防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   999号 (2019年3月15日発行)
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ノーサイド
北原巖男
売り手市場

 激しい人材争奪戦。
 今年も来年3月卒業予定の大学生たちの就活が開始されました。なんとこの段階で、およそ5〜8%の学生が内定をもらっているとの報道もあります。完全な売り手市場なのです。
 学生にとっては、より良い就職先を選択する余地が大きいのですが、それだけに選ばれる側の企業等は必死です。
 人材不足は企業等の存立を危うくするものにほかなりません。採用活動に取り組んでいる担当者の皆さんには、これまでにない危機感を感じます。
 こうした中、防衛省・自衛隊の隊員募集の困難さは、さらに危機的だと思います。
新しい「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」の下で、複雑多様化・高度化する任務に応えて行ける有為な人材の確保は、自衛隊存立の根幹に関わる焦眉の急です。
 売り手市場の中で、民間企業間の熾烈な採用競争に割って入らなければなりません。
 そんなとき、ある地方協力本部の募集ポスターが、不適切な表現内容が含まれているとの批判を受け、撤去・削除されました。このポスターからは、自衛隊員であることの誇りは伝わって来ませんし、いわゆる「おじさん」的感覚がにじみ出、募集対象となる若者諸君の尊厳を守る気概も感じられません。自衛隊の本質さえをも疑われかねず、関係者は謙虚に共有する教訓としなければなりません。
 しかし、決して委縮してはなりません。
 これを機に、大いに建設的かつ意欲的な魅力ある募集活動に邁進していただきたいと思います。自衛隊の募集活動は、一度の失敗に懲りたり、民間企業の採用活動等の後塵を拝してなどいられないほどに待ったなしです。
 日本経済新聞(2019年1月21日)は、8つの機関や団体、公職を挙げてその信頼度を尋ねた世論調査の結果を公表しています。それによりますと、「信頼できる」が最も高かったのは自衛隊で60%に上がっています。他方「信頼できない」は7%に留まっています。
 「平成は災害が相次いだ。過酷な現場で被災者を救出したり、避難所の支援をしたりする姿などが繰り返し伝えられ、高く評価されているとみられる」(同紙)
 国民の皆さんから信頼されることほど嬉しいことはありません。やりがいもあります。
 と同時に、テレビ等で大きく報じられる災害派遣活動のみならず、実は今この平穏な時間帯も、24時間体制で我が国の平和と安全を守るため、黙々と任務の完遂に努めている沢山の隊員の皆さんが頑張っていることも、広く国民の皆さんに理解していただくことが大切です。
 国民の自衛隊として、出来る限りの透明性に努め、防衛省・自衛隊を正しく知っていただく。
 そして自衛隊員であるあなたが、人間として社会人として魅力ある方であることを知っていただく。
 「あなたのような人が、自衛隊員として頑張っている自衛隊なのですね」
 深刻な人出不足、地方創生等に対応するため、出入国管理法(入管法)の改正が行われました。4月から施行され、今後5年間に約34万5000人の外国人が、対象となる9か国から14業種に働き手として入国して来ます。このことは、我が国として、少子高齢化の加速、人材不足がいかに深刻であるかを如実に示しています。
 もちろん、自衛隊員については日本国籍を有する者でなくてはなりませんが、隊員の募集環境が、これから厳しくなる一方であることは火を見るよりも明らかです。
 募集年齢の引き上げ、女性自衛官の増員に留まらない、思い切った幅広く重層的な魅力化対策・募集施策の早急な検討・導入が求められます。

北原 巖男
(きたはらいわお)
元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


多国籍部隊・監視団(MFO)司令部に自衛官を派遣 準備を防衛大臣が指示
 2月28日、岩屋毅防衛大臣は防衛会議において、「多国籍部隊・監視団(MFO)への派遣に係る準備に関する防衛大臣指示」を各幕僚長等に発出した。これにより実際に派遣となった場合は、エジプト北東部シナイ半島におけるエジプト・イスラエル間の停戦監視活動を行うMFOの司令部に、国際平和協力法に基づいて自衛官2名が派遣されることとなる。
 今回の防衛大臣指示は、MFOから派遣要請を受けた日本政府が検討していたところ、28日に菅義偉内閣官房長官から派遣準備を進める旨の発言があったことを受けたもの。菅官房長官は会見で「司令部要員派遣を通じたMFOへの更なる貢献が中東の平和と安定に一層資する」と述べた。
 岩屋大臣の指示に基づき、3月6日に出国した専門調査チーム(防衛省9名・内閣府1名)がMFO司令部等において現地調査を実施し、10日に帰国した。
 今回の派遣が実現すれば、平成28年3月に施行した安全保障関連法案において定められた、「国際連携平和安全活動」の初適用事例となる。

災害派遣部隊が第1級賞状
平成30年7月豪雨
平成30年度北海道胆振東部地震
 3月6日、防衛省大臣室で、昨年発生した2つの大規模自然災害において、顕著な功績を収めた部隊に対する表彰式が行われた。
 受賞したのは、陸自中部方面隊災害派遣部隊及び同協同部隊・同支援部隊(平成30年7月豪雨)と、陸自第7師団災害派遣部隊及び同協同部隊・同支援部隊(平成30年度北海道胆振東部地震)。岩屋毅防衛大臣から中部方面隊総監・岸川公彦陸将と第7師団長・前田忠男陸将に対してそれぞれ、「お疲れ様でした」と労いの言葉とともに第1級賞状と副賞のメダルが授与された。

自衛隊高級課程合同卒業式
 3月6日、目黒地区に所在する統幕学校・陸自教育訓練研究本部・海自幹部学校・空自幹部学校は、目黒基地大講堂において合同で自衛隊高級課程卒業式を実施した。統合スピリットの醸成と業務の効率化を目的とした合同卒業式も今回で5回を数える。
 式には、河野克俊統合幕僚長をはじめ陸海空幕長(陸は副長が代理)が陪席した他、防衛省・自衛隊関係者、部外講師、英韓武官、ホストファミリー、学生家族ら約100名が参列した。
 第25期統合高級課程卒業生は47名で、内訳は陸自18名、海自14名、空自13名、韓国留学生2名。学生長の辻野展哉1空佐が申告を行った後、出口佳努統合幕僚学校長から学生ひとりひとりに卒業証書が授与された。
 出口統幕学校長は執行者代表として「我々自衛隊が日々行っている警戒監視をはじめとする任務や訓練等が、我が国の独立と主権を守るための抑止や対処、或いは関与として機能する平素における戦いであるとの認識の下、統合運用体制の更なる強化の牽引者としてこの平素における戦いを勝ち抜いてもらいたい」と式辞を述べた。
 河野統幕長は「真に戦える態勢の構築を追及せよ」と「良き伝統の継承」を要望。前者は、新たな防衛大綱の認識を踏まえて「自衛隊の中核として、そして変革の時代のリーダーとして、これまでの延長線上ではなく大局観のある大胆な発想で精強・即応を念頭に多次元統合防衛力を構築し、真に戦える態勢を追求してもらいたい」と訓示した。
 1佐と2佐を対象とした高級課程の履修期間は約1年。まず各自衛隊それぞれの幹部高級課程に入校後、上級部隊指揮官・高級幕僚に必要な知識・技能を習得。その後、統合高級課程において、グループ研究、講義、国内外現地研修等を通じて、統合運用に関する広範な知識・技能を総合的に習得した。

防衛医科大学校卒業式
決意を胸に、第一歩を踏み出す
 防衛医科大学校医学科第40期学生及び看護学科第2期学生の卒業式が3月9日、岩屋防衛大臣臨席のもと同校で盛大に挙行され188名の卒業生が医官・看護官・技官への第一歩を踏み出した。
 学校長が卒業生一人ひとりに卒業証書を手渡し、学位記が授与された後、医学科卒業生は「医師の誓い」を、看護学科卒業生は「看護師の誓い」をそれぞれ読み上げ、医師・看護師としての決意を述べた。
 岩屋防衛大臣は「我が国を取り巻く安全保障環境は、ますます厳しく、また、不確実なものとなっていると同時に、近年、自衛隊による救援が求められる自然災害が頻発している状況であり、自衛隊の衛生機能の充実、強化をしていかなければならない。」と述べ、「これからぞれぞれの現場において辛く、苦しい状況に直面したときは、共に学び共に苦労した同期の絆を忘れず、互いに助け合いながら苦労や困難を乗り越えて欲しいほしい」と訓示した。
 また、長谷学校長は式辞で、「青春の多感な時期を防衛医科大学校で学んだことは他の医科大学にないかけがえのない経験であり、同期の絆は一生の宝物になる。防衛医科大学校を卒業したという誇りを持ち続けるとともに、母校である防衛医科大学校の発展を願い、愛し続けてほしい」とはなむけの言葉を贈った。任命・宣誓式では、陸上・海上・航空幕僚長から任命を受け、防衛大臣に宣誓を行い、医官・看護官・技官への第一歩を踏み出した。

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