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自衛隊ニュース   995号 (2019年1月15日発行)
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新年のメッセージ

防衛大臣 岩屋 毅

「多次元統合防衛力」の構築

 平成31年の年頭に当たり、自衛隊の全隊員諸君に対し、新年のお慶びを申し上げます。
 はじめに、日夜、それぞれの持ち場で、使命感と責任感をもって任務に就いている隊員諸君に、防衛大臣として心からの敬意と感謝の意を表したいと思います。諸君が、この年末年始の間も、南スーダン、ソマリア沖・アデン湾さらには南氷洋といった遠い海外の地で任務を遂行していることや、我が国及びその周辺地域において、一分の隙もない、対領空侵犯措置や警戒監視などの態勢を維持していることを、私は片時も忘れてはおりません。
 このような日頃の任務を通じ、我が国を取り巻く環境の厳しさ、不確実さについては、誰よりも諸君が身をもって感じていることと思います。
 昨年、朝鮮半島をめぐっては、米朝首脳会談や南北首脳会談が行われましたが、現時点においても、北朝鮮が我が国を射程に収める数百発の弾道ミサイルを保有し、実戦配備している状況に変化はありません。さらに、北朝鮮は、東シナ海などにおいて、ますます手法を巧妙化させつつ、「瀬取り」を継続しています。
 また、中国は、軍事力を広範かつ急速に強化しつつ、我が国周辺海空域における活動を活発化させています。尖閣諸島周辺においては、中国の公船が我が国領海への侵入を繰り返しているほか、海軍艦艇が活動を恒常化させています。一昨年以降、軍用機の西太平洋への進出も急増してきました。
 さらに、世界全体を見渡せば、テロリズムの脅威や大量破壊兵器の拡散に加え、サイバーや宇宙空間などの新たな領域における脅威が顕在化しています。
 昨年はまた、7月の西日本豪雨や9月の北海道胆振(いぶり)東部地震、さらには、インドネシアにおける9月の地震と津波など、国内外で大規模な自然災害が相次ぎました。
 このような環境の下で、新年において諸君と共に取り組むべき施策について申し述べたいと思います。
 厳しい安全保障環境の下において、国民の生命と平和な暮らしを守り抜くために、まず何よりも我が国自らの努力により防衛力を強化する必要があります。
 昨年末、政府は、今後の我が国の防衛の在るべき姿を示す指針である「防衛計画の大綱」と、それを具現化するための「中期防衛力整備計画」を決定いたしました。
 現在の安全保障環境においては、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域での優位性確保が死活的に重要となっています。新たな「防衛計画の大綱」では、専守防衛を前提としながら、従来の延長線上ではない、真に実効的な防衛力を整備することとしました。具体的には、これまで構築してきた統合機動防衛力をさらに深化させ、新領域を含む全ての領域の能力を融合させた、「多次元統合防衛力」を構築することといたしました。
 また、各種災害に迅速かつ適切に対応できる態勢を整えるべく、駐屯地の機能維持・強化のための整備、救援活動に必要な資機材の整備などの施策も進めていく考えです。
 また、我が国自身の努力とあいまって、我が国の安全保障の基軸である日米同盟の強化も、これまで以上に重要となっています。
 引き続き、日米ガイドラインの下、平時から両国が緊密に連携し、宇宙・サイバーなどの新たな領域における協力、共同訓練、防衛装備・技術協力など、様々な分野において両国の協力を進展させ、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化を図ってまいります。
 同時に、地元の基地負担を軽減していく必要があります。特に沖縄については、負担軽減を目に見える形で実現していかねばなりません。このような政府の取組については、沖縄の皆様に丁寧に説明していくことが重要です。
 日米同盟の強化に加え、各国との安全保障協力の推進も重要です。私も、昨年10月の防衛大臣就任直後にASEAN諸国をはじめとする各国の国防大臣との意見交換を行いました。中国とは、日中関係が改善している中、防衛交流を具体化していくことが重要であると考えています。また、韓国との間には、ご承知のように、いくつかの困難な課題もありますけれども、これを乗り越え、日韓防衛当局間の連携を図っていきたいと考えています。
 本年においても、自由で開かれたインド太平洋の実現のため、共同訓練、能力構築支援、防衛装備・技術協力などの手段を活用して、オーストラリア、インド、ASEAN諸国、欧州諸国をはじめとする国々との防衛協力・交流を一層推進していく考えです。
 ここで自衛隊の事故について一言申し上げます。昨年は、一昨年に続き、AH‐64D墜落事故、航空自衛隊車両による民家への衝突事故、饗庭野演習場における迫撃砲弾の着弾による事故など、重大な事故が相次ぎました。これらの事故は、我々の仲間である隊員の生命、さらには、我々が守るべき国民の生命を危険にさらすものです。諸君におかれては、このような事故が二度と起こることのないよう、安全管理を徹底していただきたいと思います。
 本年、我々は、新たな「防衛計画の大綱」の下に、「多次元統合防衛力」の構築に取り組むことになります。この取組は決して容易なものではなく、諸君に新たな挑戦を求めるものでありますが、私自身、諸君の先頭に立って、取り組んでいく決意です。隊員諸君におかれても、我が国の平和と安全は自らの双肩にかかっているとの自覚の下、陸・海・空の区別や前例にとらわれることなく、進取・変革の精神でそれぞれの立場で任務に励まれることを期待します。
 最後になりますが、隊員諸君、そして御家族の皆様の益々の御健勝と御多幸を心からお祈りするとともに、本年が、防衛省・自衛隊にとって更なる成長の年となることを祈念いたしまして、私の年頭の挨拶といたします。
平成31年1月4日


 海上自衛隊第5航空群(司令・中村敏弘海将補)は、1月8日恒例の初訓練飛行を行った。
 第5航空隊(司令・伊藤進吾1海佐)のP‐3C哨戒機2機が小雨降る中、那覇飛行場から慶良間諸島周辺へ、ルカン礁経由で飛行し、その後那覇飛行場上空を通過し帰投した。初訓練飛行に先立ち行われた初訓練飛行行事で伊藤隊司令は「われわれ第5航空隊は、引き続き東シナ海に所在する最前線の部隊として、『美ら島の防人』としての矜持を堅持し、高い緊張感と即応体制を維持しつつ、与えられた任務の完遂に万全を期さなければならない」等と訓示。各飛行隊長からの訓練準備完了申告を受け、訓練開始命令を出した。この時期は曇りや雨の日が多い沖縄だが、初訓練飛行の間は時折日も差してきて、青空が見えるという幸先の良いスタートと今年もなった。

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