防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1056号 (2021年8月1日発行)
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読史随感
神田淳
<第82回>

武士道ー名誉の掟

 武士道を研究していると、昔の日本人が名誉心の強い人たちだったことがわかってくる。
 戦国時代に来日したフランシスコ・ザビエルは、「日本人は驚くほど名誉心の強い人々で、何より名誉を重んじます。大部分の人々は貧しいのですが、武士も、そうでない人々も、貧しいことを不名誉とは思っていません。日本人は侮辱され、軽蔑の言葉を受けて我慢している人々ではありません」とイエズス会に書き送っている。
 新渡戸稲造は名著『武士道』で述べる。名誉は武士階級の義務と特権を重んずるように、幼児のころから教え込まれるサムライの特色をなすものだった。「人に笑われるぞ」、「恥ずかしくないのか」などという言葉は、過ちをおかした少年の振舞を正す最後の切り札だった。この名誉に訴えるやり方は子供の心の琴線に触れた。若者が追求しなければならない目標は富や知識ではなく、名誉であった。恥となることを避け、名誉を勝ち取るためにサムライの息子はいかなる貧困も甘受し、肉体的、あるいは精神的苦痛のもっとも厳しい試練に耐えた、と。
 武士道とは、武士はいかに生きるべきか、個々の状況下で武士としていかに振る舞うべきかの教えに他ならないが、その行動を律する基本原理は名誉の観点にあった。武士道の主要な道徳は、絶対に嘘を言わない、卑怯なことをしない、戦場で勇敢に戦う、利を軽んじ義を重んじる、信義を重んじ約諾は絶対に守る、惻隠の情をもつ、などであるが、こうした道徳の根底にある感情は、名誉心と自尊心である。
 19世紀、強大化した西欧文明が世界を席巻し、アジアが植民地化されていく中、日本は体制変革を行い、近代国家建設に成功する歴史をもつが、これを遂行した原動力は武士の名誉心だった。新渡戸は言う。近代日本を建設した人々、西郷、大久保、木戸、伊藤、大隈、板垣らが人となった跡をたどってみよ。彼らが考え、築き上げてきたことは、一に武士道が原動力になっていることがわかる。劣等国と見なされることに耐えられない、という名誉心。これが動機の中で最大のものだった、と。
 大東亜戦争に負けて、日本人は戦前の過剰ともいえる名誉心を失ったように見える。周恩来は、戦後日本人は卑屈になったと言っていたし、李登輝は、戦後日本政府が中国からちょっと強硬に何か言われると恥も外聞もなく聞いてしまう、武士道を失った日本のエリートの卑屈さを嘆いていた。
 また、戦後ロンドン・タイムズ、ニューヨーク・タイムズの東京支局長などを歴任したイギリス人ジャーナリスト、ヘンリー・S・ストークスは言う。長い取材、調査の結果、はっきり断言できるが、いわゆる「南京大虐殺」などというものは明らかに中国のプロパガンダだ。「慰安婦問題」も同様だ。どんなに調べてみても、日本軍が強制的に慰安婦たちを将兵たちの性奴隷にしたという事実は出てこない。それにもかかわらず、中韓はことあるごとに南京大虐殺と慰安婦を歴史認識問題として蒸し返し、日本を貶めることに躍起となっている。それを許している責任の一端は日本国民自身にもある。中韓が歴史を捏造し、謂われ無き誹謗中傷を始めて以来、実に長い期間にわたって、多くの日本人がその問題に口をつぐんできた。もし、イギリスが同様の誹謗中傷を受けたら、イギリス人は相手国を決して許さないだろう、と。
 武士道的名誉心は、よりソフィストケートされて、現代日本人になお十分残っていると私は思っている。
(令和3年8月1日)

神田 淳(かんだすなお)
 元高知工科大学客員教授。著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


令和2年度ワークライフバランス職場表彰
陸自施設学校が内閣人事局長表彰を受賞
河野国家公務員制度担当大臣とオンライン懇談会

 国家公務員の働き方改革によるワークライフバランスを推進するため、個々の職場の実情に合った創意工夫ある優れた活動に取り組んだ部署等を表彰する「令和2年度ワークライフバランス職場表彰」について、各府省等から推薦のあった61件の取組の中から選考の結果、国家公務員制度担当大臣表彰に6団体、内閣人事局長表彰に6団体が受賞し、防衛省からは陸上自衛隊施設学校が内閣人事局長表彰を受賞した。
 今年度は新型コロナウィルス感染症の拡大を防止する観点から表彰式は中止となったが、6月24日、令和2年度ワークライフバランス職場表彰受賞団体と河野太郎国家公務員制度担当大臣のオンライン懇談会が、内閣人事局主催で開催されました。防衛省からは内閣人事局長表彰を受賞した陸上自衛隊施設学校が参加し、働き方改革について意見交換を行った。
 様々な意見を交わす中で、陸上自衛隊施設学校長からは、「若手・有志等による議論の活性化、「やりがい」の向上」の話題の中で、「議論の活性化については、女性自衛官が意見を出せる場を作ることが大切だと思い、意見交換をできるような場を設け、出てきた意見に対しては、できることできないことはありますが、必ず応えるという姿勢で取り組んできました。その中で、早出遅出勤務やフレックスタイム制に関する要望があがり、そのような制度の活用を促すことで、利用しやすい風土、環境を作れたと思っています。また、やりがいの向上に関しましても、若い隊員が多いので、彼らが取り組んでいる仕事、頑張っていることを積極的に認めることが大切だと思っています。特に、国や国民、家族のために役立っているということを実感できるように、声をかけて話をしたり、その会話の中で励ますというようなことを繰り返すことが大事だと認識しています」との意見が出された。
 最後に、河野大臣からは、「各部署で努力いただいているのは非常にうれしい。タイムリーで成果につながっている取組を実行してくれている。管理職が問題意識を持ってマネジメントをきちんと行うと、事務負担の軽減あるいは超過勤務が大きく減少することを実感している。無駄なルーティンワークの時間を減らし、若手一人ひとりがオーナーシップあるいは裁量を与えられて仕事をできる様になれば、やりがいは上がってくるだろうし、議論も活性化してくる。こうした皆さんの取組をきちんと霞が関の中でも横展開していきたい」旨の発言があった。
 なお、内閣人事局が主催するワークライフバランス職場表彰が開始されて以降、防衛省からは、平成28年度に海上自衛隊横須賀地方総監部、内部部局整備計画局情報通信課、平成30年度に陸上自衛隊東部方面隊第1師団司令部、令和元年度に陸上自衛隊西部方面隊那覇駐屯地業務隊、令和2年度に陸上自衛隊施設学校がそれぞれ受賞している。これらを含むこれまでに受賞した計70部署の表彰事例は、本年3月に内閣人事局から発行された「ワークライフバランス職場表彰・事例集」等にも掲載されている。
 細部については、内閣人事局ホームページで閲覧できる。
 https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/r030624_photo.html

「ご支援、ご協力、ご理解に感謝」
令和3年度師団長感謝状贈呈式
<第9師団>
 第9師団(師団長・亀山慎二陸将=青森)は、6月13日、師団司令部において、「令和3年度師団長感謝状贈呈式」を実施した。
 本年度も各種制約下の中、日頃から支援、協力を頂いている北東北3県の個人10名及び7個団体に対し、それぞれ師団長から感謝状が贈呈された。
 師団長は、受賞者に対し「第9師団59周年、長い歴史を刻んできたこととなります。この間、先輩方が培ってきた伝統と隊員一同が訓練に邁進し、国際任務、災害派遣等の実際の任務を遂行する力をつけて、皆さんのお役に立ってきたと認識しております。厳しい環境の中ではありますが、隊員一丸となり、汗を流して訓練に邁進し、ご期待に添えるよう頑張っていきますので、引き続き、皆様のご支援、ご協力そしてご理解を賜りますようお願い申し上げます」と日頃の感謝の意を伝えた。
 受賞者の一人は、「師団長から直接感謝状を頂き、記念撮影をさせて頂いたことは一生の宝となります。参加して本当に良かったです」と感想を述べた。

北海道ニセコ高等学校
インターンシップ支援
<北海道補給処>
 北海道補給処(処長・岡田俊和陸将補=島松)は、6月25日、北海道ニセコ高等学校3年生2名に対して、インターンシップ(就業体験)支援を実施した。
 生徒たちは、整備工場見学、補給倉庫見学、装備品等装着体験、体験喫食、体験試乗、史料館見学等を実施した。生徒たちは興味深く隊員の説明を聞くとともに、様々な質問をするなど関心を寄せていた。終了時に「今回の体験はどうだったか」との質問に「自衛隊の中に色々な仕事があることが分かった」「自衛隊に入隊したい気持ちが高まった」との嬉しい言葉を聞くことができた。
 今後も北海道補給処ならではの魅力が感じられる就業体験を積極的に実施し、自衛隊への関心や親近感を持ってもらい、募集基盤の拡充に寄与していきたい。

献血に協力
<岩見沢駐屯地>
 岩見沢駐地(司令・荒関大輔1陸佐)は7月6日、岩見沢駐屯地において、北海道赤十字血液センターが実施する献血に協力した。当日は、多数の隊員が昼休み等の勤務時間外を利用し、献血を行った。
 献血を行った女性隊員の一人は「5年振りに献血し、緊張しましたが、痛くもなくスムーズに採血が終わりました。これからも駐屯地に献血車が来る際には必ず献血し、この先も社会貢献に役立ちたい」と話した。
 当日の献血者目標50名に対し54名の献血者となり目標達成となった。駐屯地は今後も継続的に献血に協力していく。

努力の人
腕立て伏せ0からのスタート
<第21普通科連隊>
 第21普通科連隊(連隊長・五十嵐雅康1陸佐=秋田)本部管理中隊の田中凛々子1陸士は、体力検定優秀隊員として選抜され、第9師団の顕彰板に列された。
 体力検定は自衛官の身体能力を表すのに一番明解なものである。約千人の連隊の中で最も優秀と選抜されたのが田中1陸士である。
 入隊以来抜群の身体能力を発揮している田中1陸士は、学生時代にはバスケットボールや陸上競技で汗を流したという。しかし入隊前は腕立て伏せが1回も出来なかったと告白する彼女は、文字通りゼロからのスタートで毎日腕立て伏せに取り組んだ。そしてその努力は体力検定全種目満点の1級という、輝かしい結果を打ち立てた。
 しかし、とある先輩隊員は「彼女の功績は名誉を求めた結果でなく、目の前の小さな目標を一つづつ達成して辿り着いたものです。記事にするにあたって『完璧』という虚像が独り歩きするような表現は避けてもらいたい」と語る。地道な努力を知らない無責任な賛辞によって彼女が傷つくことを危惧した言葉であった。
 パーフェクトな結果を出した彼女は片手間で何でもこなすパーフェクトな天才ではなく尊敬すべき努力の人である。彼女の努力に最大限の敬意を表するとともに、誤解が無いよう断りつつも、それでもこれからの更なる躍進に期待したい。

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