防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   2011年11月1日号
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野田首相訓示
航空観閲式

 平成23年度の航空観閲式にあたり、隊員諸君らの使命感にあふれ、規律正しく、士気旺盛なるその挙措動作を直接目のあたりにして、本日の観閲官として、そして最高指揮官たる内閣総理大臣として、この上のない喜びであります。
 私は自衛官の倅として生まれ育ちました。小さい頃から、有事に備えて厳しい訓練に明け暮れている隊員の姿をたくさん見て参りました。様々な活動の最前線で献身的に活動している隊員の姿をたくさん見て参りました。平素から自衛隊をこの国の誇りとして思っておりました。改めて本日、隊員諸君のきびきびとした一挙手一投足を見て、改めて自衛隊に対する敬愛と信頼の念を新たに強くした次第であります。
 警察予備隊に始まり保安隊を経て、自衛隊として、これまで長きにわたり、我が国の平和と独立を守り、この国の安全を守る、その崇高な使命を果たして参りました。その中で、一番本質的な使命は、国民一人ひとりの「生命(いのち)」を守るということであります。その「生命」を守るという点において、3月11日に発災した東日本大震災、この発災に対応することが、自衛隊の真価が問われる時でもありました。その真価が問われる時に、隊員諸君は、見事に平素からの訓練を活かし、存分に力を発揮し、「勇気」と「真心」をもって期待に応えてくれました。10万人を超える態勢を組み、被災地の支援を全力で行いました。このことを通じて、多くの被災者の皆さんが、国民が、改めて頼りになる自衛隊を実感することができたと確信しております。10万人の態勢と申し上げましたが、それを支えたのは一人ひとりの隊員の意識の高さと真心であったと思います。
 津波に襲われ、生死の境をさまよっている皆さんの前に、一番最初に現れてその皆さんの「生命」を救った。1万9000人以上の尊い「生命」を救うことができました。それを成し遂げたのは諸君であります。
 厳しい寒さの中、加えて余震があるかもしれないという恐れの中、震えながら救援を待っている皆さんの前に一番最初に現れたのは諸君です。食事、水を運び、毛布を運び、そして入浴支援まで行いました。行き届いた温かい支援を成し遂げたのは諸君であります。
 原発の事故に際しては、命をかけて、文字通り命をかけて、ヘリから、消防車から放水を行い、そして拡散した放射能の除染活動の先頭に立ち、避難者の支援・誘導を行い最前線に立ったのは諸君であります。
 私はあるエピソードを忘れることができません。6歳の男の子が行方不明となり、その母親が、隊員に「何としても息子を探して欲しい」と頼みました。津波に流された自宅の下を徹底して探して欲しいという要請でありました。その要請に、隊員は懸命に応えようとしました。ぬかるみの中で、懸命にお子さんを探しましたが、見つけることは出来ませんでした。しかし、その6歳の男の子が一番大事にしていたウルトラマンの人形を見つけました。お母さんに渡すと、何度も泥を拭きながら、何度もお礼を言いながら帰られたそうです。私はこうした「真心」が国民に、被災者に届いたものと確信をしています。
 大震災のみならず、今年は集中豪雨等、様々な自然災害が発生しました。その度に人命救助と被災者支援の先頭に諸君は立ちました。今ほど日本の自衛隊に国民の期待と信頼が高まったことはありません。
 改めまして、最前線に立って汗をかいて頂いた諸君、裏方となって下から支えてくれた諸君、全てを私はこの国の誇りとし、この壇上から恐縮でありますが、改めて「ありがとう」と申し上げたい。
 我々が踏まえなければならないのは、自然災害だけではありません。いざという時にしっかりこの国を守れる自衛隊でなくてはなりません。挑発的な行動を繰り返す北朝鮮の動き、軍事力を増強し続け周辺海域において活発な活動を繰り返す中国の動き、我が国を取り巻く安全保障環境は不透明さを増しております。
 こういう時こそ、昨年の12月に閣議決定した新しい「防衛計画の大綱」に則り、迅速且つ機動力を重視した動的防衛力の整備が喫緊の課題であります。そのためにも、より一層の諸君の精励をお願いいたします。
 我が国のことは、我が国の安全は我々の手で守るという構えは当然必要でありますが、加えて外交努力も怠ってはなりません。
 日米同盟は、日本の外交・安全保障の基軸であります。そのことを今回の大震災の際の米軍の「トモダチ作戦」等によって改めて私達は実感することができました。幾歳月にわたる、日米関係の絆の強さを今回ほど感じたことはありません。
 さらに、21世紀に相応しい日米同盟を築いていくためにも、現場で皆さんとアメリカとの協力強化が必要になって参ります。
 さらに、今回の東日本大震災の際には、160を超える国から、40を超える国際機関から、温かい御支援を我が国は頂きました。私は、先般の国連総会において、その感謝の気持ちを申し上げるとともに、世界に我々は「ご恩返し」をしていく決意を表明をさせて頂きました。
 その一端を担うのが国際平和協力活動であります。ハイチ、東ティモール、ゴラン高原、ソマリア沖・アデン湾等で、数々、自衛隊は実績を残して参りました。新たに南スーダンでどういう貢献ができるか、いま最終調査を行っているところでございます。国際社会から信頼される、尊敬される国となるためにも、こうした活動にも一層取り組んでいかなければなりません。
 最後に、中国の古典に『司馬法』というものがあります。「天下、安らかなりといえども、戦いを忘れなば必ず危うし」という言葉があります。平時においても、平和時においても、有事のことを忘れないで備えること、これはしっかりと我々の胸に刻んでいかなければなりません。そうした構えの中で、先ほど申し上げたとおり、今ほど国民の期待と信頼が自衛隊に集まっている時はありません。こんな時こそ、「兜の緒」を締めて自衛隊としての崇高な使命を果たしていくということを、ぜひ共有をしたいと思います。これから日々、しっかりと、この日本を、国民を守るために、さらなる精励をして頂くことを期待申し上げ、私の訓示とさせて頂きます。(10月16日)


65個人、67団体が受賞
防衛大臣感謝状贈呈式

 平成23年度防衛大臣感謝状贈呈式が10月15日、グランドヒル市ヶ谷で行われた。これは、自衛隊記念日行事の一環として防衛協力や自衛官募集等で功績のあった方々を表彰するもので、今年度は個人65名、67団体が受賞した。式では防衛省・自衛隊の高級幹部が陪席する中、一川保夫防衛大臣が受賞者代表に賞状を手渡した。一川大臣は「我が国の防衛についての深いご理解の下、長年にわたり隊員の教育訓練、防衛施設の安定使用、自衛官の募集や就職援護、予備自衛官や即応予備自衛官の雇用など様々な分野で防衛省・自衛隊を支えてくださった。どうか今後とも変わらぬご支援・ご協力を」と挨拶した。最後に、受賞者を代表して麻田元江氏が謝辞を述べ、式を終了した。


厳粛に中央追悼式
新たに9柱を顕彰

 平成23年度自衛隊殉職隊員追悼式が10月15日、防衛省慰霊碑地区で行われた。今年度新たに顕彰されたのは陸自5柱、海自3柱、空自1柱の計9柱で、警察予備隊以降の顕彰者数累計は1822柱。式には遺族のほか、野田首相、一川大臣をはじめとする防衛省・自衛隊の高級幹部、歴代大臣、国会議員など約360人が参列し、殉職者の冥福を祈った。
 午前10時、国歌斉唱に続いて、音楽隊の演奏の中、一川大臣が9柱の名簿を供奉した。次いで特別儀仗隊の捧げ銃とともに参列者全員で拝礼と黙祷を行った。野田首相は追悼の辞で「御霊は、立派に使命を果たし、この国のために尽くし、そして大きな足跡を残されました。私達は、その姿と名前を心に刻み、前に進んでまいります。私達は、このような不幸な事態が、再び起こることのないよう、今後とも最善の努力を尽くさなければなりません。御霊の尊い犠牲を無にすることなく、その御遺志を受け継ぎ、我が国の平和と独立を守るという崇高な任務を全うするとともに、この震災からの復旧・復興と世界の平和のために全力を尽くしてまいります」と述べた。また、一川大臣は「旺盛な責任感のもと、身の危険をも顧みず、任務の完遂に務め、志半ばにして、その職に殉じられた事実を、決して我々は忘れることがあってはなりません」と述べた。
 続いて献花に移り、野田首相、一川大臣、遺族、来賓が順次献花台に白菊を手向けたあと、遺族を代表して東日本大震災で被災し殉職した佐藤琢也1陸曹の父・剛さんが挨拶し、「一日も早くこの悲しみを乗り越えて、残された者が互いに手をとり、励まし、助けあって、胸を張って、力強く生きていかなければならないと心に固く誓っています」と遺族の心情を述べた。
 最後に、拝礼、特別儀仗隊による弔銃が行われ追悼式を終えた。


防衛弘済会が殉職隊員肖像画を贈呈

 平成23年度自衛隊殉職隊員の肖像画贈呈式が10月13日、事務次官室で行われ、中江公人事務次官に小澤毅理事長から9柱(陸自5、海自3、空自1)分の目録が贈呈された。殉職隊員の肖像画贈呈は、昭和46年3月に全日本肖像美術協会から防衛庁長官あてに贈呈したい旨の申し出があり、以後毎年実施されている。なお、これまでの肖像画受領数合計は1728柱となっている。


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