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自衛隊ニュース   1038号 (2020年11月1日発行)
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155mm榴弾砲の威力と精度を体感
野戦特科の役割を改めて認識
<東富士演習場>
 富士総合火力演習でお馴染みの静岡県に所在する「東富士演習場」。野戦特科の主力である155mm榴弾砲FH-70の射撃訓練の音は、風に乗って御殿場・裾野市内や小山町にまで響いてくることもある。155mm榴弾砲FH-70だけではないが、「大きな音のする可能性のある訓練等予定」は、陸上自衛隊富士学校のHPから確認することができる。
 今回、155mm榴弾砲FH-70の発射地点及び着弾地点に行くことができた。これは近迫射撃の目的である155mm榴弾砲の威力と精度を体感し突撃による近迫限界を理解するための研修。榴弾砲の戦場での地位は米軍では「キングオブバトル」と呼ばれるほど。第1線部隊は、友軍の榴弾砲の飛翔音に鼓舞され「突撃」を敢行するという。
 発射地点から大型トラックで揺れること15分、四角いトーチカのようなゴツイ建物、「射弾下掩蔽部」に到着。奥行きは約6M、幅約40M、高さは約5Mで外壁は着弾した弾の破片や石などが跳ね返った時に開いた穴があちらこちらに見られる。
 射弾下掩蔽部の中から横長の防弾ガラス窓越しに着弾を見た。まずは戦車部隊先導の突入による空中破裂射撃、約200M先の黄色い風船が「だんちゃ〜く今!」の声と同時に割れ、広範囲の敵に負傷を負わせることができたという想定。次に普通科単独突入による突撃支援射撃。約500M先の山を地上破裂射撃、大きな土煙がたち、敵の戦車を撃破したという想定。最後に歩兵隊の支援射撃を行い、突撃のタイミングを確認する着色発煙弾による最終弾が着弾、黄色い大きな煙が辺り一面に立ち込めた。
 射撃訓練が終了すると「射弾下掩蔽部」から、着弾地域へと斜面を登る。先程の弾着の破片が落ちている。触るとまだ暖かい。爆破された黄色い風船の残骸や以前に使用されたコンクリートの塊、ボロボロの布などが散乱していた。2M程の穴もボコボコ開いており、この様な穴に身を隠しながら歩兵隊が前進するのも先ほどの支援射撃の効果である。
 えげつない程の破片の飛び散り方を見て、弾着する可能性のある範囲や破片が到達する可能性のある範囲という近迫距離(我の射撃により友軍に危害を与えない為の隔離距離)を実感できた気がした。野戦特科の使命は、対地・対海上火力の骨幹として、火力戦闘により作戦部隊の任務達成に寄与すること。役割は、火力先頭による敵の撃破・撲滅そして近接戦闘部隊に対する協力等、再認識させられた。

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