防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
スペーサー
自衛隊ニュース   1007号 (2019年7月15日発行)
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ノーサイド
北原巖男
スイッチを入れるのはあなた自身

 全国の自衛隊員の皆さん、お元気ですか!
 次々と発生する「線状降水帯」。今年も、命に係わる恐ろしい集中豪雨が続いています。しかも台風シーズン到来はこれからなのです。「今までも大丈夫だったんだから、うち(自分)は大丈夫」などと自然をみくびっていたらとんでもないことになります。
 後悔は絶対に先に立ちません。明るいうちに、一刻も早く、安全な場所に避難する行動。断固取ってください!
 「何を迷っているんだ!」
あなたを怒鳴りつけるもう一人のあなたの出番です。命に勝るものなど何にもありません。
 命を守るスイッチを入れるのはあなた自身です。そして、あなたの家族、あなたの周りの彼に、彼女に、命を守るスイッチを入れるよう声かけしてください。
 いつも24時間即応態勢で国民の命を守っている自衛隊員の皆さんは、現下の集中豪雨による災害派遣活動に際しても、全力を尽くしています。国民はそんな隊員の皆さんを頼りにしています。
 しかし災害派遣活動に懸命に取り組んでいるその真っただ中、隊員の皆さんのご家族が命の危険に晒されているかもしれません。
 「時機を失することなく命を守る避難スイッチを入れる!」「声かけする!」
 常日頃からご家族の皆さんへの徹底は、あなたの無尽の愛情そのものであり責任です。
 こうした各地から洪水や地滑りなど大きな被害の映像が報じられる中、参議院議員選挙が公示されました。立候補した357人(選挙区211人、比例代表146人)が、124議席(選挙区74、比例代表50)をめざして激しい選挙戦を展開しています。投票日は、7月21日(日)。
 棄権することなく、あなた自身の貴重な一票を必ず投じましょう。もしあなたが、部隊の仕事や旅行、冠婚葬祭、入院、出産等の理由で、投票日に投票所に行くことが出来ないときには、期日前(不在者)投票を是非活用してください。
 スタートしたばかりの令和の時代。初の国政選挙です。明るい未来を創るためのスイッチを入れるのはあなた自身です。棄権からは、創造出来ることは何もありません。
 そして、今、焦眉の急となっている防衛省・自衛隊の信頼を回復させるためのスイッチを入れるのもあなた自身です。
 イージスアショア配備をめぐる地元説明。地元の皆様の防衛省・自衛隊に対する信頼は、あっという間に失墜してしまいました。厳しい指弾を受けています。
一番辛く情けない思いをされているのは、防衛省・自衛隊の皆さん達ではないでしょうか…。
 隊員の皆さんに、エイブラハム・リンカーン米大統領の言葉を贈ります。
 「I am not concernedthat you have fallen-I am concerned you will arise.」
 立ち上がれ!そして前へ!
 どんなに大変であっても改めて地元の皆さんに対し、丁寧に丁寧に、正確に徹した説明に努めて行ってください。誠心誠意質問に答え、理解を求めて行ってください。
 岩屋毅防衛大臣の下、防衛省・自衛隊の皆さんは一致団結して信頼回復に取り組んでいでます。一気に瓦解した信頼を回復することは、至難な業です。しかしそれは、不可能を意味するものではありません。
 一人ひとりのあなたが、持ち場持ち場で信頼回復のためのスイッチを入れ、懸命に汗をかいて行く。その前方には、地元の皆さんが待っていてくれます。

北原 巖男
(きたはらいわお)
元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


10代から30代の486名女性自衛官教育課程を卒業
 東部方面隊・女性自衛官教育隊(隊長・中川美佐1陸佐=朝霞)は6月30日、朝霞駐屯地において第13期一般陸曹候補生課程及び第11期自衛官候補生課程の卒業式を実施した。
 両課程合わせて、486名の10代から30代の候補生が約3カ月間にわたり、自衛官として必要な基本的な技能・知識を修得した。
 卒業式では、東部方面混成団長・石丸威司1陸佐が、訓示で今後の教育に参加する隊員に対し餞(はなむけ)の言葉として、今後の教育において職種の「技」を修得し、国民を助けることのできる立派なプロの自衛官になってほしいと述べた。
 また、女性自衛官教育隊長・中川1陸佐は式辞で「晴れて卒業の日を迎えた諸官を前にして感無量であり、大きく成長した姿を見て非常に頼もしく思う」と述べた上で「新隊員教育期間における強い信頼関係で結ばれた同期との絆は一生もの。これからもその絆を深め、1人の自衛官として成長してほしい、また、女性自衛官教育隊を卒業した誇りを胸に強く・明るく麗しい、国民の負託に応えうる女性自衛官を目指し、引き続き努力してもらいたい」と述べた。
 今後彼女らは各職種に分かれ同駐屯地を含むそれぞれの駐屯地に異動し、さらに約3カ月間職種に応じた、より専門的な教育に臨んだ後、部隊配属となる。

広報イベント 
「千歳基地広報の日」開催
 航空自衛隊千歳基地(司令・寺崎隆行空将補)は、6月29日、「千歳基地広報の日」と題した広報イベントを行った。札幌地方協力本部と連携し、自衛隊に興味のある中高生、大学生及び専門学校生約90名と、その保護者及び教育関係者約40名を「航空自衛隊千歳基地見学会」に招待した。
 当日は、2空団所属のF-15戦闘機や千歳救難隊所属のU-125A救難機とUH-60J救難ヘリの離着陸の様子が手に届くような距離で見られ、皆一様にパイロットや整備員に手を振って応援していた。
 会場中央に、ペトリオットミサイルや基地防空器材、除雪器材や大型消防車等の装備品を展示し、整備格納庫内では、F-15戦闘機のエンジン整備作業を見学することができ、整備員の説明に熱心に耳を傾けている姿が印象的だった。
 この他、自衛官への質問ブースを設け、航空学生出身の操縦者や一般幹部候補生出身の幹部自衛官、特別航空輸送隊の空中輸送員や、働くママさん自衛官が笑顔で対応し、学生や保護者からの様々な質問や相談で大いに賑わった。また、寺崎基地司令自ら、パイロットを目指す学生の相談に親身に応じる場面もあり、基地を挙げて募集広報に全力で取り組んだ。
 招待者は、お昼の時間に体験喫食を行い、基地自慢のカレーライスに舌鼓を打ちながら、同席した自衛官たちと懇談を行い、楽しいひと時を過ごしていた。
 当日の会場には、千歳基地所属の隊員家族等約200名も来場し、普段目にすることのできない父母や子弟の職場を家族みんなで垣間見ることができ、6月にしては肌寒い気候の中、大変に盛り上がった。
 千歳基地は、今後もあらゆる機会を活用し、航空自衛隊をPRし、自衛隊に対する更なる理解促進と親近感の醸成を図り、自衛隊志願者の増大の一助となるよう努めていく。

国際装甲車会議 in USA
<防衛装備庁>
我が国の装甲車開発の実績と将来水陸両用の取り組みについて講演
 防衛装備庁事業計画調整官の井上義宏1陸佐(防衛装備庁プロジェクト管理部事業管理官<情報・武器・車両担当>付事業計画調整官)は、令和元年6月25日から27日の間、アメリカテキサス州のオースティンで行われた、「国際装甲車会議 inUSA」に参加し、「我が国の装甲車開発の実績と将来水陸両用車の取り組み」をテーマに講演を行った。また、同会議期間中、会議に参加していた各国の高官と意見交換を実施するとともに、我が国の装甲車開発の実績等を紹介して、技術交流や装備移転に関して相互理解の促進を図った。
 会場のあるオースティンは米陸軍の米陸軍フューチャーコマンドがあることもあり、司令官のジョン・W・マレー大将などが参加し、米陸軍の将来構想について熱弁を振るっていた。国際装甲車会議は、装甲車の運用、研究開発、調達、製造に係る軍及び防衛産業の関係者が一同に会して、装甲車分野を専門テーマとして発表・議論するとともに、人的ネットワークを構築することを目的として開催される唯一の国際的な会議であり、アメリカで実施されるのは初めてである。
 この会議は、防衛関連のイベント企画会社であるディフェンス・IQ社(在英国)が主催し、欧州を中心として陸軍将官を始め、多くの出席者と企業が参加する国際的な会議である。テーマは「装甲車全般(整備・調達含む)」「機動・火力・防護」「自律化・無人化」の分野に関する発表や関係者の懇談、ブース展示等からなる。日本からは各国の装甲車の開発動向の情報収集と研究・開発における協力態勢の構築等を目的として昨年(平成30年1月)から防衛装備庁装備官(陸上担当)が参加しており、3度目の参加、2度目の講演となる。
 会議においては北大西洋条約機構に加盟している米英独仏伊国などや同機構以外の国々から陸軍の高官や企業代表が、3日間にわたり約40コの講演やパネルディスカッションを行った。米陸軍フューチャーコマンド司令官のジョン・W・マレー大将は基調講演を行い、ロシア及び中国の脅威認識について述べるとともに、米陸軍が計画している装備の近代化計画の方向性、特に次世代戦闘車両のコンセプトとして、AI(人工知能)とネットワークの融合と活用を前提としたレスカジュアリティの具体化として自律型のUGVの編成を前提とした運用構想等について講演した。
 そして、米陸軍の中核機動センター司令官のゲーリー・M・ブリトー少将の「モバイル・プロテクティッド・ファイアパワー」に関する講演の後に、井上1陸佐が「我が国の装甲車開発の実績と将来水陸両用車の取り組み」と題して、我が国の装甲車の技術開発等について防衛装備庁の概要に始まり、10式戦車や16式機動戦闘車の開発実績及び将来水陸両用車への取り組みとして現在研究を行っている将来水陸両用技術の研究及び日米共同研究の概要等について説明した。講演の最後には、「地域の安定と国際平和及び繁栄のために、同盟国である米国や会議に参加する関係諸国との研究開発ネットワークを強固にしていきたい」と強調し、講演後には「日米共同研究の現状」について熱心な質問が寄せられた。
 会議に参加した井上1陸佐は、「装甲車の運用、研究開発、調達・維持等について幅広く見識を広めることができた。特に各国はレスカジュアリティに高い意識をもっており、防護コンセプトとして、車両等の防護対象に対し、直接防護から間接防護までの多重の防護範囲を同心円状に配置し、幾重にも防護を行うシステムを提唱していた。この、システムは同心円状の幾何学的な形状が、スライスしたオニオンの様な形状となることから『オニオンスライス』と呼称していた。この防護システムは、AIとネットワークを前提としこれに各種のセンサーおよび防護装置を組み合わせることで、RPG等の脅威対象から車両等を防護する先進的な防護構想であり、今後の自衛隊の研究開発を進めていく上で大変有意義であった。また、10式戦車や16式機動戦闘車の高度な開発実績や将来水陸両用技術の研究の重点技術について、我が国の優れた技術を積極的に発信することができ、人的ネットワークも構築することができた。今後も引き続き国内外の情報収集を継続し、我が国の陸上防衛力の近代化に尽力したい。最後に、今回の会議参加に際し、多くの方々、国際装甲車会議の事務局、日米共同研究を行っている米海兵隊の関係者の皆様、関連企業の皆様、在米日本大使館の皆様、陸上幕僚監部装備計画部装備計画課兵站連絡官のご支援やご協力に感謝したい」と語った。
 防衛装備庁では、装備品の研究開発とともに国内の技術基盤・生産基盤の維持・強化に取り組んでおり、国際会議への参加や、国内外の装備品展示会などへの出展もこの一環で実施しているが、今回の米国出張の成果は、今後の業務の推進に大きく反映されることが期待される。

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