自衛隊ニュース

ゲッキーのイラスト

令和元年度自衛隊音楽まつり

EVOLUTION
変革の響き、進化への序幕

 11月30日と12月1日の2日間全5公演の日程で、「令和元年度自衛隊音楽まつり」が開催された。令和初となる「自衛隊音楽まつり」には、陸海空自衛隊音楽隊、第302保安警務中隊、自衛太鼓、防衛大学校儀仗隊、ゲストバンドとして在日米陸軍軍楽隊、米海兵隊第3海兵機動展開部隊音楽隊、ベトナム人民軍総参謀部儀礼団軍楽隊、ドイツ連邦軍参謀軍楽隊など総勢約1000名が出演。その華やかな舞台を約800名が後方から支えた。なおドイツとベトナム軍楽隊は初参加となった(7面に指揮者のインタビューを掲載)。

 今回の会場は、国立代々木競技場第一体育館(東京都渋谷区)。1964年の東京オリンピックに合わせて建てられた競技場で、これまでに多くのビッグイベントが行われてきた場所だ。昨年度までの会場で、現在は来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて改修工事中の日本武道館と違い、観客席が前後に分かれており、アリーナの横幅が長いのが特徴。そのため、これまで以上に鑑賞者を意識し、ダイナミックな動きのある演出が印象的だった。なお来年度の会場は日本武道館に戻るとのこと。

 今年度のテーマは「EVOLUTION~変革の響き、進化への序幕~」。時代は新しく「令和」を迎え、防衛省・自衛隊は昨年末に策定された新「防衛大綱・中期防」のもと、従来の延長線上にない真に実効的な防衛力の構築を目指している。各出演部隊が魅せた新しい試みに込められた、平和へ向けた自衛隊の変革や進化。その想いが伝わったかどうかは、全5公演で贈られた3万8506名の惜しみない拍手が雄弁に物語っている。

(7面に写真特集を掲載)

第100期一般幹部候補生課程

(防大・一般大等出身)

集大成となる総合訓練

 陸上自衛隊幹部候補生学校(学校長・藤岡史生陸将補)は、11月10日から11月14日までの間、第100期一般幹部候補生(防大・一般大等出身)課程の集大成として総合訓練を行った。訓練の開始にあたり、統裁官(学生隊長・立山1陸佐)から「指揮の要訣を現地現物で具現せよ」「戦闘員としてのやるべき事を確実に実行せよ」との要望事項が示された。360名の候補生は、入校時から積み上げてきた体力・気力、小部隊の指揮能力及び戦術能力を最大限に発揮して任務を完遂する決意で臨んだ。秋晴れの中、協力団体の方々や園児らから激励を受けつつ100kmを佐賀県小城市から2昼夜をかけ徒歩行進し、大野原演習場に到着し、その後直ちに集結地を占領、敵陣地を偵察し、翌早朝に攻撃を開始して、敵部隊を撃破して任務を完遂した。

 候補生達は、来年1月24日に全ての教育を修了し、それぞれの部隊において幹部としての第1歩を歩みだすこととなる。

第2回旅団訓練検閲

<第15旅団>

第15ヘリコプター隊について評価・判定

 第15旅団(旅団長・中村裕亮陸将補=那覇)は、10月24日から10月29日までの間、宮崎県及び鹿児島県にまたがる霧島演習場及び熊本県の大矢野原演習場において、第15ヘリコプター隊(隊長・坂本貴宏1陸佐=那覇)に対し、第2回旅団訓練検閲を行った。

 本検閲には、受閲部隊及び協同部隊並びに統裁部として第15旅団等の人員約600名、車両約200両、航空機約5機が参加した。本訓練検閲は、「真に戦える旅団」を目指し、方面隊の作戦における先遣旅団としての行動において、第15ヘリコプター隊の各種行動について評価・判定するとともに、進歩向上を促すことを目的として行われた。

 第15ヘリコプター隊は、当初那覇基地において出動準備を行い、物心両面の準備を完整した後、主力は那覇軍港からPFI船「はくおう」に乗船し海路移動、国分駐屯地で陣容を整え、空路組と合流した。霧島演習場においては、展開地占領から戦闘支援の一連の行動を検するとともに、至近距離射撃の練度判定も行われた。

 第15ヘリコプター隊は、隊長の坂本1陸佐を核心に、日頃の練成成果を最大限に発揮して、隊員一人ひとりが統裁官要望事項である、「指揮の要訣の実戦」「基本・基礎の確行」「安全管理」を実行すべく、一丸となり、戦士としての能力を最大限に発揮し状況終了を迎えた。

 参加した第15ヘリコプター隊第2飛行隊の福満2陸士は「初めての訓練検閲で隊本部要員として上手に動けなかったが、先輩達のサポートもあり何とか乗り越えられた。次の訓練は自ら動けるようになりたい」と述べた。

カレ国連活動支援局長が来省

支援の拡充を協議 衛生学校、中央病院の視察も

 10月17日、来日中の国連活動支援局のアトゥール・カレ局長が防衛省と、陸上自衛隊衛生学校や自衛隊中央病院が所在する三宿地区を訪問した。

 国連活動支援局には、現在日本が国連三角パートナーシップ・プロジェクト(TPP)の枠組みの中で参加する、国連PKO支援部隊早期展開プロジェクト(RDEC)を掌握する「特別活動部」がある。

 平成29年、カレ局長から国連日本政府代表部へ施設分野に加え医療分野への支援拡充の依頼があり、これを受けて自衛隊は今年10月より、陸自衛生学校の医官2名を教官としてウガンダに派遣。医療分野における訓練をスタートさせている(前号参照)。

【自衛隊のRDECへの取組みを評価】

 カレ局長はインド出身。2002年から2004年に主に陸上自衛隊の施設部隊が「国際平和協力法」に基づく国際平和協力活動として参加した国連東ティモール支援団(UNMISET)において、2004年から2005年に副特別代表を、2006年から2009年には国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)の特別代表を務めた。今年度に自衛隊がケニアで行ったRDECでは現地を視察している。また親日家としても知られ、5回の訪日歴があり、2016年には工兵部隊を教育する陸自施設学校(勝田)を訪れている。現状、PKOに対して先進国が積極的ではない一方、参加国の練度が低いことが原因でPKOの現場で年間100名以上の死傷者が出ている。そのためこの問題点を解消することに「教育」という観点から貢献している自衛隊のRDECへの参加を、カレ局長は高く評価する。

【遠隔医療など自衛隊の支援のさらなる拡充に期待】

 午前中カレ局長は防衛省で、11月からベトナムで活動するRDEC教官団(2面に関連記事)を激励した後、河野太郎防衛大臣と懇談を行った。懇談後のインタビューでカレ局長は、河野大臣にTPPの貢献に対する謝意を伝えた事と、遠隔地でもインターネット回線等を通じて診療が行える「遠隔医療」について協議したことを明かし、「専門医による火傷や神経の治療、その他専門的な分野において医療の支援を頂きたい」と支援の拡充を求めた。さらに「遠隔医療は、10ヵ月以内にTPPの枠組みの中で始めたい」との意向を示した。また、これまでのPKOにおける自衛隊の活動について「プロフェッショナリズムがあり、高い能力と規律を持ち合わせている」と絶賛した。

【三宿地区で自衛隊の医療に係る取組みを視察】

 午後には三宿地区の陸上自衛隊衛生学校と自衛隊中央病院を訪れた。衛生学校では救急救命訓練を視察し、救護所内や屋内のシミュレーションラボ等で第一線救急医療の状況を確認した。中央病院では都内有数の大型ヘリポート、感染症病室、救急除染室等を視察した。中央病院に国連の局長級が訪れるのは初めてのことだという。

からっと隊長

空自空上げイメージキャラクター颯爽とデビュー!

 「空自空上げ」の普及を第一の任務としている「からっと隊長」。

 「からっと」は、食感の良さをイメージさせる空上げの上がり具合、空が爽やかに晴れている、そして「さらに上へ」をイメージし、「隊長」は、リーダーシップを感じさせ、一目おかれる頼りがいあるイメージとして命名。

 キャラクターは、隊員や家族などの合計359作品から3次の選考を経て、第4補給処東北支処 上路3曹の作品に決定した。ダイヤモンドの様に輝く存在になってほしい!

(防衛ホーム2018年12月1日号12月15日号参照)


「管理職向け」働き方改革講演会

防衛省で約600人の管理職が聴講

 防衛省人事教育局主催の管理職向け働き方改革に関する講演会が8月29日に本省市ヶ谷で開かれた。部外講師として公益財団法人21世紀職業財団の伊岐典子会長を招き、「ワーク・ライフ・マネジメントによる働き方改革の実現」をテーマとして、働き方改革の必要性や多様な人材活用の重要性を訴えた。

 今回の講演は、特に管理職を対象としたものであり、高橋事務次官をはじめ、湯浅陸幕長、山村海幕長、丸茂空幕長、武田装備庁長官ら省幹部をはじめ、防衛大学校等の近隣機関も含め、主に管理職に就く約600人が出席し、資料に目を落とし、メモを取りつつ熱心に聴講した。

 講師によれば、今、働き方改革が求められている背景には、少子高齢化による人口問題という構造的な問題に加え、イノベーションの欠如による国際的にも低い我が国の労働生産性といった問題がある。長時間労働や画一的な働き方の結果、健康被害(過労死)や低い生産性、多様な人材の活躍や新しい価値観への対応が課題となっており、超過勤務を前提とした働き方は限界を迎えていると指摘する。働き方改革とは、多様性を組織の力にする取組み、組織の生産性、創造性の向上と、個人の働きがいの向上を図るために必要であるとし、自身が仕事と育児を両立してきた体験談を交えつつ、熱意を持って管理者が率先して取組むことの重要性を訴えかけた。

 特に、本講演会の中では、各機関の長が多く参加していたことから、組織の風土を変えるためにはトップの意識改革が重要であり、トップはそれを思うだけでなく、自分の言葉にして広く発信しなければならず、それを継続的に行わないといけないということを強調した。

 講演の後の質疑応答では、鋭い質問も投げかけられるなど、盛況のうちに幕を閉じた。


河野防衛大臣が着任

 9月11日、第4次安倍第2次改造内閣が発足したことに伴い、防衛大臣に河野太郎衆議院議員(神奈川第15区、当選8回)が就任し、翌12日、防衛省で着任行事が行われた。河野大臣は昭和38年1月10日生まれの56歳。前外務大臣。A棟講堂に集まった約600名の職員を前に訓示した河野大臣は、北朝鮮のミサイル問題、中国軍の日本周辺海空域での活動の活発化に触れ、「安倍総理から頂いた指示を踏まえ、我が国自身の防衛体制の強化、日米同盟の強化、各国との安全保障協力の強化に諸君とともに全力で取り組んで参ります」と述べ、「多次元統合防衛力」の構築を迅速に推し進めていくとした。また課題として「少子高齢化時代における人材の確保と育成」をあげ、人的基盤強化への取組みを講ずる必要性も強調した。


令和元年度富士総合火力演習

「領域横断作戦」を支える陸上防衛力の構築

 8月25日、「令和元年度富士総合火力演習」の一般公開が静岡県の東富士演習場で行われた。令和となって初めて、また昨年末に今年度以降に係る新「防衛計画の大綱」が策定されてから初めての「総火演」。新防衛大綱に基づき、サイバー・電磁波といった新領域を含む「領域横断作戦」の様相を、岩屋毅防衛大臣以下防衛省・自衛隊の高級幹部、国内外の来賓、そして倍率約27倍のなか当選した約2万4000名に展示した。

 演習担任官の富士学校長・高田祐一陸将、演習実施部隊指揮官の富士教導団長・古田清悟陸将補を中核に、人員約2400名、戦車・装甲車約80両、各種火砲約60門、航空機約20機が参加する国内で最大級の陸上自衛隊による実弾演習。湯浅悟郎陸上幕僚長から岩屋大臣に対して準備完了報告が行われ、午前10時、「前段」「後段」から構成される約2時間半の公開演習が開始した。主要装備品を紹介する前段では早速、目玉となる装備品が登場。今年度装備化予定の「19式装輪155mm自走りゅう弾砲」だ。陸自に最も多く配備されている火砲「FH-70」の後継で、装輪化、射程の延伸、各種自動化により高速での戦略機動。将来の戦い方の創造に貢献し得る装備となっている。現在試験中のため実弾射撃は無かったものの高い関心を集めた。その後も対人障害、対人狙撃、対戦車火力、ヘリコプター火力、対空火力、戦車等火力と続々と展示される装備品の「音」と「地響き」による迫力に観客は圧倒された。それらの迫力もさることながら、目標を必ず仕留める正確無比な射撃技術に会場全体から感嘆の声があがった。

 15分間の休憩を挟み、シナリオに基づいて展開していく後段が開始。我が国の島嶼部における統合作戦による各種作戦の様相を、大型スクリーンによる説明を交えながら展示した。今年度のシナリオで強調されていたのは、新防衛大綱に新領域として記されている「電磁波」分野だ。海空との連携と平行して、第1電子隊が構築するネットワーク電子システム(NEWS)が電磁派作戦により敵の通信システムを無力化、自衛隊の火力を効果的に発揮することを可能とする。シナリオはNEWSに集約された敵情報をもとに16式機動戦闘車(MCV)等の即応展開部隊が島嶼部へ展開し既存部隊と共に侵攻を阻止すると、水陸機動団のAAV7や対戦車ヘリコプターAH-1S等による「増援部隊による敵部隊の撃破(1)」とめまぐるしく展開していった。大型ヘリCH-47からは第1空挺団による自動索降下も行われた。続く「増援部隊による敵部隊の撃破(2)」では、主力増援部隊の富士教導団が展開を開始。87式偵察警戒車、92式地雷原処理車、10式戦車、90式戦車等が続々と登場し、圧巻の火力攻撃で敵部隊を殲滅した。最後は戦車部隊の発煙と共に、今回参加した装備品が総登場する「普戦による攻撃前進」。興奮冷めやらぬ観覧席からは惜しみない拍手が送られた。

 新防衛大綱に基づく「領域横断作戦」への取組みを全面に出した今年度の「総火演」。御殿場駅行きのバスを待つ間、「まだ耳がキーンとするよ」という声とともに「サイバーとか電磁波とか難しいけど、新しい脅威に対応しながら自衛隊も戦い方を進化させているんだね」という声が印象的であった。

■「総火演」の一般公開

 富士総合火力演習は、昭和36年に陸上自衛隊富士学校の学生教育の一環として開始。学生に対して陸自が保有する各種火器等の効果と火力戦闘の様相を認識させることを目的とし、当初は非公開だった。昭和41年からは、国民に自衛隊への理解を深めてもらうこと等を目的に一般公開も行うようになった。


エスパー米国防長官と会談

日米防衛協力さらに推進

 8月7日、岩屋毅防衛大臣は、マーク・T・エスパー米国防長官と防衛省で会談を行った。地域情勢、日米防衛協力、在日米軍等について約70分間にわたり意見交換が行われ、日米同盟の強化を一層推進することで一致した。エスパー長官の訪日は、先月23日に国防長官に就任して以来初めて。

 会談では、北朝鮮問題に関して、国連安保理決議の完全な履行を確保することが重要との認識で一致。在韓米軍を含む、地域の米軍による抑止力が重要であると確認した。中東情勢については、「原油の安定確保、米国およびイランとの関係等様々な角度から検討して、政府全体として総合的に判断したい」旨が岩屋大臣からエスパー長官に伝えられた。日米防衛協力においては両国の戦略文書が整合しており、双方が行う取り組みについて緊密に連携することで一致した。普天間飛行場の辺野古への移設については、普天間飛行場の継続的な使用を回避する唯一の解決策だとあらためて確認した。

管理栄養士の卵 大量調理を体験

大宮駐屯地

 令和元年6月10日から14日、大宮駐屯地業務隊糧食班は、城西大学薬学部医療栄養学科4学年12名を受け入れ、大量調理マニュアルに基づく食品衛生管理に留意した大量調理の実習を支援した。

 食材の検査~調理~配食~食器の洗浄までの一連の業務を体験させるとともに、実際の調理現場における食品衛生上の問題点を発見しその対策を案出する課題に取り組ませ、実践的な給食管理に関わる基本的知識及び技能を修得させた。

 実習を体験した学生からは「大学での実習では使用しなかった回転釜や大型のオーブンを使用することができよい体験ができた」「自ら考え発表する教育は貴重な体験で、就職後の実業務の参考となった」などの声が聞かれた。

 また、当駐屯地に所在する化学学校及び第32普通科連隊の支援を受け、大宮駐屯地資料館や野外炊具1号などの装備品の研修も実施し、自衛隊への理解を促進させることができた。


初級陸曹特技課程
「准看護師」行動訓練

5時非常呼集25kmを踏破

 自衛隊札幌病院(病院長・大鹿芳郎陸将)は6月21日、初級陸曹特技課程「准看護師」の第43期及び第44期学生名に対して、行進能力、気力・知力・体力及び団結力の向上を図ることを目的として、行進訓練を実施した。

 本訓練は午前5時の非常呼集で開始し、学生は北海道大演習場島松地区廠舎跡から約25km先の同真駒内射場地区すすき台を目指した。

 第44期学生は患者役を交代しながら各種地形に応じた搬送及び安全に留意して、担架搬送を実施した。

 第43期学生は、各種地形に応じた通過要領並びに敵及び航空攻撃等の対処要領について演練しつつ、最後の3kmをハイポート行進し、攻撃準備地域のすすき台に到着した。その後、攻撃目標のすすき台北側の敵に対して小銃分隊による攻撃を行い、一人の脱落者もなく訓練を無事に終了した。

 なお、第43期学生は、本訓練で得た自信と教訓を胸に、第1陸曹教育隊(7月2日から9月20日まで)及び女性自衛官教育隊(7月8日から9月27日まで)にそれぞれ入校する。


国連南スーダン共和国ミッション

司令部要員出国報告

 6月20日、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)の第11次司令部要員として派遣される陸上自衛官2名が、湯浅悟郎陸上幕僚長に対して出国報告を実施した。またその後、岩屋毅防衛大臣に出国報告を行うとともに、翌21日は内閣府で出発式に臨んだ。

 今回派遣されるのは、高橋忍1陸尉と佐藤応百1陸尉の2名。高橋1陸尉は情報幕僚として治安情勢に係る情報の収集や整理等の業務を行う。佐藤1陸尉は施設幕僚としてUNMISS全体の施設業務に係る企画・立案等の業務を行う。両名は首都ジュバにあるそれぞれの国連施設で勤務。昨年6月から派遣されている第10次要員の交代要員として、6月29日に出国する。期間は約1年間。

 UNMISSにおいては、5年5カ月にわたり活動を行った施設部隊が2017年5月に撤収したが、司令部要員への派遣はその後も継続。現在は、兵站幕僚、情報幕僚、施設幕僚、航空運用幕僚の各1名ずつ。

レッド・フラッグ・アラスカ

航空自衛隊

 航空自衛隊は、6月7日から6月22日の間に行われているレッド・フラッグ・アラスカに参加している。これは、米空軍が実施する多国間演習に参加して日米共同訓練をすることにより、部隊の戦技技量と日米共同対処能力の向上を図るのが目的で毎年参加している。第3航空団(F-2A/B×6機)・警戒航空隊E-767×1機)・第1輸送航空隊(C-130H×2機)から約280名が参加し防空戦闘訓練・戦術攻撃訓練・戦術空輸訓練などを行う。訓練場所は、米国アラスカ州アイルソン空軍基地及びエレメンドルフ・リチャードソン総合基地並びに同周辺空域。また、この演習には、タイ空軍、韓国空軍及びNATO軍も参加を予定している。写真は渡洋中に空中給油を受けるF-2。

鹿児島口永良部島災害派遣

<第8師団>

大雨による断水復旧支援等にあたる

 令和元年5月18日、鹿児島県口永良部島で大雨により導水管破裂に伴う断水が発生。一部の住宅に床上浸水等があり、19日午後11時、鹿児島県知事から第12普通科連隊長・渡辺亘紀1陸佐(国分)に対し断水の復旧支援等に係る災害派遣要請。同時刻、要請を受理した。

 翌20日、現地被害状況を確認し、21日より災害派遣活動を開始。断水復旧支援として、塩化ビニール製排水管パイプの運搬及び補修支援等、水路の流木等の除去、発電所・小学校・床上浸水した家屋周辺の土砂除去などの活動をした。活動部隊は、第12普通科連隊(国分)を基幹とする人員約90名、車両約5両、航空機最大6機などとなった。参加部隊は第12普通科連隊(国分)第8施設大隊(川内)第8師団司令部及び付隊、第8後方支援連隊、第8通信大隊、第8偵察隊、第8情報隊(熊本)第8飛行隊(高遊原)西部方面総監部、西部方面衛生隊(建軍)西部方面航空隊(高遊原)西部方面会計隊(国分)など。

 24日午後5時、鹿児島県知事より第12普通科連隊長に対して口永良部島における災害派遣活動の撤収を要請、同時刻受理した。各部隊は翌25日より順次帰路に着いた。

部隊発足後初の災害派遣

〈宮古警備隊〉

 第15旅団宮古警備隊(隊長・田中裕明1陸佐)は、4月19日及び20日において、宮古島にあるビーチに漂流した廃油ボールの回収を行うため、沖縄県からの要請を受け災害派遣活動を行い、これを宮古島の住民や航空自衛隊の隊員と協力して回収した。これは、今年3月26日に宮古警備隊が発足して初の災害派遣活動となる。

 今回、災害派遣に参加をした隊員は、「当初災害派遣場所に到着した際、辺り一面が廃油ボール一杯でとても驚きました。実際に活動してみると砂に付着した廃油ボールはとても取りにくく、大変な作業でしたが、全て回収することができました。今回活動して良かったことは、まず、地域の安全を守るために活動することができた達成感とそして地域の方々と連携しながら作業を実施したことにより、地域住民との一体感が醸成されたことでした」とコメントした。

 今後とも、第15旅団(旅団長・中村裕亮陸将補)は沖縄県、そして地域の皆様を守るため日々活動していくとしている。

海自第5航空群創立47周年記念式典

新たな一歩踏み出す3つの「47」

 海上自衛隊第5航空群(司令・中村敏弘海将補=那覇)が創立し47周年、第5航空群の前身である臨時那覇施設管理隊がたった3名でスタートしたのが昭和47年5月(同年12月にはP-2Jが6機、隊員約350名からなる臨時沖縄航空隊が発足)、そして記念塗装機は47号機という「47」が3つ揃った「海上自衛隊第5航空群創立47周年記念式典」が、4月21日、多数の来賓を招いて海上自衛隊那覇航空基地第3格納庫内で厳かに行われた。

 式典に先立ち、前日には那覇周辺空域を約80名が体験搭乗した。

 式典で中村群司令は「『平成』という時代の約30年間、誰も予測できなかった変化が起こり、その変化に我々第5航空群はしっかりと即応し、進化することが出来た。次の時代においても、海上幕僚長が掲げられた勤務方針『変化への適合』を常に意識しよう」「『国民の為の自衛隊員』としての『矜持』も忘れないでほしい。あらゆる任務に全隊員が一丸となって果敢に挑戦していこう」などと訓示をした。

 式典会場には、5空群の歴史などのパネルを展示して、来場者は隊員に質問するなど興味を示していた。

 次いで行われた祝賀会食では、海自名物のカレーや沖縄名物の沖縄そばなども振舞われた。途中、海自隊員による制服紹介が開催され、制服だけでなく飛行服や給養班の白衣、水に浮く耐寒耐水服などが披露され拍手喝采を浴びていた。

 我が国防衛上、戦略的に最も重要な海上自衛隊航空部隊へと大きく成長した第5航空群の新たな一歩が踏み出された平成最後の記念式典だった。

新しい時を刻んでいく 入省式・着任式

統合幕僚長・海上幕僚長・陸上幕僚長

 4月1日、いつもより市ヶ谷が華やいでいたのは、満開の桜のせいだろうか。

 朝7時過ぎ、市ヶ谷の防衛省前には希望に満ちた若い顔の男女が溢れていた。彼ら彼女らの入省式が、朝9時30分から防衛省A棟2階講堂で行われるためだ。今回、総合職・一般職・専門職・障害者選考など574名の新規採用者岩屋大臣から辞令を交付され、岩屋大臣は「常に国民に対する責任、国民の自衛隊に対する眼差しを忘れないでほしい」「新しい事に常に興味を持ち、学び続けて下さい」「同僚との専門性の違いを活かし常に助け合って下さい」と要望した。また障害者選考の採用者に対して「困難に直面した時、共に乗り越えようと手を差し伸べてくれる同僚と協力して、はつらつと仕事に取組んでほしい」などと訓示をした。

 午前11時30分、平成の次の年号が発表されるとあって、多くの耳がテレビを意識し、ネットのニュース速報を注視していた。「令和」と発表された11時41分、防衛省内ではあちらこちらから「お~」「へ~」という声が聞こえた。

 午後になると4年5ヶ月制服組トップを務めた河野克俊統幕長の離任式、そして陸上幕僚長を退任し第6代統合幕僚長となった山崎幸二陸将の儀仗・着任式が行われた。着任式で山崎統幕長は「将来に渡り、我が国の平和と安全、国民の安心と安全のため統合運用をさらに強化していくのが我々の使命であり時代の要請でもある」などと訓示した。

 その後には海上幕僚長が村川豊海将の離任式が行われ、海上幕僚副長を退任し海上幕僚長に着任した山村浩海将の儀仗・着任式が執り行われた。着任式では、約200名の隊員を前に「大きな方向転換はこの2年が勝負だと思っている。トップダウンではなく、ボトムアップで業務に当たってほしい。引き続き明るく楽しく、ワークライフバランスにも充実した勤務環境を整えてもらうことを希望する」などと訓示。方針を「精強・即応」及び「変化への適合」とした。

 儀仗広場の桜が風に揺れ始めた夕刻、西部方面総監であった湯浅悟郎陸上幕僚長の儀仗が行われた。一歩一歩巡閲する湯浅陸幕長は、眼光炯炯としていた。次いで行われた着任式での訓示では「30大綱に基づき、多次元な統合防衛力を実現し得る陸上防衛力構築に取り組み、将来に渡って通用する陸上自衛隊を作り上げていく」などと力強く語った。

 防衛省の満開の桜は、市ヶ谷台が新しい時を刻んでいくのを見守っている。


 式後、新規採用者の福富優香事務官(防衛政策局戦略企画課)は、「自らなすべき役割のひとつひとつに真摯に向き合い、日本の平和と安全を担う者としてしっかりと着実に歩んでいきたいです」。福山大輔事務官(防衛政策局防衛政策課)は「新元号が発表される本日に入省する私共は、次の時代またはその先まで平和で安心して暮らせる日本を受け継ぐ責任があると感じています」と意気込みを語った。

発展的改編行事

第1機甲教育隊

 第1機甲教育隊(隊長・甲田宏1陸佐)は3月16日、改編・廃止日に先立ち発展的改編行事を実施した。行事は戦車の脱魂式、記念碑除幕式及び隊旗返還式の3部構成で、団長をはじめお世話になった協力団体、歴代教育隊長、OBの等多数の来賓を迎えて厳かな雰囲気の中で粛々と実施した。脱魂式とは戦車から魂を抜く儀式であり、隊から送り出す最後の74式戦車に対して実施した。団長、教育隊長以下全隊員、更に参加を希望した一部のOBの立ち会いのもと、長年共に学生教育・訓練に臨んでくれた戦友である74式戦車の桜・第1機甲教育隊のマークを消し別れを告げた。

 記念碑除幕式は、第1機甲教育隊OB会亀の会の主催により実施した。これまで教育隊舎前に設置されていた、隊風である「明朗・自主・積極」の碑を丁寧に磨き上げるとともに、新しく隊のシンボルマークや沿革等を取付けリニューアルしたものを発展的改編に伴う記念碑としてOB会から寄贈を受けたものを除幕した。

 隊旗返還式においては、隊としてまず各教育中隊長から各中隊の伝統と思いのこもった中隊旗の返還を受け、その後、御殿場・裾野両市長、混成団隷下部隊長、駒門駐屯地各部隊長並びに協力会OB等の来賓の参列のもと、教育隊長から廃止担任官である混成団長に隊旗を返還した。東部方面総監からの祝電、団長訓示を耳にし、隊員一同は1機甲の所属で任務に携われたことに誇りを感ずるとともに、1機甲の伝統を継承する者としての使命を新たにした。

 隊は一連の改編行事を無事に終えることができた。ここまで任務を完遂してこれたのも、OB会、東混団後援会をはじめとする多くの御支援を頂いた方々、団長の御指導をはじめ、混成団各隷下部隊長の御支援及び御協力があってこそ成せたものであり、56年7ヶ月の長きにわたる第1機甲教育隊への御厚配に心から感謝申し上げる。

第9師団冬季集中八甲田演習

生存限界超える地域、任務完遂目指す

 第9師団(師団長・岩村公史陸将=青森)は、1月23日から2月22日までの間、「第9師団冬季集中八甲田演習」を実施した。

 本集中演習は、「青森第5普通科連隊八甲田演習」をはじめとして「弘前第9偵察隊・第39普通科連隊八甲田機動訓練」、「師団機能別訓練(施設)」及び八甲田地域の生地において師団が26年ぶりに統裁する「平成30年度冬季訓練検閲」の4つの訓練から構成され、積雪寒冷地における任務遂行能力の向上を図った。


幸畑陸軍墓地参拝

 演習に先立ち、1月22日、青森市の幸畑陸軍墓地において、参拝行事を実施し、第9師団長及び師団最先任上級曹長が陪列する中、第5普通科連隊(青森市)、第39普通科連隊(弘前市)及び第9偵察隊(弘前市)の隊員約240名が参加して、八甲田雪中行軍で遭難した旧陸軍歩兵第5聯隊軍人のほか、日中、日露戦争及び大東亜戦争までの殉国の英霊をたたえるとともに、演習間の安全を祈願した。


(1)青森第5普通科連隊 八甲田演習

 第5普通科連隊(連隊長・古賀博彦1陸佐=青森)は、八甲田地域において、「青森第5普通科連隊八甲田演習」を実施した。本演習は、「平成30年度冬季訓練検閲」を見据えた、自隊計画による2回の練成訓練により構成され、第1回練成訓練は、1月23日から24日の間、スキー行進及び宿営を主体とした訓練を、第2回練成訓練は、2月13日から14日の間、偵察及びスキー行進を主体とした訓練を実施して、積雪寒冷地における部隊の基本的行動の練度向上を図り、冬季訓練検閲に向けた準備を完整させた。


(2)弘前八甲田雪中機動訓練

 続いて、第39普通科連隊(連隊長・木原邦洋1陸佐=弘前)及び第9偵察隊(隊長・池田2陸佐=弘前)が、1月29日から2月5日までの間、十和田、新郷、八甲田において、「弘前八甲田雪中機動訓練」を実施した。訓練は、各部隊から選抜された隊員が参加し、八甲田雪中行軍に成功した旧陸軍歩兵第31聯隊と同一ルートを車両及びスキーにより機動して、総距離約220kmの行程を踏破して、積雪寒冷地部隊としての冬季山地踏破技術及び能力の向上を図った。


(3)師団機能別訓練(施設)

 第9師団は、2月12日から15日までの間、青森駐屯地において「平成30年度師団機能別訓練(施設)」を実施した。担任部隊である第9施設大隊(大隊長・三輪2陸佐=八戸)のもと、師団隷下12個部隊が参加し、積雪寒冷地における作戦・生存能力向上の一つとして、宿営施設(イグルー)を構築した。訓練は、全般教育、構築要領等の展示・説明に引き続き、部隊毎にスノーソー等の工具を使用してイグルーを構築、その後、イグルー内の宿営空間及び内外での温度差等を研修して、訓練で得られたノウハウ等を共有し、良好な成果のもと、本訓練は終了した。


(4)平成30年度第5普通科連隊 冬季訓練検閲

 最後に、本演習の集大成として実施した「平成30年度第5普通科連隊冬季訓練検閲」は、2月15日から22日までの間、旧陸軍歩兵第5聯隊が雪中行軍を行った先人の遺訓残る生地において26年ぶりに実施し、指揮幕僚活動、冬季戦技に関する練度管理、作戦行動及び射撃を検閲課目として、「有事に臨む物心両面の準備」、「指揮官企図の徹底」、「冬季戦技・射撃」の練度に関し、有事に行動できる部隊かどうかを評価し、その進歩向上を促した。

 本訓練検閲は、2月15日、作戦準備の段階から状況が開始され、八甲田地域の大中台において敵の後方連絡線遮断のための伏撃の態勢を確立するまでの一連の状況下で実施された。作戦準備は、隊容検査、スキー装着状態での射撃訓練、各級指揮官による精神教育及び心情把握等を実施し、作戦準備を完整させた。2月20日未明、作戦準備に引き続き、5連隊は、青森駐屯地から車両及びスキー機動により深沢地区まで前進後、迅速に雪濠を構築、警戒しつつ宿営した。

 翌21日早朝、深沢地区からスキー機動を再開し、約8時間をかけて、前進目標を占領後、敵の後方連絡線遮断のため、連隊主力をもって、積雪寒冷地の特性を活かした伏撃の態勢を確立し、作戦準備から7日間にわたる第一状況を終了した。

 翌日、2月22日、丸山基本射場において、任意で抽出された約90名の隊員を対象とし、スキー装着状態での応用射撃を実施した。各射手は、初弾必中を期し、日頃の練成の成果を遺憾なく発揮し、訓練検閲の全状況を終了した。


 今後、第9師団は、「冬季の生存限界を超える地域、つまり、敵の行動する事の出来ない地域で生存し、機動の自由を発揮して、敵の予測できない時期・場所・要領でこれを撃破し、任務を完遂する」という師団の目指す冬季作戦の理念を具現するため、日々練成に励んでいく。

(2面記事)

ひと足早い春の訪れ

北千歳

 平成31年1月29日、福岡県の大宰府天満宮から「梅の親善使節」が、北千歳駐屯地(司令・片岡義博陸将補)に来訪した。

 梅の親善使節の来道は、1956年の日本航空の新千歳-福岡便の就航を記念して始まり今年で63回目、北千歳駐屯地への来訪は昭和54年以降、今年で41回目を迎える。

 天満宮の禰宜(ねぎ)、権禰宜(ごんねぎ)、巫女、JAL千歳空港支店の担当者を合わせた総勢7名からなる使節団から、今にも花が咲きそうな紅梅及び白梅の2鉢と大宰府天満宮職員による手作り梅干の贈呈を受け、お礼に北千歳駐屯地自慢の干支の羽子板を手渡した。

 懇談の中で司令は、「何十年にも渡り駐屯地に春を届けて頂きありがとうございます。昨年頂いた梅の木も大きくなりました。今年も花が咲くのを楽しみにしています」と述べた。

 寄贈された梅は、甘い香りを司令室一杯に漂わせ北千歳駐屯地にひと足早い春の訪れを告げた。

国際装甲車会議で初講演

<防衛装備庁>

日本の装甲車開発の実績と将来への取り組みを世界に発信

 1月21日から24日、イギリスロンドン郊外で開かれた「第19回国際装甲車会議」に、防衛装備庁装備官(陸上担当)柴田昭市陸将が出席し、「我が国の装甲車開発の実績と将来への取り組み」をテーマに講演を行なった。この国際装甲車会議は、装甲車の運用、研究開発、調達、製造に係る軍及び防衛産業の関係者が一堂に会し、装甲車分野を専門テーマとして発表・議論するとともに、人的ネットワークを構築することを目的として開催される唯一の国際会議である。19回目となった今年は、欧州を中心として50カ国以上から、陸軍将官を始めとする650名以上の出席者と55社以上が参加、日本からの参加は2回目となる。



 柴田陸将の講演が行われた23日朝は、7時45分に元欧州連合軍最高司令部副司令官で本会議議長のエイドリアン・ブラッドショー卿による開会挨拶から始まった。55個行われる軍人講演の最初は、米陸軍フューチャーコマンド司令官のジョン・W・マレー大将、次は米陸軍の中核機動センター司令官のゲイリー・M・ブリト少将、そして3番目が柴田陸将で日本は初講演となった。柴田陸将は我が国の装甲車の技術開発などの他、防衛装備庁の概要、10式戦車や16式機動戦闘車の開発実績及び現在研究を行なっている将来水陸両用技術の概要について講演。「地域の安全と国際平和及び繁栄のために同盟国である米国や会議に参加する関係諸国との研究開発ネットワークを強固にしていきたい」と強調した。質疑応答では「16式機動戦闘車の搭載装備」や「将来水陸両用技術の研究における機動速度やエンジンの仕様」などの質問が寄せられ、多いに盛り上がった。最後に「トゥイッケナム・スタジアムはラグビーの聖地と言われているが、富士山は日本の装甲車の聖地である。日本では今年ラグビーW杯が、来年は東京オリンピックもある。来日の際には私が同行案内する『富士登山プレミアムチケット』を差し上げたい」とジョークを飛ばすと会場内が笑いに包まれた。

 今回の会場であるトゥイッケナム・スタジアムの周りには各国の装甲車両が展示されたり、軍人の講演と講演の間には企業のプレゼンが挟まれるという大掛かりな国際会議は、途中休憩を挟み夕方6時15分まで続いた。

 会議に参加した柴田陸将は「装甲車の運用、研究開発、調達・維持等について幅広く見識を広めることができた。特に各国は将来の脅威を的確に予測し、アップグレード(能力向上)や将来開発ビジョンをしっかりと検討しており、今後の自衛隊の研究開発を進めていく上で大変有意義であった。また、10式戦車や16式機動戦闘車の高度な開発実績や将来水陸両用技術の研究の重点技術について、我が国の優れた技術を積極的に発信することができ、人的ネットワークも構築することができた。今後も引き続き国内外の情報収集を継続し、我が国の陸上防衛力の近代化に尽力したい」と語った。


英国防省を訪問、戦闘車両の研究開発について懇談

 柴田陸将は会議の合間に英国防省を訪問。機甲科職種出身の柴田陸将と英国陸軍本部のガント少将が日本の戦車開発や英国の主力戦車「チャレンジャー2」のアップグレード事業等に関して2時間にわたる熱心な意見交換を行った。そして、日英間の研究開発の協力等について軍種間の議論を加速させることで意見が一致した。

 防衛装備庁は、装備品の研究開発とともに国内の防衛生産・技術基盤の維持・強化に取り組んでおり、国際会議への参加や、国内外の装備品展示会などへの出展もこの一環で実施しているが、今回の英国出張の成果は、今後の業務の推進に大きく反映されることが期待される、としている。


防衛装備庁とは

 人員約1800名。装備品取得・プロジェクト管理、防衛生産基盤の維持・強化、研究開発、海外移転支援などを行う。陸・海・空各幕に分散されていた業務を一元化する、装備品の構想から廃棄までを一貫管理するなどによってコスト圧縮や有効的な調達を行うことを目的に2015年設立された。また、「防衛装備移転三原則」に基づき、装備品等の国際共同開発や輸出等も実施している。


平成30年度
将官・連群長等新渡道集合訓練

冬季戦技教育隊
<真駒内>

 冬季戦技教育隊(隊長・山口尚2陸佐=真駒内)は、昨年12月18日及び今年1月9日から10日の間、「平成30年度将官・連群長等新渡道集合訓練」を担任した。

 本訓練は、昨年新たに北部方面隊に補職された師団・旅団の指揮官、1佐部隊長等に対して、自信を持って積雪地部隊の訓練を統裁指導するため、新補職者として必要な冬季戦技の基礎的な技能と訓練管理者としての識能を修得することを目的とし実施され、北海道内各地から22名が参加した。

 12月18日の前段訓練では、座学及び装備品展示等により、積雪寒冷地の恐ろしさやそこで生き抜くための知識と訓練管理に必要な準拠等を説明した。

 1月9日からの後段訓練では、ニセコ演習場において、積雪寒冷地を体感し、冬季戦技の各メニューを幅広く体験することを狙いに、重ね着調整による発汗抑制及び発汗後の処置による凍傷等予防、つぼ足、かんじき、スキー、アキオ曳行、曳行スキー体験による冬季装備品の性能理解、雪中露営・飯ごう炊さんによる生存自活法、雪や氷を活用した掩体及び戦闘訓練研修等を実施した。

 参加した指揮官から高い評価を得て、各部隊の積雪寒冷地訓練の更なる活性化及び練度の向上に寄与できた。

 冬季戦技教育隊は、本訓練の成果反映状況について掌握し、陸上自衛隊の積雪寒冷地訓練の更なる活性化への寄与施策を推進する。


新年のメッセージ

防衛大臣 岩屋 毅

「多次元統合防衛力」の構築


 平成31年の年頭に当たり、自衛隊の全隊員諸君に対し、新年のお慶びを申し上げます。

 はじめに、日夜、それぞれの持ち場で、使命感と責任感をもって任務に就いている隊員諸君に、防衛大臣として心からの敬意と感謝の意を表したいと思います。諸君が、この年末年始の間も、南スーダン、ソマリア沖・アデン湾さらには南氷洋といった遠い海外の地で任務を遂行していることや、我が国及びその周辺地域において、一分の隙もない、対領空侵犯措置や警戒監視などの態勢を維持していることを、私は片時も忘れてはおりません。

 このような日頃の任務を通じ、我が国を取り巻く環境の厳しさ、不確実さについては、誰よりも諸君が身をもって感じていることと思います。

 昨年、朝鮮半島をめぐっては、米朝首脳会談や南北首脳会談が行われましたが、現時点においても、北朝鮮が我が国を射程に収める数百発の弾道ミサイルを保有し、実戦配備している状況に変化はありません。さらに、北朝鮮は、東シナ海などにおいて、ますます手法を巧妙化させつつ、「瀬取り」を継続しています。

 また、中国は、軍事力を広範かつ急速に強化しつつ、我が国周辺海空域における活動を活発化させています。尖閣諸島周辺においては、中国の公船が我が国領海への侵入を繰り返しているほか、海軍艦艇が活動を恒常化させています。一昨年以降、軍用機の西太平洋への進出も急増してきました。

 さらに、世界全体を見渡せば、テロリズムの脅威や大量破壊兵器の拡散に加え、サイバーや宇宙空間などの新たな領域における脅威が顕在化しています。

 昨年はまた、7月の西日本豪雨や9月の北海道胆振(いぶり)東部地震、さらには、インドネシアにおける9月の地震と津波など、国内外で大規模な自然災害が相次ぎました。

 このような環境の下で、新年において諸君と共に取り組むべき施策について申し述べたいと思います。

 厳しい安全保障環境の下において、国民の生命と平和な暮らしを守り抜くために、まず何よりも我が国自らの努力により防衛力を強化する必要があります。

 昨年末、政府は、今後の我が国の防衛の在るべき姿を示す指針である「防衛計画の大綱」と、それを具現化するための「中期防衛力整備計画」を決定いたしました。

 現在の安全保障環境においては、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域での優位性確保が死活的に重要となっています。新たな「防衛計画の大綱」では、専守防衛を前提としながら、従来の延長線上ではない、真に実効的な防衛力を整備することとしました。具体的には、これまで構築してきた統合機動防衛力をさらに深化させ、新領域を含む全ての領域の能力を融合させた、「多次元統合防衛力」を構築することといたしました。

 また、各種災害に迅速かつ適切に対応できる態勢を整えるべく、駐屯地の機能維持・強化のための整備、救援活動に必要な資機材の整備などの施策も進めていく考えです。

 また、我が国自身の努力とあいまって、我が国の安全保障の基軸である日米同盟の強化も、これまで以上に重要となっています。

 引き続き、日米ガイドラインの下、平時から両国が緊密に連携し、宇宙・サイバーなどの新たな領域における協力、共同訓練、防衛装備・技術協力など、様々な分野において両国の協力を進展させ、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化を図ってまいります。

 同時に、地元の基地負担を軽減していく必要があります。特に沖縄については、負担軽減を目に見える形で実現していかねばなりません。このような政府の取組については、沖縄の皆様に丁寧に説明していくことが重要です。

 日米同盟の強化に加え、各国との安全保障協力の推進も重要です。私も、昨年10月の防衛大臣就任直後にASEAN諸国をはじめとする各国の国防大臣との意見交換を行いました。中国とは、日中関係が改善している中、防衛交流を具体化していくことが重要であると考えています。また、韓国との間には、ご承知のように、いくつかの困難な課題もありますけれども、これを乗り越え、日韓防衛当局間の連携を図っていきたいと考えています。

 本年においても、自由で開かれたインド太平洋の実現のため、共同訓練、能力構築支援、防衛装備・技術協力などの手段を活用して、オーストラリア、インド、ASEAN諸国、欧州諸国をはじめとする国々との防衛協力・交流を一層推進していく考えです。

 ここで自衛隊の事故について一言申し上げます。昨年は、一昨年に続き、AH‐64D墜落事故、航空自衛隊車両による民家への衝突事故、饗庭野演習場における迫撃砲弾の着弾による事故など、重大な事故が相次ぎました。これらの事故は、我々の仲間である隊員の生命、さらには、我々が守るべき国民の生命を危険にさらすものです。諸君におかれては、このような事故が二度と起こることのないよう、安全管理を徹底していただきたいと思います。

 本年、我々は、新たな「防衛計画の大綱」の下に、「多次元統合防衛力」の構築に取り組むことになります。この取組は決して容易なものではなく、諸君に新たな挑戦を求めるものでありますが、私自身、諸君の先頭に立って、取り組んでいく決意です。隊員諸君におかれても、我が国の平和と安全は自らの双肩にかかっているとの自覚の下、陸・海・空の区別や前例にとらわれることなく、進取・変革の精神でそれぞれの立場で任務に励まれることを期待します。

 最後になりますが、隊員諸君、そして御家族の皆様の益々の御健勝と御多幸を心からお祈りするとともに、本年が、防衛省・自衛隊にとって更なる成長の年となることを祈念いたしまして、私の年頭の挨拶といたします。

平成31年1月4日




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 海上自衛隊第5航空群(司令・中村敏弘海将補)は、1月8日恒例の初訓練飛行を行った。

 第5航空隊(司令・伊藤進吾1海佐)のP‐3C哨戒機2機が小雨降る中、那覇飛行場から慶良間諸島周辺へ、ルカン礁経由で飛行し、その後那覇飛行場上空を通過し帰投した。初訓練飛行に先立ち行われた初訓練飛行行事で伊藤隊司令は「われわれ第5航空隊は、引き続き東シナ海に所在する最前線の部隊として、『美ら島の防人』としての矜持を堅持し、高い緊張感と即応体制を維持しつつ、与えられた任務の完遂に万全を期さなければならない」等と訓示。各飛行隊長からの訓練準備完了申告を受け、訓練開始命令を出した。この時期は曇りや雨の日が多い沖縄だが、初訓練飛行の間は時折日も差してきて、青空が見えるという幸先の良いスタートと今年もなった。

謹賀新年

国連・PKO 工兵部隊マニュアル改訂 東京で会合

日本が議長国、培った技術・知見を活用

 12月12日から14日の間、都内と陸上自衛隊施設学校(茨城県ひたちな市勝田)等において、「国連PKO工兵部隊マニュアル改訂に係る東京専門家会合」が開催された。

 国連PKO工兵部隊マニュアルとは、国連PKO参加各国の参考文書として、工兵部隊が必要とする能力、業務、訓練等の基準を示すもので、2013年以降、国連の要請を受けて日本が議長国となり2015年に作成された。日本は工兵分野における国内外の評価が高く、今回の改訂でも議長国を務める。改訂案は「IED(即席爆発装置)の脅威への対応」、「マニュアルの更なる実行性の向上」、「マニュアル普及の促進」の視点から取りまとめられる。陸上自衛隊としては、これまでの活動で培った高い技術や知見を活用し、工兵分野における基準作り及びその普及を主導することで、我が国ならではの知的貢献策として積極的平和主義を具現することが期待される。

 東京での会合には、国連ならびに議長国の日本、副議長国のカナダ、中国、アイルランドの他、ブラジル、ハンガリー、パキスタン、セルビア、スイス、米国の10ヶ国が参加。マニュアル改訂に向けた基本的な考え方や記述体系等について意見交換が行われた。

 12日の開会式では、改訂プロジェクト長を務める施設学校長の腰塚浩貴陸将補が「本改訂が有する重要性を理解し、国際社会の平和と安定に寄与するという思いを共有して、積極的な姿勢で参加してほしい」と述べた。

 翌13日は、施設科(工兵)に関する教育訓練・調査研究やPKO、能力構築支援等の工兵分野を担う陸上自衛隊施設学校において研修を実施した。参加者は国際活動における施設装備品等の展示やPKO関連施設の説明等を受けた。ブラジルから参加したマルコ・シクエラ大佐は「教官、施設の質が素晴らしい。地雷除去に係る施設科と武器科の連携が参考になった」と感心していた。

 14日、閉会式において議長の白石稔1陸佐(施設学校研究部主任教官)は「良い交流ができた。今後も日本が提案した案を参加国は練っていってほしい」と東京会合を総括した。

 今後は、第2回専門会合をアイルランドで、第3回を中国で開催し、2019年末までに改訂ドラフト案の国連への提出を目指す。