防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1049号 (2021年4月15日発行)
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読史随感
神田淳
<第75回>

愛国心について
 台湾出身で日本国籍をもつ金美齢さんが、著書『愛国心』で面白い体験を紹介している。「かなり前の話ですが、 "朝まで生テレビ" に出演したときのことです。共演者の一人に当時社民党の党首を務めていた福島瑞穂議員もいました。議論のやりとりの中で、出演者の一人が福島議員に、 "あなたも結構愛国者じゃないですか" 、と茶々を入れところ、彼女はあわてて手を振って、 "違う、違う!そんなことはない" 、と猛然と否定した。国会議員が "愛国者ですね" と言われて否定しなければならないような国が、日本以外にあるでしょうか?」と。
 この話は、戦後の日本人のいわゆる愛国心に向き合う特異な態度を象徴している。戦後愛国心は一種のタブーであった。日本のメディアは、愛国心を戦前の体制と戦争に結びつけて懸念する言論を発してきた。日本を悪く言う言論空間が形成され、愛国心などもたないことをよしとするような心の性向が形成された。
 しかし、こうした日本人の愛国心感覚は、世界的にみて異常である。私は断言するが、欧米をはじめとする世界で、「私は愛国心はありません」などと言うと、間違いなく奇異な人間とみなされ、人として信頼されず、まともな知性が疑われるだろう。それくらい国際社会で愛国心がないなどというのは非常識なことである。
 東大名誉教授(比較文化)の平川祐弘氏は言う。「新聞・テレビ・教科書など、日本を悪く言うことがファショナブルな雰囲気の中で育った戦後民主主義世代の優等生たちが、日本を好きでないようなことを言う。日本の悪口を言うのが格好いいと、知的ファッションにのっているだけの人も結構いる。愛国を口にするのは野暮だ、というのは青年子女特有の心理で、ある意味では健全なのかもしれないが、日本否定に走る一番の問題点は、そうした否定精神にはしばしば、ある錯覚が潜んでいることである。反日を唱えればそれがインターナショナリズムだと思っている。しかし、それを唱えるだけで世界に通用する人間になれるわけではない」。
 京都大学名誉教授佐伯啓思氏は言う。「愛国心というものに対する今日我々の態度が、奇妙にねじれ、不安定に揺れ動くものとなっている。その理由は簡単である。今日の日本の愛国心の問題は、 "あの戦争(大東亜戦争、太平洋戦争)" と切り離すことができないからだ。問題が複雑になるのは、戦後のいわば公式的な理解においては、あの戦争をただ敗北戦争だったということだけでなく、道義的にも誤った戦争であったという価値付与がなされてきたからである。あの戦争は侵略戦争で、それゆえ断罪されてしかるべきである、という価値が付与された」。
 日本人が愛国心に躊躇するようになった大きな理由は、佐伯先生の指摘するとおりだろう。しかし私は愛国心を即、戦争につながるとする左翼メディアの思考には、動物の条件反射のような短絡と、空気に支配される惰性と硬直性を感じる。
 いろいろ議論のある愛国心であるが、私は日本人は非常に愛国心の強い国民だと思っている。金美齢さんが言うように、日本人にとって国は当たり前に存在する空気のようなもので、そのありがたみに気づかず、愛国心が顕在化しない。しかし生活体験を通じて、外国のことも知り、日本の国の歴史、文化をさらによく知ることになれば、本来の愛国心が自然に意識の上にのぼってくるだろう。
(令和3年4月15日)
  
神田 淳(かんだすなお)
 元高知工科大学客員教授。著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。

第31代連隊長に天内1佐が着任
<39普連>
 3月15日付で第31代第39普通科連隊長兼ねて第29代弘前駐屯地司令に着任した天内明弘(あまないあきひろ)1陸佐の着任式を15日、第9師団長(亀山慎二陸将)立会のもと、実施した。
 7時10分、駐屯地各部隊長の出迎えを受け初登庁。幹部挨拶の後、体育館において行われた着任式では、「自ら考え、判断し、行動せよ」「地域と共に。仲間・家族、そして自分自身を大切に」を要望し、歴代連隊長が築き上げてきた部隊の伝統をしっかりと継承しつつ、新たな時代に向けた「健全で精強な郷土愛溢れる第39普通科連隊の創造」を目指し、連隊長として連隊の全責任を負い、隊員諸官とともに苦楽を共にすることを誓うと述べた。
 その後、観閲行進、状況報告、隊内巡視にて各部隊の状況を把握し、連隊長、駐屯地司令としての業務を開始した。

第40代連隊長に堀田1佐が着任
<8普連>
 3月15日、米子駐屯地において第40代第8普通科連隊長兼ねて米子駐屯地司令に堀田朗伸1陸佐が着任した。
 米子駐屯地総合グラウンドで行われた着任式において、堀田連隊長は、「率先陣頭指揮の焦点に立つ」を統率方針とし、隊員に対しては「最善を尽くせ」を要望した。着任式の後に、記者会見を実施し着任の抱負について述べた。また、幹部挨拶、状況報告が行われ、駐屯地内を巡視して部隊の状況等を確認した。
 堀田連隊長は、大阪府出身、平成11年3月自衛隊に入隊、平成12年3月幹部任官後、第40普通科連隊(小倉)、第1空挺団(習志野)、西部方面普通科連隊(相浦)、陸上幕僚監部(市ヶ谷)、西部方面総監部(健軍)、統合幕僚学校(目黒)等、数々の部隊を歴任し、この度着任した。

第6代最先任上級曹長に中島准陸尉が上番
<中即連>
 中央即応連隊(連隊長・山田憲和1陸佐=宇都宮)は、桜前線の待ち遠しい3月11日、宇都宮駐屯地ラグビー場において中央即応連隊最先任上級曹長交代式を行った。
 はじめに第5代最先任上級曹長の江田勝範准陸尉の2年の功績の紹介と第6代最先任上級曹長の中島寿准陸尉の紹介があり、次いで連隊長から最先任上級曹長識別章授与が行われた。
 上番する中島准尉は要望事項を「自律と協働」とし、「己を知り自らを律するとともに、同じ目的を達成する為に仲間とともに心と力を合わせ行動して行かなければならない。そして唯一無二の中央即応連隊の隊員として、この部隊をより強くしていこう」と上番の挨拶を述べた。

改編2周年記念行事を実施
MCVと綱引きも

<10即機連>
更なる高みを目指して
 第10即応機動連隊(連隊長・岡田豊1陸佐=滝川)は3月26日の改編2周年を祝して、滝川駐屯地において行事を実施した。
 本行事は、しぶき太鼓による演奏、白龍連隊イメージビデオ上映及びミュージックビデオに合わせた連隊歌合唱に始まり、中隊対抗による16式機動戦闘車綱引き競技会等を行い、改編の意義を振り返りつつ実施した。
 連隊長の岡田1陸佐は「第10即応機動連隊の改編から本日に至るまでの2年間、即応機動連隊としての戦力化に向けた隊員諸官の並々ならぬ努力に心より感謝する。我々の強みは諸職種協同部隊としての『多様性』であり、各職種及び各人の強みを融合することにより、我々の力は何倍にもできる事である。陸上自衛隊を牽引する北部方面隊唯一の即応機動連隊としての『誇り』を胸に、機敏、柔軟かつ強靭な部隊・隊員を進化無限に創造し、更なる高みを目指して共に挑戦していこう」と隊員を鼓舞激励した。

女性隊員初の水陸両用基本訓練課程(W)修了
<水機団>
 水陸機動団(団長・平田隆則陸将補=相浦)隷下部隊である水陸機動教育隊(隊長・中村健太郎2陸佐)は、3月10日水陸両用基本訓練課程(W)の修了式を挙行した。
 本課程は、水陸両用作戦に必要な基礎的知識及び技能を修得させるとともに、必要な資質を養うことを教育目的として、水陸機動団新編前の平成25年から開始しており、今期で第16期(7年目)となる。これまでの間、約1200名が卒業し、今期は令和3年1月27日から3月10日の約5週間に及ぶ教育において、55名の学生が無事に修了した。
 そのなかで水陸機動団本部付隊の海野梓2陸曹と水陸機動教育隊の平田美早紀 2陸曹は女性隊員として初めて本課程を修了した。両隊員とも、子育てをする中での教育参加であった。教育内容は、肉体的にも精神的にも厳しい訓練が含まれており、その中でも、ボートに見立てた約200kgの丸太を担ぐ "ボート体操" や、海上で約4kmをパドルを用いて進む "漕舟訓練" 等、入校前の準備及び家族のサポートにより乗り越え教育修了を迎えた。
 修了式の直後、海野梓2陸曹は「男性に比べて筋力が劣るので不安だったが、子供の励ましや同期とのチームワークで乗り越えられた」と感想を述べ、また平田2陸曹も「今後挑戦してくる女性自衛官に恥じないように水陸機動教育隊の助教として、指導をしていきたい」と抱負を語った。
 今後、陸上自衛隊は令和9年度までに全自衛官に占める女性の割合を9%以上に増やす目標を掲げている。その様な中、今回の2名の女性隊員の教育修了は水陸機動団における女性の活躍の場を広げていく契機となるだろう。母として、陸上自衛官として、挑戦する女性隊員の姿を知って頂き、陸上自衛隊又は水陸機動団に興味を持ってもらいたい。

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