防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   994号 (2019年1月1日発行)
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教訓研本として初 指揮幕僚課程修了式と入校式
<陸自教育訓練研究本部>
 陸上自衛隊教育訓練研究本部(本部長・岩谷要陸将=目黒)では、12月7日に第63期指揮幕僚課程留学生修了式を、続く10日には、第64期指揮幕僚課程入校式を行った。
 第63期指揮幕僚課程留学生3名(インド・韓国・シンガポール)は、通常1年4ヶ月の課程を早期帰国留学生として1年間で修了、初代指揮幕僚課程卒業式となった。岩谷本部長は「留学生3名は本日で修学を終えるが、CGS卒業生として果さなければならない務めは正に今からである。諸官は、母国と日本の良き関係の発展のため留学間に得た関係を発展し、これまで以上に同期学生間の切磋琢磨を期待する」などと式辞をし、その後一人一人に壇上で修了証書・褒賞状・盾を手渡した。岩谷本部長は3人の基準となり申告や号令などを正確な日本語で行なったインドの留学生に修了書を渡す時「立派にできたね」と労った。その瞬間、インドの留学生の肩がピクッとし岩谷本部長は微笑んでいた。3人の留学生が壇上から降りる時の笑顔は眩しかった。
 10日の第64期指揮幕僚課程入校は教育訓練研究本部として初めての指揮幕僚課程の入校式であり、小野塚貴之陸幕副長を初め歴代幹部学校長など多数の来賓を迎え行われた。空自から1名、7ヶ国9名の留学生を含む101名が入校し、平成32年3月19日まで修学することとなった。
 小野塚陸幕副長は訓示で「高い使命感を持って修業せよ」「目的意識を持ち幅広い視野を養え」の2点を要望した。また、岩谷本部長(代読・副本部長中村裕亮陸将補)は、「積極進取の気概を持て」「人格を磨け」の2点を要望。更に「現在陸自は、この厳しい安全保障環境に適切に対応するため、中央組織として陸上総隊、教育訓練研究本部を今年3月に新編。即応起動する陸上防衛力を体現すべく、機動師団・旅団、水陸機動団が新・改編され既に戦力発揮している。今後は更に、宇宙、サイバー、電磁波と言った新たな領域を含めた『領域横断作戦能力』を備えることが確実に求められる」などと式辞を述べた。
 教育訓練研究本部として初めて、平成としては最後の入校式に参加した学生たちの目は輝き、背中には覚悟が見えた。今回修学する、陸上総隊・統合・日米共同の視点からの部隊運用を含む師団や方面隊レベルの作戦等の知識を持ち、コンプライアンスを常に意識し、社会や国民から認められる高い人格を養う入校生たち。10年後には組織の舵取りを担う要職に就き、安全保障面において国家を担っていることだろう。

RDEC 講師団が帰国
アジア初実施に手応え
 12月20日、「国連PKO支援部隊早期展開プロジェクト(RDEC)」において、ベトナム・ハノイで活動していた教官団19名が山崎幸二陸上幕僚長に帰国報告を実施した。
 教官団は、PKO部隊に派遣を表明しているアジア、周辺地域の9ヶ国から派遣された工兵要員16名に対し、11月5日から12月14日まで、ベトナム人民軍第249工兵旅団駐屯地において、施設機材の基本的な操作・整備教育を実施した。当プロジェクトがアジアで実施されるのは初めての試みで、今回の試行訓練で得た教訓を活かし来年度以降に本格化していく予定だ。
 山崎幕僚長は「皆さんが心血を注いだ事業が基礎となって、アジアそして世界の平和と安定が進んでくれると思います」と労いの言葉をかけた。
 教官団長の伊藤和幸2陸佐は、じ後のインタビューで「訓練生の技術の練度向上」、「本格訓練に向けた情報収集」、「ベトナム軍、国連との連携」の3つにおいて概ね成果を上げることができたと振り返った。またプロジェクト初の女性操縦教官を務めた2名の隊員については「アジアにおいて教官としてしっかりと役割を果たせたことは、世界的に女性の活躍が期待されている中で大きな意義があった」と述べた。

UNMISS司令部要員 陸幕長に出国報告
 12月19日、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)の司令部要員2名が山崎幸二陸上幕僚長に対して出国報告を行った。
 派遣されるのは、宮本綾子3陸佐(兵站幕僚)と中島大貴1陸尉(航空運用幕僚)。平成30年1月から派遣されている2名の幕僚の交代要員として1月7日に出国する予定だ。宮本3陸佐と中島1陸尉は、まずウガンダ共和国の国連施設エンテベ地域サービスセンターで1週間ほど研修等を受けた後、南スーダンの首都ジュバのトンピン地区にある国連施設で約1年間勤務する。
 陸上自衛隊は、2017年に施設部隊が撤収後も司令部への要員派遣を継続しており、「施設」「情報」「兵站」「航空運用」それぞれ1名、計4名がジュバの国連施設内で勤務中だ。
 2名が出国報告をした後、山崎幕僚長は「万全な準備はしてきたと思うが、現地でもしっかり期待に応えられるように」と激励して送り出した。

採用上限年齢改正後初の入隊予定者東部方面混成団に着隊
 10月、自衛官の採用年齢が改正され、これまで27才未満であった採用上限年齢が33才未満へと引き上げられた。
 この制度改正後のはじめての入隊予定者(陸自)が11月26日、陸上自衛隊東部方面混成団第117教育大隊(武山駐屯地)へ着隊した。東方管区内からの着隊者84名のうち8名の隊員は上限年齢の引き上げによる新たな採用年齢の隊員であった。
 このうち、片岡自衛官候補生(32才)は、「体力面において若年者と比較すると不安はあるものの、家族から『やれるだけのことはやって来い!』と背中を押してもらい、家族への恩返しとともに国民のために頑張りたい」と力強く述べた。
 また、和田自衛官候補生(30才)は「もともと自衛官への夢を抱いていたが、様々な理由により年齢上限を迎え、自衛官への道を一度は諦め警察や服職業の世界へ進んだこともあったが、今回の規則改正を母親が新聞で知ったことでもう一度夢を追いかけることを決めた。陸上競技で培った体力、服飾業で培った社交性をいかんなく発揮して陸曹を目指すとともにレンジャー、通信分野、広報官等様々なことにチャレンジしたい」と希望を述べた。
 過去、陸上自衛隊に7年間在籍していた経験のある櫻井自衛官候補生(29才)は「退職して家業を継ぎ、即応予備自衛官として訓練に参加する中、人を育てたいという思いが強くなり、もう一度自衛官への道を選んだ。娘と離れて生活するのは寂しいが妻が迷う私の背中を押してくれた。年齢が若い仲間たちを引っ張り、陸曹を目指します」と抱負を語った。
 教育を担当する東部方面混成団第117教育大隊長・川東2陸佐は「教官となる隊員たちは教育のプロとしての自信と誇りを持って取り組んでいる。教育は「不易流行」であり、どんな時代になっても変えてはならない部分と採用上限年齢の改正等、新しい変化にも応じる必要がある。個々の候補生の特性を踏まえて立派な隊員に育てあげ、部隊へ届けたい」と教育への意気込みを述べた。
 彼らは今後、武山駐屯地で自衛官候補生として約3ヶ月の教育を受け、2月下旬には陸上自衛官に指定され、各部隊に配属される予定である。今後の彼らの活躍に期待したい。

ノーサイド
北原 巖男
されどネクタイ
 男たちにとって欠かせないもの。結構拘っているもの。その代表的なものの一つがネクタイではないでしょうか。「イエス」それとも「くだらん、男は中身だ」
 読者の皆さんが、小さくつぶやく姿が浮かんで来るようです。
 所属する陸海空を象徴するネクタイと制服・制帽に身を包んでいる自衛官の皆さん。個性ゼロの画一された服装ですが、「自分で言うのも何だけれど、ピンと張った背筋、結構凛々しくてカッコいい。よく似合っている」と密かに鏡に映る自分、士気高く任務の完遂に努める自分にエールを送っている方も多いことでしょう。
 そんな皆さんも背広姿になるときがあります。陸海空の区別や階級章はありません。背広とネクタイでの勝負。
 高価な背広には縁がなく、最初から論外としても、ネクタイは別。ちょっと無理をすればネクタイだけはいいものを絞めることは出来ます。確かにいいものはいい。更に、自分では決して買うことのない有名品を、期せずしてプレゼントされる幸運に恵まれることもあります。もちろん、それが言うに言われぬ呪縛の中に引き込まれるトリガーになることも当然あります。
 「よし、このネクタイで行こう」とか「まぁ、こんなところかな」といった納得あるいは許容範囲内の妥協を見出すことは、鏡の中に映るもう一人の自分を認めるかどうか、本人にとっては、大変重要な決断のプロセスです。
 もちろん物事には常に例外があります。
 「いつも妻が選ぶネクタイのままです」という文字通り首を絞められている幸せな方?もいるでしょう。また、「あなたに似合うと思って一生懸命選んだ」と言われてプレゼントされ、何が何でも絞め続けて行く幸せな人?もいると思います。他方、「ネクタイは、絞めれれば何でもいい」そんな考えの人もいるかもしれません。
 更にネクタイは、男たちの秘めたる心を映し出してしまう怖さもあります。今日は当たり障り無く、目立たず、無難な自分を是とすると判断しているとき絞めて行くネクタイ。思い切って冒険心や遊び心で踏み出したいときの、勇気がいるネクタイ。そして事に臨んで断固たる決意と後に引かない覚悟をしているときのネクタイ。いわゆる勝負タイ。パワータイとも呼ばれる赤い色のネクタイが典型です。今は世界中の皆さんが、トランプ大統領に見ることが出来ます。隊員の皆さんも、「自分のパワータイは、これだ」と考えるあなただけのネクタイを持っていることと思います。
 平成最後の年、平成31年が明けました。
 新しい時代を迎えるにあたって何より大切なのは平和です。
 私たちは、2018年の終戦記念日に天皇陛下が述べられたお言葉を、改めてしっかりと受け継いで参りたいと思います。
 「・・・国民のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、苦難に満ちた往時をしのぶとき、感慨は今なお尽きることがありません。戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍を再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心からの追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」
 こうした中、隊員の皆さんは、これから生起するであろうさまざまな事柄や事態の歴史の証人になります。ときには当事者になることもあります。どんなときにも、国民の自衛隊員として、国民の負託に応えるための決意と覚悟を胸に、取り組んで行っていただきたいと思います。
 たかがネクタイ、されど今、強い思いを胸にネクタイを締めているあなたと鏡の中のあなたに、力いっぱいの声援を送ります。
 
北原 巖男
(きたはらいわお)
元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事

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