防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   892号 (2014年10月1日発行)
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「海をゆく」われら
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各国海軍と交流
〈海自先任伍長〉
 海上自衛隊先任伍長(宮前稔明海曹長)は8月18~22日までマレーシアのクアラルンプールで開かれたWPNS(西太平洋海軍シンポジウム)に参加した。
 WPNSは加盟各国海軍との連携強化と上級下士官のリーダーシップ開発及び制度に関する情報交換の場として平成19年から開催されているもので、今回で6回目となり、15カ国が参加した。
 本年度は「優秀に向けての革新」等をテーマとして各国から発表があり、意見交換が行われた。日本からの発表もあり、新隊員の現状、コミュニケーションについては参加各国も大変に興味を示し、国を超えた上級下士官同士の交流と情報交換の必要性について改めて理解を示した。
 現地滞在中は、マレーシア海軍司令官主催レセプションにも参加し、日本と各国の良好な関係を更に強固なものとした。
 開催期間中、各国の上級下士官と絆を深めた宮前海曹長は「お互いに情報を共有し、より良い下士官制度を築いていくために今後も積極的に交流し友好を深めていきたい」と今後の諸外国との下士官交流に意欲をみせた。
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新たなる旅立ち
〈横須賀教育隊〉
 8月22日、真夏の強い日差しが照りつける中、海自横須賀教育隊(司令・柴田有三1海佐)で第361期練習員課程(368人)の修業式が挙行された。
 式典は横須賀地方総監、武居智久海将臨席のもと部内外来賓及び大勢の学生家族に見守られながら行われ、会場となった体育館内は学生達の発する熱気で満ち溢れていた。
 今期においても優等賞や精励賞の学生が成績優秀者として表彰され、教育期間中における学生達の努力の成果を感じさせた。司令式辞、総監訓示及び来賓祝辞を聞く学生達の姿は教育課程を耐え抜いた逞しさに溢れていた。式典の最後を飾る隊歌「海をゆく」斉唱はこれから始まる部隊勤務に対する学生の意気込みを示すように体育館内に力強く響き渡った。
 隊員食堂で行われた午餐会には、学生とその家族、来賓の方々が参加し、学生同士や家族との思い出話しに花を咲かせた。話題に上るのは同期同士の再会の約束、厳しかった教官の話しや共に過ごした同期達との楽しい記憶など様々であった。教官と学生という垣根を越え、課程中における思い出を語っているうちにお互いにより理解を深める場面も見受けられた。
 最後に教官から、これから始まる部隊勤務に向けての激励の言葉を送られると、それに応えるように学生からは教官への感謝の言葉と自衛官としての決意が語られた。
 庁舎西側道路で行われた見送りでは、横須賀音楽隊による「軍艦マーチ」に合わせて学生たちは力強く行進した。分隊旗や優勝旗を高々と掲げ胸を張って行進していくその姿に多くの家族がわが子の成長を感じていたようだった。海上自衛官として最初の一歩を踏み出した学生達は、職員や沢山の家族が見守る中、意気揚々と部隊実習に旅立って行った。
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救難出動等千回達成
〈71航空隊〉
 海自第31航空群第71航空隊(司令・立石和孝2海佐=岩国)は7月8日、宮城県金華山沖約1、130qの海上で発生した日本漁船「第31日光丸」乗組員の救急患者を救難飛行艇US―2で海自厚木航空基地に輸送し、「救難出動等1000回」を達成した。
 第2海上保安本部の要請により、機長・森教貴3海佐以下11人は同日午前0時26分、厚木航空基地を離陸し約3時間で現場上空に到着、着水可能限界値に近い厳しい条件の中、海上に着水、漁船からの患者を機内に収容、厚木航空基地に午前8時25分着陸、待機中の救急車に患者を引き渡し、1000回という節目の任務を完遂した。
 第71航空隊は、昭和51年7月1日にUS―1救難飛行艇3機をもって岩国航空基地に新編された。開隊間もない同年7月12日、太平洋を航行中のギリシァ船から重傷を負った乗員救出のために出動したのを皮切りにこの38年間、着実に成果を積み上げてきた。その間平成4年1月には、遥か太平洋上でベイルアウトした米空軍F―16のパイロットを救出、昨年6月にはヨットで太平洋横断中に遭難し、救助を求めたニュースキャスター辛坊氏らを救出したことで話題になった。
 また、1000回の出動実績のうち約三分の二は東京都小笠原村からの救急患者輸送であることから、同航空隊の存在は離島の住民や我が国周辺海域を航行する船舶の乗組員にとって「心の支え」「命の支え」になっており、東京都知事や小笠原村長及び海上保安庁から数多くの表彰を受けている。
 7月11日午後、約1週間の厚木救難待機の任務を終えた森3海佐以下15人(整備員4人を含む)は、岩国基地に降り立ち、第31航空群司令以下の隊員から出迎えを受けた。司令は訓示で「救難出動1000回は『訓練で泣いて実動で笑おう』のモットーの下、献身的に勤務してきた隊員の努力の結晶である。これは一つの節目として、より強く、よりたくましく成長することを要望する」と述べ、隊員達は決意を新たにした。
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絆大切に希望の船出
〈舞鶴教育隊〉
 海自舞鶴教育隊(司令・中尾博孝1海佐)は8月22日、第361期練習員課程修業式を実施した。国歌斉唱に続いて司令式辞では、約5カ月間の教育を振り返り、大きく変化した環境に戸惑い、厳しい訓練にくじけそうになりながらも多くの苦難を乗り越え、心身共に大きく成長することができたと学生の成長をたたえた。
 また、部隊に赴任する学生に対し「自信を失うな」「我慢を忘れるな」の二つの事項について要望し、艦艇等の特殊な環境に不安になるかもしれないが、教育隊での生活を思い出し、辛く苦しい生活を乗り越えてきたのだという自信を持って成長していくよう激励の言葉をかけた。
 司令式辞の後、舞鶴地方総監は訓示で領土や海洋権益をめぐる問題を抱えて海上防衛の重要性が益々高まっているときに部隊で勤務するに際し、基本を身につけること及び同期の絆を大切にすることの重要性を教示した。
 式の最後に行われた海上自衛隊歌「海をゆく」の斉唱では若き隊員の清々たる歌声が体育館に響き希望に満ちた船出となった。
 修業式を終えた学生には、周囲の期待の大きさを実感し、同期の仲間と互いに支えあい、助け合い、多くの試練を乗り越えていこうとする前向きの姿勢が窺えた。
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遠泳訓練完泳
〈小月教育航空隊〉
 海自小月教育航空隊(司令・飯塚一三1海佐)は7月24日、洋上で遠泳訓練を実施した。この遠泳訓練は長期耐水能力を身に付けるため航空学生が毎年実施しているものであり、第66期航空学生(今年度入隊)66人、指導官等6人が参加した。
 遠泳場所は山口県西部に位置する風光明媚な室津海岸であり、洋上にブイを設置して6時間かけて9qの遠泳を行った。
 66期航空学生は出身地が様々であり、北は北海道から南は沖縄まで全国から集まってきているため、義務教育で水泳を習ったことがない者もおり、個々の水泳能力に差があった。入隊当初5m程度しか泳げない者もいたが、遠泳事前訓練の成果を十分に発揮し、また当日、高い気温・水温、穏やかな風・波と天候に恵まれたため、一人の脱落者もなく完泳することができた。
 途中、刺すような日差しの中、同期で励ましあいながら隊列を組み整斉と泳ぐことによって、より一層強い絆の醸成、また不撓不屈の精神の涵養と共に海上自衛隊の搭乗員として不可欠な長期耐水、滞泳能力を身に付けることができた。
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自衛隊初MCLS標準コース開催
〈空自・百里基地〉

 8月3日に陸海空の3自衛隊で初となるMCLS(Mass Casualty Life Support)標準コースが空自百里基地で開催された。MCLS標準コースとは「多数傷病者への医療対応標準化トレーニングコース」であり、日本集団災害医学会、災害医療コーディネーション委員会において、消防や警察など災害のファーストリスポンダーとなりうる要因を対象とした災害医療の研修会として開発され、災害医療または防災業務に従事する者が、災害時に発生した多数傷病者への対応を適切に行うことにより、傷病者の救命率及び社会復帰率の向上に資することを目的とするコースである。
 自衛官のみを対象として開催されるのは全国で初めてで、今回は消防特技員5人、警備特技員5人及び衛生特技員10人の計20人が受講し、日本集団災害医学会から30人の医師や消防士等が指導員として訪れた。
 本トレーニングコース実施の主旨は今年10月、百里基地で開催される航空観閲式に向け、大きな事故等が発生した場合、自衛隊、警察、病院、消防及びDMAT等が共通の認識及び用語を共有することによって、多数傷病者発生時に効果的に連携し対応できるよう基地内の初動対処要員の資とするものである。
 訓練は、災害・多数傷病者概論、災害現場対応の原則、災害現場医療の3T「Triage(トリアージ)、Treatment(治療)、Transport(搬送)」、各トリアージ現場救護所の設置・運営及び災害派遣医療チーム(DMAT)の現場活動要領等の基礎的な知識を習得することを目的に実施された。訓練の終盤では、筆記試験、口頭試問及び実技試験が行われ、その結果受講者全員が無事に合格することができた。
 多くの訓練参加者から「多数傷病者発生時には消防、警備及び衛生が連携し対応することの重要性を改めて再認識できた」との声が聞かれた。また、今回参加した特技以外の隊員からもMCLSを学び、同じ思考で対応すれば、防ぎ得た外傷死を少しでも減らすことができるのではないかとの観点で、同じ訓練を開催して欲しいとの要望があった。


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