防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1030号 (2020年7月1日発行)
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ノーサイド
北原巖男
カレリン山本とその仲間たち

 ここは東京世田谷区の三軒茶屋。同じ区内にある下北沢と並ぶ都内屈指の若者の街。三茶(さんちゃ)&下北(しもきた)は、若者たちの会話に飛び交う二つの身近な街の愛称です。世田谷区民の筆者でもワクワクします。
 そんな三軒茶屋の駅近くのメインストリートに面して、ごく普通の地味なビルがあります。初めて訪問するときは、中に入るのにチョットした勇気がいるなぁと思う若者もいることでしょう。
 でもそんな彼らも、開かれた一室に入った途端、若くて元気な人間味溢れる世界に飛び込んだ自分を直ぐ実感するに違いありません。
 出迎えたのは、政府専用機キャビンアテンダントのキャリアを持つ女性自衛官、イケメン自衛官等7名。アットホーム、そしてそれぞれが持っている特性をフルに発揮しながら、また地域の特性をも踏まえながら、自衛官募集業務に日々取り組んでいる東京地方協力本部世田谷募集案内所のめっぽう明るい士気旺盛な陸・海・空の皆さんです。率いるは、山本英典所長。
 決して広い部屋ではありませんが、所員の創意工夫による模様付けが温かい雰囲気を醸し出しています。新型コロナウイルスを吹き飛ばす所員の意気込みと訪問者に対する優しい心遣いが伝わって参ります。同募集案内所のホームページに曰く「日本一おしゃれな事務所で聞こう 自衛隊お仕事インフォメーション」
 ふと気が付くと、壁には「所長カレリン山本」と大きく書かれた額入り写真が。背はそんなに高くなく、細身で両耳にとても大きなタコが出来ているカレリンさんに質問です。
 「失礼ですが、カレリンというお名前は、洗礼名か何かなのですか?」
 「いえ、違います。1988年・1992年・1996年のオリンピックで3連覇され、霊長類最強の男と言われたグレコローマンレスリング130キロ級のアレクサンドル・カレリンさんの名前からスタッフが付けてくれたのです。長年、自衛隊体育学校でフリースタイル60キロ級レスリングの選手として、また指導者としてやってきた私が、最も尊敬する選手はカレリンさんだと話したところ、「所長、これからはカレリン山本で行きましょう!カレリンさんの名前を冠するからには、最強の所長になってくださいよ!私たちも頑張ります!」とアッと言う間に決定した次第です。以来カレリン山本で来ているんですよ。体重は本物のカレリンさんの半分以下です。」
 令和元年度の防衛白書は、「防衛省・自衛隊に対する期待が高まる一方で、社会の少子化・高学歴化の進展のほか、近年の好調な景気・雇用状況などにより、自衛官の募集環境は、厳しい状況にある。このような状況において、防衛省・自衛隊は、募集対象者などに対して、自衛隊の任務や役割、職務の内容、勤務条件を丁寧に説明し、確固とした入隊意思を持つ優秀な人材を募る必要がある」と記述しています。
 こうした中での、突然の新型コロナウイルス禍の発生。しかも未だ脅威は続いています。
 人材の確保を任務とする全国の第一線に在る地方協力本部・募集案内所の皆さんは、最も効果的と言われる関係者との直接対面を始め、外での各種広報・募集活動は著しく制限されてしまいました。更なるインターネットの活用や様々な工夫を取り入れるなど、それぞれ懸命な努力を重ねて来ていることと思います。
 カレリン山本所長によると、特にコロナ以降、同募集案内所のホームページを見て問い合わせをして来る若者が著しく増えたとのこと。所員のモチベーションは高く、事務所を訪問し易くする工夫やムービーの採用、毎週更新し最新の情報発信等に努めている由。「但し」と同所長は断り、「まず足を運んで顔と顔を合わせて話すこと、直接のコンタクトが一番重要であることには変わりありません」
 そしてレスリングの選手・指導者を経験した方ならではの一言も。
 「それぞれにスタイルが違う各人の特性をフルに活かして行く。また、自分の持つ良さに気が付かない人も多いので、その良さを知らしめ引き出して行く。それによって本人も伸びるんですよ」
 全国の地方協力本部・募集案内所には、カレリン山本のような自衛隊体育学校出身の「○○○○□□」が頑張っておられることと思います。
 そんな皆さんを始め、コロナ禍の中、各地で厳しい募集業務に携わっている皆さんに、心から力いっぱいのエールを送ります!
 頑張ってください!

北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


航空自衛隊JASDF
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救難
文部科学大臣から「創意工夫功労者賞」
 那覇救難隊整備小隊の的場邦貴2空曹(考案時 整備群修理隊)と整備群修理隊の金澤俊弥3空曹の両名は、U-125/A風防防氷制御装置試験器の共同考案が令和2年度科学技術分野の職域における技術の改善向上に顕著な貢献をしたと認められ、文部科学大臣から「創意工夫功労者賞」を授与された。これは、業務改善提案の中から特に優秀であった提案を文部科学省に推薦されたものの中から、技術の改善向上に顕著な貢献をしたと認められたものに与えられる賞である。残念ながら、新型コロナウイルスの影響から表彰式は中止となったが、航空幕僚長の労いの言葉とともに、那覇救難隊長及び整備群修理隊長からそれぞれ伝達された。
 那覇救難隊の的場2空曹は、「本試験器を作成することにより、他特技の支援、危険作業(故障探究のための地上試運転)、信頼性交換を不要にするとともに拘束時間を削減することができました。また、後輩隊員と作成することにより、自分もシステムについて再勉強し、更に知識を得ることができたとともに教えることの難しさを知ることができました。本試験器の考案作成にあたり、指導してくださった上司、作成作業と恒常作業の業務の兼ね合い等において支えてくれた同僚や後輩への感謝の気持ちを忘れず、今後も改善意識を持って日々業務に努めていきたいと思います」と今後の抱負と協力者への感謝を述べた。整備群修理隊の金澤3空曹は「作成にあたり最初は一緒に考案にあたった先輩が作成した回路図を理解するのが大変でしたが、先輩の指導のもと完成することができました。今までは制御装置を左右入れ替えて検査業務を実施する必要があったが本改善により、制御装置の入れ替えをせずに済み、さらに信頼性交換もなくなったことを同僚から高く評価されたことが嬉しかったです」と涙ながらに喜び、救難団整備群整備員綱領を胸にさらなる飛躍を誓った。
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千歳
患者搬送の最前線
陸・空自が協同で確認
 3月23日、千歳基地(司令・徳重広為智空将補)において、陸上自衛隊と協同でアイソレーター搭載確認が行われた。
 この確認は、航空機等を用いてアイソレーター搭載要領等を確認することで、災害派遣における患者搬送を安全かつ円滑に実施できる態勢を整えることを目的に行われ、空自からは2空団、千歳救難隊、三沢ヘリコプター空輸隊(青森県)、陸自からは北部方面衛生隊が参加。空自が装備する高規格救急車、UH-60J救難ヘリコプター、CH-47J輸送ヘリコプターへの陸自保有のアイソレーターの搭載や固定などの要領を協同で確認した。
 アイソレーターとは、感染症などの患者搬送に使用する医療器具で、搬送用ストレッチャーに透明なカバーを取り付けた外装をしており、カバーには患者にアクセスするための扉などが付属。搬送中も患者の容体確認や軽微な治療ができる仕様となっている。搭載確認では、患者の安全、安心を前提に検証が進められ、実際に隊員がアイソレーターに入り、ゆすられたり、持ち上げられたりした時の影響を身体で感じ対策を検討。また、航空機へアイソレーターを固定する位置をメジャーで測り、医師などが乗り込む位置を計算し、患者の容体を常に監視できるよう最善の環境を模索した。その他、パイロット等への影響も議論となり、感染拡大防止のため隔壁を取り付ける位置や航空機内の空気の循環方法が話されるなど、入念な確認を行い万全な態勢作りを図った。

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