防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1031号 (2020年7月15日発行)
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読史随感
神田淳
<第57回>

渡辺和子さんと父渡辺錠太郎氏のこと

 渡辺和子さん(1927-2016)は、二・二六事件(1936)で暗殺された陸軍教育総監渡辺錠太郎の次女として生まれ、戦後、聖心女子大学卒業後、29歳のときノートルダム修道女会に入会。アメリカに派遣され、ボストンカレッジ大学院で教育学博士号を取得して帰国。1963年、36歳の若さで岡山県にあるノートルダム清心女子大学の学長に就任。長年にわたって教壇に立ち、学生を指導した。1990年学長を退任後も、2016年89歳で帰天するまで、理事長として同学園の教育に献身した。
 渡辺さんは、230万部を超えるベストセラーとなった『置かれた場所で咲きなさい』を始めとして、『面倒だからしよう』、『どんな時でも人は笑顔になれる』、『幸せのありか』などの珠玉のエッセイを残している。
 エッセイは、「時間の使い方は、そのままいのちの使い方なのです」、「与えられる物事一つひとつを、試練さえも、ありがたく両手でいただく」、「神は力に余る試練を与えない」、「不機嫌は環境破壊。笑顔でいると相手も自分も心豊かになり、不思議に物事が解決することがある」、「つらい病気をして、今まで気づかなかった他人の優しさと自分の傲慢さに気づいた」、「老いて人はより柔和で謙虚になることができる」など、カトリックのシスター(修道女)として信仰と教育に生きた渡辺さんの人格から発せられたすばらしい言葉に満ちている。
 そして渡辺さんが9歳のとき二・二六事件で殺された父錠太郎氏について、「父は9年間に一生分の愛を注いでくれた」と記している。1936年2月26日早朝、陸軍青年将校と兵士30数名が渡辺邸を襲撃したとき、父はそばで寝ていた和子さんを壁に立てかけてあった座卓の陰にそっと隠してくれた。和子さんはそこから父が機関銃で撃たれ、惨殺されるのを見た。血の海の中で死んだ父の情景は自分の目と耳に焼き付いているという。
 50歳の頃、二・二六事件で殺された側の唯一の生き証人としてどうしてもテレビに出て欲しいと頼まれ、テレビ局に行ったところ、自分に何の断りもなく、父を殺した側の兵卒が出演するため呼ばれていた。和子さんは驚き、相手側との会話もなく、テレビ局が気を利かせて出したコーヒーを「これ幸い」と思って飲もうとしたが、一滴も飲めなかった。非常に不思議な体験で、そのとき自分は今まで父を殺した人たちを恨んでいないと言ってきたが、本当は心から許していないのかもしれないと気づいた。言葉で言えても体がついていかないことがあり、「汝の敵を愛する」ことの難しさを知ったと記している。
 二・二六事件で殺害された斎藤實内大臣、高橋是清大蔵大臣、渡辺錠太郎教育総監、及び瀕死の重傷を負いながら奇跡的に快復した鈴木貫太郎侍従長は、皆当時の日本の第一級の人たちである。生きのびた鈴木は1945年首相となり、昭和天皇の聖断によって戦争を終結させる。
 渡辺錠太郎は読書をよくする学者武人であったが、当時の青年将校の政治化する傾向と下克上の風潮を否定し、軍人は本来職務に忠実たるべしとの強い信念をもっていた。そして軍隊は強くなければならないが、戦争だけはしない覚悟が必要であると考えていた。陸軍皇道派の青年将校らはこのような良識派の渡辺を邪魔とし、葬ったのである。惜しんで余りある死であり、愚かとしか言いようのないテロであった。
(令和2年7月15日)

神田 淳(かんだすなお)
 高知工科大学客員教授
著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


令和2年度本部業務決起式
<島根>
 島根地本(本部長・高橋洋二1陸佐)は6月24日、令和2年度本部業務決起式を実施した。
 本部業務決起式では、自衛隊島根地方協力本部の各課室及び各地区隊等一人ひとりの任務達成意欲を高めるとともに、7月1日からの高在生に対する募集活動解禁に向けて、部員全員の士気を鼓舞し、令和2年度業務の任務完遂を祈願した。始めに各課室長・各地区隊長等の決意表明及びだるまの目入れを実施した後、結びの筆を本部長が入れた(写真右)
 本部長は、「募集環境はとても厳しい。しかし、地本として目標が達成できるよう自覚をもって実施せよ」と部員全員に訓示した。その後、西部地区隊長(田中1尉)の号令の下、部員全員で今年度の目標達成に向け勝ち鬨を上げた(写真上)。自衛隊島根地本では任務完遂のため一致団結して業務に邁進していく所存である。

再就職援護「待ったなし!」飯塚3佐
<大阪>
 新型コロナウイルス流行の影響により6月に予定していた近畿地区合同企業説明会は中止を余儀なくされた。合同企業説明会は任期制隊員が再就職を準備するにあたり、企業の情報を収集するための主要な手段であり、隊員の将来設計に大きな影響がある。このため担任する大阪地本は、隊員の企業情報収集を支援するため、関係する近畿地区の地方協力本部、援護協会及び援護協力企業との調整を進め、企業が個別に隊員に企業の説明をする機会を設けた。
 個別の企業説明は、3密が避けられるよう、人数を制限したうえで、隊員が企業を訪問して説明を受ける要領、企業担当者が隊員を訪問する要領、電話またはwebを使用する要領などを想定。参加企業約250社から実施可能な説明の要領と時期を調査し隊員に提示した。合同企業説明会に参加予定だった隊員約200名は、事前に配布された求人票冊子と提示された説明要領・時期を確認して6月下旬から7月上旬の2週間をかけて複数の企業から説明を聞いた。
 webで説明を受けるにあたり地本の援護担当者と隊員は急遽オンライン面接ツールのインストールや使用要領などについて勉強した。大阪地本では面談時の注意事項等に関する教育資料を作成し、web面談予定者に配布した。webで説明を受けた隊員は「初めての体験で戸惑ったが、皆さんのサポートのおかげでスムーズに面談ができた。企業の説明も解かりやすかった。採用試験がwebでも心配ない」と、笑顔を見せた。
 企業から説明を受けた隊員は、自らの将来を託す企業を決定して7月下旬頃から逐次、採用試験に臨む。
 新型コロナウイルスの影響で民間企業が行う合同企業説明会も中止が相次いだ。企業の採用活動も手探り状態である。状況は改善されつつあるが、感染の第2波、第3波を考慮して多くの企業がwebでの企業説明や採用面接を取り入れている。
 ある調査会社の調べでは、新型コロナの影響で新たにweb面接を取り入れた企業は約34%。もともと取り入れていた企業と併せると50%を超える。また、新型コロナの収束後も利用したいとしている企業はそのうち約6割である。
 webを使用したセミナーや面接は時間や場所の設定が容易で、企業と求職者双方にメリットがある。このため近年多くの企業から注目を集めていたが新型コロナの影響で一気に広がりを見せている。自衛隊の援護組織も社会の動きへの対応が求められる。

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