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自衛隊ニュース   1010号 (2019年9月1日発行)
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令和元年度富士総合火力演習
「領域横断作戦」を支える陸上防衛力の構築
 8月25日、「令和元年度富士総合火力演習」の一般公開が静岡県の東富士演習場で行われた。令和となって初めて、また昨年末に今年度以降に係る新「防衛計画の大綱」が策定されてから初めての「総火演」。新防衛大綱に基づき、サイバー・電磁波といった新領域を含む「領域横断作戦」の様相を、岩屋毅防衛大臣以下防衛省・自衛隊の高級幹部、国内外の来賓、そして倍率約27倍のなか当選した約2万4000名に展示した。
 演習担任官の富士学校長・高田祐一陸将、演習実施部隊指揮官の富士教導団長・古田清悟陸将補を中核に、人員約2400名、戦車・装甲車約80両、各種火砲約60門、航空機約20機が参加する国内で最大級の陸上自衛隊による実弾演習。湯浅悟郎陸上幕僚長から岩屋大臣に対して準備完了報告が行われ、午前10時、「前段」「後段」から構成される約2時間半の公開演習が開始した。主要装備品を紹介する前段では早速、目玉となる装備品が登場。今年度装備化予定の「19式装輪155mm自走りゅう弾砲」だ。陸自に最も多く配備されている火砲「FH-70」の後継で、装輪化、射程の延伸、各種自動化により高速での戦略機動。将来の戦い方の創造に貢献し得る装備となっている。現在試験中のため実弾射撃は無かったものの高い関心を集めた。その後も対人障害、対人狙撃、対戦車火力、ヘリコプター火力、対空火力、戦車等火力と続々と展示される装備品の「音」と「地響き」による迫力に観客は圧倒された。それらの迫力もさることながら、目標を必ず仕留める正確無比な射撃技術に会場全体から感嘆の声があがった。
 15分間の休憩を挟み、シナリオに基づいて展開していく後段が開始。我が国の島嶼部における統合作戦による各種作戦の様相を、大型スクリーンによる説明を交えながら展示した。今年度のシナリオで強調されていたのは、新防衛大綱に新領域として記されている「電磁波」分野だ。海空との連携と平行して、第1電子隊が構築するネットワーク電子システム(NEWS)が電磁派作戦により敵の通信システムを無力化、自衛隊の火力を効果的に発揮することを可能とする。シナリオはNEWSに集約された敵情報をもとに16式機動戦闘車(MCV)等の即応展開部隊が島嶼部へ展開し既存部隊と共に侵攻を阻止すると、水陸機動団のAAV7や対戦車ヘリコプターAH-1S等による「増援部隊による敵部隊の撃破(1)」とめまぐるしく展開していった。大型ヘリCH-47からは第1空挺団による自動索降下も行われた。続く「増援部隊による敵部隊の撃破(2)」では、主力増援部隊の富士教導団が展開を開始。87式偵察警戒車、92式地雷原処理車、10式戦車、90式戦車等が続々と登場し、圧巻の火力攻撃で敵部隊を殲滅した。最後は戦車部隊の発煙と共に、今回参加した装備品が総登場する「普戦による攻撃前進」。興奮冷めやらぬ観覧席からは惜しみない拍手が送られた。
 新防衛大綱に基づく「領域横断作戦」への取組みを全面に出した今年度の「総火演」。御殿場駅行きのバスを待つ間、「まだ耳がキーンとするよ」という声とともに「サイバーとか電磁波とか難しいけど、新しい脅威に対応しながら自衛隊も戦い方を進化させているんだね」という声が印象的であった。
■「総火演」の一般公開
 富士総合火力演習は、昭和36年に陸上自衛隊富士学校の学生教育の一環として開始。学生に対して陸自が保有する各種火器等の効果と火力戦闘の様相を認識させることを目的とし、当初は非公開だった。昭和41年からは、国民に自衛隊への理解を深めてもらうこと等を目的に一般公開も行うようになった。

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