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自衛隊ニュース   903号 (2015年3月15日発行)
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OH-6D操縦教育修了セレモニー
〈北宇都宮駐屯地〉
 2月23日、陸上自衛隊北宇都宮駐屯地(司令・荒関和人1陸佐=陸上自衛隊航空学校宇都宮分校長)で「OH—6D操縦教育修了セレモニー」が行われた。
 広い視界と軽快な機動性を持ち、長きにわたって操縦士育成に寄与した観測ヘリコプターOH—6。昭和44年に陸上自衛隊はOH—6Jを導入、昭和47年から明野の陸上自衛隊航空学校で実施していた陸曹航空操縦学生課程(FEC)の計器飛行教育でOH—6Jの使用を開始した。昭和48年航空学校岩沼分校が宇都宮に移駐し、宇都宮分校の創設と同時にOH—6Jを配備、幹部の計器飛行課程等で使用開始した。昭和54年、OH—6JによるFEC実用機教育を開始、平成元年、OHコースの実用機教育がOH—6J型からOH—6Dに変更されOH—6D一貫教育となった。平成7年には、UHコースの練習機もOH—6Dとなり、OHからUHへの連接教育を開始。これ以降全てのFECが基本操縦の練習ヘリとしてOH—6Dを使用となった。
 そして2月20日、第197期陸曹航空操縦課程(OHコース)卒業をもってOH—6による操縦教育課程が全て終了した。これからは、練習ヘリコプターTH—480Bが操縦士育成の大役を担う。これまで128課程、約1200人がOH—6でFECを終えている。自身もヘリコプターパイロットでありOH—6で様々な経験をした荒関分校長は、「整備性や緊急性が高く、パワーもあり災害派遣などでも大活躍しました。私も空中でエンジンが止まったこともあったけども、自動再転装置が働いて大事に至りませんでした。OH—6はいいヘリでした」等と語っている。

御巣鷹山の悲劇に誓う
〈空自航空安全管理隊〉
 2月26〜27日、小雨の降る中、航空自衛隊航空安全管理隊(司令・橋本進空将補=立川)飛行安全幹部課程に入校中である学生11名が群馬県上野村を訪れた。
 教育の終盤に「御巣鷹の尾根(1985年の日航123便機墜落事故現場)」で現地訓練を平成16年度から行い始めて11年、18回目となる今回。1月28日に行ったJAL安全啓発センター研修と相まって、「現場に近づく事で更に事故の重みや空気を生で感じられた」。はじめに「慰霊の園」で礼拝。石碑に刻まれた犠牲者の名前に手を触れる学生もいた。その後、事故現場で作業した元上野村消防副団長・松元平吉氏から当時の話を聞き「どれだけ航空事故が悲惨なのか、どれだけ国民に不安を与えてしまうかという事がわかった」と目を潤ませる学生も。
 冬季閉山中の為、事故現場である御巣鷹の尾根に行くことは出来なかったが、35分急な坂道を歩き森の中で現地調査測量訓練を行った。事故現場に一刻も早く到着するという気持ちを持ちつつ行動する山岳地行動要領の一環でもある。事故現場を想定しての測量。操縦士等の学生らは実際には、様々な残骸が撒布された現場で測量をする事はないが、航空機事故を多角的に見るには重要な訓練だ。
 「百聞は一見にしかずとは、まさに今回の訓練のこと」「なぜ事故が起きたか、なぜ防げなかったのかを考えなくてはと実感した」「航空機に安全神話はないと改めて思った」「気を緩ませずに、安全意識を高めたい」。彼らは、3月6日に教育を終え部隊に戻って行ったが、これで終わりではない。今回学んだ事や感じた事を部隊で話し、認識を共有する事こそが大切な任務だ。それこそが、元消防副団長の「事故を知りそれを心においておくのとおいておかないのとでは気付きが違う」という言葉の意味であろう。(吉田佳子)

ベトナムにおける能力構築支援
人間のミスによる航空事故の防止
〈航安隊〉
 能力構築支援とは、他国に対し、平素から継続的に安全保障・防衛関連分野における人材育成や技術支援などを行い、その国自身の能力を向上させることにより、地域の安定を積極的・能動的に創出し、グローバルな安全保障環境を改善するという発想に基づく取り組みである。空自では、ベトナム国からの要請に基づき、平成25年度に実施したベトナム防空・空軍に対する「飛行安全セミナー」に引き続き、今年度においても同国の首都ハノイで実施した。講師は、内局及び空幕の担当者のほかに、飛行安全に関する教育等を行っている部隊である航空安全管理隊からも派遣されており、平成26年11月に開催された第2回セミナーには、筆者もその一員として参加した。
 筆者が講義したのは、専門である「人間のミスによる航空事故の防止」であった。国は違えど、講義内容の中心である「人間の特性」に変わりはなく、受講者にも興味を持っていただけたようで、講義後には活発な質疑応答及び意見交換が行われた。
 セミナーでは、空自側の講義だけでなく、ハノイ郊外に所在する第918空軍輸送旅団へ部隊訪問が行われた。旅団長自ら案内していただいたのは、古強者の風情漂う旧ソ連製のAN—2型機、AN—26型機、そして当部隊最新鋭のCASA—212—400型機であった。
 3番目の機体は、26年3月にマレーシア航空370便が消息不明となった際、捜索活動に使用されたものだという。マレーシア航空消息不明事案では、海自及び空自からも2機ずつの航空機が国際緊急援助隊として派遣されており、当事案に対する国際的な取り組みの規模の大きさ、そしてその中で自衛隊が担った役割の大きさについて感じずにはいられなかった。
 空自として初めての能力構築支援を通じた交流であった前回の飛行安全セミナー(平成25年9月実施)では、組織、装備体系等に係る日越間の違いゆえか、ベトナム側参加者に講義内容をなかなか理解してもらえず、また、ベトナム側の我が方に対する信頼を得るのに大変な努力を払ったと聞いていた。しかし、2回目となる今回のセミナーでは、もちろん発表内容に関する質問はあったが、相互理解の不足からなる不信感のようなものはなかったと思われ、外国との交流では、こうして一つ一つ信頼を積み上げていくことが何より重要なのだなと痛感した。先達に感謝するとともに、自分が参加した第2回セミナーが、空自とベトナム防空・空軍との信頼関係を一層深めるものになることを願ってやまない。
 防衛技官 飯野雄士(航空安全管理隊教育研究部)

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