防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1010号 (2019年9月1日発行)
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ノーサイド
北原巖男
熱気

 目指すは、東京ビッグサイト。8月9日から開催されたコミックマーケット(コミケ)。
 その来場者数は、4日間で何と73万人。今や日本を代表する文化の祭典。過去最高となるコミックフアンが、全国各地はもちろん世界中から押しかけました。
 アニメの人気キャラクターがそのまま飛び出して来たような可愛い姿でポーズを取る沢山のコスプレイヤー。つい本物と思ってしまう警察官や自衛隊員、駅員姿の皆さん。中には女装した人たちも少なくありません。北朝鮮の金正恩労働党委員長のそっくりさんなど、ありとあらゆる力の入ったコスプレイヤ-で溢れかえっています。そして、彼らにレンズを向けるカメラマンの多いこと。
 汗だくになりながらも、自分が選んだコスプレを目いっぱい発信している皆さん。
 猛烈な暑さの中での、そんな暑さをはるかに凌ぐこの熱気!
 そんな皆さんに防災について関心を持っていただこうと、コミケ会場に隣接した有明広域防災公園では、「有明防災フェア」が同時開催されました。
 自衛隊東京地方協力本部も参加しています。自衛隊車両の展示や各種写真による災害派遣活動の紹介をはじめ、自衛隊員の募集案内等を熱く語っていました。
 東ティモール大使館も、昨年に続いて参加。
 今年は、インドネシアとトルコも新たに加わり、3者のブースは仲良く向かい合っての配置です。
 更に東ティモールのブースには、2020東京オリンピック・パラリンピックで、同国のホストタウンの長野県伊那市も出展。防災に対する市の取り組みや、これまでの東ティモールとの各種交流について、市職員の皆さんが精力的に発信していました。
 インドネシアやトルコに比べ、残念ながら東ティモールに対する認知度は、まだまだ低いと言わざるを得ません。
 また、中には、お向かいのブースに掲げられたインドネシア国旗をチラッと見やりながら、このような問いかけをしてくるコスプレイヤーの皆さんもいました。
「インドネシアとの関係、大丈夫ですか?」「インドネシアの前でヤバくありません?」
 東ティモールは、1975年から24年間、一方的に併合されたインドネシアからの独立回復を目指し、同国と激しい武力闘争を展開して来ました。当時の人口80万人のうち20万人が犠牲になりました。問いかけの背景には、このような辛く厳しい過去があります。
 しかし、現在の両国関係は、未来志向の大変良い関係にあります。インドネシアは、東ティモールの国づくり支援やASEAN加盟を支持し、東ティモールの将来を担う約5000名の若者たちがインドネシアの大学・専門学校等で学んでいます。
 こんな身近なこともあります。2010年、防衛大学校に東ティモールの留学生が初めて入学しました。右も左も分からない彼らを、率先して面倒を見てくれたのは、インドネシアからの留学生たちでした。そして今、しばらく派遣が途絶えた後のインドネシアからの新入生に対して、一生懸命サポートしているのは、東ティモールの留学生たちです。
 アジアで一番新しい国、東ティモール。そして現在のインドネシアとの良き隣人の関係。
 コスプレイヤーの皆さんとの触れ合いの中で、改めて発信を継続して行くことの大切さを感じました。そう、熱気をもって。

北原 巖男
(きたはらいわお)
元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


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