自衛隊ニュース

ゲッキーのイラスト

YS-67、東方で実施中
日米で約6500人が参加

 陸上自衛隊東部方面隊は12月2日から15日まで朝霞駐屯地で「平成26年度日米共同方面隊指揮所演習(YS—67)」を実施している。日本への武力攻撃事態を想定したシナリオに基づき陸自と米陸軍などが共同対処する場合の指揮兼幕僚活動をコンピューター・シュミレーションにより訓練するYS演習では、これまでと異なり陸幕長岩田清文陸将と米太平洋陸軍司令官ブルックス大将が統裁官を務めることで東部方面総監の磯部晃一陸将と米陸軍第1軍団長ランザ中将を演習部隊の指揮官に、より演習に専念できる環境を新たに導入した。

 これにより「指揮官・幕僚組織の演練」の質の向上と日米の相互理解、意思疎通の深化、相互運用性のさらなる向上を目指し、日米両国で約6500人が参加する演習となっている。

 演習は着上陸侵攻する敵部隊の撃破、離島奪還のための水陸両用作戦、弾道ミサイル、サイバー攻撃、不正規テロ攻撃などの複合的な脅威への対処を想定し、日米が共同して作戦を実施する際の日米それぞれの指揮系統の流れを実戦に即して演練している。

 8日に行われた訓練開始式で磯部総監は「米軍はかけがえのないパートナーであり、YSは日本の防衛、アジア太平洋地域の安定を考えるうえで重要な一翼を担うといっても過言ではない」とYSの意義を強調し、ランザ中将も「演習を通じたパートナーシップは日本の防衛や日米の同盟関係に寄与するものだ」との考えを示した。

 また、今回からオーストラリア陸軍の5人がオブザーバーとして参加、うち3人を初めて統裁部要員として実地研修させるなど今後の日豪、日米豪関係を見据えた試みにも取り組んでいるのが特徴だ。

【YS—67ロゴ「天地人」】

 磯部総監の当演習に込めた思いを表現する孟子の言葉。「時間的要素を味方につけ、地の利を最大限に活用し、チームワークにより勝利を勝ち取る」。これは米軍のミッションコマンド「相互信頼を通して団結したチームを作る」と相似している。


○YS-67の概要;

期間:平成26年12月2日~15日

訓練場所:陸上自衛隊朝霞駐屯地

統裁官:自衛隊側:陸上幕僚長 岩田清文陸将

   :米軍側:米太平洋陸軍司令官ビンセント・K・ブルックス大将

部隊指揮官:自衛隊側:東部方面総監 磯部晃一陸将

     :米軍側:第1軍団長 スチーブ・R・ランザ中将

実施部隊:自衛隊側:東部方面隊、陸上幕僚監部、東部方面総監、中央即応集団、海上自衛隊、航空自衛隊、統合幕僚監部

    :米軍側:第1軍団、海軍、空軍、太平洋陸軍、在日米陸軍等

参加人員:自衛隊側:約4,500人

    :米軍側:約2,000人

平成26年度自衛隊音楽まつり

強い絆、仁の心を表現
3日間で約4万1000人の観衆を魅了

 11月13~15日、日本武道館で平成26年度自衛隊音楽まつりが開催された。約1000人が出演した全7公演に、14日の江渡聡徳防衛大臣、左藤副大臣、岩田陸幕長や13日の原田政務官、河野統幕長、武居海幕長、齊藤空幕長、15日の石川政務官をはじめとした約4万1000人が来場した。

 今年は自衛隊音楽まつり50回目、自衛隊創隊60周年という節目の年。世界各国との強い絆と人を慈しむ仁の心で今後も平和国家日本の歩みを前へと進める「前へ MOVE ON~強き、絆の響き。熱き、仁の力動~」というテーマを全4章約2時間の構成で見事に表現し、観客を魅了した。江渡大臣は開演に先立ち「今回のテーマは、昨年策定された新防衛大綱で新たな1歩を歩み始めたことからつけられた。陸海空の絆のみならず、外国ゲストバンドをはじめとした同盟国、世界との絆を力強い音楽で表現したい」と挨拶をした。

 薄暗い会場では、スクリーンに開演までのカウントダウンが表示され、小さくなる数字と反比例して観客の期待と熱気が高まっていく。「0:00」、ドラマ「仁」のテーマ「Reborn」の演奏の中、音楽まつりが静かに開演し、50回の歴史がステージ上に映し出された。12日のリハーサル公演の前では、今年4月に入隊したボーカリスト松永美智子2陸士が、歌姫・三宅由佳莉3海曹とのデュエットを披露、彼女もまた節目の年に初めての大舞台に立ち、この先新たな歴史を刻んで行く。

 第1章「from Japan」では北部方面音楽隊が「故郷」、東部方面隊が「朧月夜」等を披露。美しい演奏が懐かしい景色を思い出させる。「固い演奏のイメージがあったけれど、表現の豊かさに驚いた」という声が聞かれた。続いてゲストバンドの米海兵隊第3海兵機動展開部隊音楽隊は「Happy」で、ボーカルがステージを所狭しと動き回る。周囲から「まるでライブ会場だったね」という声も。同じくゲスト出演の在日米陸軍軍楽隊はビートルズの「Hey Jude」を第1章出場部隊全員で演奏。サビでは観客と一緒に笑顔で手を振った。2年前のロンドンオリンピック開会式で同曲が歌われた時の一体感が思い出された。

 第2章「to Asia」では防衛大学校儀仗隊によるファンシードリルでスタート。将来を担う若人が見せるキレのある演技に会場がどよめいた。そして今回初参加のフィリピン海兵隊軍楽隊。トランペット奏者が外向きに円陣を組み早吹きするコミカルな演奏で会場を沸かせた。続いて空自中央音楽隊・海自東京音楽隊・陸自中央音楽隊の順でドリル演奏を披露。空中音は白とブルーを基調とした演技隊が鮮やかに舞い、空自60周年記念曲「蒼空」では「60th Anniversary」との文字が描かれた大幕が颯爽とステージを駆け抜けた。海自では隊員が四方八方に交差するスリリングな「マゼランの未知なる大陸への挑戦」の後、三宅由佳莉3海曹ボーカルによる「STAND ALONE」で会場をしっとりとさせた。陸中音は特別儀仗隊を担任する第302保安中隊と共に重厚な演奏を披露。「陸・海・空それぞれ特徴があって飽きなかった」という声も聞かれた。

(2面に続く)

26年度西部方面実動演習を実施
人員約16,500人、車両約3,900両、航空機約80機

国内最大実動演習
鎮西26

 西部方面隊(総監・番匠幸一郎陸将)は、10月27日から11月26日まで平成26年度鎮西演習を行っている。これは、方面隊の各種事態における対処能力を向上するためのもので、今年で5回目。

 番匠総監を担任官とし、西部方面区の演習場、自衛隊施設、米軍施設等で、人員約16,500人・車両約3,900両・航空機約80機が参加。海上自衛隊・航空自衛隊及び米海兵隊を協同・共同部隊とし、水陸両用作戦、対着上陸作戦、対ゲリラコマンドゥ作戦、共同基地警備訓練、兵站、衛生訓練、対艦・対空戦闘訓練、航空部隊の展開訓練、射撃訓練等が行われる。

 鎮西26演習は西部方面隊の各部隊による実動訓練の他、日米共同統合演習の一部及び協同転地訓練演習の一部、中央即応集団演習の一部によって構成される。概要としては、日米共同統合訓練として米軍施設を使用した米軍との協同基地警備・陸上作戦・水陸両用作戦等を実施。また、協同転地訓練演習として西方に転地して来る北部方面隊の第2師団1コ普通科連隊基幹の演習場における防御訓練等と東北方面の第4地対艦ミサイル連隊2コ中隊・第5高射特科群1コ中隊の対艦戦闘訓練・対空戦闘訓練等。中央即応集団は、西方実動演習の他日米共同統合演習にも絡み島嶼侵攻対処、空中機動・航空輸送、生物化学攻撃対処等の訓練を行っている。


参考

協同転地訓練 北部方面隊・東北方面隊

目的 転地演習を実施し、長距離機動に必要な統制・調整能力の向上を図る。転地先での訓練を通じ、方面隊の即応性の向上を図る。

担任官 (北部方面隊)北部方面総監 陸将 田邉揮司良 陸将

    (東北方面隊)東北方面総監 陸将 松村 五郎

訓練参加部隊 (北部方面隊)第2師団の1個普通科連隊基幹

       (東北方面隊)第4地対艦ミサイル連隊2コ中隊

              第5高射特科群1コ中隊

参加規模 (北部方面隊)

  人員 約1,000名 車両 約320両(含戦車3両・自走榴弾砲3門)

     (東北方面隊)

  人員 約230名 車両 約100両

中央即応集団演習

目的 西部方面隊及び海空自衛隊と在日米軍との協同連携並びに機動点んか意について演練、その能力の維持・向上を図る。

担任官 中央即応集団司令官 陸将 川又 弘道

訓練参加部隊 司令部、第1空挺団、第1ヘリコプター団、中央即応連隊、中央特殊武器防護隊、対特殊武器衛生隊、司令部付隊

参加規模 人員 約1,500名 車両 約470両 航空機 約10機

60周年の節目に航空観閲式
地上部隊 約740人、車両26両、航空機88機参加

 年に一度、自衛隊記念日中央記念行事の一環として、自衛隊の最高指揮官たる内閣総理大臣を観閲官に迎えて実施される中央観閲式。今年は10月26日に航空自衛隊百里基地において、安倍晋三首相を観閲官、江渡聡徳防衛大臣を主催者、齋藤治和航空幕僚長を実施責任者、中島邦祐航空総隊司令官を執行者、平本正法中部航空方面隊司令官を観閲地上部隊指揮官に、地上部隊約740人、車両26両、航空機88機が参加し航空観閲式として行われた。

 F-4が紅白の幔幕に彩られた観閲台の前を地上滑走した瞬間だった。「まだまだファントムも頑張っているんだなあ」。スタンドの見学席から嬉しそうな声が聞こえてきた。F-15、F-2、F-4が次々とスタンド前を通り過ぎていく。空自初就役から40年以上、生産終了から30数年。F-4ファントムのずんぐりとした銀色の胴体は煤けて鈍く光り、「ゴゴ…」という重々しい音が聞こえた。年輪を感じる古武士の如き佇まい。その前を走る、鮮やかな紺碧でコンパクトな機体を塗装したF-2。違いは一目瞭然だ。この日は次期戦闘機として防衛省が取得を決めたF-35の実物大模型も展示されたが、凹凸を無くしステルス性能を高めたF-35はF-2より更に小さく見えた。黒っぽいステルス塗装が異彩を放ち、如何にも近未来の日本を守る最新鋭機という印象を受けた。

 自衛隊の記念行事は過去を振り返り現在を見つめ未来に思いを馳せるためのもの。特に今年は防衛省・自衛隊創設60周年、航空自衛隊創設60周年だけに、例年にも増して歴史の重みや変化を意識しながら式典に登場した歴代の航空装備等を見つめていた。冷戦期にソ連機に対し数限りなくスクランブル発進したF-4。イラクの空を飛んだC-130。式典では、御嶽山の災害派遣でも活躍したRF-4の航空偵察が展示されていたが、過去には国内外問わず、災害派遣で多くの航空機が活躍した。他にも挙げればきりがない。数々のエピソードが走馬灯のように思い浮かぶ。

 現行主力戦闘機F-15による緊急発進、ブルーインパルスによる息もつかせぬ数々の展示飛行等を経て、式典のラストを飾ったのは60周年を記念し17機のT-4で60の数字を描いた編隊飛行。T-4で観閲式を締め括ったところに、日々の練成の蓄積こそ、抑止の一助となる(観閲式はインターネットで世界に配信)ハイレベルな操縦技術を実現し、空自60周年のスローガン「蒼き空を明日へつなぐ」目標を確実なものとしているのだ、という自負が感じられた。


「世界で平和主義を実践する自衛隊」

安倍晋三首相

「『真に国民の自衛隊』。さらには、『世界で平和主義を実践する自衛隊』。隊員諸君。すべての日本国民が、そして世界が、諸君を信頼し、大いに頼りにしています。その誇りを胸に、次なる60年に向けて、力強い一歩を踏み出してほしいと願います」(安倍晋三首相の訓示より)

御嶽山噴火で災害派遣
困難な状況下で懸命の捜索続く

 9月27日午前11時52分、長野県と岐阜県にまたがる標高3067mの御嶽山の頂上付近で噴火が発生した。好天に恵まれた土曜日の正午前に起きた突然の噴火は、頂上付近で紅葉を楽しみながら昼食をとる多くの登山客を直撃した。頂上付近に取り残されたり、負傷した登山客が多数のため同日午後2時31分、阿部守一長野県知事から陸自第13普通科連隊長・後藤孝1陸佐に人命救助に係る災害派遣要請が出された。

 災害派遣要請を受けて同日午後3時14分に第12ヘリコプター隊のUH—60が情報収集活動を開始し、同15時25分に松本駐屯地を出発した13普連のFAST—Force(初動対処部隊)を皮切りに、13普連・第12偵察隊・富士教導団が27日夕刻から28日にかけ登山道田の原口及び黒沢口へ進出した。

 28日に第12旅団が王滝村役場に前方指揮所を設置するとともに、東部方面航空隊のUH—1(映像伝送機)が山頂付近等の情報収集を開始、連日貴重な静止画や動画を送り続けている。同日未明から警察、消防と共に捜索・救援活動を開始し、UH—60ヘリが頂上付近から次々と要救助者や心肺停止者を吊り上げ、麓に運んだ。その後、捜索・救援活動には大型輸送ヘリCH—47が投入され、麓から頂上付近まで捜索隊を運搬するとともに、地上から徒歩で頂上を目指す部隊により連日、精力的に実施された。しかし、頂上付近は火山性ガスの影響が風向きにより時に危険レベルに達して一時中断を余儀なくされるなど過酷な状況が続いた。

 頂上付近は降り積もった火山灰による視界悪化や呼吸器への悪影響という悪条件も重なったが、防塵マスク、火山性ガス検知器などを装備して10月4日までに要救助者23人、心配停止者51人を搬送した。

 5日以降、台風の影響などによる降雨で中止されていた捜索・救助活動は7日から再開されたが、雨で泥濘化した堆積火山灰が足場を悪くするなど厳しい環境となっている。「山岳レンジャー」として日頃から山岳部で厳しい訓練に耐えてきた松本13普連を主軸とした捜索・救援部隊は「行方不明者の最後の1人まで必ず見つける」との思いでの活動を続けている。

【派遣部隊】▽陸自 第12ヘリコプター隊(相馬原、北宇都宮)、東部方面航空隊(立川)、富士教導団(滝ヶ原)、第13普通科連隊(松本)、第12偵察隊(相馬原)、第2普通科連隊(高田)、東部方面混成団(駒門)、第12化学防護隊(相馬原)、第12後方支援隊(神町)、中央特殊武器防護隊(大宮)、第12施設隊(神町)、第30普通科連隊(新発田)▽空自 浜松救難隊(浜松)、救難教育隊(小牧)、偵察航空隊(百里)【派遣規模】延べ人員約3990人、車両約1035両、航空機166機(10月8日現在)

ケネディ駐日大使表敬訪問

 9月18日、キャロライン・ケネディ駐日米国特命全権大使が来省し、江渡聡徳防衛大臣を表敬訪問した。

 ケネディ大使は「江渡大臣は防衛・安全保障問題に深く関わった専門家であると認識している。国務省、大使館、国防長官としてはぜひ大臣と緊密に、直面する多くの課題に対して共に取り組んでいきたい」と述べ、今後の日米協力関係の継続を確認した。

 また江渡大臣は9月14日にケネディ大使が東日本大震災の復興支援のために宮城で開催された自転車イベント「ツール・ド・東北」に参加して60㎞を走ったことについて「お身体大丈夫ですか」と問いかけ、ケネディ大使は「東北の人々の素晴らしい勇気、苦難にめげない力強さを感じました。多くの歓迎を受けて走る事ができました」と感想を述べた。

新防衛大臣に江渡聡徳氏
新設の安保法制担当相を兼務

 9月3日、第2次安倍改造内閣が発足したことに伴い、新防衛大臣に江渡聡徳衆院議員(青森2区・当選5回・58歳)、新副大臣に左藤章衆院議員(大阪2区・当選3回・63歳)、新政務官に原田憲治衆院議員(比例近畿・当選2回・66歳)と石川博崇参院議員(大阪選挙区・当選1回・40歳)がそれぞれ就任した。江渡大臣は新設の安全保障法制担当大臣を兼務する。

 翌4、5日の両日、政務三役の離着任行事が防衛省で相次いで行われ、江渡大臣は4日の着任式で、安部総理から「大綱・中期防に基づく自衛隊の体制強化」、「日米防衛協力ガイドライン等の見直し」、「日米同盟の絆の強化、諸外国との防衛交流・協力の推進」、「在日米軍再編を進める中で抑止力を維持しつつ沖縄を始め地元の負担軽減を実現」などの指示を受けたことを説明するとともに、全隊員に対し「今後とも任務に精励されるよう熱望する」とし、「私も諸君とともに我が国の防衛に全身全霊で取り組む」と誓った。



防衛省・自衛隊 高級幹部等名簿 1~17面

名簿は本紙をご覧下さい

広島の土砂崩れに災派
昼夜問わず、懸命の人命救助

 8月20日、集中豪雨により広島市安佐南区・同安佐北区で発生した大規模な土砂崩れに伴う災害派遣要請が同日午前6時30分に広島県知事から陸自第13旅団長(掛川壽一陸将補)にあり、陸自から第46普通科連隊、中部方面航空隊、第47普通科連隊、第13施設隊、第13後方支援隊、第13飛行隊、第305施設隊、第304施設隊、第17普通科連隊、海自から呉造修補給所の部隊が派遣された。引き続く大雨、土砂崩れの兆候が見られるなどの理由で一時中断を余儀なくされながら昼夜を問わず、人命救助(行方不明者捜索)をはじめ、航空機による情報収集、給水支援などの活動を続けている。派遣規模は人員約延べ3620人、車両延べ約810両、航空機延べ約27機。(8月24日午後7時現在)

フィリピンでの活動終了
PP2014

 アジア太平洋地域を艦艇等が訪問し、医療活動や文化交流等を通じて参加国の連携強化や国際緊急活動の円滑化を目的とした、米海軍太平洋艦隊主催の「パシフィックパートナーシップ2014(PP2014)」に参加していた海自輸送艦「くにさき」(艦長・笹野英夫2海佐)は、7月4日から始まった最終訪問国フィリピンのタクロバンでの活動を終えて7月23日、呉に帰港した。

 4日に「くにさき」が入港したタクロバンには、空自輸送機C-1に搭乗した陸海空の医官やNGOスタッフで構成された医療チーム約25人も到着し活動をスタートさせた。 

 7日、市内北部のDIIT地区医療センターで、医療チームが医療活動を行った。午前9時半の診療開始時には、診察希望の住民で長蛇の列ができ、終了時間まで約300人超が訪れた。

 また、6日間にわたり、市内のサンフェルナンド小学校では「くにさき」の乗員が各日約30人で文化交流を行った。生徒たちはラッパ演奏や日本語教室、けん玉、折り紙、剣道などの日本文化に触れた。胴着をまとった隊員達相手に竹刀で打ち込み稽古をする表情は笑顔に溢れていた。

 15日、全ての活動を終えた一行はクロージングセレモニーの後、タクロバンを出港した。途中18日に沖縄・勝連に入港し、医療チーム、米豪軍がそれぞれ退艦、23日に母港呉に帰港した。実績はベトナム、カンボジア、フィリピンの3カ国で医療活動(受診者)1697人、衛生教育活動(受講者)2423人で、施設補修に陸自施設要員8人が参加した。

国民に寄り添う自衛隊
平成25年度災害派遣及び不発弾等処理実績

 6月30日、統合幕僚監部は「平成25年度自衛隊の災害派遣及び不発弾等処理実績」を発表した。不発弾処理等を除く災害派遣の件数は554件で最近5カ年の平均並みだった。派遣人員数や装備数など規模で比較すると人員は24年度の約1万2000人から9万人と大幅に増加した。これは昨年10月の台風26号による伊豆大島への災害派遣、今年2月の豪雪による南東北~静岡への災害派遣によるところが大きく、伊豆大島災統合任務部隊(JTF椿)には陸海空合計で約6万4、000人が派遣された。


◇身近に眠る不発弾

 終戦から70年近く経った今日でも全国で発見される不発弾。その種類や年代、発見場所は様々である。統幕の発表によれば25年度、陸上において発見された不発弾の実績は全国で1、560件(前年度比130件増)、重量は約57・1t(前年度比11・0t増)だった。そのうち沖縄県では、754件(前年度比8件増)、約22・9t(前年度比4・0t増)で全体の5割弱を占める。重量については一昨年に引き続き増加傾向にあった。25年度は市街地で発見される不発弾が多かったのが特徴だ。住民避難を伴う不発弾処理の実施は合計37件、このうち32件が沖縄県内での実施だった。

 また、海上における実績は、機雷が1個(増減無し)、魚雷、爆雷、爆弾等の「その他爆発性の危険物」が332個(前年度比1、190個減)、重量約4・8t(前年度比8・9t減)、うち沖縄では151個(前年度比133個減)、約1・7t(前年度比5・9t減)だった。「その他爆発性危険物」の個数、処理量が過去5年間で最も少なかったのは、大量発見の可能性がある湾港等の浚渫工事の件数が少なかったためと見られる。

 陸上において不発弾を適切に処理、除去するのが陸上自衛隊にある不発弾処理隊だ。隊員は専門教育訓練を修了し、処理資格者に授与される不発弾処理徽章を着用する。

 不発弾が発見されると、警察から該当地域の師団長又は旅団長に処理が要請される。その後、各方面後方支援隊の不発弾処理隊に依頼されるか、不発弾処理隊のない北部方面隊と東北方面隊は師団または旅団隷下の部隊に処理が命じられる。そして緊急性の有無により、不発弾処理隊等が現場に急行し識別や調査を行うか、警察の一次保管後、後日回収処分されるかが判断される。また、不発弾の運搬が不可能であれば、現地での処理方法を地方公共団体と協議し、処理日時や役割分担等の協定を結んだ後、爆破処理や信管除去等の処理を行う。


◇大規模住民避難も

 25年度の主要な実例としては沖縄県宜野湾市で1,600人規模、静岡県浜松市で12,000人規模、東京都北区で7,000人規模等の多数の住民避難を伴う不発弾処理が行われた。

 なお、海上で発見された場合は海自の各地方総監部と沖縄にある水中処分隊及び各地方総監部を基地とする掃海艇が回収・処理を行う。水中処分員は隊員の中から志願者を選抜し海自第一術科学校で訓練を受ける。25年度で唯一発見された関門航路における米国製機雷の水中爆破処理は、佐世保地方隊下関基地隊の第43掃海隊・掃海艇「うくしま」とその水中処分員達によって行われた。


 7月9日午前9時45分、沖縄県知事から陸自第15旅団長・小林茂陸将補に災害派遣要請があり、台風8号の影響で渡嘉敷村と座間味村で発生した停電を復旧するため第15ヘリコプター隊のCH—471機が浦添市から慶良間諸島へ沖縄電力の人員と車両を輸送した。

東京、茨城、愛知が1級受賞
平成25年度優秀自衛隊地方協力本部表彰

全国50地本の中から、募集、援護、予備自衛官等管理及び渉外広報等業務でこの1年間特に好成績を収めた地本を表彰する「平成25年度優秀自衛隊地方協力本部表彰式」が6月23、24日、防衛省で行われた。

 24日に小野寺五典防衛大臣から第1級賞状が茨城、東京、愛知の3地本長に、23日に岩田清文陸上幕僚長から第2級賞状が12地本長に副賞とともに授与された。小野寺大臣は「ご苦労様でした」などの言葉をかけながら茨城、東京、愛知の3地本長に賞状と副賞の盾を授与し、式典後は受賞地本長と親しく懇談し労った。岩田陸幕長は1級受賞も含めた全15本長が出席した懇親会で「おめでとう。各地本長が先頭に立ち、部員全員が一丸となって任務達成に邁進したこれまでの労を多とする」と祝意と労いの言葉を述べた。


3地本25年度の多様な活動

 茨城地本(本部長・許斐輝幸1陸佐)は、アニメの舞台である茨城県大洗町で開催された海開きイベント及び10式戦車が参加した陸幕広報と連携し艦艇広報を行ったほか東方管内10地本と福島地本から航空学生希望者など計約170人が見学した空自百里基地ツアーを実施した。東京地本(本部長・高田克樹陸将補)は東京モーターショーのような国際的イベントから商店街の催しまで幅広く参加したほか、25年度は秋に東京国体が開催され空自ブルーインパルスの開会式での展示飛行にも調整役となった。2月の大雪災害では都庁に要員2名を派遣し孤立地域等に係る情報を収集した。愛知地本(本部長・市川文一1陸佐)は県内各地での市街地広報、県内所在の駐屯地や基地の見学、名古屋港での艦艇広報、進路・就職説明会などを有機的・一元的に連携し成果向上を目指す「リクルート大作戦2013」を行った。


【平成25年度優秀地方協力本部】

【第1級賞状受賞】▽茨城(本部長・許斐輝幸1陸佐)▽東京(本部長・高田克樹陸将補)▽愛知(市川文一1陸佐) 【第2級賞状受賞】▽旭川(本部長・児玉巌1陸佐)▽宮城(本部長・笹木明仁1陸佐)▽山形(本部長・武野浩文1陸佐)▽群馬(本部長・北澤直樹事務官行(-)8)▽埼玉(本部長・山本方之1空佐)▽石川(本部長・福應光二1空佐)▽福井(本部長・堀博幸1海佐)▽島根(本部長・山口芳正1陸佐)▽徳島(本部長・森真規1海佐)▽香川(本部長・中村賀津雄1陸佐)▽熊本(本部長・山中敏弘1陸佐)▽鹿児島(本部長・深谷克郎1海佐)


東京地本本部長・高田克樹陸将補

 東京地本は、平成26年6月24日、防衛大臣より第一級賞状を受賞致しました。これもひとえに協力団体の皆様を初め多くの皆様のご支援、ご協力並びに歴代本部長を初めとしたOBの皆様、関係部隊等のご指導の賜物と深く感謝申し上げます。

 本受賞は、適切な人材を確保する募集業務、隊員が後顧の憂いなく活動するための再就職を支援する援護業務、予備勢力の確保・堅持・増進するための予備自衛官業務の「3つの柱」に加え「運用を支える地本の役割」を実施するための各種施策を隊員一人一人が高い使命感をもって取り組んだ結果であると認識しております。

 適齢者人口の減少、企業の雇用回復等地本を取り巻く環境は、引き続き厳しい状況ではありますが、驕ることなく、感謝の気持ちを忘れずに、隊員一丸となり、さらなる飛躍を遂げる年になるよう今年度も職務に励んでいく所存です。今後とも東京地本に対するご支援ご協力よろしくお願い申し上げます。


茨城地本本部長・許斐輝幸1等陸佐

 平成二十五年度地方協力本部表彰式において小野寺防衛大臣から第一級賞状を戴きましたことは誠に誉れなことです。

 茨城地本の第一級賞状の受賞は、昭和三十一年に前身の茨城地連創隊以降、通算五十八年の歴史の中で、昭和六十年度に続き、二十九年ぶり二回目になります。

 今回の受賞に至るには、この二十九年間厳しい募集・援護・予備自業務が続く中、諸先輩方の長年にわたる努力の積み重ねと、その姿を、現職職員が忘れることなく『努力はうそをつかない』との信念の下、業務に邁進してきた良き伝統が受賞につながったものと確信しています。

 また、職員一人一人が常日頃から、担当する方々の『人生を幸せにする心』を持って業務に当たったからと考えています。この温かい地本であることを私たちの心の財産として、引き続き業務に当たり、次に続く地本職員への良き伝統を継承して行きたいと思っています。


愛知地本本部長・市川文一1等陸佐

 厳しい募集・援護環境が継続する中、全国の地方協力本部がそれぞれ目標達成のため英知を尽くし各種業務を遂行しているところと思われます。その中で、今回、愛知地方協力本部の努力・成果が評価され防衛大臣から表彰されたことは、誠に光栄の至りであります。

 地方協力本部の成果は、地域ごとの特性に大きく左右され、また、遅効的な施策がのちのち大きな成果を生むことが多々あります。今回の表彰についても過去の諸先輩方の努力と愛知県の各部隊、協力団体等のご支援、そして全国の地方協力本部はじめ全自衛隊の広報努力の賜物であることを再認識し、驕ることなく更に前進してまいりたいと思います。

 景気が回復する中、更に募集環境は厳しさを増しております。また、自衛隊の認知度が高まる一方、自衛官を職業の一つとして捕らえる若者は相変わらずの少数派です。この辺のギャップを埋めるごとく脳漿を搾って参りたいと考えております。引き続き、ご支援、ご協力、ご鞭撻よろしくお願い申し上げます。

陸海空隊員
ベトナム カンボジアで医療活動、文化交流

パシフィック・パートナーシップ2014
「くにさき」に同乗 日米豪が共同生活

 米海軍太平洋艦隊が主催する「パシフィック・パートナーシップ2014」に参加するため5月29日に横須賀を出港した海上自衛隊輸送艦「くにさき」(艦長・笹野英夫2海佐)は6月6日、最初の目的地ベトナムのダナンに入港、本格的な活動を開始した。

 2007年から始まったパシフィック・パートナーシップは、アジア太平洋地域を艦艇等が訪問し、各国政府、軍、NGO等の協力で医療活動、土木事業、文化交流を行い、参加国の連携強化や国際災害救援活動の円滑化等を図るのが目的。今年は日米、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、シンガポールが参加し、分担してベトナム、カンボジア、フィリピン、インドネシア、東ティモールを訪問する。

 日本からは陸海空の医療要員約40人、海自輸送艦「くにさき」(乗員約150人)、空自輸送機「C—1」1機(乗員約30人)、陸自施設要員約10人、NGO(12人)が派遣されている。「くにさき」には米海軍と豪陸軍から幕僚・隊員計140人が乗艦し、自衛隊員と寝食を共にしながら現地で活動している。


◇フットサルで交流

 ベトナムでの活動には現地での関心が高く、ダナン港入港後の歓迎レセプションにはベトナムのマスコミが取材に訪れた。レセプションに続いてダナン人民委員長・第5司令部を表敬訪問し、日米の隊員とベトナムの商工会議所関係者は翌日からのベトナムでの本格的な活動開始を前にフットサル競技で共に汗を流し友好を深めた。^k 7日からは第17軍病院やダナン総合病院で医療活動を開始。第17軍病院での救急患者初期治療教育はベトナム人医師や看護師等130人が受講し、日米の隊員達による指導に熱心に耳を傾けた。11日は「くにさき」艦上で、高所からの転落事故発生という想定のもと、日米豪越共同で患者の応急措置及び護送を訓練した。また、12日にはダナン総合病院で薬剤管理等の衛生指導を行ったほか、13日はベトナム側の要望で、火傷治療の医療セミナーを開催した。

 医療活動以外では、11日と12日に児童を含めた現地の人たちが「くにさき」を訪問して、ブリッジや手術台を備えた医務室、エアクッション艇LCAC等艦内を初めて見学した。同じ12日には「くにさき」の乗員有志が孤児院を訪問。子供たちは、隊員からおそわりながらツルや兜(かぶと)を折り紙で作ったり「けん玉」「竹とんぼ」遊びなどを初体験した。折り紙も「けん玉」「竹とんぼ」も隊員の優しい指導により子供たちはすぐにマスター、楽しい時間をすごした。途中、米軍のバンドが登場してマイケル・ジャクソンの「スリラー」を演奏、場を大いに盛り上げるなど、子供たちとの笑顔溢れる交流に隊員達も心が癒されたという。

 現地での10日間の医療活動や文化交流を終えた一行は15日にダナンを出港、19日に予定通り次の目的地カンボジア・シアヌークビルに到着した。


◇児童に歯科検診

 カンボジアでは陸上自衛隊の施設要員の約10名が参加し、医療活動のほかにフンセン小学校を訪問しラッパ演奏や習字、折り紙、剣道で交流し、児童たちは大喜びだったという。小学校1年生に対しては歯科検診や歯磨きの講習も行った。また、現地の資材・機材を活かして産婦人科の病室の新設も支援した。

 カンボジアでの活動は6月19日から28日までの10日間の予定で、その後フィリピンのタクロバンに向かい、同様の医療活動や文化交流を実施する予定だ。

南海トラフ巨大地震想定
自衛隊統合防災訓練

 6月1~11日、防衛省・自衛隊は「平成26年度自衛隊統合防災演習(26JXR)」=訓練統裁官・岩﨑茂統合幕僚長=を行った。指揮所演習や実動訓練に、防衛省・陸海空統合の演災南海統合任務部隊(演JTF南海トラフ)=指揮官・磯部晃一陸自東部方面総監=、在日米陸軍、各府省庁、地方自治体等計約1万人が参加した。

 26JXRでは昨年度に続き、東海地震と東南海・南海地震が同時発生するM9・1、最大震度7の「南海トラフ巨大地震(同時発生)」を想定。6月2日午前9時25分の発災想定から6日午後までの4日間、ICE(指揮所訓統裁システム)等を使用し指揮所訓練を行った。

 昨年度の教訓をもとに、26JXRでは「迅速な初動対応(他方面からの緊急赴援)」「関係府省庁、米軍との連携強化」を目的に、訓練の充実と進化が図られた。昨年度の実動訓練は一部だったが、26JXRでは、陸自中方計画、空自総隊計画の各種実動訓練が大規模に行われた(別表参照)。

 また、指揮所訓練開始前の5月16日には、防衛省主催で内閣官房や警察庁、消防庁、海上保安庁、原子力規制庁等15関係府省庁との間で連携訓練が行われ、大規模震災発災時に足並みを揃えるため、役割分担の明確化や相互の問題認識について討議を行った。東部方面隊でも、5月27日に東京都・神奈川県・静岡県・電話各社・電力各社・東日本高速道路など関係機関との間で連携訓練を行い、発災時の関係機関との調整要領について討議した。

 指揮所演習は、昨年同様、朝霞駐屯地に設置された演JTF南海兼陸災南海東方部隊の日米調整所や施設調整所、訓練統制部、指揮所訓練支援隊等が3日午後に報道公開された。公開時は発災から約28時間経過後で、人命救助の存命率の分かれ目"72時間"の真っ只中。ICEモニターには被害と部隊行動を示す赤い印で真っ赤に染まった地図が映し出され、東日本大震災を越えると想定される甚大な被害を実感させた。個々の判断が人命救助の成否に直結する時間帯だけに指揮所内の各施設は緊迫した雰囲気に包まれていた。

 2日夕方に公開された増強幕僚の移動では、運用・情報・兵站機能を担う北方等の1尉~将官クラスの幕僚計数十人が空自第2輸送航空隊のC―1輸送機から入間基地に降機した。航空機による増強幕僚の実移動は昨年になかった試みで、距離の壁、組織の壁を越え互いを補い己が能力を最大限に発揮するための努力は、着実に積み重ねられている。


26JXRにおける陸自中部方面隊計画実動訓練

(南海レスキュー26として実施)

1 主要参加部隊等(参加人員数:約6330人)

【陸自】人員約5800人 車両等約1110両 航空機27機(OH―6、UH―1、CH-47J)

【海自】人員約470人 潜水艦救難母艦「ちよだ」、護衛艦「くらま」

【空自】人員約20人 航空機3機(CH―130、UH―60J)

【米陸軍】人員約40人 航空機3機(UH―60)

【その他】関係機関等(各県庁・地方自治体)


2 主要訓練内容 ①滋賀県・あいば野演習場では、空自C-130輸送機と連携し物料投下訓練。②和歌山県・高知県での患者搬送訓練。和歌山では海自潜水艦救難母艦「ちよだ」、高知では護衛艦「くらま」と陸上間を陸自ヘリUH-1、米陸軍ヘリUH-60が飛行。(高知では米陸軍UH-60は天候悪化のため不参加)。③大阪府堺市では、資源エネルギー庁と連携しコスモ石油堺製油所に自衛隊のトラックが入構しドラム充填設備により石油製品を確保・搬出する訓練④三重県・久居駐屯地、大阪府・信太山駐屯地ではそれぞれ、中方隷下部隊が兵站基地を設定し北方・東北方から展開した方面後方支援隊や各補給処の受け入れる訓練


26JXRにおける空自航空総隊計画実動訓練

1 参加人数

(1)航空施設隊の増援(機動展開):127名

(2)装備品の集積:10名 

2 参加部隊、訓練内容

(1)航空施設隊の増援(機動展開)

①北部航空施設隊

訓練内容:三沢、千歳→小牧へ機動展開(フェリー、陸路)、移動電源車の活用

②中部航空施設隊

訓練内容:入間、百里→小牧 入間、小松→浜松へ機動展開(陸路)、移動電源車の活用

③西部航空施設隊

訓練内容:築城、芦屋→新田原 芦屋→高知駐屯地へ機動展開(陸路)

④南西航空施設隊 

訓練内容:那覇→新田原、知念へ機動展開(フェリー、陸路)、移動電源車の活用

(2)装備品の集積

参加部隊:3空団、1空団 参加装備:人命救助システム2型×1式 訓練内容:人命救助システム2型の三沢→浜松への空輸及び操作

予科練戦没者慰霊祭ゆかりの地で開催
武器学校

七つボタンは桜に錨
陸海初の共同献花下士官の情報を基に

 5月25日、「第47回豫科練戦没者慰霊祭式」(財団法人海原会主催)が陸上自衛隊土浦駐屯地(司令・宮本忠明陸将補)武器学校内の雄翔園でしめやかに執り行われた。座っているだけでも汗がじっとりにじむような初夏の暑さの中、昨年よりも20人程多い約330人の同窓生や遺族、同伴者、さらに宮本司令、第7航空団司令・深澤英一郎空将補、教育航空集団司令部幕僚長・阿部浩1海佐等が来賓として参列した。

 式は午前10時25分陸上自衛隊施設学校音楽隊の演奏が会場の雰囲気を和ませる中、海上自衛隊下総教育航空群所属のP—3C対潜哨戒機が轟音を立てながら上空に飛来。日本赤十字社直轄の赤十字飛行隊2機による「日の丸飛行隊」がそれに続いた。参加者は、勇ましい慰霊飛行を行った3機が、薄雲から顔を覗かせる太陽の方向に消え行くまで、手を振って見送った。

 土浦駐屯地は元々、大正11年に霞ヶ浦海軍航空隊水上班として開隊され、海軍飛行予科練習生(予科練)の教育訓練を終戦まで行ってきた予科練ゆかりの地だ。今回、陸・海下士官達が海原会への情報提供を行う事により念願の海上自衛隊下総教育航空群の協力が初めて実現した。陸・海共同で式典をサポートする事となった意義は大きい。

 そのひとつとして、P3—C慰霊飛行の他に下総教育航空群隊員10人による儀仗が行われた。祖国のためにその身を捧げた予科練生が飛んだ空へ放たれた弔銃の銃声は、きっと彼らに届いたことだろう。引き続き、陸自武器教導隊員と海自下総教育航空群隊員が後方から会場に入ってきた。2人が同じトーチを握り共同献火を行うその姿は象徴的であった。

 海原会理事長、堺周一氏が「予科練魂は次の世代まで伝えます」と力強く式辞を述べ、続いて行われた献花では、限られた時間の中、出席者の列が途切れることなく続いた。献花台にヒナギクをそっと置き、「予科練二人像」を見あげながら戦没者への思いを馳せる参列者の姿が印象的であった。

 来賓挨拶に立った宮本司令は「今後も戦没された予科練の方々の英霊顕彰をするこの地を大切にし、自衛官として国を守る使命感をより強いものにしたい」と述べた。

 続いて遺族代表として、予科練乙飛七期、故西澤廣義海軍中尉の甥にあたる西澤政充氏が「いずれ自分もおじのもとに行くが、その時おじたちが命と引換えに守り抜いた日本の今を誇らしげに話す事ができるでしょうか。予科練同窓生の皆様は生きたくても生きられなかった多くの戦没者の分まで永生きして下さい。海原会の皆様、自衛隊関係者の皆様、地元阿見町町長をはじめ町民の皆様に心から感謝申し上げます」と式典関係者への感謝を交え、述べた。

 その後、「偲ぶ詩朗読」、全員での「若鷲の歌斉唱」、奉納行事と続き、海原会の酒井省三副理事長の閉式の辞で散会となった。

 閉式後、予科練同窓生(松山海軍航空隊)で戦後医師となった兵頭春夫氏(86)は「今、日本は世界から立派な国だと言われる。しかし、それに応え続けるためには戦前のような、指導者が誤った方向に導かないようにしなくてはいけない」と、失った戦友の話に時折言葉を詰まらせながら、穏やかに語った。


ミニ解説「予科練」

 「海軍飛行予科練習生」の略称および制度のこと。旧海軍が昭和5年、若いうちから厳しい教育訓練を施し熟練の搭乗員を育成する目的で設けられた。当初は高等小学校卒業者で満14歳以上20歳未満の少年を採用していたが、更なる航空戦力の拡充のため甲種、乙種、丙種、更に昭和18年から乙種(特)飛行予科練習生という制度を設けた。

 また当初教育の場としていた横須賀海軍航空隊では手狭になり、霞ヶ浦海軍航空基地隊に移動、翌年新設された土浦海軍航空隊がその担当となった。その後も要員拡充のため全国で航空隊が開隊された。

 卒業した練習生は下士官として戦績を上げるが、太平洋戦争の状況が悪化するにともない敢行されたいわゆる「特攻」の搭乗員として多くの命を落とした。昭和20年9月には予科練教育は凍結され、各予科練航空隊は解隊した。


小野寺防衛大臣
南スーダン・ジブチ派遣部隊を視察

 小野寺五典防衛大臣は5月8日にアフリカの南スーダン、9日にジブチで自衛隊の派遣部隊を視察した。南スーダンでは首都ジュバでUNMISS(国連南スーダン共和国ミッション)に派遣されている施設隊第5次要員等を視察するとともに、キール大統領らと会談した。5次要員は昨年12月以来、南スーダン政府軍と反政府軍の武力衝突で発生した避難民のため各種人道支援活動を実施している。

 ジブチではジブチ国際自治港で海賊対処行動水上部隊(第18次隊)の護衛艦「いなづま」を、ジブチ空港内にある自衛隊の活動拠点で海賊対処行動航空隊(第15次隊)をそれぞれ視察した。また、ハッサン国防大臣と会談した。小野寺防衛大臣は視察後、「ジブチは摂氏50度を超える大変暑い中での活動。南スーダンは治安の状況が安定しない中での活動とそれぞれ苦労をしている現場を見た。大変、規律正しくそして士気高く、日本の平和貢献のために活動している自衛官の姿を見て、大変頼もしく感じた」と称賛した。

対中露機が激増
空自スクランブル

緊張の東シナ海 無人機も対象

 4月9日、統合幕僚監部は平成25年度(平成25年4月1日~平成26年3月31日)の航空自衛隊戦闘機などによる緊急発進(スクランブル)実施状況を発表した。25年度のスクランブル回数は810回。前年度の567回から約1・4倍の大幅増で、800回を超えたのは平成元年度以来で冷戦終結後初めて。

▽対中国機に415回、

 南混団が402回

 対象機の国籍は推定を含むが対象国・地域別の最多は中国で415回。次いでロシア359回。両国で約95%を占める。前年度比で中国は109回、ロシアは111回増加した。北朝鮮が9回、台湾が1回。その他26回。

 方面隊別最多は南西航空混成団の402回で全体の約半数。次いで北部航空方面隊の222回で、西部航空方面隊は100回、中部航空方面隊は88回だった。いずれも前年度より増加し、北部航空方面隊及び南西航空混成団の増加が顕著であった。

 中国機、ロシア機に対するスクランブル回数の急激な増加について、4月10日の定例記者会見で岩崎茂統合幕僚長は、「中国は、経済の発展とそれに伴う軍の近代化、軍の行動活発化などが反映されて(スクランブルの対象となる飛行を)行っているのではないか」、「ロシアも中国と同じ事が言えるが、ロシアは軍改革が進んでおり、演習を行いながら少しずつ能力を上げている」などと述べ、経済の発展による軍の活動の活発化や軍改革の動きが影響しているとの見方を示した。

 会見では、11月23日に中国が東シナ海に防空識別区を設定した動きとの関連も問われたが、11月23日以前から既に対中国機のスクランブルが前年比で増加していることから「必ずしもこのこと(防空識別区の設定)だけが原因ではない」と述べた。

▽公表事例で目立つ

 中国機の活動範囲拡大

 日本の領空周辺を外国機が長距離飛行した事例などについて、統幕は「特異な飛行」として経路、対象機の国籍・機種名等を公表している。25年度の公表事例は計53件。

 公表事例はロシア機が最多で31件。オホーツク海や日本海を飛行した経路が殆どだが、12月19日には日本の周辺を周回飛行した。

 8月22日には福岡県沖ノ島北西の領海上空を戦略爆撃機TU—95型が領空侵犯。今年度唯一の領空侵犯だった。

 中国機の公表事例は21件。領空侵犯は無かった。Y—12型機などによる尖閣諸島沖の東シナ海の飛行のほか、Y—8早期警戒機型・大型爆撃機H—6型による東シナ海~太平洋間往復飛行、レーダーの周波数など電子情報を収集する機能を持つTU—154型による男女群島(長崎県五島市)沖~尖閣諸島沖の東シナ海の飛行など、活動範囲の拡大がみられた。H—6、TU—154は25年度が初公表。また、9月9日に国籍不明の無人機(尖閣諸島沖の東シナ海を飛行)と推定される事例を初公表した。


ミニ解説 「スクランブル」

 スクランブルとは緊急発進のことである。我が国とその周辺の上空を24時間態勢で警戒監視している航空自衛隊のレーダーサイトや、早期警戒機、早期警戒管制機等からの情報により、領空侵犯のおそれがあると判断した際に航空自衛隊のF2、F15、F4が実施する。対象機に接近して状況確認、行動を監視し、実際に領空侵犯が発生した場合には、退去の警告などを行う。主として千歳、三沢、百里、小松、築城、新田原、那覇の7基地に所在する戦闘機が実施し、24時間態勢でアラートを遂行している。昭和42年以降、領空侵犯事例は25年度までに37件あるが、信号射撃を行った事例は昭和62年12月9日に沖縄本島上空を領空侵犯したソ連の爆撃機TU—16型に対する1例のみ。

おかえりなさい
南極観測「しらせ」帰国

昭和基地に3年ぶり接岸

 4月9日、第55次南極観測協力を行った海上自衛隊砕氷艦「しらせ」(艦長・日高孝次1海佐)が5か月ぶりに東京・晴海埠頭に帰国した。前日の荒天から一転、「しらせ」帰還を歓迎するかのような雲ひとつない穏やかな天気に恵まれ無事接岸した。乗員と約130人の乗組員家族や関係者は、艦上で久しぶりに再会を果たし、甲板は喜びの歓声に包まれた。

 「しらせ」は昨年11月8日に晴海埠頭を出港、オーストラリア西部フリーマントルで58人の観測隊員が乗艦し、12月中旬に氷海に進入した。

 氷海では過去最高を記録する4563回のラミング(チャージングともいわれる砕氷行動)を実施する程の困難な砕氷航海を続けた。綿密な航路計画と「しらせ」の優れた砕氷能力を十分に発揮して、今年1月4日に過去2年間厚い氷に阻まれていた昭和基地沖の接岸に3年ぶりに成功した。

 約50日間の物資輸送やその他の支援作業を無事終えて、1月22日に離岸した。

 昭和基地からの帰路には2月16日にロシアのマラジョージナヤ基地沖約700mの地点で座礁。この時、二重船底の外壁が損傷して浸水したものの内壁の損傷や燃料の漏洩はなかった。積載物資を船底側へ移動させて船首側を浮上させ、排水作業を実施しながら満潮時に離礁を試み、4度目で無事脱出。こうした数々の困難も乗員一丸となって克服、無事に帰国した。

 航海日数151日、南極での行動日数は99日、総航程約37000?でこれは概ね地球1周分に相当する。観測協力として、人員輸送、1160トンの物資輸送、艦上観測、基地設営支援等を実施した。

 接岸後に「しらせ」に乗り込んだ出迎えの家族や知人らは、飛行甲板で待ち受ける乗員と再会。「パパ」「お父さん」と待ちきれずに駆け出す子供たちを抱き上げたり、頬ずりして再会を喜ぶ乗員の姿があちらこちらで繰り広げられた。「お父さんにチュしてあげたら」とのお母さんの声や「お帰りなさい」「お疲れ様」とたくましくなった我が子を見つめるご両親の姿も。若い独身乗員は恋人や友人たちと一緒に携帯で写真撮影したりとそれぞれに再会のひと時を楽しんだ。

 帰国報告に続いて艦上で行われた帰国行事には重岡康弘海上幕僚副長、武居智久横須賀地方総監、松村五郎統合幕僚副長らが出席した。松村副長が「3年ぶりに昭和基地沖への接岸を果たし、今後の観測業務の進展に大きく寄与して無事帰国を果たすことができたのは、日高艦長の指揮統率の下、一致団結して任務達成に邁進した結果である」と統幕長訓示を代読した。

 また、海幕長慰労の辞(重岡副長代読)でも「艦長以下乗員が自己に与えられた職責を深く理解し全身全霊を傾けて任務遂行に邁進した賜である」と労をねぎらった。日高艦長には、今次の南極観測協力の功績に対し2級賞状が授与された。

ミニ解説「しらせ」

 南極地域観測を支援するため日本と昭和基地への物資や人員の輸送を主な任務としている砕氷艦。基準排水量1万2650トン、全長138m、全幅28m。最大速度19ノット。

 南極地域観測を中心となって行っている文部科学省が建造費を支出し、運用は海上自衛隊が行っている。

 海上自衛隊が観測協力を担当することになったのは1965年からであり、初の任務には砕氷艦「ふじ」が就役。1982年からは初代「しらせ」が就き、現行の2代目「しらせ」は2009年に就役し、今回で5回目の協力となる。

 名前は日本人として初の南極探検を行った白瀬矗(のぶ)陸軍中尉(1861年~1946年)に因むもので、一般からの公募で命名された。

 南極大陸にある「白瀬氷河」も同じ白瀬中尉の名前から名付けられた。

防大卒業式
安倍首相が激励・祝福

 防衛大学校(神奈川県横須賀市)の平成25年度卒業式が3月22日に行なわれ、本科58期の448人など536人が巣立った。

 卒業式では安倍晋三首相が「諸君の規律正しく、凜々しい勇姿に接し、自衛隊の最高指揮官として心強く、頼もしく思う」と訓示し、幹部自衛官となる卒業生の前途を祝した。

漂流船を救助
「さみだれ」アデン湾にて

 3月2日夜(現地時間2日午後)、護衛活動開始までの間待機していた第17次派遣海賊対処行動水上部隊(指揮官・第4護衛隊司令 田尻裕昭1海佐)の護衛艦「さざなみ」(艦長・林泰弘2海佐)搭載ヘリが、白い布を振っているダウ船の乗組員をアデン湾西部で発見。当該情報を受け、ゾーンディフェンスを実施中の護衛艦「さみだれ」(艦長・斎藤貴2海佐)が現場海域に向かい、当該乗組員に対して救助の要否を確認したところ、当該乗組員が救助を要請。

 「さみだれ」に乗艦している隊員が、当該ダウ船の乗組員に対して聞き取りを実施したところ、当該ダウ船はソマリアのボサッソー港からイエメンのムッカラ港に向け航行中にエンジンが故障し、約10日間漂流していたことを確認。その後、当該隊員は、当該乗組員に対して、飲料水及び食料を提供。

 「さみだれ」は、現地の日の出まで、当該ダウ船の付近で警戒監視を実施。その後、「さみだれ」は、CTF151を通じてイエメンの沿岸警備隊と調整した当該ダウ船の引渡し予定海域に向け、当該ダウ船の曳航を開始。3月3日夜(現地時間3月3日午後)、イエメンのアデン港の沖合において、「さみだれ」は、当該ダウ船をイエメンの沿岸警備隊に引き渡した。


創設11年を迎えた先任伍長制度

海上自衛隊先任伍長会報開催

 2月13日14日、平成25年度海上自衛隊先任伍長会報が防衛省内で開催された。先任伍長制度は今年で創設11年を迎えた。この日のために全国の海自部隊から訪れた先任伍長等は約60名。

 先任伍長会報は海上自衛隊先任伍長 宮前稔明海曹長の「平成25年度海上自衛隊先任伍長会報開催に当たり先任伍長として、隊員、各部隊に何ができるのか、何が必要なのかを今一度考え、多くの意見を交換し有意義な会にしたい」との挨拶から始まった。

 2日間で「日米最先任下士官会議」「服務事故」「先任伍長制度」「海上自衛隊広報事業の現状」「人事制度」「教育体系の最適化」「班長手帳」等について議論をした。自分の部隊やその隊員を本当に大切にしていると思わされる発言も多く、各先任伍長の業務内容が多岐に渡っていることを改めて認識させられた。

 初日には、鮒田英一海幕副長の講話もあり「組織における危機管理と先任伍長に求められる役割」などの話に皆真剣に聞き入っていた。また、2日目には部外講師として落語家の桂才賀氏の講話があり噺家ならではの小気味よい講話を聴講して「定年後は落語に弟子入りしようか?」と話す者もいて大好評。最後は市ヶ谷記念館研修。「行きたいと思っていたがなかなか行く機会がなくて行けて嬉しい」「帰ったら皆に話を聞かせなくては」などとこちらも大好評だった。

 「おー久しぶり!」と再開を喜ぶ姿、個々に活発な情報交換を行う人…。先任伍長会報はとても有意義で必要な会報と言えよう。

空自「UH-60J用途廃止」

航空自衛隊初のUH—60J52号機の用途廃止に伴う記念式典が、1月23日(木)新田原救難隊で行われた。

 当日は、52号機の用途廃止を祝福するかの如く雲一つ無い青空となり、記念式典には第5航空団飛行群司令西野1佐をはじめ基地所在部隊長、OB会(てげてげ会)及び協力会(助くっ会)等多数の御来賓の御臨席を賜ることができた。

 新田原救難隊長による式辞の後、祝辞において第5航空団飛行群司令西野1佐は、災害派遣における指揮所勤務経験から、海上保安庁が遂行できない任務を救難隊が完遂した際、操縦士から「UH—60Jの能力があってこその成果でした。」と聞かれた話を披露して頂いた。

 式典終了後記念撮影を実施し、出席者全員で52号機の最後の飛行となる小牧基地への空輸任務を見送り、全ての行事を無事終了した。

 空自UH—60Jは、51号機から53号機まで、米国において組み立てられ、試験飛行を行った後分解され、三菱重工小牧南工場で組み立てられ、航空自衛隊に納入された。

 本来52号機は、製造番号が一番であったが、米国での試験飛行が長引き、先に試験飛行が終了した2番機が航空自衛隊初号機として納入された経歴がある。

 52号機は、平成3年3月航空自衛隊に納入され、平成3年9月に航空救難団へ配属となり、救難教育隊において、運用試験等を行い、平成4年7月に千歳救難隊に配備された後、救難教育隊、小松救難隊、松島救難隊、百里救難隊、浜松救難隊、那覇救難隊、新田原救難隊で数々の災害派遣に出動、及び、救助ヘリコプターのパイロット養成に使用され、約23年間の任務を全うした。

 平成26年1月23日(木)新田原基地から、小牧基地に空輸された52号機は、最終任務の空輸を終え、小牧基地において用途廃止に向け、準備が始まった。

統合機動防衛力を見据えて

陸・海・空の統合、降下訓練を展示

第1空挺団降下訓練始め

 冬空に花咲く何十もの空挺傘が防衛省・自衛隊の新春を飾る、伝統の第1空挺団(団長・岩村公史陸将補)「降下訓練始め」が1月12日、薄雲が漂う厳しい寒さの中、約300隊員・車両40両・航空機21機が参加して習志野演習場で行われた。

 はじめに、高度約340mから昨年12月に着任したばかりの岩村団長以下、最先任上級曹長、空挺教育隊長など指揮官と最年少隊員による降下が行われた。上空から降下視察を終えた小野寺五典防衛大臣、岩崎茂統幕長、岩田清文陸幕長が観閲席に着席した後、第1部の「各種航空機からの降下訓練展示」が始まった。


第1部 各種航空機からの降下訓練展示

 東部方面ヘリ隊の多用途ヘリUH—1、第1ヘリ団の輸送ヘリCH—47、空自第2輸送航空隊の固定翼輸送機C—1、空自第1輸送航空隊の同じくC—130が次々に飛来して空挺団員が空挺降下を行った。降下誘導小隊が誘導を行う通信音も場内に流れ、緊張感が高まる中、約1秒間隔で航空機の窓から飛び出していく。約4秒で開傘、状況を確認し操縦と滑空により巧みに降下する。4種計6機の航空機から計55人が降下を完了するまでに要した時間は約8分。危険を伴う空挺降下を迅速かつ安全に行う隊員たちの凄技が約1万2000人の来場者の目の前で繰り広げられた。


第2部 島嶼防衛における空挺作戦

 第2部は、昨年末制定された統合機動防衛力構想に基づく島嶼防衛を、陸上・海上・航空自衛隊の統合による作戦により実施し敵を撃破する場面が展示された。

 習志野演習場が島嶼"習志野島"、演習場外の市街地は全て海という設定で、習志野島の一部地域を支配している敵部隊を、落下傘降下による空挺作戦とヘリコプターによるヘリボン作戦により左右から拘束し、最終的に戦車を含む重装備の部隊を揚陸し敵を3方向から包囲撃滅するシナリオ(2面に続く)。

だるまに安全祈願

航空自衛隊

 1月6日、航空幕僚長応接室で、齋藤治和航空幕僚長を始め、福江広明航空幕僚副長、各部長等、新井岳志准曹士先任が参加して、安全祈願だるまへの目入れ式が行われた。これは、航空自衛隊が平成26年の初めにあたり航空自衛隊が安全を確保しつつ、任務を整斉と遂行できることを祈念して実施したもの。最初に監理監察官、続いて准曹士先任、各部長等、航空幕僚副長の順で左眼を入れていき、最後に航空幕僚長が眼の中心部分に墨を入れて左眼の目入れが完成すると、参加者からは盛大な拍手が沸き上がった。

 齋藤空幕長は、「1人の隊員も失わない。1つの装備品も失わない。今年一年無事故で過ごすため、協力よろしく頼む(要旨)」と参加者に言葉をかけた。

 平成25年12月27日には、航空自衛隊が平成25年において大きな事故もなく任務を整斉と遂行できたことに感謝して安全祈願だるま目入れ式を行った。最後に齊藤空幕長が眼の中心部分に墨を入れて両眼が開眼。齋藤空幕長は、「今年は航空事故や大きな事故もなく1年を終えることができた。今後も安全の確保に努力していこう(要旨)」と力強く語った。

新年のメッセージ
陸海空自衛隊が心を一つに

統合幕僚長 岩崎茂 空将

 防衛ホーム読者の皆様、国内外の各地で勤務している隊員諸官及びご家族の皆様に謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 さて、今日の国際社会では、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散、サイバー、海洋や宇宙等の安定的利用に対するリスクが新たな安全保障上の課題となる等、国際的な安全保障環境は多様化・複雑化しつつあります。我が国及び周辺では北朝鮮による核実験の強行、中国の東シナ海から太平洋にかけての海空域における活動の活発化など我が国を取り巻く安全保障環境は不透明・不確実さが増しています。 

 このような中、自衛隊は、平素から我が国及び周辺における警戒監視や情報収集、対領空侵犯措置を不断に行い、事態に対する即応態勢を維持しているところです。また昨年は、伊豆大島における台風26号による土砂災害に係る災害では統合任務部隊を編成し、行方不明者捜索等の活動を実施しました。このほか、水防作業、急患空輸、山林等の消火活動支援等にも恒常的に対応しています。

 一方、国外では昨年11月に、台風30号で甚大な被害を受けたフィリピンへ、国際緊急援助統合任務部隊を派遣し、医療・防疫、物資輸送等の救援活動を実施しました。南スーダンにおけるPKOでは、第5次要員が拡大された活動地域での本格的な活動を開始し、南スーダンの国造りに貢献しています。アデン湾における海賊対処では、護衛艦1隻を船舶護衛に割り当て、区域防護に1隻を割り当てる要領で活動し、昨年は護衛回数500回、任務飛行1000回を超え、船舶の安全な航行に寄与しています。

 また昨年は米国における統合訓練、11月の自衛隊統合演習により、島しょ侵攻対処に係る自衛隊の統合運用能力等の維持・向上を図っています。

 このように自衛隊は、複雑で不確実な安全保障環境の中、我が国の平和と独立を守るという崇高な任務を達成するため、警戒監視活動や災害派遣、国際平和協力業務等の様々な活動を行っているところです。自衛隊は、国民の皆様の期待に応え得るよう、陸海空自衛隊が心を一つにして統合運用を基本とした価値観を共有して、事態に即応し実効的に対応できる態勢を維持していく所存です。

 本年も隊員諸官とともに、統合運用態勢の更なる実効性向上に努め、与えられた任務の達成に邁進することを誓い、新年の挨拶とさせていただきます。