防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
スペーサー
自衛隊ニュース   1055号 (2021年7月15日発行)
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ノーサイド
北原巖男
楽しむ

 東京2020オリンピック・パラリンピック開催にあたっては、多くの自衛隊員の皆さんが、さまざまな競技や競技会場等で、正に縁の下の力持ちの支援を行います。
 特に炎天下、作業衣着用で行う車両誘導や交通規制対応、警戒警備等は、体力の消耗も激しく大変と思います。十分な水分補給に心がけ、大変なときほど楽しく、頑張って頂きたいと思います。
 僕は、自衛隊OBから成る「隊友会」活動の一環として、会員約30名の皆さんと一緒に、開幕直後の7月24日(男子)・25日(女子)に行われるロードレースに際し、走行する競技自転車や支援車両の通行中、沿道観戦者や歩行者の方々の整理誘導を行うコースサポーターのボランティア活動に参加します。本紙読者の皆さんの中には、6月26日のツール・ド・フランス初日に、観客の女性が競技エリア(道路)に突き出して掲げていたプラカードに選手が衝突し転倒、後続の選手たちも次々と転倒する大事故の映像が浮かんで来る方もいるのではないでしょうか。どこまでも安心で安全な大会運営に、チーム隊友会一丸となって楽しく寄与できればと願っています。
 日本ではまだそれほどポピュラーではないロードレースですが、今回は、男子130名・57か国、女子67名・42か国の選手が参加予定です。開催地日本は、男女ともに2名の選手が出場します。
 東京都の武蔵野森公園をスタート。神奈川県、山梨県を通過して静岡県の富士スピードウェイまでを横断するスタートとゴールが異なる本格的なラインコースです。通過する自治体は、1都3県15市町村に及びます。
 総距離は女子は約147km。特に男子は約224kmと、これまでのオリンピックで最長距離。更に険しい上り坂が次から次へと行く手を遮るように立ちはだかり、「獲得標高」は4865mにも達するとのこと。正に「史上最難関」のコースと評されています。東京五輪の全33競技の中でも自転車ロードレースの過酷さはトップクラス。大変な消耗戦です。でも選手の皆さんは、きついけれど走ることが楽しくてやめられないんだ、そんな気持ちでペダルを漕ぎ続けて行くのではないでしょうか。
 ロードレースは、自転車によるマラソンと言われます。個人がメダル獲得を目指すのですが、マラソンと大きく異なるのは、個人競技であると同時にチームとしての戦いでもあるということ。同じ国の選手の中にエース選手とアシスト選手がおり、チームとしての戦略が勝敗のカギを握るとのことです。正に "One for All,All for One"
 元法政大学アメリカンフットボール部主将の安田秀一さんが、かつて、こんなことを書いていました。「 "スポーツ" は英語の名詞です。 "PLAY" (遊ぶ)という意味の動詞を用いて文章となります。つまり "楽しむ" ことを目的とした活動がスポーツ。しかし日本では楽しむどころか苦労を伴う "修行" になってしまいます。スポーツは教育ではありません。リーダーシップや協調性、戦略的思考など多くのことをスポーツを通じて学びますが、それはスポーツの目的ではなく副産物です。それを手にするためには、どんな競技でも最初は "楽しい" という "きっかけ" が不可欠です。・・・それぞれの立場でスポーツから学び、みんながそれぞれの成長を楽しむ。失敗も敗北も学びであり、学びは成長につながり、成長は喜びをつくり出す。・・・それこそがスポーツの醍醐味だと、僕は思っています」(令和2年10月31日付け日本経済新聞「SPORTデモクラシー」)。ふと、決して求道者のようではなく、どこまでも野球を楽しみ伸び伸びと成長を続けているロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手の姿が重なり、更にマドン監督の姿が重なって参ります。
 7月6日には、オリンピック日本代表選手団の壮行会がオンラインで行われました。今回のオリンピックには史上最多の582名が内定。各選手の皆さんには、これまで培ってきた最高のパーフォーマンスを発揮出来るよう頑張って頂きたいと思います。同時に、異論もあるでしょうが、僕は「大いに楽しめ」、そんな思いも心で伝えながら応援したいと思います。
 今回内定を勝ち取ることが出来なかった圧倒的多数の選手の皆さんには、今なお活き活きとプレーを楽しんでいる史上最高齢54歳のJリーガー「キング・カズ」(三浦知良)の言葉を贈りたいと思います。
 「4年に1度、あるいは最後のチャンスかもしれない舞台から脱落するのはつらい。でも、落選からが人生は山場なんじゃないのかな。・・・そこからなんだ、勝負どころは。過去に起こったことは変えられない。でも起こったことの意味なら変えられる。負でしかない出来事も、頑張りようでその意味を、ダイヤモンドのように光らせることが出来る」(令和3年7月2日付け日本経済新聞「サッカー人として」)

北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


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