防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース 992号 (2018年12月1日発行)
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読史随感
神田淳
<第18回>
日本人の正直

 日本に住む外国人、又は住んだことのある外国人の多くが、日本人が正直であることを認めている。
 日本人は「嘘は泥棒の始まり」と子供に教え、子供を絶対に嘘つきにしない教育をする。日本においては、「あの男は嘘つきだ」と言えば、男の社会的人格のほぼ全面的な否定となる。日本で「正直」はおそらく最重要道徳に位置する。
 しかし、外国では必ずしもそうではない。韓国で生まれ育ち、日本に帰化した呉善花は言う。「韓国は世界有数の嘘つき大国であると、自分が言わざるをえないことを悲しく思う。韓国でも子供に嘘をついてはならないことを教える。しかし、韓国社会には、騙される方が悪いという通念が抜きがたくある。そういうことから、日本のように嘘つきを人間的に最悪の存在とまでみなすことはない」
 また、中国の親は子供に、外に出たら「騙されるな」と教えると聞く。これは中国社会に「騙し」が多いことを物語っている。また台湾出身で中国史に詳しい黄文雄は、日本社会は「誠」だけで生きていくことができるが、中国では「詐」でないと生きていくことができない、ゆえに中国に「詐」の文化が形成されたと言う。
 韓国と中国では、「正直」は日本のような道徳の最高位にはない。
 日本人の正直重視は、日本の長い歴史の中で培われ、現在に至っているものである。古来日本人の生活感覚から形成された神道が理想とする人間のあり方は、「清明正直(せいめいせいちょく)」、すなわち、清く、明るく、正しく、直くあることである。
 ここでいう「正直(せいちょく)」は、神に対して曇りのない、すなおな心を意味し、人に対して嘘偽りのないことを意味する「正直(しょうじき)」と完全に同じではない。しかし、江戸時代には「正直(せいちょく)」と区別なく、一般に「正直(しょうじき)」が使われるようになった。
 江戸時代、あらゆる職業で最も重視されたのが、「正直(しょうじき」であった。「嘘をつかないこと=正直」が人づくりの基本と考える思想は社会に完全に定着していた。江戸時代には一般向けの教訓書がたくさん出版されて、庶民教育に利用されたが、人の生き方として、非常に多くが「正直」を最も重視している。貝原益軒は、『和俗童子訓』に幼児教育の目標として、「幼いときから、言葉に誠を尽くし、嘘をつかないようにさせる」を挙げている。
 日本人の正直は、神に対する曇りのない、すなおな「正直(せいちょく)」の心をもって、人に対して嘘偽りなく生きる規範であって、非常に宗教的である。正直が神との関係でこのように捉えられていることから、「正直の頭(こうべ)に神宿る」となり、ゆえに正直には神の加護があり、正直こそ富と幸福の源泉であるという思想が生まれている。私は多くの日本人がこういった日本教の信者ではないかと思う。
 昨今の日本は、詐欺の増加、大手メーカーの不正など、正直の伝統の劣化を感じるものの、日本の正直の規範はまだまだ健在だと思う。世界的にはプロテスタントのキリスト教国が正直を重視する国である。日本の長い歴史の中で培われた正直の規範は、日本の最大の財産である。世界における日本の存立基盤は実に正直という道徳にあると思う。
(2018年11月19日)

神田 淳(かんだすなお)
 高知工科大学客員教授
 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』など。

内閣総理大臣特別賞状受賞
国境の島警備等の功績
対馬警備隊
 対馬警備隊(隊長・大倉正義1陸佐)は10月14日、陸上自衛隊朝霞駐屯地(東京都練馬区)で行われた平成30年度自衛隊記念日記念行事の観閲式で安倍晋三内閣総理大臣から特別賞状を受賞した。特別賞状は、自衛隊の部隊等に授与される最上のもので、対馬警備隊が新編された昭和55年3月25日以来、高度な警戒監視態勢を維持し国境の島対馬の防衛警備に当たると同時に日本海と東シナ海を繋ぐ要衝たる対馬海峡の情勢を常時把握し、わが国の平和と安全の確保に寄与するとともに国民の自衛隊に対する理解と信頼を深めた特段の推賞に値する功績により賞状と記念盾が観閲台上で安倍総理大臣から大倉警備隊長に授与された。
 受賞後の11月5日、大倉警備隊長は対馬市役所において比田勝尚喜対馬市長に特別賞状受賞を紹介するとともに「この度の受賞は、隊員及び諸先輩方が対馬の防衛警備任務に日々邁進したことはもとより、防人の時代から武人に対する信頼と敬意の念をもって自衛隊に接してくださる地域の皆様のご支援・ご協力の賜であり、心より感謝を申し上げます。この賞状は私たちにこれから更に精進せよという檄文と考え特別賞状に恥じることの無きよう、真に戦える実効性ある部隊の育成に精進し、一所懸命を貫きますので変わらぬご支援・ご協力のほど、よろしくお願い致します」と感謝の気持ちと決意を伝えた。

国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト派遣部隊が帰国
<第3施設団>
 第3施設団(団長・遠藤充陸将補=南恵庭)は、10月26日、「平成30年度国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト」派遣終了に伴い、千歳空港及び南恵庭駐屯地において、帰国行事を行った。
 国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクトは、将来生起する国連PKOミッションに対し、速やかに活動を開始できるよう、陸上自衛隊員がアフリカ諸国の陸軍兵士に対し、施設機械の構造や機能を理解させ、操作や軽易な整備技術を付与することにより、早期展開能力を付与する目的で行われる事業である。
 本派遣には第13施設群副群長の石井光洋2陸佐を派遣団長として、隊員20名が約3ヶ月間に渡り、ケニアに派遣されていたところ、見事に任務を完了し帰国したものである。
 帰国行事には、北部方面総監・田浦正人陸将をはじめ派遣元部隊長の他、外務副大臣・佐藤正久参議院議員、自衛隊協力諸団体等多くの部内外者が参加し、任務の完遂と無事の帰国を祝った。
 慰労会食においては、「ケニアは涼しくて、ご飯も美味しく、仕事がしやすい環境だった」「ランチでケーキが出たり、毎週水曜日はステーキが食べられた」等、帰国を心待ちにしていた家族と話を咲かせるとともに、久しぶりに口にする日本食に舌鼓を打っていた。
 行事の最後に、派遣隊員を代表して派遣団長より「現地では練度や経験の違う学生を相手に、日本人としてそれぞれのレベルに応じたきめ細かな個人指導に心がけ、任務を完遂できて充実感と満足感でいっぱいです」と述べるとともに、派遣期間中各種支援等に携わった方々への感謝の意を述べ、盛会のうちに終了した。

陸上自衛隊への普及・発展に努めて
<冬季戦技教育隊>
 冬季戦技教育隊戦闘戦技教育室助教・栗田秀信1陸曹は、10月23日、北海道札幌市東区りんゆうホールで実施された、特定非営利活動法人 北海道雪崩研究会が主催する「2018年秋季北海道山岳雪崩安全セミナー」において冬季戦技教育隊の概要及び北海道雪崩研究会の活動等について発表した。
 本研究会は、北海道内の雪崩事故調査結果、雪崩回避、雪崩遭難者救助等の情報を講習会等を通じ広く発信し、指導者を育成する団体で、栗田1陸曹は、平成25年に『北海道雪崩講習会』に参加するとともに、自らも実際の訓練及び経験等を積み上げ、講師養成コースに挑み北海道雪崩研究会の講師として認定され、今では一般の受講者に講習するまでの技術を取得した。
 また、冬季戦技教育隊戦闘戦技教育室の教官助教に最新の救助技術を普及し、冬季遊撃特技課程教育や上級スキー指導官集合訓練の生地訓練における安全管理態勢の確立や指導法の教育に反映するとともに、その教育を受けた隊員たちが、実際に部隊が出動する雪崩事故現場の先頭に立ち、救助活動に大きく貢献している。今後も、栗田1陸曹は、指導者としての技術を更に磨き、後継者育成のため後指導を継続するとともに、陸上自衛隊への普及・発展に努める。

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