自衛隊ニュース

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「陸自祭」15旅団7周年 那覇駐屯地45周年
「美ら島と県民の真心護る15旅団」をテーマに

 11月26日、陸上自衛隊那覇駐屯地で「陸自祭」が盛大に行われた。これは「美ら島と県民の真心護る15旅団」をテーマとし、陸上自衛隊第15旅団(旅団長・原田智総陸将補)創隊7周年及び那覇駐屯地(司令・伊崎義彦1陸佐)創立45周年を記念したもので、県内外から約6600人が訪れた。

 富川盛武沖縄県副知事を初め、多数の来賓が見守る中観閲式が始まった。整列している部隊を紹介している間も民航機の離発着が見えたり、スクランブル発進の音がするのはいかにも沖縄らしい。原田旅団長は「陸上自衛隊がこの那覇駐屯地を創設して45年目となる。創設当時は相当の困難があったと聞いているが、現在では県民の約7割のご支持を頂いている。我々の存在意義は『強さ』以外にない。引き続きあらゆる事態において任務を必ず完遂し、『県民の盾』となれるよう日々の練磨に汗を流してもらいたい」などと式辞を述べた。また、西銘恒三郎経財産業副大臣は祝辞で「毎日の訓練に励む隊員の姿や災害派遣などで活動している姿を県民は見ている。そして日々の努力を一生懸命応援している。ますます地域に愛される旅団になって欲しい」などと語った。

 続く観閲行進では、隊員約580名、タイヤの溝まで磨き込まれた車両約100両、航空機8機などが威風堂々と行進し、訓練展示では空地一体となった「島嶼防衛」の様相を展示し、観客からは大きな歓声がわき起こっていた。

 駐屯地内では、自衛隊の装備品の他に米軍の水陸両用車等も展示してあり、試乗は30分待ちの大盛況となっていた。また、米隊員と仲良く記念撮影をする子供や若者らなどこちらも大人気だった。

 2001年の地元新聞によると自衛隊に対して肯定約35%否定約65%だったが、近年は災害派遣・不発弾処理・緊急患者空輸等の民生支援活動や他の活動を見てもらえて自衛隊肯定が70%を越えたとの調査結果もある。

 式典と訓練展示の間に行われたアトラクションでもエイサー隊が客席の中から現れ、沖縄民謡等を演奏、観客は手拍子で参加。また第15音楽隊による演奏ではラッパ隊とコラボしたマーチングバンド演奏や「ミリタリークローバーZ」の演出など和気あいあいと楽しんでもらおう、一緒に楽しもうとの想いが伝わり、原田旅団長の掲げる要望事項「県民とともに」を彷彿とさせる「陸自祭」の一日だった。

第2回最先任上級曹長課程卒業行事
空自から初の履修者

陸幹校

 陸上自衛隊幹部学校(学校長・西 浩徳陸将=目黒)では、第2回最先任上級曹長課程の卒業行事を来賓2名(陸幕人教部長・森下泰臣陸将補及び陸幕最先任上級曹長・高橋将准陸尉)等を招いて11月15日に行った。最先任上級曹長課程は、今年度より集合教育から課程教育化され、本期は第2回となり8月25日から11月15日の約11週をもって実施された。今回の教育履修者は、学生長の伊藤惣悦准陸尉(21普連)以下15名と空自より始めての履修者となる上治忠義准空尉(空幕教育課)の16名。

 卒業式で西学校長は「『本物は感化する』という言葉を送る。諸官は目立とうとするな。指揮官と一心同体となった本物の最先任上級曹長になれ。そして地道に職務規定を遂行せよ。本物になった諸官の影響は、もはや単なる影響ではなく、隊員の骨髄に浸透する。身になり、身につく。上面で指導するな。そんなものは、諸官の姿が見えなくなった途端に消えてなくなる。本物になって、本物を指導し、諸官と接するものを感化するのである。諸官の立派な勤務ぶりは、諸官の指揮官をも感化し得るのである。ここで知りえたことを実際に行動に移すことにせよ。知ったことを行なわないのは知らないのと同じである」などと式辞を述べた。

 初めて航空自衛隊から入校した上治准空尉は「選ばれし陸上自衛隊の最先任達と切磋琢磨し、同期の絆を築きながら、多くのことを学び、統合運用における現場レベルでの関係を構築することが出来た。短い期間だったが、多くの知識の修得と素晴らしい経験をさせていただいた本課程教育は、陸自と空自だけではなく、いずれは海自も含めた、現場レベルにおける統合運用の礎となるべく、今後も継続していただければと思う」等とその思いを語った。また、伊藤学生長は上治准空尉に対し「陸自とは違う視点、レスポンスの速さ、行動力が大いに参考になり刺激を受けた」などと語った。

御遺志を受け継ぐ
平成29年度自衛隊殉職隊員追悼式

 10月28日、防衛省メモリアルゾーンで自衛隊記念日記念行事「平成29年度自衛隊殉職隊員追悼式」がしめやかに執り行われた。

 式典には、今年度追悼の対象となる隊員の遺族、殉職後10年目及び20年目等の遺族をはじめ、安倍晋三内閣総理大臣、小野寺五典防衛大臣以下防衛省・自衛隊高級幹部および来賓として歴代防衛大臣、関係協力団体長等約370名が参列した。

 不幸にも任務遂行中に職に殉じた隊員を追悼する当式典は、昭和32年から防衛大臣の主催で実施。今年度(平成28年9月1日から同29年8月31日)の顕彰者は25柱(陸自‥ 14柱、海自11柱)で、累計は1934柱(陸自‥1048柱、海自440柱、空自419柱、その他27柱)となった。

 小野寺大臣が新殉職隊員名簿を奉納し、参列者全員で拝礼・黙祷が行われた。安倍首相は追悼の辞で「それぞれの持ち場において、強い使命感と責任感を持って職務の遂行に全身全霊を捧げた皆様は、この国の誇りです。私たちは、その勇姿と名前を永遠に心に刻みつけてまいります」と述べ、小野寺大臣は、「御遺志を受け継ぎ、国民の生命と財産、領土・領海・領空を断固として守り抜くため、あらゆる事態に切れ目なく対応し、最後の砦として、全身全霊で取り組むことを、ここにお誓いします」と述べた。

 指名献花では、ひとりひとりが慰霊碑の前で思いを馳せた。遺族代表挨拶では、自衛隊遺族会副会長の中村ミツエ氏が「殉職した家族を偲び、国のために精一杯力を尽くしたことを誇りに思い、今後力強く生きていくための心の支えにしたいと思っています」と述べた。

 最後に特別儀じょう隊による弔統が放たれ、閉式を待っていたかのように、雨が地面を濡らし始めた。

シンガポール陸軍司令官を公式招待
山崎陸上幕僚長

 10月23日、山崎幸二陸上幕僚長はシンガポール陸軍司令官メルビン・オン・スウ・キアット陸軍少将と防衛省で会談した。

 当訪問は、山崎陸幕長が着任して初めての公式招待であり、シンガポール陸軍司令官の公式訪問は25年振り。23日~24日の滞在期間、オン司令官は中央即応集団司令部(座間)及び化学学校(大宮)を訪問。

 当日は、季節外れの台風21号の影響が心配されたが、オン司令官の来幕時には雨も上がり時折吹きすさぶ風の中、両名は栄誉礼・儀じようを受けた。

 会談では、山崎陸幕長はオン司令官の訪問を歓迎し、「二人の友情が台風を遠ざけた」と述べて場を和ませた。オン司令官は「このような歓待を受けて感謝している」と述べた。

 アジア諸国との防衛協力・交流を強化する陸上自衛隊にとって、今回の会談は相互理解の深化および信頼関係を強化し、日本-シンガポール陸軍種間のさらなる防衛協力・交流の促進が期待される。

ライジング・サンダー17

<ヤキマ演習場>

日米共同実動訓練 相互運用性の向上図る

 9月5日から22日まで、陸上自衛隊はアメリカ合衆国ワシントン州ヤキマ演習場で米陸軍との実動訓練(ライジング・サンダー17・雷神2017)を実施した。これは、陸自及び米陸軍がそれぞれの指揮系統に従い、共同して作戦を実施する場合における連携要領を実動訓練するもの。

 平成21年度から毎年実施し、今年で9回目になる。


 陸自からは、東北方面総監・山之上哲郎陸将を担任官とし神町駐屯地の第6師団第20普通科連隊を基幹とした約320名が参加。主要装備品は、89式小銃、120mm迫撃砲、87式対戦車誘導弾装置等。また主要増強部隊として参加した第6特科連隊は、155mmりゅう弾砲・第6戦車大隊は74式戦車・第2対戦車ヘリコプタ隊はAH-1Sを装備して参加した。

 米陸軍からは、ワシントン州ルイス・マッコード総合基地駐屯部隊の第7歩兵師団第1ー2ストライカー旅団戦闘団第2ー3歩兵大隊を基幹とした約230名が参加した。米陸軍の主要装備は、5・56mm小銃、ストライカー、M777、AH-64等。旅団戦闘団のストライカーは、機動性に優れファミリー化されている事でも名高い。

 諸職種協同による総合戦闘力の発揮、日米共同による総合戦闘射撃を含む、陣地攻撃における相互連携などを訓練し、戦術技量及び相互運用性の向上を図った。訓練の合間には、交流行事やホームビジット等も行い日米間の相互理解や友好も深める等、更なる友好親善も促進させた。

米軍との共同訓練を相継いで実施
8空団(築城)、9空団(那覇)が参加

航空自衛隊

 9月18日、航空自衛隊は日米共同対処能力及び部隊の戦術技量の向上のため、米軍と共同で編隊航法訓練を九州周辺の空域で行った。

 空自からは築城の第8航空団よりF-2が4機、米空軍からはグアムの第37遠征爆撃飛行隊よりB-1Bが2機、岩国の第12海兵航空群よりF-35Bが4機参加した。また、日米韓3ヵ国の強固で緊密な連携の一環として、米空軍のB-1B×2機と米海兵隊のF-35B×4機は、空自との共同訓練に引き続き、韓国空軍との2国間共同訓練を実施した。

 空自は、これに先立つ9日にも、米空軍と東シナ上空で日米共同訓練を実施しており、その際は那覇の第9航空団からF-15×2機を参加させている。

第51回自衛隊高級幹部会同開催

 9月11日、第51回自衛隊高級幹部会同が開催され、安倍晋三内閣総理大臣・小野寺五典防衛大臣をはじめ、各機関及び部隊の長ら約170名が参加。防衛省の政策方針を自衛隊の高級幹部に周知徹底させるとともに、当面する自衛隊の重要課題について意見交換した。  安倍首相は、「国民の負託に全力で応え、与えられた任務を全力で全うする隊員諸君。国民から信頼を勝ち得ている自衛隊員は、私の誇りであります」「『只今がその時、その時が只今なり』江戸時代の武士、山本常朝の『葉隠』に記された言葉です。常日頃から、備えを万全とするために、不断に自己を磨く。国際情勢は、一層複雑化し、私たちが望むと望まざるとに関わらず、激変を続けています。こうした状況の変化を、しっかりと見定めながら、あらゆる事態に備え、国民の命と平和な暮らしを守る。この崇高な任務に対し、いかなる困難にもひるまず、強い使命感を持って、たゆまぬ努力を続けていただきたい」などと訓示した。

平成29年度富士総合火力演習

「平成29年度富士総合火力演習」の一般公開が静岡県御殿場市の東富士演習場で8月27日、小野寺五典防衛大臣、大野敬太郎防衛大臣政務官をはじめとした防衛省・自衛隊高級幹部、在日米軍、国会議員、そして倍率約29倍の抽選で当選した約27000名の一般来場者を招いて盛大に挙行された。

 6時過ぎの御殿場駅前、演習会場へ向かうシャトルバスを待つ長い列ができていた。しかし列を待つ来場者の顔には不満の表情など見られず「やっと今年当たったよ」「私は3回目です」など期待にあふれる様子が見られた。

 一般公開の演習担任官は富士学校長・徳田秀久陸将。演習実施部隊指揮官の富士教導団長・小森一生陸将補を中核に人員約2400名、戦車・装甲車約80両、各種火砲約60門、航空機約20機、その他車両約700両が参加した。

 演習は例年通り、前段と後段の2部構成で行われ、小野寺大臣へ陸上幕僚長・山崎幸二陸将による準備完了報告から開始された。

 「陸上自衛隊の主要装備品の紹介」の前段演習は特科火力の展示から始まった。背景に広がる富士山のシルエットに合わせ、三段山の上空に曳下射撃による富士山が描かれると、来場者からは割れんばかりの歓声と拍手がわきあがった。東京から来たという30代の男性は「弾着した音が聞こえた時には、もう車両が移動を開始しているのには驚いた。日頃の訓練の賜物なんでしょうね」と驚いていた。

 その後、中距離火力、近距離火力、ヘリ火力、対空火力の紹介と続き、戦車火力では74式戦車・90式戦車・10式戦車が登場。その圧倒的な迫力に来場者からは「戦車があんなに早く走れるとは知らなかった。特に砲の発射は音よりも客席まで届く衝撃波に驚きました」などとの声が聞かれた。

 今回の目玉となる機動展示は、富士総合火力演習初披露の16式機動戦闘車(MCV)と水陸両用車(AAV)。両車両とも陸上自衛隊が進める「即応機動する陸上防衛力」構築の主要構成装備品で、来年度新編される即応機動連隊や水陸機動団に配備される予定である。

 最後はCH-47からの空挺降下。空挺隊員が降下する姿に客席からは歓声とともに溜息すら漏れていた。30代の女性会社員は降下後の隊員を見て「パラシュートをざっと畳んで抱えていく隊員や丁寧にきっちり畳んでいる隊員がいた。こういうのも性格なんでしょうね。人間ぽくって和みました」と話していた。

 後段演習は我が国の島嶼部に敵の侵攻を想定したもの。高らかに鳴るラッパとともに「島嶼部に対する攻撃への対応」が開始された。

 部隊配置・機動展開・そして突撃部隊の突撃に引き続き、空地一体となり島嶼部一帯に残存する的を撃滅し、島嶼部の奪回をするため「戦果拡張」を行った。富士山をバックに発煙と共に全装備品が演習場に終結し「状況終わり」となった。見終えた来場者からは大きな溜息が漏れた後、万雷の拍手と声援が部隊に送られた。

 演習終了後の装備品展示には戦車・装甲車を含む各種車両、各種火砲、ヘリコプターが展示された。装備品を前に記念写真を撮る人や、装備品のヘルメットを被せてもらって隊員とツーショットを撮影する人など、暖かい雰囲気が流れていた。

 御殿場駅などへのバス乗り場に向かって長い列が続いていたが、列に並ぶ人からは笑顔があふれ満足感に満ちていた。若い隊員は、時折冗談を交えながら来場者を誘導していた。ヘリコプター音に気づき見上げてみると、窓から隊員が笑顔で我々に手を振っており、多くの人がヘリを見上げ手を振り返していた。演習を終えて駐屯地へ帰るその隊員も、また明日から訓練なのであろう。今日の公開演習を見た人から国民の自衛隊への理解が更に広がることだろう。

小野寺新防衛大臣が着任

 8月3日、第3次安倍第3次改造内閣が発足したことに伴い、新防衛大臣に小野寺五典衆議院議員(宮城6区・当選6回・57歳)が就任した。小野寺新大臣は、政権復帰直後の第2次安倍内閣で、平成24年12月から約1年8ヵ月間防衛大臣を務めており、約3年振り2回目の再登板となる。防衛副大臣には、山本ともひろ衆議院議員(神奈川4区・42歳)、防衛大臣政務官には、福田達夫衆議院議員(群馬4区・50歳)、大野敬太郎衆議院議員(香川3区・48歳)が就任した。

 栄誉礼を受けた小野寺新大臣は、市ヶ谷勤務の防衛省職員約400名が待つ講堂で着任式に臨んだ。

 訓示では、安倍晋三内閣総理大臣からの9つの指示を踏まえ、「現下の厳しい安全保障環境に対応した防衛力の強化」「日米同盟の強化」「安全保障協力の推進のための取組」「平和安全法制に基づく活動の着実な実施」の4つの課題について所見を述べた。また、南スーダン派遣施設隊の日報問題に関して、国民の信頼回復のために抜本的な対策を講じ、再発防止を徹底して行うと述べた。

 小野寺大臣は前回就任時に国内外の多くの部隊を視察した。その時接した隊員たちの事をはっきりと覚えていると述べ、「防衛省・自衛隊に与えられた任務は、これら全ての自衛隊員すなわち自衛官・事務官・技官・教官等様々な職種の隊員が、一致団結し心をひとつにして取り組むことによって、初めて成し遂げられることです。私は自衛隊の最高指揮官たる安倍内閣総理大臣の指示監督のもと、常に隊員諸君の先頭に立ち、諸君らとともに国民の命と平和を守る重大な職務にあたることをここに誓います」と力強く決意を述べた。

美ら島レスキュー2017
15旅団

沖縄県と初共催、米軍・関連機関と連携図る

 7月19日と20日、陸上自衛隊第15旅団(旅団長・原田智総陸将補=那覇)は、那覇駐屯地等で沖縄県全体の防災意識及び連携体制の向上を図る事を目的に、沖縄県との共催による大規模災害対処演習「美ら島レスキュー2017」を実施した。


県内最大の防災訓練

 「美ら島レスキュー」は、沖縄県において大規模な地震および津波に対処するため、県内の各市町村及び警察、消防、企業等関連機関が参加する大規模な防災訓練。平成25年に第15旅団主催で行われてから5回目の今回、初めて県との共催になった。19日には翁長雄志沖縄県知事が演習会場の1つである駐屯地体育館を訪れた。

 また在沖米軍も今回から本格的に参加した。4軍約20名が日米共同調整所において、各関係機関との図上演習を初めて行い、在日米軍沖縄地域調整官ローレンス・ニコルソン中将も視察に訪れた。

 参加機関は回を重ねるごとに増加、今回はほぼ全ての市町村から103機関607名、全体では約1200名と過去最多、「必要な機関がほぼ出揃った(原田旅団長)」演習となった。2日間の図上演習、実動演習により、沖縄県主導の対処能力の向上、在沖米軍を含む各機関の有機的な能力の発揮が図られた。

【M9・最大震度6強・津波高7mを想定した演習】

 被害は沖縄で最も大きい震災とされる、沖縄本島南東沖3連動を想定(「25年沖縄県地震被害想定」参考)。午前10時に発生したマグニチュード9・0、最大震度6強、津波の高さ最大7メートルの地震への状況付与を行った。

 初日の図上演習は、被害情報が不明瞭な発災直後~6時間までを想定。限られた情報の中、情報収集重点地域や大津波警報解除後の応急救助重点地域等を検討・確認した。2日目は発災後24時間~31時間までを想定。拡大する被害状況を次々と付与、応急救助活動やインフラ復旧に係る供給先の優先順位、輸送要領の決定・調整を確認した。図上演習に密接に関連した、応急救助訓練、応急復旧訓練、応急医療拠点運営訓練等の実動訓練が、今夏一番の炎天下のなか駐屯地体育館から離れた那覇訓練場等で実施された。


大規模災害から沖縄を守る

 沖縄県知事公室長は、「想像した以上にリアルで各機関が緊張感を持っていた。時間が経つ程に人力の配置の仕方や優先順位のつけ方が少しずつ解ってきて、自衛隊、警察、海上保安庁への要請や情報収集等の手順の方法等が見えてきた。今後も継続して万が一の事態に備えたい」と演習の必要性を述べた。

 原田旅団長は「想定していた問題点を全て洗い出せた」と演習の手応えを述べ、「米軍の参画ということでは、米軍施設を使用するために調整すべきこと等が明確になり、県側もそれを認識することができた。その意味では思い通りの成果が出た」と振り返った。一方課題として、「陸海空統合任務部隊となった場合のメカニズム作り」を挙げ、「今後の5ヵ年計画にしっかりと折り込んでいきたい」と述べるとともに、「今後も我々の能力を高め、県も沖縄にあるアセットをフルに使えるようなメカニズムを作ってもらいたい」と、引き続き、県・自衛隊・在沖米軍・関連機関等が協力して沖縄の防災に取り組む事に期待感を示した。

CTF151司令部要員が帰国
司令官・福田海将補に第1級賞詞

 7月4日、防衛省大臣室で、第151連合任務部隊(CTF151)の司令官を務めた第4護衛隊群司令・福田達也海将補の帰国報告及び第1級賞詞の授与式が執り行われた=右写真。

 CTF151は、ソマリア沖アデン湾等で海賊対処を行う多国籍連合任務部隊。福田海将補以下11名は、司令部要員として今年3月から同隊司令部に派遣され、福田海将補は司令官として11カ国の部隊や関係機関等との連絡調整を実施し、海上交通安全の確保、関係諸国との信頼深化につとめた。また3月に生起した、5年ぶりの海賊による商船乗っ取り事案においては、下火になっている海賊行動の中、事前の対処訓練を怠らずに行った成果を発揮し、適切に対処した。同司令官を自衛官が務めるのは2人目だが、実際に海賊事案に対処したのは福田海将補が初めて。

 稲田朋美防衛大臣は「開かれ、安定した海洋を守るという我が国が掲げる国家安全保障戦略上の重要な課題に強い信念を持って、取り組んで頂いたことに、深い敬意と感謝を表したい」と労いの言葉を贈った。

 翌5日、福田海将補は、河野克俊統合幕僚長に対して帰国報告を行った〓左写真。河野統幕長は「今回、貴官の強いリーダーシップのもとCTF151として海賊抑止策を具体的に調整し、また派遣海賊対処部隊等と連携して海賊事案に適切に対処する等、各国との信頼関係の醸成に寄与するとともに、強く国際社会に貢献したことは称賛に値する」と労を労った。

 その後行われた会見で福田海将補は、「3つのC(コミュニケーション・コーポレーション・コミットメント)をモットーに、関係各国及び関係機関との綿密な連絡調整を実施して強固な協力関係を構築することで、日本が率いるCTF151の司令官としての役割を十分に果たすことが出来た。その任務を果たすことによって、海賊対処という崇高な責務にコミットできたと考えている」と4ヵ月にわたる任務を総括した。

PAC-3機動展開訓練実施
航空自衛隊

 我が国の安全保障環境が厳しさを増す中、特に北朝鮮による弾道ミサイルの発射が相次いでいることも踏まえ、空自の弾道ミサイル対処に係る戦術技量の向上を図るため、航空自衛隊はペトリオットPAC-3の機動展開訓練を実施した。

 今後も自衛隊施設以外も含め、全国的に展開訓練を実施の予定。今回は、小牧基地で第4高射群(岐阜)、福岡駐屯地で第2高射群(春日)、朝霞駐屯地で第1高射群(入間)、北熊本駐屯地で第2高射群が展開訓練を実施した。

南スーダン派遣施設隊 隊旗返還式
施設部隊として最長の5年5ヵ月間活動

安倍首相「歴史的意義を持つ」

 5月27日、南スーダン派遣施設隊第11次要員で最後に撤収した約40名が無事に帰国した。国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に対し平成24年1月に第1次要員が派遣されてから、5年5ヶ月間(施設部隊としての派遣では過去最長)で延べ約4000人が派遣され、道路補修約260km、側溝整備約72km、用地造成約50万平方メートル、施設構築等97ヵ所の成果を残した。


■帰国行事

 第9師団(師団長・納冨中陸将)は、5月27日、青森駐屯地において南スーダン派遣施設隊(隊長・田中仁朗1陸佐)の帰国行事を実施した。

 午前11時に青森空港に到着した田中隊長以下約40名の隊員は、空港で中央即応集団司令官、東北方面総監、第9師団長、各部隊長等に迎えられたのに引き続き、青森駐屯地でも各協力団体及び大勢の隊員の大きな拍手に出迎えられ、任務完遂の安堵感もあり満面の笑みを浮かべていた。

 その後、統合幕僚長、陸上幕僚長他の列席の下、国会議員、青森県知事、各協力会会長をはじめ多くの来賓の前で、家族の見守る中、田中隊長から若宮健嗣防衛副大臣に対して派遣任務完了報告が行われた。

 防衛副大臣からは「過去最長・最大規模であった南スーダン派遣施設隊の最後を締めくくった第11次要員の皆さんには、国際平和協力の歴史の新たな一歩を切り拓いたことを大いに誇りに思っていただきたいと思います」と労いの言葉が送られた。

 引き続き国連メダル授与式が行われ、防衛副大臣、統合幕僚長、陸上幕僚長他各指揮官から派遣隊員一人一人に対しメダルが授与された。

 その後、家族を交え慰労会食が行われ、来賓から慰労の言葉が述べられ、防衛副大臣、統合幕僚長及び陸上幕僚長が派遣隊員及び家族と親しく懇談し、南スーダンにおけるPKOの任務完遂を祝った。

 これらに先立ち、防衛副大臣は儀仗の後、田中隊長から南スーダン派遣施設隊の成果報告を受け、活動実績等を確認した。

 昨年11月の出国行事の際に師団長から示された「誇りと自信を胸に任務を完遂せよ」との要望通り、派遣各隊員は、各部隊そして日本の代表として活動したとの誇りと、日頃より練成した高い能力をもって任務を完遂したとの満足感を胸に漲らせつつ、本派遣間を通じて得た知識と経験を糧に、さらなる部隊精強化の原動力となるべく、それぞれの部隊に復帰した。


■隊旗返還式

 5月30日、防衛省で安倍晋三内閣総理大臣臨席のもと、稲田朋美防衛大臣をはじめ防衛省自衛隊高級幹部のほか、国会議員、歴代の南スーダン派遣施設隊隊長が参列して、隊旗返還式が行われた。式には田中隊長以下第9師団から約350名の隊員が参加した。

 田中隊長から稲田大臣に帰国報告が行われた後、隊旗が返還され、稲田大臣は、5年余りの重みが詰まった隊旗をしっかりと受け取った。その後、安倍首相から第11次派遣施設隊に、特別賞状及び国際平和協力本部長賞が授与された。

 自衛隊最高指揮官である安倍首相は訓示で、「過去最長と同時に過去最大規模の実績を残してくれました。また、第11次隊の諸君は、平和安全法制に基づく新たな任務を担ってくれました。いずれも歴史的な意義を持つものです」「平和のために黙々と汗を流す自衛隊の姿を、世界が賞賛し、感謝し頼りにしています。与えられた任務を全力で全うする隊員諸君は、日本国民の誇りであります」と大きな賛辞を贈った。

 稲田大臣は、労をねぎらうとともに、「今回の貴重な経験を活かし、国際社会の平和と安定のためにそして自衛隊が築き上げた伝統を守りながら、厳しい安全保障環境の下、求められた役割を適切に果たすため創造の精神を持って引き続き各々の任務に精進されることを大いに望みます」と訓示した。


■田中隊長に第1級賞詞

 翌日31日、稲田大臣から田中隊長に対し、第11次派遣施設隊隊長としての功績を讃え、第1級防衛功労章を添えて第1級賞詞が授与された。

遠洋練習航海部隊出国

 初夏とは思えぬ日差しが降り注ぐ中、純白の制服の金ボタンが太陽の光でキラキラ輝いていた。5月22日、平成29年度遠洋練習航海部隊の出国行事が小林鷹之防衛大臣政務官、小田原潔外務大臣政務官、村川豊海上幕僚長ら多くの来賓をはじめ家族や関係者約700名を迎え、横須賀基地逸見岸壁で盛大に執り行われた。

 練習艦隊司令官の眞鍋浩司海将補を指揮官に、第67期一般幹部候補生課程修了者約200名を含む約600名の派遣部隊は、163日間で北米・南米大陸を中心とし米国・パールハーバーを皮切りに8ヶ国・13ヶ所に寄港する。

 式典で小林防衛政務官は「国際情勢が変化する中、海上自衛隊の活動への国民の期待が高まっている」と述べ、村川海幕長は「世界を巡り、一回り大きくなって帰国して欲しい」と訓示した。「行ってらっしゃぁ~い」「頑張って来てね」家族らの声援に帽振れで応える隊員の意志を表すような強い日差しに照らされ、練習艦かしま(艦長・堀川雄司1海佐)と護衛艦はるさめ(艦長・樋ノ口和隆2海佐)は出港して行った。


日印防衛相会談
共同訓練、防衛交流を推進

 5月8日、稲田朋美防衛大臣は、アジア開発銀行年次総会のために訪日中のアルン・ジャイトリー財務大臣兼国防大臣兼企業大臣と日印防衛相会談を行った。日印防衛相会談は約2年ぶりの開催となる。

 冒頭、稲田大臣から「日本とインドは価値観と戦略的な利益を共有する「特別な戦略的グローバルパートナー」である」と述べ、防衛当局間のあらゆるレベルで幅広い分野の協力と交流を実施していることを歓迎した。ジャイトリー大臣も「自衛隊と軍との間で防衛協力、交流が進んでいることに満足をしている」と述べた。

 会談では、日米印3ヵ国による海上共同訓練「マラバール2017」(インド洋、7月で調整中)をはじめ、共同訓練や各種部隊間交流について今後も積極的に推進していくことを確認。また防衛装備・技術協力については、インドが関心を示す海自の救難飛行艇USー2を含めて両国間の議論を進展させる方針を確認した。

 また北朝鮮問題では稲田大臣が「朝鮮半島の安定と非核化が国際社会の重要な課題であり、インドを含めて国際社会の連携が不可欠だ」と述べると、ジャイトリー大臣もそれに同意をした。

南スーダン派遣施設隊第1派帰国
岩手駐屯地

全隊員、家族が任務完遂と無事帰国を祝う

 岩手駐屯地(司令・柳裕樹1陸佐)は4月19日、南スーダン共和国独立に伴い設立されたUNMISS(国際連合南スーダン共和国ミッション)に協力するため駐屯地から派遣された隊員の第1派帰国行事を実施した。

 昨年11月から平和定着と長期的な国造り等に協力するため派遣部隊の第11次要員として南スーダンで活動してきた隊員達は、その任務完了に伴い帰国第1派が青森駐屯地に到着、方面総監、師団長、派遣隊員の所属部隊長等の出迎えを受け、任務完遂と帰国報告を実施したのち家族と共に岩手駐屯地に帰隊した。

 帰隊を待ちわびた駐屯地全隊員が盛大に出迎えるなか、派遣隊員を代表して石井3陸佐(第9特科連隊)が司令に対して任務完遂と無事帰国を報告し、その後出迎えた隊員に対して現地での活動状況等を報告した。

 駐屯地は、日本の代表、岩手駐屯地の代表として南スーダンの人々に希望を与え、国際社会に多大な貢献をし、任務に邁進してきた派遣隊員達の長期にわたる任務の完遂と無事の帰国を祝い、御家族の労を労うとともに、現在も現地で任務を継続中の派遣隊員の無事帰国を祈願した。


主要幹線道路補修完成

 派遣施設隊(第11次要員)は、2月20日から実施していたジュバ市からコダ村までの間の道路の補修を3月31日に終了した。

 この道路は、首都ジュバ市からコダ村を経由し北部地域に至る唯一の幹線道路であり、補修は、UNMISSの任務である人道支援実施の環境作りや文民保護のため必要となる物資等の輸送及び南スーダン国民の生活の向上にも資するものである。

 本活動には、南スーダン警察及び当地元自治体から支援があり、交通量の多いジュバ市内のグデレ橋周辺では、グデレ警察と協同で交通統制を実施したほか、道路補修に必要な砂利(マラム)の採取に関しては、採取場の所在するルリ郡及びヤリ村から協力を受けた。

 第11次要員にとって本活動は、第「ジュバ~マンガラ間」に続く幹線道路整備であり、総補修距離は約100kmと過去最長の補修距離となった。

 本活動を担当した施設器材小隊長は、「UNMISS各部隊が使用する道路の補修を実施することにより物流の流れが良くなり、人道支援の環境造りに寄与するとともに、南スーダンの人々の活動の円滑化にもつながることから、UNMISSの一員として貢献していることに誇りを感じています」と感想を述べた。


入隊式で国防誓う
第10普通科連隊

 第10普通科連隊(連隊長・関谷拓郎1陸佐=滝川)は4月8日、入隊式を挙行した。

 真新しい制服に身を包んだ新入隊40名は、着隊の日に見送ってくれた家族と久々に再会し、安堵の表情を浮かべていた。

 家族は彼らの気迫のこもった返答、節度ある敬礼を目のあたりにし、短期間で成長した我が子の姿に驚きの表情を見せていた。

 関谷連隊長は「高い規律心と遵法精神の保持」「体力・精神力の涵養」を要望し、来賓者、家族や先輩隊員に見守られた新隊員は、自衛官としての決意を新たにした。

主力輸送機C-2美保基地に配備
歓迎の放水アーチをくぐる Cー2

 C-2初配備機出迎えセレモニーが、3月28日午前11時、美保基地(司令・北村靖二1空佐)において基地所属隊員及び基地協力団体総出で行われた。10時50分、初配備機の姿が見えると「お~~」という声と拍手が一斉に沸き上がった。着陸し、放水アーチをくぐり、全長43.9m全幅44.4m全高14.2mの大きな機体をゆっくりと定位置に着けた203号機と204号機。1月に新設された格納庫の前で、北村司令に乗組員より空輸完了報告を行った。3月27日に防衛装備庁がC-1輸送機の次期輸送機であるXC-2の16年間に亘る開発を完了したと発表し、これによりC-2の配備が可能になったため、岐阜基地にある飛行開発実験団より3機(205号機は午後4時半に着陸)がこの日に配備された。自衛隊の大規模な輸送、展開能力を確保することが出来るようになった。

 20年度までに10機のC-2が美保基地に配備される予定。「C-2輸送機美保基地配備記念行事」は3月30日に行われる。

小牧オープンベース2017

〈小牧基地〉

今年度最後の航空祭、約6万2千人が航空祭を楽しむ

 3月5日、愛知県にある航空自衛隊小牧基地(司令・尾崎義典空将補)で、「小牧基地オープンベース2017」が青空の下、盛大に行われた。

 2年前にブルーインパルスが展示されるようになってから飛躍的に来場者が増え、今年はなんと62,000人が訪れた。「小牧じゃないみたいだ」と目を細め波の様になだれ込む開門ダッシュを見つめるOBの姿も…。

 「小牧基地オープンベース2017」は小牧基地ならではのC-130Hの5機編隊飛行によるオープニングフライトから始まった。次いでKC-767・C-130H・U-125Aによる編成飛行・災害派遣のデモ・岐阜基地から来たF-2とXC-2・KC-767による空中給油、美保から来たYS-11、またブラックファントム、小松基地のF-15による勇ましい飛行、そんな中、民航機も離発着。そしてブルーインパルスの展示飛行。地上にはP-1も展示されていた。訪れた人に楽しんでもらおうという意気込みがヒシヒシと伝わる構成になっていた。

 「小牧航空祭の概念が変わった」「格納庫の子供ファッションショー、メチャクチャ可愛かったよ」「東松島名物の牡蠣食べた」「ブルーインパルス凄い、始めて見た」「小牧基地上空でブルーインパルスが作るハートに矢が刺さるのを早く見たい」などと本当に楽しい一日だったのだと解るような事を口々に帰る人たち。ここ小牧基地で航空自衛隊による今年度の航空祭は終了となった。

国際平和協力活動民軍連携研究会

〈CRF〉

HA/DRでの民軍調整等について

 2月21日、防衛省隣のグランドヒル市ヶ谷で「平成28年度国際平和協力活動民軍連携研究会」が中央即応集団主催で開催された。

 これは、国際平和協力活動における現地での活動に資するため、民軍連携の推進・円滑化の課題について民軍間で検討し、じ後の民軍連携の深化を図る目的で行われ中央即応集団司令部民生協力課(課長・河﨑真知子2陸佐)が中心となり、今年で4回目の開催となる。今回のテーマは「HA/DRにおける民軍調整・協力・連携~民軍の有機的な連携を図るための教育・訓練の具体的な方策~」とした。

 最初に、主催者である中央即応集団司令官・小林茂陸将から「自衛隊では災害派遣の際に『全ては被災民のために』を合言葉にしているが、まさに救援の場においてそれぞれの能力や特性を有する様々な組織が緊密に連携しあって、一刻でも早く助かるべき命を助けることが必要とされていると考えている。この様な問題認識から今研究会のテーマを作った」などと挨拶があった。

 午前中は、机上演習が行われ、HA/DRにおける活動初期段階における混沌とした状況を疑似体験した。そのために9つのグループに分け、それぞれの役作りから始まった。雰囲気を出すために、担当毎に米軍の迷彩を着たり、自衛隊の迷彩やベストを着たり…ロールプレイでは、まさに混沌とした雰囲気そのもので、想定された「マニラ直下型地震 発災5日目」の各種状況確認及び情報の共有を行っていた。各調整の手間を減らすためにも情報共有はとても重要だとのこと。

 午後は3つのグループに分かれ、異なる観点からHA/DRに関する教育・訓練について具体的な方策を討議した。あるグループのサブテーマは「各アクターが災害現場の特質に応じて能力を発揮するための教育・訓練」であり、どういう場面でどのように協力をし、訓練をしていけば、効率的に現場で民軍アクターが協力し合えるか…など白熱した討論が続いた。

 最後に、中央即応集団副司令官(国際)堀切光彦陸将補が、「今日出たアイデアを自衛隊の訓練でも反映させていきたい」「民間で行っている訓練にも参加出来るところは参加して行きたい」などとまとめた。また、これまでの民軍連携研究会を踏まえて昨年度から定例会同を開いており、その中から個別具体的に派遣準備や訓練に活かしていることを報告し、熱い1日は終わった。

 (参考→HA:人道支援DR:災害復旧)

日米防衛相会談
同盟関係強化を確認

 2月4日午前9時、稲田朋美防衛大臣は防衛省の儀仗広場に姿を表したアメリカ合衆国国防長官ジェームズ・N・マティス閣下と固く握手を交わし、特別儀仗隊による栄誉礼・儀仗を受けた。その後、約85分間、防衛省において日米防衛相会談を行った。

 地域情勢については「東シナ海・南シナ海における中国の活動は、アジア太平洋地域における安全保障上の懸念である事」の認識を共有。また、「北朝鮮による核・ミサイル開発の進展は、日米両国と地域の安定に対する安全保障上の重大な脅威との認識」「能力構築支援などを通して、南シナ海への関与を強化していく」「日米韓をはじめとする3カ国間の防衛協力のほか、ASEANを含む多国間の枠組みによる協力を強化していくこと」で一致した。

 日米同盟の抑止力・対処力の強化については、両国とアジア太平洋地域の平和と安定を確保する上での、米国の拡大抑止の揺るぎないコミットメントを含む日米同盟の重要性を確認し、厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、一昨年策定されたガイドラインを踏まえつつ日米同盟の抑止力・対処力を一層強化する必要があるとの認識で一致した。

 また、沖縄・米軍再編については、辺野古への移設が唯一の解決策であるとの立場を共有し、引き続き緊密に協力すること、在日米軍の安定的な駐留を確保するため協力することで一致した。

 その後、防衛省A棟講堂で行われた共同記者会見で稲田大臣は「日米同盟がわが国とアジア太平洋地域の平和と安全の確保のために重要であること、同盟の抑止力・対処力を一層強化すべく日米が連携していくことを確認しました」と述べた。また、マティス長官は「日米同盟は恒久的なもので、アジア太平洋地域の平和と安全の礎として続きます」と述べ、北朝鮮の核や弾道ミサイル問題、東シナ海・南シナ海の事案についても「緊密な連携を取り続けていく」と、今後も引き続き日米同盟を強化していくことを強調した。

 マティス長官は1972年米海兵隊に所属し、米中央軍司令官等を歴任。2013年に退官後、1月に発足したトランプ新政権で国防長官に就任。今回が初の海外訪問となる。66歳。

北の大地に響き渡る北海自衛太鼓

幌別駐屯地

 1月18日、幌別駐屯地(司令・坂田隆1陸佐)で活動する北海自衛太鼓の演奏および太鼓道場が報道陣に公開された。

 北海自衛太鼓は、隊員の士気高揚と市民との連携を図ることを目的に昭和40年、幌別駐屯地に「自衛隊北海太鼓」として設立。北海太鼓の創始者、大場一刀師匠の手ほどきを受け、昭和45年には自衛隊創立20周年記念大会で防衛庁長官賞を受賞。これを機に現在の「北海自衛太鼓」に改名した。平成5年にはカンボジアPKOで6回の演奏を行い、現地住人との信頼関係構築に寄与した。

 現在も、全国約80ある自衛太鼓におけるトップチームとして、各イベントへの参加の他、全国のチームから年間のべ約500名を受け入れて演奏指導を行っている。毎年11月に日本武道館で開催される「自衛隊音楽まつり」には、昭和45年から46回連続出場中であり、毎年「自衛隊音楽まつり」に出場する太鼓チームを指揮している。昨年も陸上自衛隊各方面隊から10個チーム、航空自衛隊から2個チームと北海自衛太鼓を合わせた13個チーム約220名による自衛太鼓を見事統制した。

 北海自衛太鼓が演奏する曲は全て北海道の雄大かつ厳しい自然、文化、歴史をテーマにしたもの。今回演奏されたのは、「北海四季打ち太鼓」と「栄光のSL」の2曲。前者は北海太鼓の基礎が全て盛り込まれており、入部時にまず覚える曲だ。

 太鼓を滑車の上ではなく地べたに置くことによって、振動が地を這って聴くものに伝わってくる。部屋に置かれたストーブの炎が揺れる程の振動と圧倒的な打音が道場を支配する。演奏を終えた部員たちの激しい息遣いが演奏の激しさを物語っていた。北海流は特殊なバチの使い方のため、難易度が非常に高く、1人前になるには5~10年もかかるという。そのような演奏で心を打たれるのは日本人だけではない。昨年の音楽まつりでインド軍の大佐(インド軍楽隊がゲストバンドとして参加)が感銘を受け、自国の音楽祭のために楽譜を懇願したという。

 平成27年に創立50周年を迎え、総演奏回数は約1,700回を超えた北海自衛太鼓。三澤輝巳部長、高橋直保リーダーを中心とした22名の部員による演奏は、伝統文化の継承と市民との架け橋に寄与し続けるだろう。

新年のメッセージ
防衛大臣 稲田朋美

 明けましておめでとうございます。

 平成29年の年頭に当たり、国内外で任務に精励している隊員の皆さんに、新年のお慶びを申し上げます。自衛隊の各部隊において、日夜、強い使命感をもって勤務を続けていただいている皆さんに改めて敬意を表したいと思います。

 私は、大臣就任以来、現場の実情を把握し、隊員の皆さんを激励したいとの思いで、北海道から沖縄まで、国内各地の部隊、あるいはジブチや南スーダンの派遣部隊を視察してまいりました。

 行く先々では、真剣な眼差しで任務に取り組む隊員の皆さんがいました。部隊の新編に向け、動作一つひとつを丁寧に確認しながら、水陸両用戦の訓練を行う隊員。弾道ミサイルの脅威に備え、訓練に励むイージス艦の乗組員。日本の高い技術力を武器に、装備品の研究開発に全力を注ぐ隊員。3人のお子さんが日本で待つ中、ソマリア沖・アデン湾の海賊対処のために汗を流す女性隊員。灼熱の南スーダンで、現地の方々のために道路整備に励む隊員。

 ここでは紹介しきれませんが、多くの皆さんの熱意やひたむきさに接し、非常に心強く感じました。今、そうした頼もしい皆さんとともに新年を迎えることができ、大変嬉しく思います。

 昨年は、我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しくなっていることを実感させられた年でした。

 北朝鮮は、国際社会の非難を無視し、軍事的な挑発行為を量的にも質的にも拡大しています。1月の核実験、2月の人工衛星と称するミサイルの発射を皮切りに、昨年は2度の核実験と20発を超える弾道ミサイルの発射を行いました。私が着任したまさにその日には、我が国のEEZにミサイルの弾頭が着水しましたが、前例のない事態でありました。

 また、中国海軍の戦闘艦艇が初めて尖閣諸島周辺の接続水域に入域したほか、中国の戦闘機が沖縄本島・宮古島間を初めて通過するなど、中国の我が国周辺海空域での活動は拡大、活発化しています。

 さらに、7月にはバングラデシュ・ダッカにおける襲撃事案が発生し、邦人も犠牲となりました。テロは、いつ、どこで誰によって引き起こされるのか、その兆候の把握が難しく、国際社会における最も大きな脅威となっております。

 このように、国際情勢がめまぐるしく変化する時代において、国際社会と手を携え、平和国家としての歩みを、更に力強いものとするため、防衛省・自衛隊に対する国民の期待に応えるべく、本年も隊員の皆さんと様々な課題に取り組んで行きたいと思います。

 まず、昨年3月に施行された平和安全法制に基づく任務の着実な実行です。

 昨年は、南スーダン派遣施設隊第11次要員へ新たな任務を付与したほか、平和安全法制の内容を含んだ初の日米共同訓練「キーンソード17」を実施し、米軍等の部隊の武器等防護の運用を開始いたしました。

 本年も、平和安全法制の着実な具体化を進めてまいります。

 次に、大綱・中期防に基づき、統合機動防衛力の構築に取り組んでまいります。特に、南西地域の防衛態勢の強化は喫緊の課題であり、各種事態における実効的な抑止・対処に向け、着実に防衛力整備を行ってまいります。

 また、日米同盟も一層強化されてきています。カーター長官との2度の会談や、「ヤマサクラ」の視察、米海軍横須賀基地の訪問など、あらゆる機会を通じて、日米の強い絆を実感してまいりました。

 政策レベルから現場レベルまで、重層的な信頼関係によって、日米同盟の絆は強固なものとなってまいりました。今月、トランプ新大統領が就任し、新政権が発足します。我々がこれまで築いてきた信頼関係を基に、日米同盟をさらに強化してまいりたいと思います。

 沖縄における米軍基地の負担軽減の面でも大きな進展がありました。

 昨年12月22日、SACO合意から20年の時を経て、沖縄県内の米軍施設・区域の約2割、北部訓練場の過半、約4,000ヘクタールの返還が遂に実現いたしました。返還のため、厳しい環境下で御尽力いただいた全ての職員に深く敬意を表します。

 本年は沖縄返還から45周年の節目の年です。本土復帰後最大の返還がなされたとはいえ、沖縄には依然として多くの米軍施設・区域が集中しており、県民の方々の大きな負担となっております。沖縄に寄り添い、基地負担軽減のため、今後とも皆さんとともに努力を重ねてまいりたいと思います。

 さらに、国際社会の平和と安定のための取組も継続してまいりました。その一つが、南スーダンPKOにおける派遣施設隊の活動であり、これは、長期的な国造りのために欠かせないものです。

 私自身、昨年10月に派遣施設隊の活動を視察してまいりました。派遣施設隊の活動の質は非常に高く、まさに自衛隊にしかできない責務をしっかりと果たし、日本の良さを体現してくれていました。

 南スーダンにおいて、自衛隊が実施してきた活動の一つに、「さくらプロジェクト」という事業があります。これは、現地の方々に、職業訓練のため、車両整備やコンクリート施工などの技能実習を行うものです。

 「我々は、さくらプロジェクトを通して知識や技術だけでなく、日本の文化や日本人のものの考え方を学んだ。ありがとう」

 学生代表のマビオ君は、昨年3月の修了式において、このように述べました。「日本らしさ」に溢れ、地域に根差した国際平和協力活動。自衛隊の活動は、現地の方々や、南スーダン政府、UNMISSに深く感謝されております。また、世界各地で、高く評価され、常に大きな期待を寄せられています。

 現在、南スーダンでは第11次要員が活動中ですが、今後とも「日本らしい」国際平和協力を続けていただきたいと思います。

 一方、国内においては、幾度も自然災害が各地を襲いました。

 昨年4月に発生した熊本地震では、全国から部隊が集結し、懸命に捜索や救助活動を行いました。疲れも見せずに、被災者の方々へ生活支援する自衛隊員の姿は、多くの国民の記憶に残っているところです。

 活躍の裏側では、自ら被災者となりながらも、任務を全うする隊員の姿がありました。家が半壊したため、妻と子を車の中へ避難させ、出勤した隊員がいました。夫婦ともに自衛官のため、お子さん二人を家に残して駐屯地に駆けつけた隊員もいました。

 危険を顧みず、黙々と任務にあたる皆さんの姿を、国民も見つめております。温かい感謝の言葉。心のこもった手紙。子どもたちからの手作りの表彰状。これらは、自衛隊が国民の期待に応えてきたという証(あかし)でありましょう。

 これからも、相次ぐ自然災害や今後発生が懸念されている大規模災害にしっかりと対応できるよう、各種災害への備えを万全にしていただきたいと思います。

 さて、本年、防衛庁が防衛省に移行して10年を迎えます。防衛省は、省移行後、2度の防衛大綱の策定や、平和安全法制の整備、新日米ガイドラインの策定、防衛省改革などといった課題を実現してまいりました。

 防衛省・自衛隊は、本年も、節目の年に相応しい成長の年とするべく、様々な課題に更に精力的に取り組んでいただきたいと思います。長年にわたり国民の皆様や国際社会の期待に応えてきた防衛省・自衛隊の良き伝統を守りながら、変化する安全保障環境に対応するため、創造の精神をもって、現場の皆さんとともに、職務に邁進してまいります。一緒にがんばりましょう。

 本年が、隊員の皆さん及び御家族の皆様にとって素晴らしい年になることをお祈りするとともに、防衛省・自衛隊にとって更なる飛躍の年となること、そして、我が国と国際社会の平和と安全を心から祈念いたしまして、年頭の挨拶といたします。

平成29年1月4日 防衛大臣 稲田朋美

美ら海エアーフェスタ2016
航空自衛隊那覇基地

 12月10日・11日、航空自衛隊那覇基地(司令・川波清明空将補)において「美ら海エアーフェスタ2016」が開催された。両日で約4万5,000人が訪れた今回のエアーフェスタは、始めての試みが盛りだくさんで来場者たちを歓喜させていた。

 まず驚くのは、実施時間で初日は午前10時から午後7時、2日目も午前10時から午後4時30分。そして、初日は基地所在機の飛行展示が日中にない。ブルーインパルスと午後6時半頃のF-15だけというシンプルさ。しかし、一日約300回の離発着があるという那覇空港に隣接している那覇基地。民航機の離発着と特に当日は多かったスクランブルで仮に飛行展示を予定していても実施できなかったのではないかと思う程、航空機の離発着を目にする事ができた。

 そして夕刻、F-15のアフターバーナーを炊きながらのナイトフライトは素晴らしかった。航空自衛隊初のプロジェクションマッピング投影が終了する間際に聞こえたジェット音に来場者は「わぁ~~」と大歓声。カメラ等を持つ手とプロジェクションマッピングを見る目とF-15のジェット音を聞く耳とがバラバラの働きをした瞬間だった。

 初日の日中は、多くの小中学校が授業参観だったということもあり、子供達は少なかったが、地元高校生の合唱部やダンス部・マーチングバンド、歌手達がステージ等で若さを炸裂させていた。2日目は、午後2時より海上保安庁のヘリから飛行展示が始まり、15時過ぎのブルーインパルスまで観客たちは空を見上げっぱなし。展示飛行の前は、地元のタレント達がステージで元気を振りまいていた。

 エプロンには、那覇基地所属機を初め民航機も展示されていた。また、海上自衛隊の航空群エリアにもP-3C等海自機が並べられており壮観だった。

 12月というのに、夜でも半袖で過ごせた両日、地元の商工会・警察・消防・海上保安庁・民間航空会社の協力を得て開催されたエアーフェスタ、新しい事も実施し、来場者を楽しませようと随所に工夫がされたエアーフェスタはまさに「チャンプルー航空祭」で、来場者にとって本当に楽しめた2日間だった。