自衛隊ニュース

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「防人」応援隊

訓練に参加した広島県隊友会呉支部会員



広島県・呉市総合防災訓練

<広島県隊友会呉支部>

 広島県隊友会呉支部(支部長・豊澤幸徳)は、10月5日午後、広島県と呉市が実施した「令和6年度広島県・呉市総合防災訓練」に参加した。

 訓練は、災害が発生した地域の陸路が遮断されて孤立状態となったとの想定で、自衛隊の艦船を使用しての緊急輸送で、呉支部は自衛隊艦船が呉市宝町埠頭に陸揚げした救援物資を埠頭から倉庫まで運搬する場面を担当した。

 呉支部会員(8名)は救援物資を輸送する任務を付与され、埠頭に接岸した海自呉警備隊所属の水中処分母船YDT04からの救援物資の埠頭陸揚げ作業から想定倉庫への運搬集積作業を行った。やや緊張した中でも毎年防災訓練に参加していることから手慣れた手つきで救援物資を済々と運搬して任務を完了、訓練は終了した。

 本防災訓練最初の訓練項目を湯﨑広島県知事、新原呉市長、今野呉地方総監部幕僚長及び豊澤呉支部長が、海自呉警備隊所属の水中処分母船YDT04の船上から視察した。

 呉支部では毎年防災訓練には参加しており、今後も参加を継続して実場面でその能力を発揮できるように会員に積極的な訓練参加を呼び掛けている。

(森本事務局長)


和歌山県隊友会「この人」

予備自衛官はプロドラマー

 和歌山県隊友会員のプロジャズドラマーであり、予備自衛官に任命された「中道みさきさん」を紹介します。

 中道さんは、大阪府の出身で、10歳でドラムを始め、小学生の頃にピアニストの上原ひろみさんに強く影響を受け、ジャズドラムを本格的に始めました。

 高校生の時に、「横濱Jazz Promenadeジャズコンペティション2010」にてバンドでグランプリ受賞、また個人ではベストプレイヤー賞を大会最年少で受賞。

 和歌山大学に進学後、約1年間、関西のジャズクラブ等で定期的に演奏。翌年、バークリー音楽大学よりフルスカラシップ(全額奨学金)を受け、2013年より単身渡米、ボストンのバークリー音楽大学に入学。その後、4年制のバークリー音楽大学を飛び級にて3年間で学位を取得し、優秀な成績を修め卒業。

 卒業後はニューヨークや日本で演奏活動。2019年秋より全額奨学金を得てバークリー音楽大学の大学院へ進学。2021年夏、バークリー音楽大学の大学院を首席で卒業。

 パワフルかつダイナミックで日本人にはないグルーブ感を持ち、新世代の若い女性ドラマーを代表する人物として頭角を現しています。現在は日本で演奏やセミナーなどドラムの魅力を伝える傍ら、関西を拠点にマルチドラマーとして精力的に活動中です。中道さんは、このようにプロのジャズドラマーとして素晴らしい経歴であります。

 中道さんが自衛隊と関わりを持つきっかけとなったのが、和歌山県隊友会長の木下晴夫氏です。

 木下会長との出会いは、会長が経営する「レストランカフェデサフィナード」に中学生のころ訪れ、音楽を通じ有名アーティストとセッションし、当時その才能を発揮したと聞きました。

 その後、バークリー音楽大学の大学院を首席で卒業し、関西で活躍する中、再び「デサフィナード」を訪れ、軍隊と自衛隊に興味があったこともあり、木下会長と話している中、自衛隊に関わるようになったとのことです。

 中道さんは、2021年、予備自衛官補(一般)に任命されたのち、2023年に予備自衛官補(技能)に転換しました。そして、今年、10月8日をもって、全ての教育訓練が修了、予備自衛官に任命されました。

 中道さんは、語学(英語)が堪能であり、今後、日米共同訓練などの通訳として活躍が期待されるなか、日米音楽交流があれば、大いにその能力を発揮するものと期待します。

 また、プロのジャズドラマーとして更なる活躍を祈念いたします。

 最後になりますが、中道さんが自衛隊と関わるきっかけとなったのが木下会長であり、木下会長の人材発掘に感謝いたします。

(久保事務局長)


退職予定者向けグランド
ハンドリング業務インターン
<JBS>
 10月22日に成田国際空港において、退職を控えた自衛官向けにグランドハンドリング業務インターンが実施された。
 これは、成田国際空港の機能強化・応需能力向上に貢献するためにJBS(代表・中鉢真輔 株式会社JMRSビジネスサービスの略)が「自衛官は、部隊において大型特殊車両等を扱っており、そのスキルを、グランドハンドリング業務へ転用するリスキリングは容易であり、第2の人生を、日本が誇る大空港を舞台に活躍して欲しい」として行なったもので、50代の陸上自衛官約20人が参加した。参加した自衛官は「今まで航空の仕事はイメージができていなかったけど、今回イメージすることができるようになった。参加してよかった」等と述べている。
 急激に増えてきた外国人観光客により人手不足になっているグランドハンドリングは、自衛官の再就職先としても魅力的ではないだろうか。JBSは、「成田空港の第3滑走路が2028年度末に完成する将来に亘って、空港機能の強化を盤石に支える一助となり、空港周辺地域の繁栄に貢献すべく、航空教育の聖地にて、顔が見える新しい形のグランドハンドリング会社を目指したい」としている。
 *グランドハンドリングとは、空港で航空機の地上での誘導や荷物の積み降ろしなどを行う業務



ノーサイド 北原 巖男

「人的基盤の強化」、速やかな決断と実行を!

 本紙が全国の自衛隊員やご家族の皆さん、そして読者の皆さんのお手元に届くのは、衆議院解散に伴う10月27日の衆議院選挙の投票結果を受けて、特別国会での新首相指名選挙、内閣発足、さらに新首相による所信表明演説等が目まぐるしく行われている中でしょうか。(本拙稿は、10月24日時点で記しています。)

 ところで、解散前の10月4日、石破茂首相が行った所信表明演説の中には、こんなくだりがありました。

 「防衛力の最大の基盤は、自衛官です。いかに装備品を整備しようとも、防衛力を発揮するためには、人的基盤を強化することが不可欠です。日本の独立と平和を守る自衛官の生活・勤務環境や処遇の改善に向け、総理大臣を長とする関係閣僚会議を設置し、その在り方を早急に検討し成案を得るものといたします。」(首相官邸HP:「第二百十四回国会における石破内閣総理大臣所信表明演説」より)

 これを受けて、10月9日、内閣総理大臣決裁により、「一層厳しさを増す安全保障環境の中、我が国の平和と独立を守るため身をもって責務の完遂に努めている自衛官の処遇、勤務環境の改善、そして新たな生涯設計の確立等のための方策を取りまとめるため、自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生活設計の確立に関する関係閣僚会議」が設置されました。

 会議の構成は、議長 内閣総理大臣、副議長 内閣官房長官・防衛大臣、構成員 国家公務員制度担当大臣・国家公安委員会委員長・総務大臣・財務大臣・文部科学大臣・厚生労働大臣・農林水産大臣・経済産業大臣・国土交通大臣。

 会議の庶務は、内閣官房の協力を得て、防衛省において処理することになっています。

 これまで筆者自身も、類似の提言をして参りました。

 ・「一段と加速化する少子化。そして学ぶために受けた重い借金の返済にあえぐ多くの若者達。こうした厳しい状況を正面から受け止め、若い優秀な自衛官を確実に確保して行く。これが出来ずして、わが国の防衛力の抜本的強化は成し得ません。もはや防衛省・自衛隊だけで出来る施策の導入には限界があり、「政府全体として」これまでにない思い切った制度設計を検討する段階にあるのではないでしょうか。」(本紙本欄 2022年10月1日付け「急募!自衛官候補生」より)

 ・「任期制隊員は自衛隊の根幹です。少子化が一層加速して行く時代にどうすれば応募を増やすことが出来るか。一人防衛省に留まることなく、政府全体として真剣に取り組まなければならない待ったなしの課題です。「人は石垣。人は城」。いかにして精強な任期制隊員を増やすのか。自衛隊OBの一人として提案してみようと思います。①「任期満了隊員は、過去に受けた奨学金の返済を全額免除される」・・・任期満了時には奨学金の借金が無くなることをアピール出来れば、非常な魅力となるに違いありません。日本として、国を守る自衛官に対する施策として、出来ないはずはありません。・・・無論、中途除隊者、すでに全額返済している者などとの関係等、様々な問題が惹起されることと思います。しかし、それらの問題は、制度設計で解決は十分可能です。②「満期除隊者に対する特別な就職支援」・・・経済団体に対し、政府として満期除隊者に対する特別な就職支援をお願いする。例えば、「雇用者全体の1%以上は満期除隊者とする」といった基準を設け、それを満たした企業を公表して行く。・・・防衛スキル防衛マインドを持つ人が社会のあらゆる場にいるということになり、わが国の究極の抗堪性にもつながると思います。

 さらに、経済界には、今までの再就職受け入れとは発想を変えて頂く。つまり、満期除隊者を新卒扱いにしてもらうのです。中途採用者とはしない。彼らは特別なスキルやマインドがあり、一般の新卒者以上のものを持っている。一般の新卒者の持つ一生に一度のプラチナペーパーの権利を彼らにも与えて欲しいのです。そのような権利が満期除隊者にはある。隊員応募の大きな動機付けになり、その後の彼らの就職の土俵も広がり、一層社会的な活躍が期待できると思います。」(公益社団法人隊友会発行「隊友」紙 2022年10月15日付け「防衛力は人だ」より)

 現在、自衛官は、約22万4000人。石破総理が言われるように「防衛力の最大の基盤は、自衛官です。」

 しかし同時に、関係閣僚会議の皆さんや国民の皆さんに忘れないで頂きたいのは、防衛省・自衛隊に在って、自衛官の皆さんと一体となって防衛力の重要な基盤を構成している人たちの存在です。

 その数、約2万1000人。事務官・技官・教官などの皆さんです。彼らは、自衛官と同じ自衛隊員なのです。自衛官同様、自衛隊法施行規則第39条に定める「服務の宣誓」(「・・・事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえることを誓います。」)を行っているのです。

 今回の閣僚会議での検討に際しては、こうした彼らの現状や課題等についても、その実態把握等に努める等により、総合的な方策の策定を行って頂きたいと思います。

 これまでにない厳しい国際軍事情勢の真っ只中に在って、我が国の少子化は加速的に進み、もはや留まるところを知りません。自衛隊の人的基盤の強化は、焦眉の急です。

 内閣総理大臣自身の卓越されたリーダーシップの下、政府全体としての速やかな決断と実行を求めます!


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