防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1013号 (2019年10月15日発行)
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IDRC/国際防衛ラグビー競技会
 9月11日から23日まで開催された第3回国際防衛ラグビー競技会(IDRC)は、フィジー国防軍チームの2連覇で幕を降ろした(10月1日号既報)。
 自衛隊チームは強豪フランス軍チームに惜敗も、親善試合ではトンガ軍チームに見事勝利を収めた。
 体格で勝る相手チームには「規律」で立ち向かった。昨年10月に自衛隊の全ラグビーチームから86名を選抜し、第1回合宿を行った。当時は所属チームごとに固まり、チームとしての統一感は無かった。雰囲気が変わってきたのは候補を43名に絞った5月の第3回合宿から。そして対外チームとの合同練習や練習試合を重ねた第4回合宿、直前合宿と進むに連れて「ワンチーム」となっていった。直前合宿前に候補から外れたメンバーによる、献身的なサポートもチームがより結束した大きな要因だ。松尾ヘッドコーチが徹底させた「規律」は、「オフサイド」の反則が3試合で一度も無いという事実にも表れている。
 トーナメント本戦での初勝利は逃したが、今回の経験を活かし、4年後に大きく成長した自衛隊チームが、ラグビーワールドカップ日本代表のように強豪相手に勝利を掴むその日を期待したい。

部隊に戻りリーダーシップを発揮してほしい
自衛隊チーム育成担任官 元国際防衛ラグビー競技会準備室長代理
教育訓練研究本部副本部長 兒玉 恭幸 陸将補
Q、応援してくれた方々に一言
 まずは、ヘッドコーチを務めてくれた元日本代表の松尾勝博さんに感謝したい。松尾さんは、W杯にスタンドオフで3回も出場した花型で、そんな松尾さんに1年2ヶ月の間面倒を見てもらい、チーム作りをしてもらった。何よりもお世話になった。
 また、隊友会であったり、自衛隊の協力会であったり、各種協力諸団体の皆様から選手一人一人に心温まる激励のお言葉を頂きました。本当にありがとうございます。
 おかげでチームが一つになれたし、恥ずかしくない試合ができたと思う。
Q、試合を終えて…
 フランスに負けたけど善戦し、トンガに勝った。これは凄いことだ。トンガはヨーロッパの国々と肩を並べる国。このトンガに勝ったのは、どんなに苦しくてもチームの規律を維持できたからだと思う。先週行われたラグビーW杯では、トンガはフランスに負けている。リーダーシップを発揮し、規律も守れた34名の選手たちの力は素晴らしいと思う。
Q、選手に一言
 選手はよく頑張ったし、良い経験をしたと思っている。国レベルの指導を受けることができるのも滅多にないこと。彼らはラグビーの技術だけでなく、組織を強くするにはどうしたら良いか、コミュニケーションを学んだと思う。松尾さんも折に触れて「ラグビーだけできていればいいんじゃないんだ、部隊を引っ張っていくリーダーシップを発揮できないとやっている意味がない」と言ってくれていた。組織の力を発揮するためにはちゃんと方針を定めて、それにみんながついていくリーダーシップを発揮し、かつ規律を維持していくことが大事。後輩たちにも頑張ればちゃんと勝負できると指導できる。ラグビーもさることながら、部隊に帰ってリーダーとしてこれから力を発揮してくれるだろう。彼ら選手から指導を受けた後輩たちも感化を受けて成長してくれるだろうなと期待している。

多くの人の力があって IDRC事務局
 防衛省・自衛隊としては前例のない、各国の軍人を招聘して開催されたスポーツ競技会。このビッグイベントを成功させるために約500名の隊員や組織が汗を流した。そのひとつで陸海空4名の自衛官を常在員とする「IDRC準備室(のちに『事務局』)」が立ち上がったのは昨年の8月。参加国も決まっていない状態からのスタートだった。前回大会開催国のイギリスからの情報提供をもとに、「ヒト・モノ・カネ」に関わる全てを企画・運営した。常在員で自身も高校時代にラグビー全国大会の出場経験を持つ若松3陸佐に話を聞かせてもらった。
Q、海外の軍人を迎えるにあたって
 文化の違いや規律面で不安はあったが、語学が堪能な自衛官が専従連絡員として各チームとの意思疎通や調整で活躍してくれました。最後はチームの一員として溶け込んでいました。
Q、広報活動は?
 今年の5月と7月に経験豊富な広報担当2名が加わってくれたのが大きかった。ポスターやホームページの作成、チケットの送付など全てやってくれました。2人がいなかったらと思うと…
Q、予期せぬアクシデントもありましたが
 トンガ軍チームが航空機トラブルで初戦に間に合わなかったり、強風でポールが倒れて決勝戦会場が急遽変更になったりしました。また台風15号の影響もありました。それでも何とかするのは、隊員が頑張ったおかげであり、自衛隊のすごさを改めて実感しました。
Q、大会を振り返って
 運営する側になり、物の見方が変わりました。宿泊、食事、運搬、通訳、試合では警備、整備等…多くの人の力があってこそ大会が成り立ちました。感慨深いですね。また、試合後の「アフターマッチファンクション」では他国の軍人の方たちと、文化や言語の垣根を越えた交流が出来ました。そういう意味でも大会は成功だったと思います。自衛隊チームの選手には帰隊後、ラグビーの素晴らしさを広めてもらうことと、経験を今後の業務に活かしてもらいたいと思います。
 話を伺う中で「人との出会い」への感謝を何度も口にした若松3陸佐。「人生において非常に意味がある経験だった」と日焼けした精悍な表情で語ってくれた。

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