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自衛隊ニュース   966号 (2017年11月1日発行)
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平成29年度 自衛隊中央病院大量傷者受入訓練
テロ・特殊災害等を想定
 10月7日、自衛隊中央病院(病院長・千先康二=三宿)は、病院の大量傷者受入能力及び災害等対処能力の向上を図ることを目的として「平成29年度自衛隊中央病院大量傷者受入訓練」を実施した。
 中央病院では、平成24年度から首都直下型地震を想定した訓練を行ってきたが、今年度は昨今の国際情勢を鑑み、「テロ・特殊災害等」を想定した訓練を実施した。前年度迄との違いは、(1)特殊災害傷者受入訓練計画の検証(2)化学剤、放射性物質、爆発物による負傷者への対応要領(3)関係機関(消防庁)との連携(4)航空搬送拠点としての態勢維持・向上(5)部外医療機関(医師会を含む)との連携等に重点をおいて訓練を実施した。
 訓練には中央病院の職員約500名が参加した。さらに、陸自衛生学校、第1ヘリコプター団、第1飛行隊が参加。その他、東京消防庁から17名、関東圏内の医療機関等も参加し、関係機関との連携を図った。また小野寺五典防衛大臣をはじめとした防衛省・自衛隊の高級幹部や、東京都、消防庁、医療機関等の担当者約220名が視察・見学に訪れた。
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国際マラソン大会で爆破テロ発生
【体育館にリアルな現場を再現】
 訓練は、都内で開催中の国際的なマラソン大会のゴール付近(中病から約2kmの代々木公園を想定)で、負傷者約300名の爆破テロが発生したとの想定で行われた。発生直後、中病に第一報が入り、受入準備を開始。警察による避難誘導が終了した時点から訓練を開始した。
 発生現場を想定した三宿駐屯地体育館内では、40名の摸擬患者が倒れ、テントは崩れ、備品が散乱する騒然とした情況を再現。中病の医官および看護官が大会のために開設していた救護施設を、そのまま現地指揮所として活用。最初に測定器を手にした消防隊員が簡易検知のために立ち入る。化学剤・放射性物質等の有無を確認後、直ちに救護支援班が活動を開始した。
負傷者が多数発生した際は、その重症度・緊急度により治療の優先度を決定するトリアージが重要となる。今回は、SALT法という、患者を選別しながら緊急救命処置を施すことで命を救う、最新のトリアージ要領が用いられた。
【航空搬送拠点としての役割】
 多数の患者を受入れた後も、更なる事態に備える必要がある。患者受入能力を維持するため、重症だが病状の安定した患者(事件発生2日後を想定)を関東圏内の病院に航空搬送する訓練が実施された。千葉県の病院には中央即応集団隷下第1ヘリコプター団の大型ヘリCH-47が患者1名を搬送。CH-47は、一般的なドクターヘリよりも航続距離が長く、巡航速度も速い。また航空後送器材CH-47用(MEDEVAC)を用いた航空搬送では、1回のフライトで3名まで搬送が可能だ。航空後送器材CH-47用は、ストレッチャー、応急治療機器、振動対策パレットで構成される搬送機材で、特に重症の航空搬送に用いられる。
 中央病院は都内の病院で唯一、CH‐47のような大型ヘリが離発着可能なヘリポートを保有しており、航空搬送拠点能力の維持と更なる向上が期待されている。
【意見交換会】
 状況終了後に行われた意見交換会では、「リアリティに溢れる訓練であり、テロ等対処検討の契機となった」「本格的に連携訓練を実施、いかに傷者を医療に繋げるか、成果・課題を獲得できた」等、様々な意見があがった。
 都心から約5kmに位置し、高度な医療技術・設備を保有する中央病院。医療拠点としての期待は高く、テロ・特殊災害、大規模災害発生時には、地域や関係機関と連携しながらその能力を最大限発揮すべく、今後も訓練等を通じて対処能力の向上を図っていく。

シンガポール陸軍司令官を公式招待
山崎陸上幕僚長
 10月23日、山崎幸二陸上幕僚長はシンガポール陸軍司令官メルビン・オン・スウ・キアット陸軍少将と防衛省で会談した。
 当訪問は、山崎陸幕長が着任して初めての公式招待であり、シンガポール陸軍司令官の公式訪問は25年振り。23日〜24日の滞在期間、オン司令官は中央即応集団司令部(座間)及び化学学校(大宮)を訪問。
 当日は、季節外れの台風21号の影響が心配されたが、オン司令官の来幕時には雨も上がり時折吹きすさぶ風の中、両名は栄誉礼・儀じようを受けた。
 会談では、山崎陸幕長はオン司令官の訪問を歓迎し、「二人の友情が台風を遠ざけた」と述べて場を和ませた。オン司令官は「このような歓待を受けて感謝している」と述べた。
 アジア諸国との防衛協力・交流を強化する陸上自衛隊にとって、今回の会談は相互理解の深化および信頼関係を強化し、日本-シンガポール陸軍種間のさらなる防衛協力・交流の促進が期待される。

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