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自衛隊ニュース   925号 (2016年2月15日発行)
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先進術実証機「X―2」報道公開

 防衛装備庁は1月28日、先進技術実証機の報道公開を実施した。
 始めに豊山町社会教育センターで、事業・開発概況・型式発表等の概況説明等を行い、その後に、三菱重工業(株)名古屋航空宇宙システム製作所小牧南工場で日本国旗を思わせるデザインの機体が格納庫において静止状態で公開された。
防衛省側からは、外園博一防衛装備庁防衛技監・吉田孝弘防衛装備庁プロジェクト管理部事業監理官(航空機担当)・土井博史防衛装備庁プロジェクト管理部将来戦闘機プロジェクト・マネージャー・市橋孝浩防衛装備庁長官官房装備開発官(航空装備担当)らが参加。会場には、関係企業の方々や100名近い報道陣の熱気で漲っていた。
 冒頭の挨拶で外園防衛技監から型式「X―2」と発表。Xとは、技術実証研究のための試験飛行機のことで2は、技術実証研究目的2機目の航空機ということだ。X―1型式は昭和29~37年に使用していた。また、浜田充三菱重工業株式会社 防衛・宇宙ドメイン 航空機事業部 技監・技師長は「高いステルス性と高運動性の融合に苦労した。特にステルス性は他国から学べず独自に開発研究しなくてはいけなかった。この実証機開発による技術等が防衛だけではなく、日本の航空業界が世界での地位を高められるようになって欲しい」と抱負を語った。
 X―2機は平成21年度より試作を開始し、現在、前記工場にて社内初飛行試験に向けた総合的な機能確認を実施している。地上滑走試験終了後の2月中旬以降、飛行条件が整った日に県営名古屋空港から航空自衛隊岐阜基地間の初飛行を行う予定。初飛行では、上空で所要の確認も実施する。その後は岐阜基地で1回程度飛行を行い、機体は27年度末迄に防衛省へ納入、防衛省による飛行試験はそこから始まる。
 X―2機は、通称「心神」と言われステルス性と高い運動性を兼ね備える戦闘機の技術と運用性の検証を行う航空機。機体の約9割が国産製品であり、「ステルス性@」「高運動性A」「システム・インテグレーションB」「国産戦闘用エンジンC」の技術を確立させる。防衛だけではなく、日本の航空業界の地位が世界で高められるようになるのだろうと、担当者の自信と誇りの溢れる説明を聞きながら感じた。
@ 我が国独自の素材等を適用し、ステルス有人機として、機体・エンジン・アビオニクス等をインテグレーションする
A 推力偏向(エンジンの推力を曲げる)機構を搭載し、機体とエンジンの一体的な制御による高運動性
B F―2戦闘機で培った戦闘機のインテグレーション技術の次世代への継承と発展
C 戦闘機用として国内開発したアフターバーナー付エンジンを飛行可能なレベルに成熟

27年度航空保安管制競技会
〈空自航空保安管制群〉
 航空保安管制群(群司令・太田久雄1空佐(北海道出身)=府中)は、1月26日~28日、平成27年度航空保安管制競技会を実施した。本競技会は、航空保安管制業務(航空管制、飛行管理)に係る各部隊の能力評価及び技量向上を目的として毎年実施されている。本年度は、航空管制部門及び飛行管理部門の2部門を実施し、航空管制部門は、ターミナル・レーダー管制業務において12個部隊が、飛行管理部門は飛行管理中枢業務において4個部隊がその実力を競い合った。
 競技は、第5術科学校(愛知県小牧市)の総合実習講堂でシミュレータを使用して実施され、本競技会に向けて厳しい訓練を積み重ねてきた参加者たちはその成果を十分発揮した。審査は、航空管制官の評価に加え、戦闘機操縦者2名が特別審査員としてパイロットの立場から評価した。審査の結果、航空管制部門では小松管制隊が、飛行管理部門では飛行管理隊が優勝の栄冠を獲得し、群司令から表彰された。
 なお、各部門の結果は、次のとおりである。
【航空管制部門】
 優勝=小松管制隊
 準優勝=小牧管制隊
 第3位=松島管制隊 【飛行管理部門】
 優勝=飛行管理隊
 準優勝=春日管制隊
 閉会式において群司令は、航空保安管制のプロである我々は、現状に満足することなく、絶えず高みを目指す心構えを持って地道に真摯に訓練に取り組んでゆくことが極めて重要である。なぜなら、訓練は不可能を可能にするものである。また、航空保安管制業務を行う上で、組織力は極めて重要なファクターであり、今後更に部隊長を核心として一致団結、お互いがお互いを思いやる絆の強い部隊になることを期待する旨を訓示し、競技会は終了した。

気迫溢れる戦闘概説
〈女性自衛官教育隊〉
 女性自衛官教育隊(隊長・亀井律子1陸佐=朝霞)は1月12日、第88期(2次)陸曹候補生(62名)に対し戦闘概説の教育を実施した。
 戦闘概説は、学生に対し初級陸曹として必要な攻撃及び防御の概要、特に小銃分隊(組)長の指揮要領を座学及び展示により教育するものである。
 教官による座学終了後、朝霞訓練場へ移動し展示を行った。
 当初は、砂盤を使用した地点指示・命令下達・戦闘指導及び戦闘予行を実施し、その後攻撃前進から目標奪取後の逆襲対処に至るまでの小銃分隊の攻撃の一連動作を女性自衛官の助教達が展示した。
 実施間、学生達は助教達の気迫溢れる指揮動作を一瞬も見逃すまいとの真剣な姿が印象的であった。
 教育を終えた学生は「座学直後の展示だったのでスムーズに理解できた」、「教官の座学は大変分かりやすく、助教の方々の展示はとてもカッコ良かった。助教達の様な指揮動作が出来るようこれから頑張ります」と熱く語ってくれた。
 彼女達を小部隊のリーダーとして育成するため、女性自衛官教育隊一丸となって教育訓練を実施していく。

雪月花
 トルコと日本の合作映画「海難1890」が何かと話題になっている。昨年の11月には安倍総理がトルコを訪問した時、同国のエルドアン大統領と一緒にこの映画を鑑賞したことでも注目された。題名を見ただけで内容は想像できるが、オスマン帝国(現トルコ共和国)の軍艦「エルトゥールル」号の沈没事故を描いているのだ。1890年、日本への親善使節団としての使命を終え帰路についたエルトゥールル号は和歌山県串本沖で台風に遭い乗組員618人は荒れ狂う真っ暗な海に投げ出された。大島の住民たちの懸命の救助活動で辛うじて69人の命だけは救われた。満足にない自分たちの食料を持ち寄って住民たちは必死に介護をした。以来トルコは世界でも有数の親日国になった。そして映画は1985年のイラン・イラク戦争下のテヘラン。サダム・フセインは48時間後にイラン上空を飛行するすべての飛行機を無差別攻撃をすると宣言、時間に追われながら各国は自国民の救出を行うが日本人だけは取り残されている。日本の航空会社は危険にしり込みして同胞の救援に行かない。その時救いの手を差しのべてくれたのがトルコだった。在イラン邦人215人はトルコ政府が提供してくれた救援機でトルコ人に先んじて無事脱出することができた。映画はこの二つのシーンに看護助手(日本人学校教師)の忽那汐里とトルコ海軍大尉(大使館職員)のK・エジェが時代を超えた二役で出ており友情の永続性を演出していた。串本町大島の樫野崎灯台の隣には「エルトゥールル号」慰霊碑と記念館があり、地元の子どもたちは清掃をつづけ5年ごとにトルコ大使館と串本町共催で慰霊祭も行われている。(所谷)

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