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自衛隊ニュース   984号 (2018年8月1日発行)
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17部隊に第2級賞状
優れた功績を収めた業務隊等を表彰
 7月18日、陸上幕僚監部において「平成30年度業務隊等に対する陸上幕僚長表彰」が実施され、山崎陸上幕僚長より17コの業務隊等に対し第2級賞状が授与された。本表彰は、部隊任務遂行に対する業務隊等の支援能力向上(運用支援基盤の強化)と士気高揚を目的とし、昨年度から共済組合業務及び福利厚生業務に加えて駐屯地業務全般を評価範囲として顕著な功績を収めた業務隊等を表彰している。
 山崎陸上幕僚長は受賞部隊の栄誉を讃えるとともに、訓示において「自ら全国業務隊の模範となり他業務隊への成果普及に努めてもらいたい。この栄冠を誇りに更に強い業務隊の創造を目指してほしい」と要望した。
 受賞部隊功績の概要は次の通り(カッコ内は部隊長名)。
【名寄】(福崎亮2陸佐)
駐屯地生活基盤充実向上
【真駒内】(友伸治1陸佐)
方面慰霊碑維持管理、方面追悼式管理支援
【静内】(石橋哲人2陸佐)
新たな射撃訓練基盤整備
【函館】(近藤哲也2陸佐)
LR2航空機事故調査支援【霞目】(加賀谷保夫2陸佐)福島県浪江町林野火災消火活動支援
【神町】(黒田弘人1陸佐)
施設器材保管庫基盤整備
【朝霞】(毛利敏郎1陸佐)
総隊新編時の宿舎配分・隊舎区画整備
【木更津】(田村竜彦2陸佐)航空機関連施設整備
【春日井】(原田義郎2陸佐)駐屯地通過部隊管理支援
【守山】(酒瀬川友博1陸佐)師団管内連絡調整会同の企画統制
【伊丹】(大谷貴央1陸佐)
陸幕・方面隊計画演習管理支援
【千僧】(三田亮司1陸佐)
支援要領確立による駐屯部隊即応態勢向上への寄与
【出雲】(俵浩明2陸佐)
駐屯部隊生活基盤の充実向上
【小倉】(鬼木一也2陸佐)駐屯地勤務生活環境維持向上
【小郡】(大平落健二2陸佐)九州北部豪雨災害隊員家族安否確認・賠償補償対応
【幹部候補生学校】(鬼頭健司陸将補)
計画的施設整備による幹候生修学環境整備
【別府病院】(牟田直1陸佐)
診療室・看護師宿舎の補修による院務運営基盤の維持向上
17部隊に第2級賞状

平成30年度大量傷者受入訓練
警察・消防・各医療機関と連携
<中央病院>
化学・爆弾2段階テロ想定
 「目が見えなーい!」「くるしい!」国際的大規模運動競技会の会場は突如、阿鼻叫喚の修羅場に変貌した。会場上空に飛来した所属不明のドローンから何かが撒かれ、会場にいた人々がその場に倒れ苦しみ出したのだ。救護所の医師、看護師が駆け付けるが、周辺一帯は危険と判断。急報を受けた警察、消防、自衛隊が現場に展開し、黄色の化学防護衣を装着した消防庁ハイパーレスキュー隊が検知に当たった結果、散布されたのは猛毒の神経剤サリンと特定された。すぐさま警察官が規制線の黄テープで汚染地帯を囲い、消防官が「特殊装備を付けた人以外、立ち入らないで下さい!」と叫ぶ。サリンの除染が行われる中、トリアージで重症と診断されたタッグを付けた患者を優先して救護所へ搬送する作業が、自衛隊衛生部隊によって行われた。これらの患者は二次汚染を防ぐため脱衣と水滴除染が施され、自衛隊中央病院をはじめ連携した各医療機関へ後送される。この混乱も収まりきらぬ中、追い撃ちをかけるように爆発音がとどろき、白煙が立ち込めて再び多数の人々が倒れた。化学テロに続く二撃目の爆弾テロが発生した…。
 これは、7月7日に世田谷公園内で行われた、大量傷者受入訓練の模様である。化学・爆弾による二段階テロという、身の毛もよだつ「有事」が発生した想定に、対処する側の陣容も以前に行われた同訓練と比べ、格段に強化されている。まず、今回初めて自衛隊と警視庁、東京消防庁を始め、関東中央、都立広尾、都立松沢、災害医療センター、世田谷区医師会など各医療機関との連携訓練が実現した。同訓練を一般市民がいる市街地、いわゆる「生地」で実施したのも今回が初である。訓練に携わった人数も中病だけで520人、東部方面隊からの協力部隊が280人。消防庁、警視庁からは100人という大人数となった。
 訓練統裁官である、自衛隊中央病院の千先康二病院長(防衛技官・元陸将)はこう語る。「地震等の自然災害は受入れ側も被災している場合があり、その条件の中でどれだけ救助できるかが課題となりますが、テロの場合は受入れ側が100%の能力を発揮できます。ただし、多機関が連携して救助に当たらないと、個々での対応では十分な力を出せません。その意味で警察、自衛隊、消防と各医療機関による初めての連携がスムースに行え、また、初の生地訓練でしたが問題なく終了し、初期の目的は達したと感じています」。
 加えて、千先病院長は民間企業の協力も得て開発中のゴーグル式情報端末、スマートグラスを今回初めて試験的に運用したことにも触れた。発災現場が遠い場合、派遣された隊員が装着したスマートグラスを通じ、送られた画像等の患者情報が医官に伝わり、現場で応急処置の指示を受けられる他、患者が後送される各病院で情報が共有できるなど、近い将来の実用化に期待が高まる。
 2年後に迫った東京2020オリンピック・パラリンピックで懸念されるテロへの備えが喫緊の課題であることを実感できる緊迫の訓練だった。特筆すべきは参加した多機関の中で唯一、毒ガスや爆弾の検知、除染等の対処をはじめ、傷者の搬送、治療、入院すべてを網羅できる自衛隊への期待度は、極めて高いということである。
<参加部隊・協力機関等>
○防衛省内‥東部方面隊(衛生、化学、航空部隊、補給処等)、陸上自衛隊衛生学校、在三宿駐屯部隊、自衛隊中央病院ほか
○防衛省外‥警視庁(世田谷・目黒・玉川警察署・機動隊「爆発物対処等」)、東京消防庁(第3消防方面本部ほか)、世田谷区

ノーサイド
北原巌男
8月に

 今年は戦後73年。6月15日号本紙当欄でも触れた6月23日に続き、8月6日、8月9日そして8月15日がやってきます。いずれも私たちが忘れてはならない日です。
 こうした中、全ての自衛隊員の皆さんはもちろん、今や私たち日本人の82%以上は戦後生まれです。戦争の惨禍を体験した人は、もう10人に2人もいません。
 私たちは、さまざまな本や映画、資料館・記念館での展示、戦跡訪問そして戦争体験者や被爆者である語り部の皆さんの話しを聞くことなどを通じて、その悲惨な実態の一端に触れて来ています。
 しかし、特に語り部の皆さんは著しく高齢化され、人数も減少し、一般に体力そして気力もこれまで通りには行かなくなって来ています。私たちは、残り少ない語り部の皆さんの切実な思い、貴重な時間をそのまま看過してはなりません。
 話しを聞いた一人から、「当事者にとっては、生涯決して忘れ得ない体験でしょう。でも自分にとっては、考古学の発掘の話しを聞いているような感じ」との言葉を聞いたことがあります。
 しかし、そんな若者にとっても、平和がいかに尊いものであるか、あのような戦争を決して起してはならない責任が自分たちにあることを考えて行く機会になったことは間違いないと思います。
 私の長野県松本市立丸の内中学校時代の恩師、中野善夫先生も語り部の一人。旧東京高等商船学校(現 東京海洋大学)卒業。1944年9月、大型輸送船の機関士として邦人と物資を乗せ日本に向け夜間南シナ海を航行中、敵潜水艦の魚雷攻撃を受け沈没。機関室から辛うじて脱出。多数の邦人、乗員が犠牲に。「沈みゆく船を逃れて飛び込みし底知れぬ海に一夜生きたり」(中野善夫著「歌集 この道」より)。またその後も、1945年4月、乗艦していた小型海軍輸送艦が岩手県沖で座礁・沈没。半数以上の乗員が死亡。そして8月9日、長崎の爆心地から3・5キロ地点で被爆。「長崎の街は火の海のがれきて眠れぬ夜を過ごしぬ」(前掲)。戦後は、満州等からの引揚者の皆さんの輸送に取り組まれました。
 中野善夫先生は、当時中学生の私たちに戦争の残虐さを語り、絶対に戦争はしてはならないと何度となく諭されていました。
 そして95歳となった現在も、戦争を知らない世代、特に未来を担う若い人たちに、語り部として平和の大切さを訴え続けています。 曰く「戦争を体験した私の務めだと思います」。
 ところで広島平和記念資料館。原爆の威力・甚大な被害の実相に触れる必見の場所です。私にはこんな思い出があります。広島に住んでいたとき、知人から、アメリカ留学中の弟がアメリカの友人と広島に行くとの連絡がありました。「弟が、友人と議論になった。エキサイトした友人は弟に"もう一度日本に原爆を落とすぞ"と発言した由。弟は"冗談でもそんなことを言っては絶対にダメだ。広島平和記念資料館を見たら分かる。一緒に日本へ行こう"」。弟と友人が揃って広島平和記念資料館を訪問したのは、それから間もなくのことでした。そんな弟とアメリカの友人を見ていて、お互い真に良き友人を持ったなぁ、二人とも頑張れ、と感じたことを思い出します。
 平成の時代、最後の8月です。

北原巌男(きたはらいわお)
中央大学。70歳。長野県伊那市高遠町出身。元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長


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