自衛隊ニュース

ゲッキーのイラスト

福江広明・航空総隊司令官が着任
全隊一丸、任務完遂

 12月1日に基地講堂において第45代航空総隊司令官の福江広明空将の着任式が行われた。着任式には、在横田部隊(航空総隊司令部、航空戦術教導団司令部、作戦情報隊、作戦システム運用隊)から180名の隊員が参加した。

 新司令官に対する栄誉礼の後、福江新司令官は「航空総隊は、たゆまぬ努力によって幾多の困難を乗り越え対領空侵犯措置をはじめとする多種多様な任務を遂行してきた。予断を許さない現下の情勢においてはもとより、将来にわたり保有する機能を遺憾なく発揮する揺るぎない態勢を堅持し、国民の期待と信頼に応え得る組織であり続けることが肝要である。『全隊一丸、任務完遂』を隊務の指針としてかかげ、諸官には明るく、厳しく、爽やかな集団の気風を維持しつつ、いとおしむ心を持つ碧(あお)き大空の強者(つわもの)であることを要望し、自ら陣頭に立って職務に尽力する所存である」と着任の辞を述べた。


平成27年度自衛隊音楽まつり
テーマは「道 ROAD」、出演者約1000名

 11月13~15日の3日間、東京・千代田区の日本武道館で「平成27年度自衛隊音楽まつり」が開催され、招待・一般の7公演に計3万9600人が来場し約2時間、音と光の饗宴を堪能した。またインターネットのストリーミング配信により、陸自第301映像写真中隊による生中継映像を鑑賞した人数は前年度比2万人以上増の6万3300人に達した。

 今年度も、陸海空自衛隊のセントラルバンドをはじめ、陸海空各地の音楽隊(単独演奏は、一般女性隊員による新規結成・フラッグ隊と共演した陸自東北方面音楽隊、歌や演技を交え『進撃の巨人』で魅せた陸自中部方面音楽隊)、全国の太鼓チーム、競演の演技隊等、陸自第302保安警務中隊、防衛大学校儀仗隊から選抜されたメンバー等が日本中から集結。「自衛隊音楽隊のファン。年に一度のオールスター共演は本当に楽しみで、前夜は眠れませんでした。三自衛隊の制服や色んな地域の太鼓チームが目の前で勢ぞろいした光景を見た時は胸がいっぱいに…感激で思わず涙が出ます」(50代主婦)。

 音楽まつりに限らず中央行事は、全国から部隊が一同に介するが、公演中、各地から集った隊員は出演者だけではない。接遇、警備、輸送、会場設営、広報等多様な任を担う大勢の要員が吹奏楽部の学生等を招いた12日のリハーサルを含め4日間の成功を力強く支えた。公演中にも、大きな楽器や大道具の出し入れを担った陸自東部方面隊の選抜隊員が紹介され、出演者に負けない大きな拍手を浴びていた。

 また今年度は、ゲストバンドとして終戦70周年を記念し自衛隊音楽まつり史上はじめて在日米軍4軍種(在日陸軍・海兵隊第3海兵機動展開部隊、太平洋空軍、海軍第7艦隊)の軍楽・音楽隊が、日韓国交正常化50周年を記念し15年ぶりに韓国海軍軍楽隊が参加した。これには、「日米韓が手に手を取って更に前へ進むきっかけに」(13日招待公演を鑑賞した中谷元防衛大臣冒頭挨拶)という防衛省・自衛隊のメッセージが込められていた。「メキシコ民謡の日米合奏は楽しかった。韓国の伝統演舞と音楽のコラボも良かった」(40代女性・会社員)と好評。ノリ良く明るい演目が多く、中谷大臣と同席した米韓駐日大使も大観衆とともに笑顔で手拍子を送る場面もあった。

今年の音楽まつりも、ハイレベルの演奏で国内外から常に高い評価を受けるセントラルバンドをはじめ各隊は先人の伝統を継ぐ演奏をしっかりと見せた。「何度見てもやっぱりドリル演奏は凄い。痺れました」(30代男性・会社員)。

 一方、初めて着剣状態でサイレントドリルに挑んだ陸自第302保安警務中隊、空自60周年記念曲『蒼き空』を披露した芦屋・入間の太鼓2チームと共演し例年の華麗さに力強さを加味した空自航空中央音楽隊、世間一般が抱く"歌姫"のイメージに留まらず、ステージ狭しと端から端まで唄いながら舞い踊るエネルギッシユさが印象に残った三宅由佳莉3海曹(海自東京音楽隊)etc、挙げればキリがないが、各隊とも意欲的に新境地を試みる場面に多くの拍手が贈られた。

 長年、自衛隊太鼓チームの指導を続けてきた山城三生准陸尉(北海自衛太鼓)は定年退職により今年の音楽まつりがラストステージとなった。声楽科出身隊員のニューフェイスとして注目を集めた入隊2年目の鶫真衣1陸士は音楽まつり初出演だった。伝統を紡いできた先人がいれば、新たな分野に懸ける若人もいる。"これまでも、これからも続く「道」"。道の一文字をテーマに掲げた今年の音楽まつり。伝統を守りつつ、新しい境地を-。今後も関係者の飽くなき挑戦は続いていく。

平成27年度自衛隊統合演習
各地で大規模に陸海空協同訓練

 防衛省・自衛隊は、10月23日から11月13日まで、武力攻撃事態への統合運用による対処能力の維持・向上を目的とした「平成27年度自衛隊統合演習(実動演習)」(27JX・FTX)(統裁官・河野克俊統合幕僚長)を実施した。同演習には統合幕僚監部・情報本部・陸海空自衛隊・自衛隊指揮通信システム隊・中央病院・佐世保病院・那覇病院から人員約25000人・車両約5200両・艦艇等約10隻・航空機約250機が参加。実動統合演習は、このJXと、日米共同統合演習(Keen Sword)を隔年で晩秋~初冬の同時期に行っており、いずれも、国内では年間最大規模。陸自西部方面隊計画の鎮西演習(鎮西27)、陸自北部方面隊計画の北部方面区→西部方面区への協同転地演習、第1空挺団の空挺降下訓練やヘリボン訓練等を主体とした陸自中央即応集団計画の演習を連接し行われた。

 27JXは、陸自西方普通科連隊の水陸両用作戦(水路潜入による着上陸訓練及び上陸後の戦闘訓練)をはじめ島しょ防衛における作戦や、その他の地域でも陸海空協同による作戦が数多く訓練された。レーダーサイトのある空自襟裳分屯基地、同基地沖の訓練空域等で空自警戒管制部隊や陸空自高射部隊による防空作戦(対空戦闘訓練)、同じく、レーダーサイトのある空自輪島分屯基地、空自小松基地及び同基地沖の訓練空域と洋上等で海自護衛艦や空自航空機、陸自特科部隊などによる海空作戦(艦隊防空・対艦攻撃)を訓練した。

 九州でも、地理的に離れた九州本土から南西諸島等への装備品の輸送等を想定し、空自C-130H輸送機に陸自地対艦ミサイル・88式地対艦誘導弾(SSM)を、海自C-130R輸送機に陸自地対空ミサイル・03式中距離地対空誘導弾を積載し輸送する訓練等も統合後方補給(統合輸送訓練)の一部として行われた。

 また、西部方面隊、北部方面隊隷下の特科部隊等が日出生台演習場、鹿児島県の大隅諸島・奄美群島に展開し、協同の防空・対艦訓練に参加した。27JXには北部方面隊隷下の第2師団、第5旅団、第1特科団、北方施設隊等が西部方面区へ転地。90式戦車、99式155mm自走りゅう弾砲を含む計500両以上の車両が民間チャーター船や定期船等を活用して長距離機動。奄美群島における訓練にも姿を見せた。

 今回、常設統合部隊である自衛隊指揮通信システム隊隷下のサイバー防衛隊(平成26年3月新編)等によるサイバー攻撃等対処訓練もJXの枠組みで初計画された。また、敵勢力による海自・空自基地への急襲を想定し、海空の警備部隊と陸自普通科部隊・陸自特殊武器防護隊等の協同による警備訓練も、全国各地で行われた。


相模湾沖で自衛隊観艦式
受閲部隊、雄大で正確無比な航行

 10月18日、雲一つない秋晴れの下、自衛隊最高指揮官・安倍晋三内閣総理大臣を観閲官に迎え、「平成27年度自衛隊観艦式」(実施責任者・武居智久海上幕僚長、執行者・重岡康弘自衛艦隊司令官)が相模湾沖で実施された。艦艇42隻、航空機37機が参加。米、豪、仏、印、韓の5カ国海軍の軍艦も祝賀航行で花を添えた。

 安倍総理が座乗する観閲艦・護衛艦「くらま」を中心とする観閲部隊の左前方から一糸乱れず航走してくる受閲艦艇部隊。艦艇種別8グループに区分された20隻以上の艦艇が次々と眼前を通り過ぎる様は圧巻の一言だ。ミサイル防衛を担う旗艦・護衛艦「あたご」。帝国海軍時代から途切れる事無く部隊の歴史を紡ぐ掃海部隊。テロ特措法によりインド洋で給油活動に従事した補給艦「ましゅう」。統合作戦での活躍も期待される輸送艦「おおすみ」の甲板にはこの日も、12両の陸自車両と22名の陸自隊員の姿があった。海自最大の護衛艦「いずも」は最大運用数5機の航空機を搭載し、その巨大な勇姿を初めて観艦式の場に現した。

 息つく暇もなく無数の艦艇を見送った後、引き続き、左後方から受閲航空部隊が飛来。今年度から正式運用を開始、初参加の最新鋭哨戒機P—1の勇姿が頼もしく映り、練習機TC—90の赤い塗装に燃え盛る青雲の志を思う。輸送・掃海・救難などの任に当たるヘリ部隊を目にした見学者からは、「先日の関東・東北豪雨の災害派遣でも活躍した21空群のSH—60を見ることが出来て感激した」(20代・会社員)との声も。同じく先の豪雨災害に派遣された部隊を含む陸自ヘリは輸送ヘリと戦闘ヘリの異機種編隊。空自F—2、F—15は轟音を残し高速で過ぎ去った。空自からは第11飛行隊"ブルーインパルス"も参加。精緻かつダイナミックな飛行展示により大空に無数の夢を描き、式典の最終盤を鮮やかに彩った。

 高波をものともせず多数の艦艇が一斉に反転する回頭により、艦艇が雄大かつ複雑に動く様を乗艦者が体感した後は訓練展示。高速で疾走するミサイル艇やLCACに息を呑み、艦長以下が息を合わせ巨大な船体を自在に操る3隻の護衛艦、潜行・浮上を繰り返した潜水艦の見事な動きには惜しみない歓声と拍手。P—3Cの対潜爆弾発射など、爆薬を使用した課目を目にすれば自ずと緊張の色が見学者の顔にも浮かんでいた。

 我が国の安全保障環境が厳しさを増す中、更には、国内外で多発する災害派遣や海賊対処など国際協力等も加わり多様化する海自の任務。その現状が、多種多様な艦艇や航空機が参加した観艦式からも見てとれる。今回は、前回観艦式にも参加した米豪に加え仏・印・韓の計5カ国の軍艦が祝賀航行を披露した。受閲航空部隊として米海軍P—8A、米海兵隊MV—22も参加し、観艦式会場付近には米海軍空母ロナルド・レーガンの姿もあった。海自—各国海軍の二国間・多国間の共同訓練は近年増加傾向にある。「私の現役時代には考えられない任務の幅広さ。多忙で緊張感ある毎日を送る後輩達には頭が下がります」(70代見学者・海自OB)。

 観艦式の最後に、安倍総理は訓示の中で「大海原の真ん中にあって波濤をものともせず、正確無比なる『海の防人たち』の勇姿を目の当たりにして感激もひとしおです」と参加部隊を讃えた。崇高な使命を帯び、広大な海と空に生きる海自隊員。日頃は国民の目に触れることのない場所で様々な脅威に向かいあう彼らを総理は、風雪に晒されてもなお、青々と繁る松の木のようだとも評した。古くから防潮林として全国の海岸に植林された歴史を持つ松。海を護る誇りを抱く彼らにこそ相応しい。中秋を迎え、漆黒の制服に身を包む隊員たちの背中がいつも以上に大きく、誇らしく思えた。

防衛装備庁がスタート

6つの機関から集約・統合
内局、陸海空各幕、技本、装備施設本部

装備庁ロゴは、装備取得関係機関の和(輪)、三自衛隊の装備品を表現
中谷大臣「百尺の竿の先から一歩踏み出せ」「ゴールじゃない」

 10月1日、防衛省市ヶ谷庁舎D棟正面玄関前で中谷元防衛大臣、渡辺秀明防衛装備庁長官による防衛装備庁の看板設置、ロゴマークの発表が行われた。

 内部部局、陸海空幕僚監部、技術研究本部、装備施設本部の6組織から関係部門を集約・統合し新設された同庁。中国四国防衛局・嘉村麻衣子技官考案によるロゴは、中心の円は各自衛隊を想起させる色を用い、装備品取得に係る防衛省内の組織が一致協力して和(輪)をなし業務に取り組んでいく様子を表した。同時に、地球をイメージし、国際平和に貢献していくという意味も含まれている。また、円を取り巻く3つの線は、陸海空自衛隊の代表的な装備品である車両、護衛艦、航空機を表している。

 中谷大臣は、同日行われた防衛省組織改編記念式典(2面参照)で訓辞し、防衛装備庁新設の意義にも言及。一歩先んじた技術力の保持・技術的優位の確保のための技術戦略の策定、防衛装備移転三原則に基づく諸外国との技術協力、高コスト化が著しい装備品の調達・維持管理に関し先進的なプロジェクト管理手法の更なる導入促進等を取り入れ、早急に効果を挙げ、周辺諸国の軍事力強化に対応するよう要望した。

 装備調達を巡り過去に防衛省で生じた不祥事については特に時間を割き、「たった一人の気の弛みが組織全体の信頼を失墜させる」、「国内最大調達実施機関たる同庁は各省庁の調達組織のモデルとなるようコンプライアンス意識を強く持って職務に専念するよう、くれぐれも不祥事を起こすことのないよう、強く要請する。国際的にみても先進的な調達制度を早急に確立するよう全力で取り組んで欲しい」等と繰り返し要望した。更には、禅問答の「百尺竿頭進一歩」(百尺の竿の先に立てば本来もうその先はないが、それでも尚、一歩進む気持ちで臨め)の一文を色紙にしたため掲示。防衛装備庁の新設がゴールではないという気構えを抱き今後の各種業務に当たるよう新庁の全職員に求めた。

 防衛装備庁は、庁内業務の更なる透明性の確保のため、庁内の監察監査・評価官による内からのチェック、防衛監察本部、部外有識者による防衛調達審議会といった既存組織による外からのチェック等、重層的な体勢で臨む。渡辺長官は各種対策を念頭に、「全ての職員が高いコンプライアンス意識と強い責任感、これをもって厳正に業務を行うよう職員一人ひとりに徹底してまいります。防衛装備庁は六つの組織と三つの職種をくみあわせた全く新しい組織でございます。この多様性を強みとするべく、柔軟な発想をもち着実に防衛装備行政を遂行してまいりますのでどうか今後も防衛装備庁と装備政策の発展をぜひ期待していただきたいと思っております」と力強く答辞した。

第3代統合幕僚監部最先任下士官に宮前稔明准海尉
第2代渡邊准陸尉は盛大な見送りを受けて定年退官

 9月17日、防衛省で統合幕僚監部最先任下士官交代式が行われた。行事には、河野克俊統合幕僚長をはじめ統幕高級幹部、鈴木喜晃陸自最先任上級曹長、関秀之海自先任伍長、新井岳志空自准曹士先任、在日米軍最上級曹長らが陪席した。

 9月18日をもち定年退官する第2代統幕最先任下士官・渡邊満徳准陸尉(同日付で3陸尉に特別昇任)は、平成25年3月に試行中だった統幕最先任下士官の第2代目に上番し、制度の発展に大きく寄与した。3回の「日米最先任下士官会合」を実施する等、日米間の下士官交流を積極的に推進する等、国内外の下士官レベルの交流を通じて統幕長を積極的に補佐した。渡邊准陸尉は「陸海空の各メジャーコマンド、各部隊最先任、在日米軍最先任等の強いリーダーシップのもと、任務が完遂できました」と一言ひとこと噛み締めながら感謝の言葉を述べた。

 第3代統幕最先任下士官・宮前稔明准海尉は昭和57年3月、第7期一般海曹候補生として海上自衛隊に入隊。大村航空隊を皮切りに各部隊で勤務後、平成25年6月海上自衛隊先任伍長を経て、同27年9月18日をもって3代目統幕最先任下士官に上番した。宮前准海尉は「今まで築いてきた陸海空米軍との絆・関係をより一層深めていくことに努めていきたいと思います。皆さんのご支援ご協力をよろしくお願い致します」と力強く、真っ直ぐに前を見据え着任の挨拶を行った。

 河野統幕長は渡邊准陸尉に対し「統幕長を補佐し、日米下士官交流の深化に寄与する等統幕最先任制度の発展に大きく寄与した」と、慰労の言葉を述べ、宮前准海尉に対しては「海上自衛隊先任伍長としての経験を遺憾なく発揮してほしい」と激励した。

 式後は、着任時の統幕長である岩崎茂政策参与をはじめ各幕の隊員・職員など200名近くがA棟ロビーで花道を作り渡邊准陸尉を見送った。


関東・北日本で豪雨による災害派遣
茨城、宮城、栃木で約1100名が活動

 自衛隊は、関東では9月9日から本格化し北上した豪雨に伴い発生した、河川からの越水や氾濫等で生じた孤立者の救助・避難支援・水防等の災害派遣活動を、10日~11日に発出された茨城・栃木・宮城3県知事の要請に基づき行っている(栃木・宮城では11日夜に撤収要請)。茨城では、鬼怒川の堤防決壊で大規模な越水が生じた常総市・結城市の孤立者を14日までに計2015名、ボートや航空機で救助。現在も警察と協同で人命救助・行方不明者捜索を継続しているほか、24時間態勢の給水支援や入浴支援を実施している。また、要請に先立ち10日3時30分に防衛省災害対策連絡室(のち防衛省災害対策室に改組)を設置した。

【茨城】人員約850名(延べ約3380名)、車両約220両(延べ約995両)、ボート約25隻(延べ約155隻)、航空機10機(延べ95機)、LO人員約15名、LO車両約5両(延べ人員約160名、延べLO車両約60両)【宮城】人員約190名、車両40両、航空機7機、ボート37隻、LO人員25名、LO車両14両【栃木】人員約70名、車両15両、航空機5機、バイク6台、LO人員2名、LO車両1両


平成27年度富士総合火力演習

 8月27日、約29倍という高い倍率を勝ち取った一般来場者達は、朝6時半の開門前から静岡県の東富士演習場近くに集まっていた。御殿場駅周辺のホテルは満室。駅近傍の駐車場も前日から満車となっている。8月18日・20日の学校予行、22日の教育演習を含め、約10万人が「平成27年度富士総合火力演習」を体感した。

 この日は、中谷元防衛大臣、西正典事務次官、河野克俊統幕長、岩田清文陸幕長ら防衛省・陸海空自衛隊の高級幹部、在日米軍、衆参国会議員や国内外の招待者、全国の隊員らも見学。午前10時、岩田陸幕長から中谷大臣へ準備完了報告を行い演習が始まった。

 演習担任官の富士学校長・渡部博幸陸将、演習実施部隊指揮官の富士教導団長・小森一生陸将補を中核に人員約2300名、戦車・装甲車約80両、各種火砲約60門、航空機約20機、その他車両約600両が参加した。

 例年通り、演習は前段・後段の2部構成で行われた。前段は陸自の主要装備などの紹介、後段は「陸上・海上・航空自衛隊が行う統合よる作戦により我が国の島嶼部侵攻する敵部隊を洋上及び内陸部において撃破する」というシナリオで各職種部隊が協同して行う陸上戦闘の様子を見るというもの。

 前段最初の特科火力で展示された曳下射撃「富士山」。これは異なる射距離で同時に弾着させるため21門全ての火砲・弾薬の操作に1/100秒単位の精度が要求されるが、三段山上空に富士山を無事描いた瞬間来場者から万雷の拍手が沸き起こった。その後、迫撃砲・誘導弾・対人障害・普通科火力・ヘリ火力・対空火力と続き最後は戦車火力。74式・90式・10式が登場し、その動きと音で見る者を圧倒していた。「74式も私の入隊当初は最新鋭でしたが、現役晩年に目にした90式との違いに大いに驚いたものでした。今回、更に新しい10式を初めて見ることができ感激しました」(70代・陸自OB)。

 後段演習の島嶼部に機動展開した部隊による奪回場面では、情報収集活動を目的としたOH―6、偵察オートバイを搭載したUH―1、敵上陸部隊に対するAH―64、AH―1による機関砲射撃など航空部隊・偵察部隊の活躍に始まり、87式偵察警戒車部隊の移動しながらの不意急襲射撃、戦車の通路を確保するための92式地雷原処理車による迫力のロケット弾により障害処理、戦車部隊による各々の特性を活かした動きや射撃など緊迫感溢れる場面が最後の戦火拡張まで続いた。

 「後段演習前の統合機動防衛力の解説映像もとても興味深く、何故新しい装備が必要なのかよく解りましたし、初めて総合火力演習を目にして、それを使いこなす隊員の皆さんの努力が不可欠なのも理解できました」(30代・会社員)とは、演習終了後、現役隊員の説明を熱心に聞きながら、展示されていた演習参加装備を見つめていた来場者。草萌える晩夏の富士山麓で、五感全てに訴え"陸上自衛隊の今"を示す総合火力演習は今年も、見学者一人ひとりに様々な想いを抱かせ幕を閉じた。

市ヶ谷台探検ツアー
子ども達と左藤副大臣

 夏休みの小中学生及びその保護者等を対象とした恒例の「ピクルス王子とパセリちゃんの市ヶ谷台探検ツアー」が7月29、30日の両日、市ヶ谷地区で行われた。

 午前中、映像を使った座学、海自隊員の指導で楽しく身体を動かした手旗信号に続き、お待ちかねの懇談タイム。今年は2日目には左藤章防衛副大臣が登場し、副大臣室の世界地図や副大臣旗を指さし、一つひとつを丁寧に説明。副大臣の仕事について質問を受けると、地図を見ながら「世界の国とのお付き合い」と答え、グローバルに活躍する自衛隊を印象付けた。

 終始ニコニコ笑顔だった副大臣、隊員食堂でのお昼休みの体験喫食(市ヶ谷特製カレーライス)を含め、5時間近くも行動を共にした内局広報課員、陸海空広報室員等の親切な応対。そして、フィナーレを飾った警務隊による装備品展示やユーモアたっぷりの偽装展示、第302保安警務中隊による眉一つ動かさず一糸乱れぬ特別儀じようと、直後の記念撮影での優しい笑顔。「若い隊員は普段我が子に儀じようを間近に見せられない。子どもたちに見て貰え嬉しいです」(302保警中・新井幸平2陸曹)という理由もあったようだが、こうした優しさに溢れた一日を過ごし、「皆さんフレンドリーで驚きました」、「面白くて優しかった!」(栃木県から参加の親子)などの声が多数聞かれた。子どもにも大人にも沢山の思い出を残し、防衛省・自衛隊への理解を深めて、年に一度、真夏の市ヶ谷を賑わせるイベントは無事に幕を閉じた。

27JXRで隊友会と連携訓練

 東京地本(本部長・竹本竜司陸将補)は、6月29日、27JXRにおいて実施された災害情報伝達訓練の枠組みを活用し、公益社団法人隊友会東京都隊友会(会長・直海康寛氏)との連携訓練を実施した。

 本訓練は、平成24年3月16日に東京都隊友会と東京地本との間で締結された「大規模震災発生における公益社団法人隊友会東京都隊友会の自衛隊東京地方協力本部に対する協力に関する協定」に基づき、連携の強化と災害対処能力の向上を目的としている。

 訓練当日は、地本本部から隊友会会員の携帯電話へ「午前10時13分、東京都23区震度7」を一斉にメール送信して状況が開始された。平日にも関わらず22名の隊友会会員から、それぞれの所在する地域において撮影された周辺の道路や橋梁の状況等24件の情報を受信した。提供された情報は速やかに地本本部から方面総監部に報告され、発災当初における被害情報等収集に寄与する事が出来た。

 参加した隊友会会員からは、「非常に有意義な訓練であり、機会があればまた参加したい。OBとしてこのような形で自衛隊に貢献出来て嬉しい」とのご意見を多数頂いた。

 東京地本は「今後もこのような機会を捉え、相互の連携強化を図り、防衛基盤の醸成を図っていく」としている。

27年度自衛隊統合防災演習を実施
首都直下型大地震を想定、約7千名が参加

 6月29日~7月3日、防衛省・自衛隊は「平成27年度自衛隊統合防災演習(27JXR)」=統裁官・河野克俊統合幕僚長=を、関係府省庁、地方自治体、指定公共機関、在日米軍等を含む人員約7000名で行った。今年の訓練は3年ぶりに「首都直下地震」の発生を想定。自衛隊首都直下地震対処計画に基づき、指揮所演習及び実動演習を実施した。自衛隊の震災対処能力の維持・向上を図るとともに、実効性の確認及び充実を図った。

 6月29日、午前10時13分、マグニチュード7・3、最大震度7の地震が都心南部直下で発災。大規模火災や家屋倒壊等により、東日本大震災を上回る死者約23000名、全壊約61万棟の被害が想定された指揮所演習および実動演習が4夜5日にわたり実施された。

 6月30日、防衛省第1省議室で行われた「防衛省災害対策本部会議」で中谷元防衛大臣は「今後更に救援活動を迅速かつ効果的に実施していくために指揮を一元化し、陸海空を一元的に運用できる態勢に速やかに移行する必要がある」とし、同日15時30分、陸海空自統合の「災首都圏統合任務部隊(JTF)」が朝霞駐屯地で編成された。「激甚被害地区を重視し、組織的に人命の救助、行方不明者捜索、生活支援、復旧支援等を実施。この際、各自治体等との密接な連携を保持」という対処方針のもと、磯部晃一陸自東部方面総監がJTF指揮官となってJTFを指揮した。

 報道公開された体育館では日米連絡調整所、施設調整所、救援物資輸送調整組織、衛生部等7つの組織が開設・運営されて陸・海・空自衛官による諸調整、在日米軍との調整が実施された。日米連絡調整所では、在日米軍21名が参加した。また、本演習では指揮所訓練支援システム(ICE)というシミュレーターを用いて指揮幕僚活動を演練した。これは、プレイヤー(演習参加部隊の司令部等)から下された命令をゲーマー(隷下部隊等)がICEに入力し、導き出された摸擬結果をもとにプレイヤーが状況判断を行い、再度命令を下す、というサイクルで行われる。モニターは通行不能を表す赤線で埋め尽くされ、一目で甚大な被害状況が見てとれた。

 実動訓練ではJTFへの増強幕僚の移動を実動で実施。また発災直後、現地調整所要員が都庁に派遣され、連絡調整にあたる様子が報道公開された。29日午前11時40分、第1師団副師団長・吉見隆陸将補や連絡調整要員、資材を乗せて朝霞駐屯地を出発したUH—60が東京都庁ヘリポートに着陸。入れ替わり20分おきに同機種2機が到着。東京都現地調整所で都の関係機関との調整や各地調整所・各部隊とのテレビ会議が行われた。発災直後の人命救助を第一とした即時救援活動が求められる状況の中、調整所は緊迫した雰囲気に包まれていた。なお、JXRで、自衛隊機が都庁ヘリポートに離着陸するのは今回が初めての事である。翌30日には足立区舎人公園を活動拠点とし、第1広報支援連隊衛生隊等が参加して災害拠点病院及び自衛隊中央病院へのヘリ搬送や救護訓練等を関係機関と連携して行った。

 27JXRは、検証資料をもとに、7月9日にJTFとして、7月28日に自衛隊全体として研究会を開く。その後計画の見直しに反映されることとなる。

精鋭無比・第一空挺団の訓練検閲

5月24日~6月10日、習志野及び東富士等で実施
統裁官「概ね優良」

 第1空挺団(団長・岩村公史陸将補=習志野)は5月24日から6月10日までの間、習志野駐屯地及び東富士演習場並びに同周辺において、「降下」「山地機動」「交戦装置(バトラー2)を使用した対抗形式の戦闘行動」及び「戦闘射撃」による第1・第3普通科大隊戦闘群の訓練検閲を実施した。

 5月24日から29日までの間、両大隊戦闘群は習志野駐屯地において戦闘に使用する車両及び物品を航空機から投下するための梱包訓練、第1普通科大隊戦闘群(戦闘群長・山下正浩2陸佐)は隊容検査を実施。隊員の基礎的戦闘能力について点検を実施するとともに、降下前訓練を実施して準備を完了した。

 5月30日、東富士演習場に車両で移動、第3普通科大隊戦闘群は現地において隊容検査を実施し、戦闘群長の五十嵐雅康2陸佐は戦闘群の隊員を集め、全員はちまきをしめ、任務完遂を祈念し雄たけびを上げた。

 6月1日から3日にかけて実施された自由降下及び空挺降下は各大隊戦闘群の予定されていた人員がすべて成功しじ後の戦闘行動に移行した。第1普通科大隊戦闘群は6月1日17時から、第3普通科大隊戦闘群は6月2日18時40分からそれぞれ、標高差約1,500メートル、約100キロメートルに及ぶ山地機動を踏破した。

 6月4日及び5日早朝、第1普通科大隊戦闘群は防御準備を、第3普通科大隊戦闘群は攻撃準備を完了し、5日13時以降戦闘行動を開始した。「交戦装置(バトラー2)」を使用した戦闘行動では、隊員及び車両に装着した受信器、個人及び部隊装備火器に装着した送信機により実際に当たった場合、損傷状況が発生し、隊員たちは実戦闘さながらの状況付与に戸惑いながらも戦闘を継続、約2日間に及ぶ戦闘行動の末、7日14時15分状況が終了した。

 6月10日両大隊戦闘群は小銃小隊及び迫撃砲小隊の無線による連携を取りながらの戦闘射撃を実施した。約14年ぶりに実施された戦闘射撃では、与えられた想定に伴い小隊長の射撃号令のもと現出した的(敵)に対し射撃を実施、練成の成果を発揮した。

 6月11日に行われた統裁官総評では、両大隊戦闘群ともに、空挺降下からの急峻な地形を克服した3夜4日に及ぶ山地機動に引き続く戦闘行動を実施して任務を完遂したとして「概ね優良」の評価を得た。両部隊及び統裁部についてはそれぞれに分派して習志野駐屯地に帰隊し、整備及びしばしの休息についた。


口永良部島噴火で災害派遣
人員約1400名、車両約50両、航空機約50機

〈8師団〉

 5月29日午前9時59分、鹿児島県屋久島町口永良部島の新岳(626m)で爆発的な噴火が発生した。噴煙は火口から9000m以上の高さまで到達、火山灰、噴石、火山ガスが一体となった火砕流は時速100㎞以上の速さで火口からあらゆる方向に流れ出し、島の2割をも覆った。口永良部島は屋久島の西方約12㎞に位置する長径12㎞、最大幅5㎞のひょうたん形の島で、噴火警戒レベルが3(入山規制)から最大の5(避難)に引上がった事で当時島にいた137人全員が島外へ避難した。

 午前10時30分頃に陸上自衛隊第8師団隷下第12普通科連隊(連隊長・若松純也1陸佐=国分)の連絡幹部(LO)以下2名が鹿児島県庁へ。10時40分、伊藤祐一郎鹿児島県知事から第8師団長・山之下哲郎陸将(=北熊本)に対して、航空機による避難支援・情報収集に係る災害派遣を要請、11時12分西部方面航空隊(隊長・佐々木博茂1陸佐=高遊原)のUH―60×1機とUH―1×2機が情報収集のため目達原駐屯地を離陸した。さらに11時15分、12普連のLO2名が搭乗した第8飛行隊UH―60×1機が高遊原駐屯地から屋久島町役場に向けて離陸、到着後は避難支援活動を実施する第8通信大隊・第8偵察隊所属の6名を輸送した。11時30分頃には、国分駐屯地において第12普通科連隊ファスト・フォース(初動対処部隊)が待機(人員約20名、車両4両)。12時45分頃、口永良部島の番屋ヶ峰の湯向集落に12普連隊員搭乗のUH―60が降着、隊員は避難支援や情報収集等にあたった。その後もCH―47が高遊原駐屯地から離陸し、情報収集等が行われた。

 翌30日、31日も引続きLOによる情報収集活動や、海上自衛隊第22航空群所属3機を含む計9機の航空機が各駐屯地・基地において即応体制で待機した。また、30日は政府調査団の空輸及び現地対応支援等も行われた。

 6月1日朝、噴火が小康状態であること、翌日からの梅雨入りによる土砂崩れ等のリスクが高まること等を考慮し、住民代表約30名による2時間の一時帰島が行われた。その間も緊急避難に備えて西部方面航空隊のUH―60とCH―47の合計4機が現地上空および屋久島で待機。午後からも鹿児島県知事や屋久島町長による上空視察支援、情報収集活動を継続。同日16時15分に撤収要請を受け、4日間に亘る活動を完了した。第8師団からは4日間で人員延べ約1400名、車両延べ約50両、航空機延べ約50機が出動した。

 6月8日現在、口永良部島は小康状態ではあるが、依然として火山活動が高まったままと見られ、噴火警戒レベルは5を維持しており、引き続き厳重な警戒が呼び掛けられている。

●海自・空自の派遣部隊

海自:第1航空群(鹿屋):P―3C

第22航空群(鹿屋):UH―60

空自:第5航空団(新田原):F―4

偵察航空隊(百里):RF―4

実習幹部170名が遠洋練習航海へ出発

160日間で12ヶ国、16ヶ所に寄港

 5月21日、東京晴海埠頭HK海岸で平成27年度遠洋練習航海部隊の出国行事が執り行なわれた。明け方前の激しい雷雨も上がった雲ひとつない青空の下、左藤章防衛副大臣、武居智久海上幕僚長等防衛省・自衛隊関係者、外務省や国会議員等多数の来賓が参列し、約660名の乗員家族とともに実習幹部約170名の新たな門出を見守った。

 当日は早朝から大勢の家族・関係者が見送りに訪れ、出国行事前の乗員達としばしの別れを惜しむ光景が見られた。女性幹部実習生の母親は「心配はありますが、周囲に助けてもらいながら成長してきてほしい」と我が子への期待を語り、祖父は自身の海外勤務経験から「世界を見る事は非常に良い事だ。たくさん学んできてほしい」と孫への餞の言葉を口にした。女性幹部実習生は「努力する事は当然ですが、国費での練習航海に『行かせて良かった』と思ってもらえるようにがんばってきたい」と力強く抱負を語った。

 出国行事で左藤副大臣は、幹部候補生学校卒業式以来2カ月振りの再会に「一回り成長した姿を目の当たりにして頼もしい」と述べ「これまでの教育訓練で得た知識技能に磨きをかけると共に、訪問国の人々と積極的に交流を図り、異国の文化や社会に接する事で、豊かな国際感覚と物事を多元的に捉えられるバランス感覚を身につけてほしい」と訓示した。  

 続いて元自衛官でもある宇都隆史外務大臣政務官が、遠洋練習航海が外交面においても極めて重要な使命を持っているとし「世界に通用する日本人として成長されることを心より祈念します」と祝辞を述べた。

 武居海幕長は壮行の辞で実習幹部に対し「まず海を知るところから始め、幹部海上自衛官として踏み出す地歩を固めて欲しい」と要望。乗組員には「中畑司令官のもと一致団結して将来の立派な幹部を育てる任務に邁進し、自己の技術技量のさらなる向上にも努めてもらいたい」等と述べた。

 閉式を迎えると練習艦隊司令官・中畑康樹海将補を先頭に実習幹部169名を含む派遣人員704名が練習艦隊「かしま」(艦長・小沢輝男1海佐)、「しまゆき」(艦長・小圷聖一2海佐)、護衛艦「やまぎり」(艦長・橋本聖一2海佐)に堂々とした行進で乗り込んだ。艦艇に整列し出港を待つ実習幹部の中にはこれまでの訓練の成果を発揮してやるという自信、大海原に出る期待と不安、様々な感情が入り混じった複雑な表情をしている者もいた。しかし離岸して「がんばれ!」「しっかりやってこいよ!」等大勢の家族や関係者による激励に対して帽振れで応えるその力強い動作は、彼らの覚悟と決意を感じさせるものであった。約5ヶ月後、諸外国を周り様々な経験を積んだ彼らが再び見るこの景色はどう映るのか。

 今回の遠洋練習航海は、5月21日晴海埠頭を出港してから10月27日に帰国するまでの160日間で、アメリカ・パールハーバーを皮切りに、ブラジル、アルゼンチン、チリ、メキシコ等中南米を中心に12ヶ国・16ヶ所に寄港する。また、その過程で海自艦艇が初めてマゼラン海峡を通過する。総航程約54000㎞。当航海は昭和32年以降毎年実施されており、今回で59回目を数える。

「2+2」、日米防衛相会談
新ガイドラインを承認

〈中谷防衛大臣訪米〉

 中谷元防衛大臣は4月26~30日まで訪米し、27日に日米防衛相・外務相による日米安全保障協議委員会(「2+2」会合)、28日に日米防衛相会談に出席した。

 「2+2」会合では、一昨年秋から日米間で継続的に協議し策定した新たな「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」が承認された。新ガイドラインには、安全保障法制の整備を念頭に、地域を限定しない「グローバル」、「宇宙・サイバー」といった新たな領域に同盟の協力を拡大する指針が明記された。また、日米協力の実効性を確保するため、平時から「同盟調整メカニズム」を設置する指針が明記されたほか、切れ目のない形で日本の平和及び安全を確保するため、「アセット(装備品等)の防護」が明記された。同事項を新ガイドラインでは「自衛隊及び米軍は、訓練・演習中を含め、連携して日本の防衛に資する活動に現に従事している場合であって適切なときは、各々のアセット(装備品等)を相互に防護する」と説明している。

 中谷大臣は「2+2」会合後の記者会見で、「日米同盟を新たな段階に進ませる革新的な内容に仕上がった」等と新ガイドラインを高く評価した。

双子・兄弟同時入隊

静岡地本

 静岡地本(本部長・佐藤一郎1空佐)から、3家族2組の双子と1組の兄弟が自衛隊採用試験に合格し、陸上自衛隊武山駐屯地(横須賀)に入隊した。

 年々厳しくなる就職環境の中で、兄弟2人が自衛官の道を志願し、陸上・海上・航空自衛隊の選択肢がある中で同一の陸上自衛隊を選択する事はよくあるが、3家族の6人が採用試験に合格し、陸上自衛隊の同一駐屯地へ入隊するのは非常に珍しい。保護者は「兄弟とも同じ道を歩むことは非常に嬉しい。2人とも馴れ合いにならず切磋琢磨して立派な自衛官となってもらいたい」と、わが子にエールを送っていた。

 静岡地本は、「新年度も学生等の自衛隊に対する関心を更に高めてもらう施策を実施し、募集基盤の拡充に努める」としている。

第5移動通信隊 那覇基地に新編

〈航空自衛隊〉

 航空自衛隊は3月27日、航空システム通信隊(司令・堀本章治1空佐=市ヶ谷)隷下部隊として、南西地域の通信インフラの抗たん性を確保し各種作戦における通信態勢を強化するため、第5移動通信隊(隊長・佐野和慶3空佐)を那覇基地に新編した。移動通信隊は移動式のアンテナや通信装置を保有し、固定通信回線の中断など不測の事態に備える部隊。これまで全国に第1移動通信隊(熊谷基地)、第2移動通信隊(春日基地)、第3移動通信隊(千歳基地)、第4移動通信隊(車力分屯基地)が置かれている。

 同日行われた記念行事で堀本隊司令は、「固定通信網の代替通信構成を主任務に、各種事案への対応、大規模災害時の臨時通信回線構成等の任務を迅速かつ的確に遂行して参ります。佐野隊長を核心に部隊が一致団結し、南西地域における航空自衛隊の活動と我が国の安全保障に寄与することを皆様にお誓い申し上げます」などと、同部隊の活躍を力強く約束した。また、佐野隊長は部隊新編に臨み「空自那覇基地の一員並びに沖縄県民として皆様から信頼され愛される部隊として国民のため全力で任務遂行できるよう日々精進して参ります」との抱負を表明した。

医官の志を胸に
第36期学科卒業式 防医大

 3月7日、防衛医科大学校(三浦総一郎学校長)は医学科第36期学生卒業式典を体育館兼講堂で行った。式典は、小雨の降る中、防衛大臣をはじめ、国会議員、その他多数の来賓、家族及び教職員等約600人が参列し、盛大に執り行われた。

 卒業生は、6年間の医学教育及び訓練を終え、医師国家試験を受験し卒業式を迎えた。卒業証書授与、学位記授与の後、79人全員で「医師の誓い」を読み上げ、医師としての決意を述べた。

 中谷防衛大臣は、「今後は自衛隊医官として、先輩たちの崇高な志を受け継ぎ、我が国の平和と安全、国民の命と幸せな暮らしを守りぬくため、人徳を涵養し、医学に関する研鑽を積み重ね、たゆまぬ努力を続けるとともに、積極的平和主義の理念をもって、果敢にチャレンジし、衛生機能強化に尽力してもらいたい。『よき自衛官である前に、よき市民、よきジェントルマンであれ!』」と訓示した。また、三浦学校長は式辞で、「日本の国民が期待を寄せ、心の拠り所とする職業につくのであるという自覚を一生忘れないこと」、「医師や自衛官として本当に必要な勉強はこれから始まること」、「防衛医科大学校の卒業生であることに誇りを持ち、共に研鑽を積んだ仲間を大切にすること」を要望した。

 任命式では、陸・海・空幕僚長から曹長を任命され、防衛大臣に宣誓を行い、医官としての志を胸に旅立った。

警務隊競技会を実施
~8年振り、一元化後初~

 2月28日と3月1日にかけて、警務隊の鑑識・持続走・逮捕術の各種技能の錬度向上を促し、士気の高揚及び団結の強化を図る事を目的とした「平成26年度警務隊競技会」が陸上自衛隊朝霞駐屯地で実施された。平成18年度以来8年ぶりで、捜査・保安部隊の一元化後初めての実施となり、5方面隊からそれぞれ選抜された135人の選手の他、応援、統裁部(埼玉県警から鑑識課長以下7人含む)を合わせて約460人が参加した。

 開会式にあたり統裁官の警務隊長・山内大輔陸将補は「日頃の成果を十分発揮し、あくなき勝利を追求せよ」「正々堂々と勝負し、整斉たる競技の進行に貢献せよ」「安全管理に留意せよ」の3点を訓示として隊員に要望した。

 28日は、鑑識競技会、持続走競技会が行われ、1日は武道場内で逮捕術競技会が実施された。逮捕術競技会は1チーム5人で各方面隊が総当りで対戦し、勝星が一番多いチームが優勝となる。ルールは、徒手の他に、「長もの」と呼ばれる杖、警棒、刃物を想定した匕首(あいくち)の3種類の竹刀を使い、ルールは剣道・空手・柔道がベースとなる。日頃の鍛錬の成果を発揮すべく隊員達の表情は気合い十分。気迫に満ちた試合の連続に、「いつもの練習通り!」「そこだ、行けっ!」等応援も自然と熱を帯びてきて、会場は大いに盛り上がった。

 閉会式にあたり山内隊長は「平素は全国に少数分散している組織が一丸となるために、このような全国から一堂に会する機会は極めて重要だ」とし「本競技会を通じて培った錬度、士気、団結をじ後の職務遂行に活かし、あるいは更に磨きをかけて、強靭な方面警務隊を育成してもらいたい」と訓示した。

▽競技会結果(部隊の順位は上位2チームを表示)

○総合:1位 北部方面警務隊、2位 中部方面警務隊

○鑑識:1位 東部方面警務隊 2位 北部方面警務隊

 優秀隊員 現場指揮:斉藤祐司2尉(東方警)、指紋:森分亨輔3曹(中方警)、指紋:本田泰然3曹(中方警)、足こん跡:野上昌幸2曹(東方警)、写真:秋山隆雄2曹(東方警)

○持続走:1位 中部方面警務隊 2位 北部方面警務隊

 優秀隊員 上級陸曹:酒井直之1曹(東方警)、幹部:高橋勲1尉(中方警)、中級陸曹:相川雅紀3曹(中方警)

○逮捕術:1位 北部方面警務隊 2位 中部方面警務隊

優秀隊員 市川鋭一1曹(中方警)4戦全勝 

コブラ・ゴールド15に参加

海外で初めて在外邦人等陸上輸送訓練を実施

 2月9日から2月20日の間、自衛隊はタイで多国間共同訓練「コブラ・ゴールド15」に参加した。この訓練は東南アジア最大規模の共同訓練で、日本の他に米国、タイ、シンガポール、インドネシア、韓国、マレーシア、中国及びインドが参加。海賊対処行動、在外邦人等輸送等に係る統合運用能力の維持・向上等を図る事が目的で、(1)指揮所演習(STAFFEx)(2)在外邦人等輸送訓練(TJNO)(3)人道・民生支援活動(医療)(CHE)の訓練に参加した。自衛隊は平成17年から今回で11回目の参加となり、約100人と空自輸送機1機が参加した(別表参照)。

 10日から20日の間、首都バンコク北東約100kmのナコーン・ナヨックにある国軍予科士官学校での指揮所演習では、「西太平洋に所在する仮想国で海賊、国際テロ支援等が横行。国連決議に基づいた海上警備、海賊対処の実施のため、参加7ヶ国+αがタイ主導の多国籍軍及び隷下のコンポーネント(各軍種合同部隊)を編成する」という想定のもと、海上治安維持及び海賊対処に係る多国籍軍及びコンポーネントの計画策定、調整等を実施した。訓練は現在実際に行われている任務、多国間調整要領を反映して行われる。また各国が自国の法律の範囲内で作成した計画は翌年のコブラ・ゴールド16で演習される。自衛隊は海賊対処法に基づき、海賊対処における多国間司令部への連絡幹部(LMO)派遣及び海賊対処行動部隊幕僚の派遣を実施した。

 また、15日の在外邦人等輸送訓練は、「震度7の地震による混乱から治安が悪化。防衛大臣に在外邦人等輸送が要請され、自衛隊は空自航空機による邦人等輸送が決定された」という想定のもと実施された。現地大使館員役や模擬避難者等約70人が乗り込んだ車両を自衛隊誘導輸送隊がパタヤスタジアムからウタパオ海軍航空基地までの約30kmを護衛しながら陸上輸送した。到着後、在外邦人役は搭乗前セキュリティーチェックを受けた後、空自輸送機C-130Hに乗込んだ。2013年のアルジェリア人質事件後の自衛隊法改正により在外邦人等の陸上輸送が可能になってから、海外で陸上輸送訓練が行われたのは今回が初めてである。

 16日、17日の人道・民生支援活動(医療)では、全9ヶ国が参加し「エボラ出血熱及びその他感染症など新たな世界的な健康への脅威」を全体テーマとして机上演習及び意見交換会が実施された。


○コブラ・ゴールド15参加部隊等

統合幕僚監部等:内部部局、情報本部及び統合幕僚監部(人員約20人);

陸上自衛隊:陸上幕僚監部、北部方面隊、東北方面隊、中央即応集団、警務隊、中央情報隊及び陸上自衛隊研究本部(人員約45人)

海上自衛隊:海上幕僚監部及び自衛艦隊(約5人)

航空自衛隊:航空総隊、航空支援集団、航空教育集団及び航空自衛隊補給本部(人員約30人、航空機C-130H1機)

勝利への執念を胸に
総合戦技競技会初開催

〈第4師団〉

第4師団の防衛警備担任区域は大分・福岡・佐賀・長崎

 第4師団(深津孔陸将=司令部・福岡)は、1月20日から23日までの4日間、管内の各駐屯地等で「平成26年度師団総合戦技競技会」を開催した。同競技会は、武装走・格闘・衛生・通信・情報・らっぱ及び炊事の7種目による各種戦技競技会を実施して、総合的な戦技能力の向上を図るとともに、部隊の団結強化及び士気の高揚が目的。第4師団として、武装走など単独戦技を競う競技会は過去に行われていたが、総合戦技競技会は初開催で、全ての競技を合計した統裁部・選手の参加総数は3000人以上に達した。

 師団長は、競技会に先立ち「部隊の総合力を発揮せよ」「勝利にこだわり、己に克ち、敵に勝て」「管理を徹底せよ」の3点を要望し、基礎となる部隊(中隊等)の戦闘員として任務達成に必要不可欠な各種戦技を競わせ、当該部隊における総合的な戦技能力の発揮を促した。競技会の結果はAグループ=第16普通科連隊、Bグループ=対馬警備隊、Cグループ=第4飛行隊が総合優勝の栄冠を手にした。

 閉会式で深津師団長は、「一件の事故もなく整斉と終了することができ、大変嬉しく思う。指揮官を核心として、勝利にこだわり、部隊の総合力を遺憾なく発揮して戦う各部隊の姿を見て、本競技会の目的を達成したものと認める」などと講評し、悪天候に見舞われながらも真摯に取り組んだ参加者を讃えた。


ケネディ駐日米大使が中谷防衛大臣を表敬

 1月23日、キャロライン・ケネディ駐日米特命全権大使が防衛省を訪れ中谷元防衛大臣を表敬した。

 中谷大臣は、今年前半の完了を目指す日米防衛協力のための指針(ガイドライン)見直しや普天間飛行場代替施設建設等引続き米側と連携して進めていく旨を伝えた。また「私の信念として日米関係は世界の中で一番重要な同盟関係だ」と述べ、日米共同訓練等自衛隊と米軍との戦略的な協力関係により「日米同盟が海域を守るための抑止力となっており目に見える姿で協力する事が一番大事だ」と必要性を語ると共にそれらを支える在日米軍への感謝の意を表した。

 一方ケネディ大使は「安全保障に関する専門知識を有する方が我国のパートナーになり、大変心強い」と中谷大臣の就任を歓迎。昨年末の「日米共同方面隊指揮所演習(YS-67)の視察に触れ「自衛隊と米軍との緊密な連携に感銘を覚えるとともに自衛隊の高い能力に敬意を抱いている」と述べた。ガイドラインの見直しや沖縄基地負担軽減に対しても日本側の姿勢を歓迎し「あらゆるレベルでの連携強化を楽しみにしている」と今後の日米関係への期待を述べた。

 またISIL(イスラム国)による邦人殺害予告事案について中谷大臣は米側からの情報提供に感謝を述べ、ケネディ大使は「いかなるサポートも行う用意がある」と両国が協力して解決していくことを確認した。

新防衛大臣に中谷元衆院議員

「原点回帰」を基本方針に

「再び諸君と働くことになり誠に光栄」

「リーダーシップを持ち率先垂範の気持ちで」

 中谷元新防衛大臣は高知県出身、57歳。土佐高等学校、防衛大学校を経て陸自に入隊し普通科部隊で小銃小隊長、レンジャー教官等を経て2陸尉で退官後に政治の世界に入り、1990年に初当選。2001~2002年に第1次小泉内閣で防衛庁長官を務めた。

 昨年12月24日、特別国会が召集され、衆参両院本会議の首相指名選挙で安倍晋三衆院議員(自民党総裁)が内閣総理大臣に選出された。安倍首相は直ちに18人の閣僚を任命。同日、皇居での首相親任式と閣僚認証式、初閣議などを経て、正式に自民・公明連立の第3次安倍改造内閣が発足した。17閣僚は再任で防衛大臣のみ中谷元衆議院議員が新たに任命(安全保障担当大臣兼務)され、これに伴い翌25日に防衛大臣の離着任行事が行われた。

 12年ぶりに防衛相に復帰した中谷大臣は着任式で、「再び、志を同じくする防衛省・自衛隊の諸君と国家、国民、国益のために働くこととなり誠に光栄に感じると共にこの職責の重さに身の引き締まる思いがいたします」と全隊員に訓示した。訓示の中では、統合機動防衛力の構築に努めること、防衛省改革の推進、安全保障法制の整備に向けた準備を着実に進めることの3点を目標として掲げた。年が明けて1月5日の年頭の辞では、昨年を振り返り、真っ先に、関東や四国の雪害、広島の土砂災害、御嶽山の噴火に伴う行方不明者捜索等、相次いだ災害派遣の現場で活動した隊員を労った。また、不安定さを増す日本の安全保障環境下において、「昼夜を問わず、我慢の限界に耐え、緊張感を持って、警戒監視などの任務についている隊員の皆さんがいます」と述べたほか、ジブチの海賊対処、南スーダンPKO等海外での活躍にも触れたことはもちろん、業務隊や全国地本、研究職の隊員等にも言及、「皆さんが心を合わせて、いついかなる事態が発生するか分からない状況の中、それぞれが与えられた任務・職務を常に緊張感を持ってきちんと遂行していることで、我が国の防衛は成り立っていること、ここで、心から感謝し、御礼を申し上げます」と全隊員への深い感謝の気持ちを表した。

 中谷新大臣は年頭の辞の最後に「原点回帰」を基本方針として掲げた。中谷新大臣の原点は自衛隊にあるのだろう。1月11日に行われた第1空挺団「降下訓練始め」視察の際、空挺隊員が訓練に用いる高さ11mの跳出塔から跳び降りた。率先垂範の気持ちからの行動という。13年前の防衛庁長官時代にも同様の跳び降りを行った。最初にここから跳び降りたのは防大生時代のこと。30年以上前に思いを馳せる中谷新大臣の表情は往時を想像させる若々しさに満ちていた。

新年のメッセージ

統合幕僚長 河野克俊海将
事態に即応し実効的対応を

 防衛ホーム読者の皆様、国内外の各地で勤務している隊員諸君に謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 さて、今日の国際社会では、宇宙空間・サイバー空間といった領域の安定的利用の確保が安全保障上の重要な課題となっており、我が国及びその周辺では、中国が海空域などにおいて活動を急速に活発化させる等、我が国を取り巻く安全保障環境は不透明・不確実さが増しています。 

 このような中、自衛隊は、平素から警戒監視や情報収集、対領空侵犯措置を不断に行い、即応態勢を維持しており、昨年は、関東甲信地方から東北地方における大雪、広島における土砂災害、御嶽山の噴火等が発生し、人命救助等の活動を実施しました。

 一方、国外ではマレーシアの民間航空機の消息不明に伴う国際緊急援助活動を実施し、南スーダンにおける国際平和維持活動では、着実に成果を収めております。アデン湾における海賊対処では、自衛隊から多国籍連合任務部隊に司令官等を派遣する方針が決定され、海賊対処行動における実効性の向上が期待されています。

 また、昨年は国内における統合訓練、日米共同統合訓練等を実施し、統合運用能力等の維持・向上を図ることができました。

 我々自衛隊は、真の即応が求められる時代において、統合運用の伝統を受け継ぐとともに、精強性の維持・強化を図り、隙のない体制を確立するべく、陸海空自衛隊が心を一つにして統合運用をさらに進化させ、事態に即応し実効的に対応できる態勢を維持していく所存です。

 本年も隊員諸官とともに、統合運用体制の更なる実効性向上に努め、与えられた任務の達成に邁進することを誓い、新年の挨拶とさせていただきます。