会にして頂きたい」などの言葉があった小野寺防衛大臣の訓示や、「(遠洋練習航海は)外交面でも極めて重大」と評した松山政司外務副大臣の祝辞(代読)、海上安全保障の分野で多国間の連携がより一層重要性を増す中、「遠洋練習航海は海軍間ネットワークの構築の重要な機会の一つである」とし、「半世紀以上にわたり築かれた遠洋練習航海の伝統を継承する役割を肝に銘じよ」とした河野海幕長の壮行の辞(一部抜粋を2面に掲載)など、数多くの期待の言葉を投げかけられ、それらを真摯に受け止める緊張の横顔。万雷の拍手に包まれ、練習艦隊に乗り込む力強い行進の足取り。この日は、様々な場面で、遠洋練習航海部隊隊員の沢山の表情を見ることが出来た。どの顔を見ても、高い使命感と「さあ、いよいよだ」という気合いが感じられた。

 今年度の遠洋練習航海は太平洋を横断しアメリカ大陸を経て大西洋へ抜け欧州、アジアを歴訪する世界一周コースだ(18カ国19寄港地。訪問国・寄港地は2面を参照)。北川練習艦隊司令官は「実習幹部173名をしっかり鍛え10月30日には一回り大きく成長した元気な姿をお見せします」と力強く挨拶した。世界を一周した162日後、晴海ふ頭に帰国したとき、彼らがどんな表情を見せてくれるか。今から楽しみに待ちたい。


共同対処の実効性さらに向上へ同盟の強固な絆を維持

米軍トップと岩崎統幕長が合意

 マーティン・E・デンプシー米統合参謀本部議長が4月25日、東京を訪問し翌26日、防衛省で岩﨑茂統合幕僚長と懇談を行い、アジア太平洋地域の安全保障環境、日米同盟の深化などについて意見を交換した。北朝鮮の弾道ミサイル、核による威嚇に対しては、自衛隊と米軍は緊密に連携し、共同して対処することを再確認。また「地域における周辺諸国との摩擦や誤解を避けるため、中国の軍事力の増強は、その戦略的意図に関するより高い透明性を伴ったものでなければならない」との認識を共有した。

 両者は日米同盟が日本と米国の安全保障並びにアジア太平洋地域の平和、安定および経済的繁栄に不可欠であることを再認識。自衛隊と米軍は長年に渡る日米同盟の強固な絆を維持しつつ、共通の安全保障上の課題に効果的に対処するため、引き続き情報共有および日米共同対処の実効性の向上に努めていくことに合意した。

スクランブル500回超

22年ぶり
平成24年「緊急発進実施状況」を公表

統 幕

 統合幕僚監部は4月17日、領空侵犯の恐れのある航空機に対する空自戦闘機などによる緊急発進(スクランブル)の平成24年度の実施状況を公表した。スクランブルの回数は23年度から142回増加の567回に上り、平成2年度以来、22年ぶりに500回を超えた。緊急発進回数の増加の原因は、中国機に対するものが増加したことによる。推定を含め緊急発進回数の対象国・地域別の割合は、中国機に対する割合がロシア機を上回り、中国機が約54%で半数以上、ロシア機約44%、その他約2%となった。


"領空侵犯"が2件発生

 24年度は領空侵犯が年度内に2件発生した。12月13日に、中国国家海洋局所属Y—12が尖閣諸島魚釣島南方の上空を、今年2月7日にはロシアSU—27が利尻島南西沖の領空を侵犯する事案が発生したため、防衛省として公表を実施した。中国機による領空侵犯が確認されたのは、これが初めて。


中国機が倍増

 中国機に対するスクランブルの回数は国・地域別回数の公表を開始した平成13年度以降、過去最高の306回で、前の年度に比べて150回増加とほぼ倍増した。

 また年度内でみると、上半期は69回だったものが、9月に日本政府が尖閣諸島を国有化してから以後、下半期(10月~翌年3月)は237回と3倍以上に増加した。

 12月13日に領空侵犯したY—12の同型機が尖閣諸島周辺を飛行した8件の事例については、特異な飛行として公表された。


ロシア機は前年度並み

 ロシア機に対するスクランブル数は248回、23年度に比べて1回増加。このうち12月17日に初めて確認されたTU—214型機の事例をはじめ20件の事例については、日本の領空に沿って長距離を飛行する等の特異な飛行を行ったとして公表された。

 推定を含むが、ロシア機の中では情報収集機、中国機の中では戦闘機に対して多くスクランブルを実施した。


南西航空混成団 過去最高の318回

 方面隊別のスクランブル実施状況については、南西航空混成団が過去最高の318回となったほか、北部航空方面隊が139回、中部航空方面隊が65回、西部航空方面隊が45回実施した。

 23年度と比べて中部航空方面隊と南西航空混成団の緊急発進回数が増加し、北部航空方面隊と西部航空方面隊の緊急発進回数が減少した。


大きな復興への一歩
松島基地

ブルーインパルス、松島基地へ帰還

 2011年3月10日 ブルーインパルスは、3月12日に行われる九州新幹線開通記念行事のため松島基地を飛び立ったが、翌日の3月11日帰るべき場所を失った。そして今日3月31日、2年の歳月を経て日本国民の空への憧れ、夢、希望の象徴「青い衝撃:ブルーインパルス」がマザーベースである松島基地へ帰ってきた。


 3月31日(日)、航空自衛隊松島基地(基地司令・有馬龍也空将補)においてブルーインパルス帰還行事が行われた。黙祷から始まったセレモニーには、 小野寺防衛大臣、宇都参議院議員、熊谷参議院議員、東松島市長、石巻市長、女川町町長、松島町長をはじめ多数の来賓が出席。第4航空団飛行群第11飛行隊長・田中公司2等空佐は、ブルーインパルスの隊員が整列する陣頭に立ち、壇上の小野寺五典防衛大臣に対し「第4航空団飛行群第11飛行隊は、震災による芦屋基地での訓練を終え無事帰隊しました」と力強く帰還申告した。それに対し、小野寺防衛大臣が「ブルーインパルスの帰還は、大震災の着実な復興を表すものである。2年間、芦屋基地で訓練された隊員の労を労いたい。ブルーインパルスが不在の間、東松島市をはじめ地元自治体、多くの周辺住民から熱烈な帰還の要望が防衛省に届きました。これは松島基地への厚い信頼と地域復興のシンボルとしてそれに応えた現れだと思います。防衛省は、その声に応え津波対策を講じ、帰還が実現しました。地元をはじめ全国の期待に応えられるよう田中隊長の下、一致団結し磨き上げられた技術を全国で披露してほしい。隊員とその家族に対しご苦労とご支援にあらためて感謝の意を申し上げます」などと訓辞をした後、有馬松島基地司令のエスコートで田中隊長に歩み寄り堅い握手を交わした。

 続いて阿部秀保東松島市長が「市長というよりブルーを愛するみんな、震災でお世話になったみんなの代表としてお祝い、お礼を述べさせていただきます。本当にありがとうございます」などと述べた。

 この後、参列した全員でブルーインパルスの1番機をバックに記念撮影を行いブルーインパルスの帰還を祝った。ブルーの隊員は「震災の影響により約2年間、芦屋基地を中心に築城基地及び見島周辺において訓練させて頂きました。この間、周辺住民の皆様方のご理解とご協力を得て訓練を実施することができましたことに心から感謝しております。今般、被災地の松島基地に帰還することとなり今後の任務遂行を想うとき、気持ちが引き締まる思いです」と語った。

 再出発という言葉では言い尽くせないブルーインパルスの帰還、今年は、ブルーインパルスのフライトに目が離せない年になる。

事態対応・支援等を讃える
24年度大臣直轄部隊等表彰

陸自

 陸上自衛隊は3月6、12日の両日、平成24年度大臣直轄部隊等表彰を行った。同表彰は、平素からの教育訓練や支援・実務に加え、各種事態対応に伴う措置、行事支援等に取り組む大臣直轄部隊等の功績を讃えるとともに、表彰部隊の活性化と士気の高揚を図る目的で設置されている。表彰式には受賞部隊長が出席し君塚栄沿陸上幕僚長が表彰状を授与。記念撮影や会食が行われた。

 以下、表彰等級と主要な功績。

▽第2級賞状

○富士学校(23年・24年度の富士総合火力演習。外国高官訪問対応による防衛交流促進。連・群長集合訓練の担任による部隊精強化)○中央音楽隊(自衛隊音楽まつりによる国民の自衛隊に対する理解促進。内閣府主催の東日本大震災一周年追悼式への演奏協力)

▽第3級賞状

○中央輸送業務隊(国際平和協力活動等における自衛隊の輸送態勢万全な整備及び部隊派遣・撤収等の的確な支援により陸自の高い輸送力を誇示)○中央管制気象隊(的確な航空管制業務等(25年3月1日現在、市ヶ谷ヘリポート管制支援1500回)による高官搭乗の航空機の安全運航)

よき心とよき体
"メンタルヘルス"サポートに全力

東部方面隊
「しなやかな隊員に」

 「よき心とよき体」を維持するためにメンタルヘルスケアの技法を普及—陸自東部方面隊(方面総監・渡部悦和陸将=朝霞)は昨年から「自己管理能力向上施策」に取り組んでいる。隊員が「"いざ"のときに平素の能力を発揮できるように」、「心を病む隊員、自殺する隊員の数が、目に見えて減るように」ストレス対処のためのメンタルヘルスケアの技法を方面隊全隊員に広める。今年1月から3月まで指導官の養成を行い、方面各部隊の中隊等に中級指導官を配置、また方面総監部及び師団、旅団司令部に上級指導官を配置する。(竹内 智)

 指導官養成訓練では、独自に作成したメンタルヘルスケアの技法普及ツールのDVDを活用しながら、方面総監部の人事部や医務官などで構成する「方面隊服務ケアチーム」が隷下各部隊から集まった隊員を中級は2日間、上級は3日間にわたって教育。

 プログラムでは「呼吸法」、ストレッチやヨガなど「動作法」、"いいとこ探し"など「イメージ・コントロール」等の『不安ケア』を中級の修得能力とし、"過去の力""7~3バランス"など『自信ケア』等を上級の修得能力としている。

 渡部総監は「自己の心と体を完全にコントロールできる強くて、しなやかな隊員になってもらいたい。いまの自衛隊には絶対に必要」と自らリーダーシップをとる。総監は着任前から勉強を重ね構想を練ってきた。

 昨年4月から7月までの間、渡部総監はじめ隊員や事務官ら67名が参加し1日1時間基準で55回の「総監部・付隊戦闘ストレス対処集合訓練」を、陸自衛生学校(三宿)の協力を得て、実験的に行い訓練後のアンケートなどから成果を確認した。

 この訓練の成果をもとにメンタルヘルスケアの技法普及ツールとして、衛生学校教官が映像の中で具体的に分かりやすく指導するDVDを作成し、今年1月から指導官養成訓練の試行実施の運びとなった。

 隷下部隊の隊員を教育している方面総監部人事課総括班長の河本俊哉2陸佐は「確実な手応えを感じている」と自信をみせた。

 方面総監部人事部長の秋葉瑞穂1陸佐は「東部方面隊発で、すべての方面隊に、この施策を普及させたい」と抱負を語った。

学生の初ソロ飛行
陸上自衛隊航空学校

明野

陸上自衛隊ヘリコプターパイロットの誕生

 陸上自衛隊のヘリコプターパイロットを多数輩出している「陸上自衛隊航空学校」。本校は三重県伊勢市の明野駐屯地(学校長兼明野駐屯地司令・大西裕文陸将補)にあり幹部パイロット等の教育他を行っている。さらに栃木県宇都宮市の北宇都宮駐屯地には宇都宮校(校長兼北宇都宮駐屯地司令・大西正浩1陸佐)があり、陸曹パイロットの教育等を。また、茨城県土浦市の霞ヶ浦駐屯地にある霞ヶ浦校(校長・山野順良1陸佐)では、整備・通信等の教育を行っている。陸上自衛隊が保有する400機強の航空機を約7000名で支えている航空科。2月21日、明野本校第2教育部で幹部航空操縦課程(POC)学生が初めてソロ飛行する瞬間に立ち会った。


 朝7時40分、ブリーフィング10分前。昨年12月からPOC課程を受講している学生10名はすでに集まっている。昨夜から入念に用意したホワイトボードに書かれていることの最終チェックも済ませてある。7時49分、窓ガラスが割れそうな声で学生五訓を全員が唱和する。「今日の訓練、初めて教官なしでソロ飛行が出来るかもしれない!」学生の顔は真剣そのもの。後ろ姿に緊張が漲っている。


「理由を考えないと対策は考えられないよ」

 まずは気象ブリーフィング。前日の気象情報から1週間後の気象予報までを掌握し、今日の課目実施条件と照らし合わせる。後、航空情報ブリーフィング、教官による訓練説明、学生危険見積ブリーフィング、総括ブリーフィングと続く。ブリーフィングの担当は学生が持ち回りで行う。飛行するには、気象予知も危険予知も必要だ。ブリーフィングの準備だけで相当な知識と時間を使う。新しい課目を行う前のブリーフィング内容は、休日もなく研究し、他の学生とも話合い更に詰める。各ブリーフィング後には教官指導が入り、学生は緊張した面持ちで考え応える。25~6歳の若者が、この緊迫した空気の中で指導された事がちゃんと頭に入り即座に応えられる事に驚いた。

 全体のブリーフィングが終わると学生2人ペアに教官1人で各航空機ごとのグループブリーフィング。学生も真剣なら教官はもっと真剣。「飛んでこい、無事に」。


「学生の状態が良くなければ、かわいそうだけどソロ飛行はなしだ」

 学生たちはブリーフィング室を出て、オペレーションに今日の飛行計画を提出しに行く。そして飛行場へ。航空機へと続く地上に描かれたオレンジ色のラインをどんな思いで歩いているのか。自分が搭乗する航空機に着くと航空機の状態を確認するための飛行前点検。小さな所にも顔を付け、機体の下にも潜り込む。そして、操縦教官に飛行前点検の結果を報告し、コックピットに座る。始めは、教官も搭乗し学生と航空機の状態確認を行う。1周10分ほどの場周飛行を2回繰り返した。そして…教官は降りた、「いつものようにやって来い」。学生初ソロ飛行の決定だ。


「自分が飛ぶより緊張する」

 学生しか乗っていないUH—1J。エンジンの回転数が上がってくる。間もなく準備完了を知らせるUH—1Jの上下にある衝突防止灯の赤いライトが点灯した。離陸地点を越えると同時に機首が上を向き始めた。力強く飛び立っていくUH—1J。UH—1Jを見送り視線を地上に戻した時、地上で見守っている教官の手がレバーを握っている手つきに見えた。


 無事初ソロ飛行を終えた学生に感想を聞いた。「楽しかった。今までで一番有意義だった」「自分達だけで上空に行くと、如何に今まで教官に依存していたか解った」「教官のいう事を守り、いつもどおりやればできるんだという事が解って、モチベーションが上がった」「教官には空に行った自分たちの行動が筒抜けになっているって思う時点でまだまだ頼っているんだと思った」。

 今年8月無事にウィングマークを取得した時、今日の事を彼らは心の底から感謝することだろう。若いヘリコプターパイロットの活躍が楽しみだ。

厳冬の札幌直下地震を想定

北部方面隊が災害対処指揮所訓練

北海道と初共催 陸海空自衛隊、18機関などが参加

 北部方面隊(総監・岩田清文陸将)は、1月23日から25日の間、北海道庁との共催により「災害対処指揮所訓練統裁支援システム(UMCE)」を使用して『平成24年度方面隊災害対処指揮所訓練』(北海道庁の訓練名称は「北海道都市型震災対処訓練」)を実施した。

 北海道庁との共催による訓練は初めてであり、北海道庁、札幌市をはじめとする石狩管内8市町村、北海道警察、北海道開発局、NTT東日本北海道支部、北海道ガス、札幌市消防局など18機関、海上自衛隊、航空自衛隊、在日米陸軍現地調査班(DAT)のほか、自衛隊隊友会、米国総領事館がオブザーバーとして約2300名が参加した。

 同訓練は、北海道庁はじめ関係機関等との連携、海上・航空自衛隊との協同、米軍との共同及び方面隊の指揮幕僚活動を演練して方面隊の災害対処能力の向上を図り、かつ、方面隊が保有する災害派遣計画の更なる実効性向上のための検証を狙いとして実施した。想定は、「厳冬の札幌直下地震」という厳しい状況で、北海道庁としては初めてとなる2夜3日の連続状況の訓練となった。

 方面隊として、東日本大震災及び阪神・淡路大震災の教訓(自衛隊と自治体及び関係機関等との更なる連携の必要性)を反映し、道庁内に設置された災害対策現地合同本部に連接して方面連絡調整所を開設し、道庁をはじめ自治体、関係機関等と状況に即した実際的な調整により連携することは極めて有効であり、それを訓練できたことは大きな成果だった。

 また、方面隊が整備してきた『道央地域(札幌地区)大震災対処計画』』【発災後、速やかに約2万人を投入】についても、各部隊が明確な目的をもって訓練に取り組むとともに、関係機関と直接連携をとる事で、計画の実効性を高め、より効果的な活動を行うための様々な教訓が得られた。

 北部方面隊は「今回の災害対処指揮所訓練統裁支援システム(UMCE)を使用した指揮所訓練は、効果的な訓練を効率的に実施できるものであり、将来的には、釧路沖の日本海溝・千島海溝・周辺海溝型地震に備えた訓練にも拡充して、今後も継続していきたい」としている。

新春飾る降下訓練始め
第1空挺団

「島嶼防衛」テーマに

陸・海・空による統合作戦で離島を奪還

 自衛隊唯一の空挺部隊・第1空挺団(団長・前田忠男陸将補=習志野駐屯地司令)は1月13日、平成25年「降下訓練始め」を習志野演習場で行った。当日は、小野寺五典防衛大臣を迎え、佐藤正久政務官、金澤博範事務次官、岩?茂統幕長、君塚栄治陸幕長ら防衛省・自衛隊の高級幹部、来賓、協力団体招待者を始め、一般来場者など約1万1000人が落下傘による降下やヘリコプターなどを使用した訓練展示等を見守った。


 小野寺大臣の陸自部隊初度視察でもあった、今年の降下訓練始め。テーマは「島嶼防衛」。「陸上・海上・

航空自衛隊の統合作戦による島嶼防衛における空挺作戦を実施して敵を撃滅する」模様が展示された。時あたかも、南西諸島の防衛体制の充実が叫ばれている今、国内外の注目を集める大規模な降下訓練始めにおいて、島嶼防衛がテーマに設定された意味合いは大きい。また、島嶼部が舞台のため、例年の訓練展示には参加していなかった海自が加わり今年初めて3自衛隊による訓練が展示された。

 防衛省・自衛隊の新春を鮮やかに飾る「降下訓練始め」のハイライトは言うまでもなく、真冬の青空に花咲く何十もの空挺傘だ。航空自衛隊航空支援集団司令官・廣中雅之空将がC—1輸送機に搭乗、航空指揮を執った。計4機のC—1輸送機から空挺降下した空挺隊員は計80人。

 空挺作戦訓練は、海上自衛隊P—3C固定翼哨戒機による海上出動から始まった。次いで事前制圧のための空爆・艦砲射撃の圧倒的な火力制圧。戦闘部隊の上陸が容易になる。続いて、大型ヘリコプターCH—47が偵察任務を行う偵察小隊と誘導小隊の10名を乗せて登場し、自由降下で隊員が着地。間髪入れずAH—64、OH—6の航空部隊による戦闘偵察が開始された。偵察小隊が偵察任務を開始するのと同時に狙撃手を搭乗させUH—1が進入、狙撃手は飛び降り隠密潜入。別のUH—1からは空挺レンジャー隊員がリペリング降下、伏撃準備に入った。観測用ヘリOH—1とOH—6により発見された敵対空火器をAH—64Dが撃破、オートに乗った敵偵察部隊と敵指揮官を狙撃手とレンジャーが狙撃。C—1からの空挺レンジャー降下やCH—47からの軽物料投下等により空挺団主力降下が完了した。

 ヘリによる地雷散布や地上戦闘による攻撃をしている中、増援部隊として、近SAMとAH—64Dに防護された74式戦車と軽装甲車が海自の輸送艦で運ばれ、敵部隊を制圧、航空自衛隊第1高射群第1高射隊のPAC—3も進入、対空戦闘準備に入った。

 統合作戦により空挺団は目的を達成というシナリオで行われた。

 陸自部隊初度視察にして、最精鋭である第1空挺団の訓練展示を目にした小野寺大臣は訓示で、彼らを「高い士気と技量を誇る隊員諸官の勇姿を目の当たりにし、防衛大臣として誇りに思う」と絶賛した。小野寺大臣は、島嶼防衛作戦の展示を観閲する直前に、基本降下課程学生が、激しい訓練に汗を流す様子も視察している。学生が目指すものこそ精鋭無比の空挺団である。

 初めての試みが多かった今回の訓練展示。この日1番最初にC—1から降下したのは前田団長だった。「日本に比ぶるものなし、目指すは世界最強」を胸に、果てなき練成の道を往く第1空挺団。これからも歩みは続いていく。


新防衛大臣に小野寺大臣五典氏

3年3ヵ月ぶり自公政権 安倍内閣発足
防衛力見直し

4つの指示を遂行

全隊員へ「一人ひとりが職務に一層精励せよ」小野寺新大臣

副大臣に江渡氏再登板、政務官に左藤・佐藤氏

 12月26日、特別国会が召集され、衆参両院本会議の首相指名選挙で安倍晋三衆院議員(自民党総裁)が第96代の内閣総理大臣に選出された。安倍首相は直ちに18人の新閣僚を任命。同日夜、皇居での首相親任式と閣僚認証式、初閣議などを経て、正式に自民・公明連立の安倍新内閣が発足した。自公による連立内閣は3年3ヵ月ぶり。これに伴い、新防衛大臣に小野寺五典衆院議員、新副大臣に江渡聡徳衆院議員、新政務官に左藤章衆院議員と佐藤正久参院議員がそれぞれ就任。翌27、28日の両日、政務三役の離着任行事が防衛省で相次いで行われた。


 小野寺大臣は12月27日の着任式において、安倍総理から「国民の生命・財産、領土・領海・領空を断固として守り抜くため、防衛大綱・中期防を見直し、自衛隊の体制強化に取り組むこと。米国の新国防戦略と連携して自衛隊の役割を強化し抑止力を高めるため日米防衛協力ガイドラインの見直しを検討すること。普天間飛行場の移設を含む在日米軍再編を進める中で抑止力の維持を図るとともに沖縄をはじめとする地元の負担軽減を実現すること。外交・安全保障政策の司令塔となる『国家安全保障会議』の設置に向け国家安全保障強化担当大臣に協力をすること」以上4つの指示を受けたことを明らかにした。

 続けて、同じく安倍総理から「閣僚全員が復興大臣であるという意識を共有し、被災者の心に寄り添い、従来の発想にとらわれることなく、スピード感を持って自らの持ち場で被災者の再生のために尽くす。万一、大規模な災害・テロなど、国家的な危機が発生した場合、国民の生命と財産を守ることを第一に、政府一体となって機能的かつ柔軟な対応に全力を挙げる。そのため平素から準備に万全を期す」との内容で、全閣僚へ共通指示があったことを述べ、これらの総理指示を踏まえ、今後の防衛省・自衛隊が取り組むべき課題について所信表明した。

 小野寺大臣は明けて1月4日、全自衛隊員に向けた年頭の辞でも改めて所信を表明。「防衛力を質・量ともに、見直す必要がある」と述べ、「南西地域をはじめとする防衛体制の充実、サイバー攻撃対処能力の向上、災害対処能力の向上など、諸課題に積極的に取り組む」、「安定的、かつ、中長期的な防衛力の維持・向上のため、防衛生産技術基盤の維持・強化にも取り組む」ことなどに言及している。

 その上で、「我が国が強固な防衛体制を保持するために何よりも重要なことは、防衛の第一線にある諸君一人ひとりが、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つという任務の重要性と、責任の重さを自覚し、厳正な規律を維持しつつ、職務に一層精励すること」を隊員へ要望し、「私も諸君とともに全身全霊をもって職務を全うする所存であります」と決意の言葉で結んだ。

統合幕僚長 岩崎 茂 空将
統合運用を基本とし事態に即応

新年のメッセージ

 読者の皆様、国内外の各地で勤務している隊員諸官並びにご家族の皆様に謹んで新年のご挨拶を申し上げます。


 昨年は、北朝鮮の「人工衛星」と称するミサイル発射や、中国公船による尖閣諸島周辺海域での活動、中国海軍艦艇による海洋における活動の拡大・活発化等の事案が生起しました。あわせて国際テロやサイバー攻撃等の安全保障上の課題が存在しており、国際社会の安全保障環境は、依然として複雑で不確実なものになっています。


 このような中、自衛隊は、北朝鮮によるミサイル発射への対応、九州北部豪雨等に伴う災害派遣のほか、平素から我が国周辺における警戒監視、情報収集や対領空侵犯措置を不断に行い、事態に対する即応態勢を維持しています。


 国外では、昨年は国連平和維持活動20周年を迎え、ゴラン高原派遣輸送隊への派遣を継続するとともに、新たに南スーダンに施設部隊等を派遣しました。一方、国連東ティモール統合ミッションへの軍事連絡要員の派遣を終了、さらにハイチ地震からの復旧に十分に貢献したものと評価しうることから、国連ハイチ安定化ミッションへの施設部隊等の派遣を終了することになりました。海賊対処においては、護衛回数400回、任務飛行800回を超える任務を実施し、船舶の安全な航行に寄与しています。


 このように自衛隊は、複雑で不確実な安全保障環境の中、我が国の平和と独立を守るという崇高な任務を達成するため、警戒監視活動や災害派遣、国際平和協力業務等の様々な活動を行っています。今後とも、自衛隊は、国民の皆様の信頼に応え得るよう、統合運用を基本とした価値観を共有して、事態に即応し、実効的に対応できる態勢を維持していく所存です。


 本年も隊員諸官とともに、動的防衛力の具現化による統合運用態勢の更なる実効性向上に努め、与えられた任務の達成に邁進することを誓い、新年の挨拶とさせていただきます。