自衛隊ニュース
在日米軍新司令官と会談
日米の指揮統制構造の関係を明確に
中谷大臣を表敬
10月16日、在日米軍兼第5空軍司令官のスティーブン・F・ジョスト空軍中将が中谷元・防衛大臣を表敬した。ジョスト中将は同8日に横田基地での交代式を経て同司令官に就任したばかり。前職は米輸送軍統合能力付与コマンド司令官(バージニア州ノーフォーク海軍基地)。
中谷大臣は「日米同盟に求められる役割はかつてないほどに大きい」とし、「この非常に重要な時期に、日本およびこの地域に深い見識と的確な情報判断能力を持つ貴殿が就任したことを心強く感じる」と歓迎の意を述べた。ジョスト司令官は「今後、自衛隊と米軍との間で様々な変革や改革が行われるが、情報共有等でしっかりと透明性を持って取り組んで行きたい」と応じた。
ジョスト司令官は吉田圭秀統合幕僚長とも個別に会談。吉田統幕長は、来年3月に新設を予定する陸海空自衛隊の指揮系統を一元化した「統合作戦司令部」と、そのカウンターパートとして在日米軍を再編成して独自に作戦指揮の権限を持たせる「統合軍司令部」について、「任務、能力および責任を整合させることに重点を置きながら、日米の指揮統制構造の関係を明確化していきたい」と述べた。また、10月23日から南西諸島等で始まる日米共同統合演習「キーン・ソード25」について、「この時期における戦略的な意義が極めて大きい」と強調した。
ジョスト司令官は「C2(Command and Control=指揮統制)の形は最も極めて重要だ」とし、「日米でどのような形としていくか、統幕長と私で緊密に協議していきたい」と述べた。
齋藤海幕長、米太平洋艦隊司令官と会談
齋藤海幕長とケーラー司令官
10月21日、齋藤聡海上幕僚長は海上幕僚監部で、米太平洋艦隊司令官のスティーブン・ケーラー海軍大将と会談した。ケーラー司令官は今年4月にハワイの司令部での交代式を経て就任。齋藤海将が海幕長に就任してから初の対面となった。
齋藤海幕長はインド太平洋地域の安全保障環境は混迷を深めているとし、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持する必要があると主張。「そのために日米海軍種間の連携は、国際社会の平和、安全および繁栄の礎として極めて重要だ」と述べ、「あらゆる事態で抑止力、対処力を最大化するために引き続きケーラー司令官と一緒に取り組んで行くことに非常に喜びを感じる」と歓迎の意を表した。
ケーラー司令官も「力による一方的な現状変更に対して、日米とこの地域のパートナーで一緒に立ち向かう必要がある」と同意を示し、「日米同盟、日米海軍種間のパートナーシップがそれを防ぐ唯一かつ一番強い方法であると信じている」と述べ、今後もより一層の連携強化に向けて協力していくことで一致した。ケーラー司令官は翌22日に、米軍佐世保基地の輸送揚陸艦「サンディエゴ」内で吉田統幕長と日米共同統合演習「キーン・ソード25」の日米共同会見を行った。
国連幕僚課程(ケニア)に
職員が教官として参加
全体講義を行う南條1陸佐
<統幕学校国際平和協力センター>
統合幕僚学校国際平和協力センター(センター長・渡邉邦嘉1陸佐)は、8月29日から同年9月20日までの間、ケニア平和維特訓練センターで実施されたUNSOC(国際連合幕僚課程)に主任研究官の南條1陸佐を教官として派遣した。同センターは首都ナイロビに位置し、研究・教育の機能を保持するとともにケニア人のセンター長(陸軍准将)のもとイギリス、インド、ドイツ、フランス、スイスの軍人が勤務する国際色豊かな教育機関である。
同課程は「国連平和維持活動に従事する幕僚として必要な知識及び技能を修得させる」ことを目的としており、教官派遣を受けカナダが主任教官、日本とオーストラリアが補佐という態勢で教育を実施した。
学生は34名、15の国(ベナン、ボツワナ、コートジボワール、ガーナ、ヨルダン、ケニア、マラウイ、モロッコ、ナミビア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、タンザニア、チュニジア、ザンビア)から中尉~中佐までの軍人が参加しており、言語(英語、フランス語及びアラビア語)や歴史及び文化は異なるものの一致団結し、各種課題等に真摯に向き合っていた。
南條1佐は教官として国際連合や平和維持活動に関する講義を受け持つとともに、17名で編成されたグループの長となり、シナリオに基づく図上演習を指導した。
陸演で戦力回復センター
展開訓練を実施
展開完了
<大津駐屯地>
大津駐屯地業務隊(隊長・藤田剛2陸佐)は、10月2日から3日の2日間にわたり、令和6年度陸上自衛隊演習の場を活用し、戦力回復センター展開訓練を実施した。
大津駐屯地は地理的な特性として平素から「通過部隊支援」の運用が多く、その支援の一つに戦力回復センターの展開があるため、今回は普通科1個中隊程度を想定して駐屯地体育館に戦力回復センターを開設した。「開設時間の確認」、「収容面積の把握」、「女性スペースの充実化」を検証項目として訓練を開始し、人員45名をもって経始から物品の搬出、展開、設置等、約2時間で開設を完了した。開設後のAARにおいて、個人用スペース内のプライバシー保護要領など今後の課題を抽出することができた。
戦力回復センターは、疲労等による隊員の負担を軽減して派遣隊員が勤務に耐えうるよう、心身ともに戦力回復できる施設として開設するものであるため、引き続き必要機能等を検討していき支援態勢の充実化を図りたい。
前海自先任伍長に
米海軍省功績勲章
東准尉とジョンソン司令官
海上幕僚監部監察官付の東和仁准海尉は、米海軍長官より米海軍省功績勲章を受章した。これは海上自衛隊先任伍長在任時の日米下士官同士の関係構築に尽力した功績、昨年12月の西太平洋海軍シンポジウム上級下士官会同(WPNS SELWG)開催を主導し成功に導いた功績が認められたもの。同勲章は米国に対して顕著で価値ある業績を残した者に与えられるもので、海上自衛隊先任伍長の功績に対しての授与は初の快挙だという。
10月16日に海上幕僚監部で行われた授与式では、齋藤聡海上幕僚長、勲章伝達者で在日米海軍司令官のイアン・ジョンソン少将、今回の勲章授与を強く推薦した在日米海軍最先任上級兵曹長のマイク・キャズバウスキー曹長をはじめ、統幕・海自・空自の各最先任(陸自は出張中のため不在)、東京近郊の部隊等から先任伍長約30名、海幕の先任海曹5名が参列して、「歴史的な1日」を見届けた。そして、東准尉を献身的に支え続けた由紀夫人の姿もあった。
「いつか肩を組んでドブイタストリートを」
勲章を東准尉の左胸に取り付けたジョンソン少将は「東准尉のおかげで、在日米海軍の水兵と海上自衛隊の隊員が肩を並べて、地域の安定・自由・平和のための任務に携わることができている」と賛辞を贈った。
東准尉は「普段からお互いを知ることは、共に任務に当たる際に大きな力になると信じて、在日米海軍先任と共に関係性の深化に努めてきた」と振り返り、「私は彼の酒癖まで把握している」と続けると、マイク氏は「お茶、お茶」とおどけて見せて会場は笑いに包まれた。最後に、会場の先任伍長らに対して「今後も日米のさらなるパートナーシップ、リレーションシップの深化に取り組んでください。お互いの若者が肩を組んでドブイタストリート(横須賀の米軍基地近くにある商店街、通称「ドブ板通り」)を歩く日が来ることを期待しています」と挨拶を締めくくった。
東准尉は昭和60年に入隊(第31期生徒)。護衛艦「いかづち」、第1護衛隊群、護衛艦隊の先任伍長を歴任し、令和元年12月から同5年12月まで海上自衛隊先任伍長を務めた。