自衛隊ニュース
第5旅団長に岸良将補着任
第5旅団は、8月2日、帯広駐屯地において、第13代第5旅団長・岸良知樹陸将補の着任行事を実施した。陸上幕僚監部(市ヶ谷)から着任した岸良旅団長は、帯広駐屯地の慰霊碑を参拝した後、司令部庁舎前において、儀仗を受けた。
その後、同駐屯地体育館で実施した着任式では、参列した旅団隷下部隊に対して、我々の行動は、任務が原点であること、その完遂が至上最高の責任であることから統率方針を「任務完遂」とする旨を明示した。また隊員諸官には、第一に「事態への備え」として、各部隊の対処力を高め、徹底的に備えること、第二に「目標の追求」として、目標追求の過程において各人が強固な意志を保持し、限りない努力を積み重ねること、第三に「信頼の増進」として、効果的な情報発信、地域社会との更なる連携強化及び上下左右の揺るぎない信頼について要望した。 最後に道東の守りを固め、我が国の平和を創り、国民を守るため、常に陣頭に立ち、全身全霊をもって、任務完遂に邁進することを誓うと述べた。
第5旅団は、岸良旅団長を核心として、新たな一歩を踏み出した。
教訓研本ウェビナー開催
「AIの発展が陸上作戦に及ぼす影響」
8月7日、令和6年教育訓練研究本部ウェビナーが開催された。テーマは「AIの発展が陸上作戦に及ぼす影響」であった。
東京大学の小泉悠氏による基調講演では、戦争のキャラクター(性格)とネイチャー(性質)という視点から、AIの発展が戦争全体へ及ぼす影響についての見解が示された。
次に、第1部では認知戦に関する討議が行われた。情報通信研究機構の鈴木悠氏がモデレータを務め、まず、認知戦の概要を説明した。引き続き、パネリストとして東京大学大学院の松尾豊氏がAI研究の視点から、株式会社サイバーディフェンス研究所の名和利男氏がサイバーセキュリティに関する実務者の視点から、教育訓練研究本部の杉本光伸1陸佐が現役自衛官の視点からそれぞれの見解を述べた。
続く第2部では、ロボットやドローンに関する討議が行われた。防衛大臣政策参与の尾上定正氏による進行の下、千葉工業大学の古田貴之氏がロボット開発の視点から、慶應義塾大学SFC研究所の部谷直亮氏と平田知義氏がドローンの開発や運用の視点から、陸上自衛隊システム通信団長の青木圭陸将補が装備開発のニーズとシーズの視点から活発な議論を行った。
今回のウェビナーは事前の登録者数約970名とのことであり、毎回順調に視聴者数を伸ばしているという。視聴者から寄せられた質問も質が高く、認知戦におけるファクトチェックの効果という実務的なものから、AIによる学習の結果、反戦ロボットが生まれるのではないかといった独特なものまで様々であった。
主催者である本部長の廣惠次郎陸将は、「回を重ねるごとに登録者数が増加しており、視聴者からの期待の高さを感じています。教育訓練研究本部は、今後も部内外の知見を大いに取り入れて将来戦の様相について研究を続けて参ります。来年2月の『陸上自衛隊フォーラム』では、成果の一部を情報発信する予定ですので、どうぞご期待ください」とコメントしている。
陸上自衛官で初の快挙
仏政府から国家防衛勲章
日仏陸軍種間協力に寄与
6月6日、陸上幕僚監部防衛部防衛課防衛協力センターの眞崎康次2陸佐(当時)が、日仏間の防衛関係発展に貢献した功績により、フランス政府から陸上自衛官としては初の快挙となる国家防衛勲章を授与された。
ブリュネ・タカモリの初実施に尽力
眞崎2佐は2022年から欧州・中東・アフリカの陸軍種間協力・交流に係る業務を担当する中で、対フランスでは陸軍種間協力・交流に関わる計画の策定やハイレベル懇談、共同訓練の調整等に尽力した。特に昨年9月にニューカレドニアにおいて実施された、陸軍種間における初の日仏2国間共同訓練「ブリュネ・タカモリ23」の実施に尽力したことが高く評価された(今年度は9月に日本国内で実施予定)。
在日フランス大使館で行われた伝達式で眞崎2佐は、周囲への感謝の気持ちを述べつつ、「各国の中で一番大変で一番充実していたのがフランス陸軍との協力です」と振り返り、「平坦な道ではなかったが、何度も顔を合わせ、日仏関係の強化に向けて気持ちをひとつにしてきたことが、今の結果となってきたと思います」とスピーチ。参加者からの祝福の拍手に笑顔で応えた。
仏軍の空挺降下訓練始め初参加を提案
眞崎2佐が一番印象に残っているのは、昨年11月の陸幕長の仏公式訪問だという。この訪問で、今年1月の第1空挺団(習志野)の降下訓練始めに仏陸軍が初参加することが決まった。これは事前に眞崎2佐が仕掛けたアイデアで、仏側及び第1空挺団と調整を重ねて陸幕長に提案したものだった。仏を含めて8カ国で行った同事業は、同盟国・同志国の連携を内外に示すという大きな成果を得た。眞崎2佐の右胸の空挺徽章が誇らしげに光る。
まだ道半ば
2022年末策定の国家防衛戦略では同志国との連携強化が不可欠だとされている一方、日仏陸軍種間協力は「まだ道半ば」だという。眞崎2佐は、さらに進展させていくための課題に「意識の壁」を挙げた。言語や文化の違いがあり、特に日本人は外国との関わりに消極的な部分があると理解したうえで、「フランスと交流する事が普通だという環境に意識を変えていくことが大切です。関係の強化は、究極は人と人との接点の総和です。幹部から曹士まで皆が積極的にコミュニケーションを取れるようになっていけば、日仏陸軍種間交流は一気に進むと思います」と強調した。フランスははっきりと自分の意見を主張する国柄と言われ、その国の軍人と何度も顔を突き合わせてきたからこそ重みがある言葉だ。
報道陣の質問にも丁寧に誠実に答えてくれた眞崎2佐。多忙を極めた2年間だった。伝達式に同席していた夫人からは「苦労が報われたね。やって良かったね」と言葉をかけてもらったそうだ。「家の事や子育てを任せっきりでした。支えてもらえて感謝しています」と少しはにかんで見せた。奥様の支えあっての偉業達成だった。
ブリュネ・タカモリ24
9月8日から国内で
8月26日、陸上幕僚監部はフランス陸軍との2国間共同訓練「ブリュネ・タカモリ24」を9月8日から同月20日まで、王城寺原演習場(宮城県)と岩手山演習場(岩手県)で行うと公表した。昨年の仏領ニューカレドニアでの実施に続き2回目となり、フランス陸軍が日本国内で訓練を行うのは初めてとのこと。陸自からは第39普通科連隊(弘前)を中心に約100名が参加、仏陸軍からは第6軽機甲旅団(仏南部ニームを拠点)から約50名が参加する。対ゲリラ・コマンドウ作戦に係る戦術技量の向上を図るため、中隊規模以下の戦術行動及び実弾射撃訓練を行う。陸自は訓練を通じて、アフリカや中東等で経験豊富な仏陸軍から対ゲリラ・コマンドウ作戦の知見や技能の修得を目指す。
オリエント・シールド24
米陸軍との共同訓練「東洋の盾」を創造
中部方面隊(総監・小林弘樹陸将)は、7月18日から同月26日までの間、米陸軍との実動訓練(オリエント・シールド24)を、あいば野演習場(滋賀県高島市)、矢臼別演習場(北海道野付郡別海町)、伊丹駐屯地(兵庫県伊丹市)等で行った。
小林総監は、7月18日、あいば野演習場で行われた訓練開始式において、参加隊員が本訓練の重要性を強く認識し、日米間の「相互運用性」を更に深化させ、より強固な「東洋の盾(オリエントシールド)」を創造することを要望した。
「抑止力・対処力」の更なる強化、「同志国」との連携の強化
今回の訓練では、米海兵隊からの初参加に加え、オーストラリア、カナダ、ブラジルからのオブザーバーを受け入れた他、各演習場で電子戦やヘリボン等を連携させた日米共同の戦闘訓練、米陸軍・海兵隊のHIMARS(装輪式自走多連装ロケット砲)と陸自特科部隊による共同実弾射撃、サイバー攻撃対処に係る専門家交流等を行った。
引き続き、中部方面隊は、国民の信頼と期待に応えるため、より強靭な中部方面隊となるよう隊務に邁進していく。
築き上げた絆
<14旅団>
第14旅団(旅団長・大場剛陸将補)は、7月中旬、あいば野演習場(滋賀県)及び矢臼別演習場(北海道)で行われた令和6年度米陸軍との実動訓練(オリエント・シールド24)を担任した。
あいば野演習場では、第15即応機動連隊(連隊長・徳淵文雄1陸佐)、第14後方支援隊(隊長・佐藤欣央1陸佐)及び第14飛行隊(隊長・池水俊二2陸佐)が中心となり、へリボン行動や市街地戦闘、衛生救護、兵站輸送など各場面ごとに焦点を当てて行われる機能別訓練、一連の流れを状況下で行う共同戦闘訓練、各シナリオのもと行った共同戦闘射撃訓練により、米陸軍との認識の共有を図るとともに、共同して作戦を実施する場合の相互連携要領について深化させた。
また、矢臼別演習場では砲兵部隊の実弾射撃訓練が行われ、中部方面特科連隊第4大隊(大隊長・谷川維孝2陸佐)、第14情報隊(隊長・濱田安彦2陸佐)が参加し、陸上自衛隊が保有するFH70、米陸軍及び米海兵隊が保有するHIMARSの射撃を行い、目標情報の共有など相互の連携要領について確認するとともに、第14情報隊のスキャンイーグル2により目標捜索及び射撃効果の収集・提供を実施するなど空地の連携により円滑な射撃を行った。
第14旅団は、オリエント・シールド24を通して日米間の強固な団結を築くとともに、訓練間得た教訓を今後の任務に役立てていきたい、としている。