防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   989号 (2018年10月15日発行)
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ノーサイド
北原 巖男
他山の石として

 2020東京オリンピック・パラリンピックまで2年を切った今年、ラグビーやボクシング、体操さらに重量挙げと、パワハラ疑惑に関わる報道が続きました。
 本紙読者の皆さんの中には、思わずドキッとしたり、「自分と同じだ」、「それはまずい」などとつぶやきながらテレビを観ていた方もおられるかも知れません。
 防衛省・自衛隊は、約24万7000人の自衛官と約2万1000人の事務官・技官・教官などが、いずれも自衛隊員として勤務する全国屈指の大所帯です。その重大な任務の遂行には国民の支持と信頼が大前提。そのためには、普段から卓越したリーダーシップの下、旺盛な使命感を持った質の高い隊員が、高い規律を保持し信頼の絆で結ばれている魅力ある組織でなければなりません。
 全国の部隊・基地・職場では、スポーツ界の事案等をも踏まえ、改めて、様々な建設的な動きがなされていることと思います。
 こうした中、最近目に留まったのは、次の識者の署名入り新聞記事(抜粋)。
〇西洋史家 木村凌二さん。
「昨今、大学の運動部やオリンピックの強化活動のなかでの諸問題を考えるとき、背後に祖父母・孫ほどの隔たりのある世代間の感性の相違が気になる。ウソや不正もあろうが、底流には『感性の変質』があるような気がする。一方は鍛えているつもりが、他方にはパワハラに映るというわけだ。
 すべてを『感性の変質』でまとめるつもりはない。だが、経験と権力をもつ年長者は時代の変化にともなう『感性の変質』に敏感になるべきだ」(2018年9月7日付け日本経済新聞夕刊「あすの話題」)
〇青山学院大学陸上部監督 原 晋さん。
 「時代が変われば常識も変わる。多くの人の考えは、もとをたどれば自身の経験が核になっているが、大切なのは柔軟性と寛容性。社会背景に沿ったスタイルを常に模索していかなければいけない。逆に、コミュニケーション能力に乏しく、自分の思いばかりが先行すると昔の型にはめようとして相互理解が抜け落ちる」(2018年9月11日付け日本経済新聞「スポートピア」)
 思わず、現職時代の自分が浮かび上がって来ました。自分流を良かれと思って通してきたとは言え、そこには若い人たちに対する傲慢さや甘えも見え隠れしています。ときに感情的になっている自分の姿には赤面を禁じ得ません。
 現職のリーダーである年長隊員の皆さんには、「柔軟性と寛容性」を持たれ、若い隊員の皆さんの「感性の変質」に敏感であり、理解者であってください。
 若い彼らとの間で築いて来ている信頼の絆をベースに、これからも愛情をもって鍛えて行ってください。彼らは必ず応えて行くでしょうし、むしろ望んでいると思います。
 ときに「今の若いもんは…」と愚痴りたくなるときもあるでしょう。
 でも全く心配ご無用。この言葉は、なんとメソポタミア時代の楔形(くさびがた)文字の碑文にも書かれているとのことですから。
 彼らは必ず成長して行きます。どう化けるかワクワクしませんか?
 彼らと同じ頃のあなたも、今の自分を想像することは出来なかった。でしょ?
 少子化が急速に進む我が国にあって、若い人たちは、もはやお金のためではなく社会のために自分の命をどう使うかを考えるようになっていると言われます。自衛隊はそういった若い人が集まる魅力ある組織でなければなりません。
 組織は人。
 若い人に魅力の無い民間企業には持続可能性無く黒字倒産が待っています。

北原 巖男
(きたはらいわお)
元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


訓練検閲
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<東北方面混成団>
 東北方面混成団(団長・下醉尾芳孝1陸佐=仙台)は、8月7日から11日の間、指揮幕僚活動に特化したBCTCでのICE活用による第38普通科連隊訓練検閲を実施した。想定は、コア連隊に期待される任務・特性を考慮し、敵の企図・行動方針等により我の戦術行動が変化する複雑な状況を作為。先立って混成団本部が練成として作成した師団全般作計をもとに連隊は、約3ヵ月間にわたり数次のCPXを重ね計画を具体化、支作戦正面を担任して師団の作戦にいかに寄与するかを分析・深化させた。齋藤連隊長は対進する敵との浮動状況下で幕僚活動での見積・計画修正の報告を受けて逐次に決心・戦闘指導するも、敵の巧みな行動に追随する態勢を余儀なくされた。
 状況終了後のAARでは、統裁官(団長)が計画策定段階における大局的な洞察による任務分析、作戦・戦闘段階における戦機を逸しない柔軟な対応、総合戦闘力の発揮、あらゆる手段を講じての欺騙等実際的作戦の重要性を指導、今後の進歩・向上を促した。また、陸曹教育隊及び教育大隊の幹部も訓練状況間に研修し戦術能力の向上を図った。
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<第1特科隊>
 8月2日から9日にかけて、第1特科隊(隊長・林佐光1陸佐=北富士)は白河布引山演習場において、「平成30年度第1特科隊実射訓練検閲」を受閲した。
 検閲開始前の訓示にて隊長は「全ての努力を弾先に集約せよ」「基本・基礎の確行」「厳正な管理」の3点を要望し、とりわけ不慣れな演習場で訓練に臨むことから厳正な管理を強く要望した。また、統裁官である竹本竜司・第1師団長は訓示にて「各機能の能力を最大限に組織化し弾先でその実力を証明せよ」「部隊の基本的行動及び隊員の基礎動作を徹底せよ」「危機管理を徹底せよ」の3点を隊に要望した。
 検閲に先立って行われた練成実射訓練では火砲の不調などが見られ、火力発揮が危ぶまれる場面もあったが、特科直接支援隊の的確な処置により戦力を落とすことなく検閲に臨むことが出来た。
 検閲間においては、攻撃想定に基づき長距離機動、弾薬補給、陣地変換、警戒等を適切に行った。
 師団特科隊は師団長及び隊長の要望事項を隊員一丸となって徹底的に具現化し、1年にわたる練成の成果を遺憾なく発揮。途中、降雨や視程不良等により射撃が停止する場面もあったが、集中力を切らすことなく己が任務に邁進し、不利な状況を覆してすべての課目を無事に終了し、昨年度の実射検閲を超える成果を収めた。
 講評にて隊は、師団長より「野戦特科らしい射撃を見せてもらった」との顕彰を得て、師団特科隊は北富士駐屯地へと凱旋した。
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<第3師団>
 第3師団(師団長・田中重伸陸将)は、9月5日から9日の間、あいば野演習場(滋賀県)及び青野ヶ原演習場(兵庫県)において、第37普通科連隊(連隊長・伊藤優一郎1陸佐=信太山)、第3後方支援連隊(連隊長=西田博昭1陸佐=千僧)及び第3施設大隊(大隊長・工藤健太郎2陸佐=大久保)に対し、平成30年度第3次師団訓練検閲を実施した。
 検閲官・田中陸将は、検閲の開始に当たり、「各級指揮官の継続的かつ的確な状況判断」「各人の職責を全うせよ」「基本基礎の確行」の3点を要望した。各部隊は、豪雨により泥濘化した各演習場において、師団の陣地攻撃における各任務を遂行した。
 3夜4日にわたる状況間、敵の襲撃、航空攻撃、特殊武器攻撃等の脅威に対処しつつ、第37普通科連隊は、師団の助攻撃部隊として、敵情の偵察、FEBA(主戦闘地域の前縁)の解明、連隊目標の奪取等を、第3後方支援連隊は、師団の後方支援部隊として、故障車両の整備、救護所の運営、輸送等を、第3施設大隊は、師団の施設科部隊として、障害処理、07式機動支援橋による架設、ヘリ散布地雷の装着等を行い、師団の任務達成に最大限寄与するとともに、与えられた全ての任務を完遂した。
 検閲の終了に当たり、田中陸将は、「任務達成に邁進する隊員諸官の姿を目の当たりにし、大変心強く感じた。引き続き、部隊長を核心として日々の鍛練に励んでもらいたい」と述べた。

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