防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1056号 (2021年8月1日発行)
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ノーサイド
北原巖男
ホストタウンの現場にて

 人類がコロナ禍と懸命に戦う中、東京2020オリンピックが開催されています。
 感染防止のための厳しい行動規制等を守りながら、世界中のアスリートの皆さんが熱戦を展開。そんな姿を試合会場で直接ご覧になりたいと考えていた皆さんも、今回はもっぱらテレビでの観戦です。
 7月23日に挙行された開会式当日の航空自衛隊ブルーインパルスによる祝賀飛行。ご覧になりましたでしょうか。連日連夜コロナ禍と戦う医療従事者の皆さんを激励すべく、一直線に飛行したあのときの姿と重なって来た皆さんも多いことと思います。ブルーインパルスには、何かワクワクする、元気が湧いて来る感動と不思議な力のようなものがありますね。
 そんな開会式で、馴染みの国旗を先頭に入場行進する選手やコーチ・役員の皆さんが登場すると、全国各地のテレビの前では思わず歓声と拍手が起こったのではないでしょうか。
 コロナ禍の中で彼らの事前合宿を受入れ、少しでも有意義な練習が出来て本番に臨めるよう、最善の環境づくりに努めて来た全国のホストタウンの現場の皆さんもそうです。
 今、こうして国を代表して国旗を掲げ、国立競技場に立っている皆さんの晴れやかな姿をご覧になるとき、合宿中に生起した予期せぬ危機事態対処に一体となって取り組んだことを思い出し、万感胸に迫るものがあったに違いありません。
 開会式に先立つ7月21日、7月13日から20日までホストタウンとして東ティモールのオリンピック選手団の事前合宿を受け入れ、その安全な実施に尽力されて来られた長野県伊那市役所の担当課長さんからこんなメールを頂きました。
 「合宿中には思いもかけず、選手団10名中8名が来日時の搭乗機に同乗していた陽性患者近くの座席だったことから、濃厚接触者に特定されてしまいました。伊那市に来られてから毎日実施してきたPCR検査の結果、選手1名が再検査となり、後半の練習も計画通りとはなりませんでした。
 しかし、最終的には全員が陰性となり、私ども職員、涙を流し喜んだ次第であります。
 東京2020オリンピックも明後日には開会式が開催され、東ティモールの国旗が選手団と共に行進されます。その姿を拝見させていただくことを職員一同楽しみにしております」
 また在京東ティモール大使館の日本人スタッフの方からも「結果が陰性であったとのこと、涙が出そうです。機内での感染はどこの国の選手にもありえることで、東ティモール選手団に限らず、皆さんが本当に感染のリスクと隣り合わせで日本に来てくれたのだと実感しております」
 筆者は、東ティモール選手団の来日から伊那市での事前合宿、そして、PCR検査では全員陰性でも同乗濃厚接触者に特定されていることから選手村に向かうことは許されず、組織委員会が指定する東京都内の宿舎に送り届けるまで、一行と行動を共にして参りました。
 そこで見たのは、まず伊那市長を先頭にした市民の皆さんの温かい受け入れです。そして感染防止の徹底と厳しい行動制限等の下で、一行の皆さんにストレス無く気持ち良く滞在して頂くため、また練習に打ち込んでいただくため、昼夜・平日週末の別なく彼らに寄り添い、頑張り続け、危機に臨んでは真っ向う対処している現場の皆さんの存在の大きさでした。さらにボランティアで駆け付けた東ティモールにて日本のNGOで活動している日本人女性の八面六臂の活躍でした。
 各種情報の適時適切な提供からPCR検査・保健所・病院等との対応、市民や児童・生徒の皆さんからの熱いビデオメッセージや選手の健闘を祈って全校生徒で折った千羽鶴などの受理・伝達、各種仲介、様々な要望等への迅速対処、食事、入浴、スケジュール管理、自由時間の過ごし方、買い物の代行等に至るまで、正に何から何まで可能な限り対応をすべく、しかも最善の方法を追求すべく、ホストタウンの現場で汗を流されている皆さんの真に優しく逞しい姿です。
 そうした中、皆さんはいつしかお互いに心を通わせ会う信頼の絆を確立していました。心から東ティモール選手団の無事と活躍を願う強力な応援団にもなっていました。
 このような現場の積み重ねは、日本と東ティモールの両国関係を考える際の重要な基盤でもあることを看過してはならないと思います。
 コロナ禍まん延する中での2度と経験することの無い一大ホストタウンプロジェクト。
 東京に向かう朝、伊那市長と東ティモール選手団長は、滞在中のリモート懇談に続き、改めて親しく電話にて歓談されました。オリンピックでの活躍を祈念し、伊那市と東ティモールの関係発展を期待する旨述べた市長を受けて、団長は、次のように語っています。
 「伊那市の皆さんから受けた優しさは、私たちに力を与えてくれています。感謝の気持ちでいっぱいです。オリンピック、頑張ります。東ティモールと伊那市の関係が発展して行くことを確信しています」

北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


第1次師団訓練検閲
島嶼防衛の能力を向上
<第8師団>
 第8師団(師団長・堀井泰蔵陸将=北熊本)は、6月10日から6月18日までの間、日出生台演習場、十文字原演習場(以上、大分県)及び霧島演習場(宮崎県・鹿児島県)において、第1次師団訓練検閲を行った。
 今検閲は、各演習場を一つの島嶼部と仮定し、「島嶼防衛に任ずる部隊としての行動」を課目とし、第12普通科連隊(国分)、第8高射特科大隊(北熊本)及び第8施設大隊(川内)が受閲部隊として参加、師団隷下部隊、方面直轄部隊等、人員約3000名、車両約1300両、航空機約10機が参加する大規模なものとなった。
 当初、第12普通科連隊の一部をもって、霧島演習場において重要防護施設(港湾)の防護を行ったのち、6月12日、日出生台演習場及び十文字原演習場に機動展開し、対着上陸戦闘準備を開始した。
 特に、第8施設大隊は大規模な汀線部障害、道路障害等を構成するとともに、ソイルアーマーを活用した指揮所等を構築し、敵の着上陸侵攻に備えた。
 対着上陸戦闘においては、第8高射特科大隊が敵の航空攻撃等に対し、11式短距離地対空誘導弾(11式短SAM)及び93式近距離地対空誘導弾(近SAM)の射撃により航空機を撃破して我が部隊を防護した。
 第12普通科連隊は、第一線守備部隊として日出生台演習場において陣地防御し、情報と火力と機動を連携させ、作戦地域全域に配置した情報収集機関、第一線の隊員等からの火力要求に基づき、障害に連接した火力を発揮するとともに、機動打撃により敵部隊を減殺し、第8師団の島嶼防衛任務の達成に寄与した。
 今検閲を通じ、各部隊の島嶼防衛能力を向上させるとともに、師団として作戦遂行能力を向上させることができた。

令和3年度第1次連隊射撃等野営
<第47普通科連隊>
 第47普通科連隊(連隊長・阿部慎治1陸佐=海田市)は、6月8日から12日の間、日本原演習場において令和3年度第1次連隊射撃等野営を実施した。
 例年、即応予備自衛官の招集訓練を連隊挙げて行う時期であるが、新型コロナウイルス感染症対策として蔓延防止措置や緊急事態宣言が継続的に発出され、招集訓練を一時的に中止せざるを得ない状況となった。
 連隊は、この機会を常備自衛官を集中的に練成する好機と捉え、実弾射撃を含む野営訓練を行うこととした。実弾射撃では、射撃訓練の機会が少ない個人携帯対戦車弾の射撃を縮射弾、演習弾、対戦車榴弾の順に段階的に実施し、射撃練度の向上を図った。
 狙撃手の練成では、潜入からの目標発見、識別、射手の一連の行動を状況下で実施し、狙撃手としての行動と射手精度を競わせる要領で訓練を行った。
 部隊訓練では、作戦地域進出から防御準備、防御戦闘までの行動を一連の状況下で実施し、陣地防御に関わる練度の向上を図った。
 即応予備自衛官の招集訓練では、基礎的な訓練が多くなるが、常備自衛官として高度な能力を練成して維持することが、即応予備自衛官に対してもより有意義な教育訓練を行うことに繋がるものと信ずる。
 コロナ禍の招集訓練は、まさに浮動的な部分があるが、連隊は、状況の変化を予測しつつ万全の態勢で臨む。

オリエント・シールド21に参加
国内初 米陸軍との共同火力戦闘訓練
<第1特科団>
 第1特科団(団長・大場剛陸将補=北千歳)は、6月28日から7月1日までの間、北海道矢臼別演習場において、令和3年度国内における米陸軍との実動訓練(オリエント・シールド21)に参加し、国内初の米陸軍との共同火力戦闘訓練(実弾射撃)を行った。
 この訓練は、第1特科団第4特科群第131特科大隊の多連装ロケットシステム(MLRS)と米陸軍第17砲兵旅団の高機動ロケット砲システム(HIMARS)が、それぞれの指揮系統に従い、共同して射撃を実施する際の相互連携要領を演練し、共同対処能力の向上を図る目的で実施したもの。
 共同実射訓練の整斉とした実施により、日米安全保障体制の実効性の維持・向上に寄与した。

北海道訓練センター(HTC)今年度の運営開始
上富良野演習場では初の実施
<訓練評価支援隊>
 6月3日〜7日までの間、訓練評価支援隊(隊長・山下博二1陸佐=北千歳)は、陸上自衛隊教育訓練研究本部長(田中重伸陸将)を担任官として、令和3年度北海道訓練センター(HTC)の第1運営となる実動対抗演習を上富良野演習場(北海道)において実施した。本実動対抗演習には、攻撃部隊として第12旅団(東部方面隊)隷下の増強第13普通科連隊(連隊長・伊藤裕一1陸佐=松本)が、防御部隊として第11旅団(北部方面隊)隷下の増強第18普通科連隊(連隊長・松本哲治1陸佐=真駒内)が参加し、諸職種協同に係る練度の向上を図った。
 昨年度末、創隊された訓練評価支援隊の上富良野演習場を使用した北海道訓練センター運営は初めて(令和2年度の北海道における運営は、すべて矢臼別演習場を使用)であり、同演習場を使用した連隊級の実動対抗演習を実施する上での課題について検証するという側面も持ち合わせた運営となった。また、本運営では、16式機動戦闘車(MCV)や輸送ヘリ(CH-47)が初めて参加するとともに、令和2年度の各運営で得られた教訓をもとに、実戦的要素を更に高め、現代戦の実相に近い環境を構築した。
 運営に先立ち、統制官となる訓練評価支援隊長・山下1陸佐は、統制センター編成完結式の訓示において「実動対抗演習が最大限の成果を獲得できるよう統制を実施せよ」「自己の任務・地位・役割を踏まえて積極的に行動せよ」と要望し、6月3日に実動対抗演習の状況が開始された。本運営は、空中機動や山地機動を得意とする第13普通科連隊を基幹とした増強第13戦普通科連隊と、道央防衛の要である第18普通科連隊を基幹とした増強第18普通科連隊の間で連続5夜6日間に亘る攻防が繰り広げられ、6月7日、所要の成果を収めたものと統制官が判断し、状況を終了した。
 訓練評価支援隊は、引き続き令和3年7月に計画されている第2運営への準備にとりかかった。

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